あけおめぇ!!!
いきなりですが、報告。2章の章名を変更しました。
〈2章 新人類優勢思想編〉→〈2章 星屑の街 第一節 脱走者編〉
…です!フェムト君の話が、独立したタイトルを貰いました。…どうせ長くなるし。
星暦XXXX年 10月19日 《星屑の街アステール》
ーーーイースター支部ーーー
………時刻は夜。
イースターのメンバー+αでの食事も終わり、殆どの人が寝静まった後。
……ニュウは、支部の部屋の中で暗い天井を見詰めていた。
「ーーーーーー知らない天井だ。」
…誰かに聞かせる訳でもなく、1人で呟く。
(そう言えば、いつの間にか
…最初は知らない天井だったのが、いつの間にか見知ったモノになっていた事に、ニュウは少し驚いていた。
(それだけ、自分が
……夕食の席で、フェムトが流した涙をニュウは思い出していた。
彼がどんな思いを抱いて脱走兵となったかは分からないし、アステールに逃げ延びるまで、どんな道のりを辿って来たかも分からない。
ーーーーーーーだが、少なくともアルスラーンとアビスによって、彼は少なからず救われる事が出来たのだろうし、連邦に縛られた新人類が解放されたのは、良い事なんだろう。
(……連邦に支配されるのが嫌なら…自由を渇望するのなら…逃げ出せば良いんだ。……彼は実際にそうした。)
ニュウは心の中で呟く。
彼はそうした。………なぜ、自分はそうしない??ーーーやろうと思えば、出来る筈なのに。
その自問自答に、心の中のもう1人の自分が答えを返す。
(…同胞達を見捨てるわけにはいかないだろう?!自分が逃げ出したら、誰が仲間達を解放するんだい??…誰も居ないだろ?逃げ出すなんて事は、止めるんだ。)
「ーーーーーーーーーあぁ……。寝れねぇ。」
ニュウはベットから起き上がった。…どうも場所が変わると寝付きにくい。
半分閉ざされたカーテンから月光が斜めに差し込み、屋敷の客間を照らしている。
「……外…出ても良いのかな。」
…ニュウは窓から外を見詰めて呟いた。
ーーーーーーーー中々に綺麗な月の日だ。山に霧の様に懸かる〈星のセラム〉が星屑の絨毯となって、満ちた月の下に広がっている。
「……歩こう。」
そう呟いたニュウは、軽く肩を回すとドアを開けて外に向かった。
◇◆◇
……最初は、裏庭をぶらつくだけに止めようと思ったのだが、丁度屋敷の扉を開けたところで視界の片隅に、屋敷の外へ向かう朝焼け色の髪をニュウは見留めた。
「ーーーーーーーーーあれ???」
月明かりの下で、揺れる朝焼け色の影。
ーーーーーーーーーネオだ。
……何故かデジャブを感じながら、ニュウは足を早めてその影に追い付く。
「ーーーーーーーーーこんばんは。……ネオさん。」
…月明かりの下、朝焼け色の影がビクッとなって振り返った。……やっぱり、デジャブを感じる。
「………びっくりした。ーーーこんばんは。」
『なんだキミか』…と言う顔になったネオが、そう呟いた。
「……こんな夜遅くに、何方まで?」
「…それは貴方も一緒。何で来たの?」
ニュウは小さく笑う。
「…ふふ、デジャブだな……。ーーー寝れなくてね。…場所が変わると寝付きにくいんですよ。…バサラさんも、
「……バサラさんは、意外と適当なトコあるから。その時の気分で色々決めるし。」
ネオの言葉に、ニュウは軽く肩を竦めた。
「そうですね。…で、話戻しますけどーーーどこへ行くつもりだったんです?……因みに、俺は裏庭に行こうとしてたんですが。」
ニュウの問いに、ネオは少し視線を宙に彷徨わせた後、呟いた。
「……あんまり知られたくは無かったんだけど……支部からちょっと歩いた場所…霧の森の外れまで行こうと思って。」
「…アステールの外じゃ無いですか。何かありましたっけ???」
「……気に入ってる場所がある。夜は特に綺麗な所。」
「…へえ。」
ネオがニュウの方をチラリと見た。
「ーーーーーーー貴方も来る?…暇なら。」
「……其処って安眠できますかね?」
「……多分。…寒いけどね。」
「なら、行きます。……暇ですし。」
ネオは頷いて歩き出した。……若干斜め後ろをニュウが歩いて付いて行く。
……屋敷から離れ、暗く静まり返った住宅街を抜けて行く。ふと、途中で振り返ってみれば、遠くに城のように佇んでいる〈オーステルン〉と、その足元に広がる商店街の灯りが見えた。……まだ、街の中心は煌々と電気がついている様だ。此処も眠らない街の一つなのかも知れない。
「……街の方は明るいですね。星灯りも消えてしまうぐらいに。」
ニュウの声に、ネオは振り返って頷いた。
「…アステールは大きな街。……何時も中心部は賑やかだよ。」
……一方、ネオが向かっている森の方は薄っすらとした闇に閉ざされていた。多少明るいのは、月の光と煌めく星雲の様な〈星のセラム〉が、森を照らしているからだろう。
(何処まで、行くのかな……?)
ニュウがそう思っているうちに、ネオはどんどん森の奥へと足を踏み入れて行く。
…石畳みの道路は、やがて車の轍の残る土の道へ。ーーーーーやがて轍すら無くなり、短めの草に覆われた小道へと変わって行く。
……坂道を登り、アステールの街並みの全て……街の形が六芒星であるとしっかり分かるぐらいの高い所まで登ってきたネオ。
「…!ーーーちょっと待ってね。」
まだ、道は続いているが彼女はふと足を止めた。
「何ですか?」
「ーーーーーーーーーアレ、見える?」
ネオは道の端、藪の中を指差していた。ーーーー見ると、藪の中にスーツケース大のオーロラ色に光る水晶が突き出していた。
「……星のセラムの結晶か。」
ニュウの呟きに、ネオは頷いた。
「うん。……今は未だ小さいけど、いずれ大きくなって〈ノーマン〉を生み出す温床になる。」
「…困った水晶ですね。」
「そうだね。ーーーーーーーーーだから、今見つけれて良かったよ。」
……そう言って、ネオは藪を掻き分けて七色の水晶に近づいて行く。
そして、手を水晶に押し当てると……
ーーーーーーーーーパリィ………ンッ
オーロラ色の水晶が一瞬で霜が張ったかの様に真っ白になり、そしてガラス細工みたいに砕け散った。
水晶の破片は、氷が急速に溶ける様に消えて行く。実体を持った魂の集合体が、《浄化》された事によって目に見えぬ概念的なモノへ還っていくのだ。
「おお……。流石、浄化する力。……綺麗ですね。」
ニュウが呟く。
「……コレで良し。ーーーーーーーーー中断してごめん。…もうちょっと歩こうか。」
ネオがそう言って先に進み出す。ニュウはただその後を追った。
◇◆◇
「……しかし、ネオさん。」
「……なに?」
ニュウは山間に霧の様にかかる〈星のセラム〉を見ながら、ネオに声をかける。
「これだけ〈星のセラム〉が街の周りに有ったら、〈ノーマン〉とか結構湧くと思うんだけど、対策どうしてるんですか?」
ネオは遠くに見える街並みを指差した。
「……街の外周に対壊獣用兵器が配備されてる。アルスラーンさん達も居るし、場所が場所だから対策もしっかりしてるよ。」
ニュウはネオの指差す街を見ながら、頷く。
「…そうですか。ーーーーーーしかし、随分と街から離れましたね。」
「うん。……でも、もう着いたよ。」
「…え?」
ーーーーーーーーーネオの言う通り、突如として森が途切れた。
此処は多分、街の一番近くの山の頂上だろうか?…街を遥か下に見下ろせる高所に広々とした草原が広がり、柔らかな夜風が草を揺らしている。
……そして、一番目を引くのは何と言っても満点の星空!!
此処には立ち並ぶ木々も無く、星灯りを遮る人工の光も無い……真っ黒な墨を流したような夜空に、無数の星々が散りばめられていた。どれも光を失う事なく寄り集まり、天の川となって瞬きを放っている。
「……うおぉ……。星!すげぇ!?」
思わず感嘆の声を上げたニュウ。…夜でも明るい街が広がる〈オーステルン〉の本部からは、絶対に見ることのできない景色だ。
「良いでしょ。ーーーーーーー本物の星々だよ。…ヒトの命を奪う
地べたに腰掛けたネオが、空を見上げながら呟いた。
「……時々、流れ星も見えるんだよ。本当に綺麗なんだ…流れ星。」
「…へぇ。俺も見れますかね、流れ星。」
「運が良かったらね。」
「なるほど…。」
ネオから少し離れた場所に立って、ニュウはただ星を眺めていた。
夜風にニュウの白いコートと、ネオの黒いパーカーのフードが揺れる。
「……星を見るのは好きなんですか?」
ニュウの問いに、ネオは膝を抱えて頷いた。
「好きだよ。ーーーーーー星を見てるとさ、段々自分が小さくなってくるんだ。……やがて自分の悩みとかが消えて無くなった……気になる。」
「………ネオさんも、何かに悩んだりするんですね。」
「もちろん。…何なら、ずっと悩んでる。」
ニュウが見ると、ネオは膝を抱えたまま、少しだけ暗い顔を浮かべていた。
「…ネオさーーーーー」
「……私はね。ただの人間じゃないんだよ。…分かるでしょ?」
「……………。」
ニュウは黙り込んだ。ーーー星空の下、ネオは滔々と話し出す。
「……私は生まれながらの新人類。……小さい頃に連邦に囚われて親から引き離され、
「私の力を己の望みの為だけに使おうとする輩に利用され続け、他人から何時だって『人』として扱われた事は無かったし、実際に人を超越した力を宿してしまっていた。」
喋りながら、ネオは手の内側に〈セラムキューブ〉を展開する。
複数の小さなセラムキューブが集まって1つのキューブを作っているソレを回転させながら、ネオは話を続けて行く。
「…知ってる?新人類って普通どれだけ優れていても、〈セラムキューブ〉は一個しか持てないんだよ。……私のは何個あると思う?」
「……少なくとも20個は有りますよね。…ルービックキューブみたいですから。」
「…うん。その通り。」
ネオは〈セラムキューブ〉を手を振って打ち消した。
「…貴方も一個、バサラさんもアミダ、カノン…みんな一個。でも、私は違う。…それが何よりの証拠。ーーーーーーーーーあと、話した事はなかったけど私の胸には、人には無いものがあるんだよ。」
ネオは手を胸に…なぜか其処だけ不自然に露出している胸の上の方に当てた。…其処だけ微かに色が変わっている様にも見える。
「……誰も『コレ』が何なのか突き止めようとして、誰もわからなかった胸の『痣』…又は『紋様』。…コレも人でない事の証明の一つだね。」
「……。」
ネオは顔を上げた。そしてニュウに問い掛ける。
「最後に………貴方は、星は歌うと思う???」
ニュウは目を瞬かせた。
「う、歌……??」
辺りを見渡して、ニュウは耳を澄ませてみる。…勿論、風の音と木々の騒めき、虫の奏でる微かな音色しか聴こえない。捉え方によっては、コレらの音を歌として見る事も出来なくは無いがーーーーーーー
「…多分、聴こえないと思う。」
「ええ、環境音だけですね。…俺にはさっぱり。」
ネオは手で首に掛かっているヘッドホンを弄る。そして、また話し出した。
「私には時折聞こえるんだ。…ずっと遠くから呼びかける様な、綺麗な歌。周りの音とか、気のせいとかじゃない…語りかける様な歌声。…それを聞くたびに、何故か何処かに行きたくなる。」
「……何処へ???」
「分からない。ーーーーーー強いて言うなら…北……〈星の花〉の本体がある所…なのかな?」
ネオはそう言って、アステールの遥か彼方、今は夜の闇で見えない筈の〈星の花〉を有る方を見つめる。
…ニュウも同じ様に〈星の花〉の有る方角を見つめた。暫し、2人の間に静寂が広がる。
「…………私はきっと、此処にいたら行けないんだと思う。」
急にネオがそう呟いて、驚いたニュウはネオの方を振り返って見た。
「ーーーー何を……」
「新人類の抑圧が続いているのは、私の所為なんだよ。……連邦曰く、私は〈完全な新人類〉。……新人類に関するあらゆる実験や研究を、私1人で過去の物に出来る。私がいれば、私1人で新人類全てに関する実験が可能…ーーーー裏を返せば、私がいないと新人類の実験は終わらない。」
ネオは顔を膝に埋めた。
「……私は連邦が嫌だった。…実験も研究も、あの場所其の物が嫌だった。
…ニュウは空を見上げたまま微動だにしない。
「…私を最初に連邦から連れ出したのは、〈新人類優勢思想〉なんだ。……でも、アソコの人達は私に自由はくれなかった。ーーー〈イースター〉に辿り着いて私は初めて、自由になれた気がした。…そして実際、私は〈イースター〉で生きているのが一番良いと思っている……。みんな良い人達だもんね。…そう思うでしょ?」
「……うん。俺も…そう思います。」
ニュウはただ空を見上げたまま、悲痛そうな顔で頷いた。膝に顔を埋めているネオは彼の表情に気づかない。
「…でも、私がいなくなった所為で新人類達は誰も自由になれていない。ーーーーーーー私はもう自由を失いたくない…でも、私の自由を犠牲にすれば、新人類達は自由を得られるかも知れない。………だけど、私は私自身の自由か、皆んなの自由かを天秤にかけて…自分自身の自由を選んでしまったんだ。それで今までの1年を…のうのうと生きてて……。」
ネオの声が小さくなっていく。
「………コレは、私の罪…
…思わず、ニュウは彼女の直ぐそばまで歩み寄っていた。
「ーーーーーーーーー自由になってて良いと思います。」
「……!」
殆ど衝動的にニュウの口を吐いて出た言葉に、ネオは顔を少し上げた。
「…別に連邦に囚われる事が、他の新人類を救う為の…唯一の方法じゃない。…自分が自由なまま、他の誰かを自由にする為に生きるやり方も絶対に有る。アルスラーンさんや、〈イースター〉の皆みたいに……。ーーー
…衝動的に口を吐いて出た言葉たち。…自分に課せられた使命と真逆の事を言っている自覚はあった。ーーーでも、その時ニュウは自分の心を欺く事は出来なかった……コレは彼の本心からの言葉だったのだ。
「……良いのかな…?本当に…それで。」
彼女の微かに震える瞳をニュウは見据えて頷いた。
「………良いんです。本当に、それで。」
「ーーーーそう……。」
ネオは何か言いかけて、黙り込んだ。……再び2人の間に沈黙が訪れる。
「…………………。」
ーーーーーーーーー沈黙の中、ニュウの心にもう1人の自分…連邦の兵士としての自分が、蛇の様に絡み付いて囁いて来た。
『……
知らずのうちに、ニュウの握った手に力が入る。
(…黙っててくれ……俺だって…俺だって………)
ーーーーーその自問自答は、長く続かなかった。
…♪♬♫♪… ♪♬♫♪… ♪♬♫♪
「…!?」
「…ん?電話?」
2人の持つ携帯が同時に着メロを奏で始める。
ニュウが見ると、呼び出し人はハレルヤだった。同じ様に携帯を眺めるネオに、ニュウは声をかける。
「…誰からです?…俺はハレルヤさんからです。」
「…私はバサラさん。…どうしたんだろ?」
2人は顔を見合わせ、同時に画面をスワイプして電話に出る。
「「もしもし、ネオ(ニュウ)です。」」
電話の向こうで、焦った様なハレルヤとバサラの声が同時に響いてくる。
『『ーーーーーーーネオ!(ニュウ!)今、何処にいる???』』
コレまた同時に、電話の向こうにネオとニュウは返事した。
「「えっと……星見てました。」」
『『…はぁ?!…もしかして今、2人一緒にいんのか(居るの)???』』
「…はい…居ます。」
ニュウはそう答えつつ、電話の向こうから聞こえる音に耳を澄ます。………微かに聞こえるこの音は…剣戟?戦闘が行われている??
通話の向こうで、バサラの声がする。2人が一緒にいるなら、1人で話そうとなったのだろう。
『いいか!2人とも!ーーー今お前らが何処にいるのか知らねえが、直ぐに戻って来い!!』
「「………!!」」
怒鳴る様な声に顔を見合わせる2人。電話の向こうでバサラが叫ぶ。
『やっぱりと言うか、何つーか…連邦がフェムトを取り戻しに来た!!!!ーーーーーーー今なんかヤベェ事になってんだ!!来てくれ!!』
電話の向こうにネオが叫び返した。
「分かった!直ぐ向かう!」
そうして通話を素早く切ったネオは、ニュウと顔を見合わせる。…何を言わんとしてるかは分かる。
「一緒に行ける?」
「もちろん!行きましょうネオさん。…ん?いや、でもこっからどうやって?」
ニュウの疑問にネオは〈セラムキューブ〉を展開しながら答えた。
「〈スピードモード〉で飛んでく。…キミも私に掴まれば一緒に飛んでいける。ーーー掴まって。」
「……マジっすか。何処に…?」
「別に何処でもいいよ。…早くしたほうが多分良い。」
「えっ…と。……じ、じゃあ失礼します(?)」
……少し悩んだが、結局肩に掴まる事にした。………無難に手にしようと思ったが、身体をできる限り近付けておかないと加速時に振り落とされる可能性があるらしい。
「あー……コレでよかったんですかね??」
「…ちょっとバランス取りずらいけど…ま、良いよ。ーーーじゃ、行く!!」
「あ、ちょ、心の準備がーーーーーーーーー」
ーーーーーーーーーギュワンッッッ!!!!
キューブが変形して出来た機械めいた翼が煌めき、ネオはニュウと共に急加速して飛び立ったーーーーーーーーー……
6000文字書いてまたニュウとネオが会話するだけで終わっちまったよ……
ま、この話は書いときたかったので書けて満足です。なるべく早く次上げるんで…許してユルシテ