モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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…なんで30話投稿してから直ぐに31話を投稿出来たかって?

元々開戦から終了まで1話に纏めてたんだけど、話が長くなり過ぎて(個人の感想)2つに分けたからです。

…前々からこの話とこの話は1話に纏めたかった〜とか言ってる癖に、いざ纏めたらコレだよ。…ダメジャン。




31話 〈激戦〉

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーギャリィンッッ!!!

 

音叉と回転する丸鋸がぶつかり、火花が裏庭を照らす。

 

「……アビス。…キミも中々興味深い研究対象なんだがね。……だが、今じゃ無い。仮説の証明は順を追ってするものだ。」

「うるさいですね…!」

 

 振るわれた音叉の杖を避けるフォリー。…素早く両手の丸鋸をアビスに迫らせるが、彼女はまた音叉でそれを受け止めた。

 

 鋸が音叉とぶつかる度に、甲高い金属音が鳴り響く。フォリーの攻撃は素早かったが、アビスはその素早さに完全に対応していた。

 

「……ふむ、〈セラムの力〉で加速(スピードアップ)してるな??その加速に何処まで身体が耐えられるのか、気になるね!!」

 

 フォリーはそう言いながら、攻撃を繰り返す。やがて、2人はあの裏庭の墓標の前までやって来ていた。

 

「……!」

 

 それに気付いたアビスは墓標を巻き込まない様、身を翻した。フォリーがそれに追い縋る。

 

……そのまま、2人は1階の壁を打ち壊して屋敷の中へと舞い戻った。

 

「さて、そろそろ終わりにしようか…アビス。私はフェムトくんの元に行かなければ。…研究が終わっていないのでねぇ。」

 

 壁を破壊した先ーーーーー1階の食堂で、アビスの前に立ち塞がる様にして丸鋸を構えたフォリーが口を開く。アビスが彼を睨みながら答えた。

 

「……フェムトくんには手出し出来ませんよ。…バサラさんとハレルヤさんに、フェムトくんは頼んで来ました。…貴方達が取り戻すのは不可能です。諦めて下さい、貴方達は失敗したのです。」

 

 突きつける様なアビスの声にもフォリーは動じなかった。

 

「ふん。我々が、ロクな備えも無しにのこのこ突っ込んで来た…とでも?ーーーそれは違う。部下のアラミタマもクシミタマも、強力無比な新人類だ。私にも虎の子の一手があるしな。」

「ーーーーーーー???」

 

怪訝な顔を浮かべるアビス。

 

「…つまり、そう簡単には引き下がらんと言う事だ!!アビス!!」

 

 叫んだフォリーは丸鋸を交差させ、激しい火花と共にアビスに斬りかかった。…回転する丸鋸の軌跡が、光の線となりアビスに襲い掛かる。

 

「ーーーーー私の研究は崇高にして絶対!!…邪魔だてするな!」

 

 アビスは手に持った音叉の杖に淡い紫の光を帯びさせながら、叫び返す。

 

「…人を不幸にする研究なんて、要らない!!」

 

 2人は食堂の机の上ーーーシャンデリアの真下で、激突した。

 

「ーーーーーーーフランティック・サージェリー!!!」

 

「ーーーーーーーシール・ジ・アビス!!」

 

ーーーーーーードンッッッ!!!と激しい激突音と共に、食堂の大きな机が真っ二つになって左右に吹き飛ぶ。シャンデリアも衝突時の波動で揺れ、地面に落下して激しく割れた。

 

「くっ…!!」

「ぬぅッ!」

 

 衝撃波によって、食堂の壁に叩き付けられるアビス。フォリーも反対側の壁にヒビが入る程めり込んだ。

 

 だが、彼はすぐに起き上がる。足下がふらついているが、まだ動けるのはかなりのタフネスと言えよう。

 

「…はぁ、はぁ…げほ。ーーー私の邪魔はさせない。…実験せねばならない事は多い。まだ、終われないのだ!」

 

 フォリーは咳き込みながらアビスに迫る。アビスが迎撃すべく音叉の杖を構えた瞬間ーーーーーーーーー

 

「おらぁッ!!」

「…ぐほぉっ?!」

 

ーーーーーーー食堂に飛び込んできた黒いレザースーツの男に飛び蹴りされ、脆くなっていた食堂の壁をぶち抜いて外に再び蹴り出された。

 

「…バサラさん!!」

 

アビスが隣に降り立った男に声をかける。

 

「来て大丈夫なんですか?」

「ああ。…どっか行ってたネオとニュウに連絡が取れた。んで、ハレルヤにフェムトは任せてきた。…他の奴らも、もう決着の頃だろ。」

 

そうバサラはアビスに向かって言う。

 

……彼の言う通り、戦いは終わりへと近づき始めていたーーーーーー

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 純白の髪が、翠色の閃光を引いてクシミタマに迫る。

 

「はっ!」

「…!!」

 

 羽の様に軽やかに振るわれるのは、大天使ガブリエルの剣を模したカノンの武器。

 

 それがクシミタマの刺股とぶつかって火花を散らす。

 

「……まだまだ。」

 

 カノンは更に剣を変形ーーーーーー同じく大天使ラファエルの槍を生成し、突きを放つ。

 

「……武器が変わるか?!」

 

 それを捌きながら、クシミタマは呟く。…カノンの攻撃は終わらない。槍を真っ直ぐに突き出し、それが避けられたと見るや、前に大胆に踏み込み、槍の石突をクシミタマの顎目掛けて跳ね上げる様に振るう。

 

 彼女の攻撃に迷いは無い。…ソレはきっと彼女が生まれながらに戦える様、教えられて来たからか………

 

「…敵に回ると厄介な者を、グローリーは生んでしまったな…。」

 

 跳ね上がった石突を手で受け止め、クシミタマは小さく呟いた。

 

 逃げられない様、槍を手でしっかりと捕らえ、刺股を彼女の心臓目掛けて突き刺すが、カノンは槍から手を離して飛び上がる事でソレを回避、クシミタマの手に残った槍は一旦形を失って無数の破片となり、流れる様にカノンの手に戻り剣の形を取る。

 

ソレを見たクシミタマは小さく息を吐いた。

 

「…手慣れたものだ。ーーーーーー此処は少々手狭だな。河岸を変えよう。」

 

そう言った彼は、刺股を天井に掲げる。

 

ーーー刺股の先端に雷が生まれ、ソレが収縮して天井目掛け迸った。

 

 

ーーーーーーーーードゴーーーーンッッ!!!

 

 

「………わっ?!」

 

 刺股から発生した雷が天井を貫いて、屋根を広く吹き飛ばす。大小様々な屋根の破片がカノンの前に降り注いだ。

 

「…なんて事を……屋敷がめちゃくちゃになっちゃうよ…。」

 

 そうぼやくカノン。……立ち込めた煙と埃が晴れた時、屋敷の屋根には大きな穴が空いていた。

 

…何事にも動じない満月が、屋根に空いた穴から月光を部屋の中に投げ掛ける。

 そして穴の縁に、カノンを見下ろす様にして月を背にしたクシミタマが立っていた。

 

「…屋根の上で戦う気?」

「…戦う場所ぐらいは選ばせて貰おうか。」

「…そう。」

 

カノンが飛び上がって、彼の反対側に降り立つ。

 

……月光が屋根の上の両者を照らす。屋敷の近くの家々に灯りが点き始めている。…戦闘の音で眠っていた住人が起き始めたのだろう。

 

ソレを見たクシミタマが、小さく呟いた。

 

「…やがて、人の目が多くなる……もう時間がないな。」

「……なら、帰ってくれる?」

「…いや、ギリギリまで粘らせて貰う。」

 

 会話はソレで終了だった。ーーーーーーーー次の瞬間、両者の剣と刺股が激突し、火花が辺りに何個も散る。

 

 屋根の端から端まで、一気に剣戟を繰り返しながら移動する2人。…端まで行った所で攻守が入れ替わり、また反対側の屋根の端まで剣戟が繰り返される。

 

「…疾ッ!!」

「…ん!」

 

ーーーーーーガキィーーーンッ!!

 

 雷を纏った刺股と翠色に煌めく剣が交差し、屋根の瓦がひび割れ、破片が舞う。

 

…力は拮抗ーーーーーーーーーならば………

 

「……パワーフィールド。」

 

 カノンがそう呟いて、自分の力を解放した。…彼女の周りに不可視の領域が展開される。

 

…パワーフィールド。ーーー展開した領域内にいる者の力を高める能力だ。…ソレにより、カノンの力が一気に高まる。

 

「ふっ!」

「くっ?!ーーーーーー力が……。」

 

 刺股が弾かれ、クシミタマが体制を崩す。そこで彼は、素早く彼女から距離を取った。…追撃を恐れてだろう。

 

 だが、カノン相手に距離を取るのも……また悪手なのだ。

 

「……パラージショットガン。」

 

 カノンの手の剣が、純白の翼を模した銃に変化し、無数の弾丸がクシミタマに放たれた。

 

「ッ!!ーーーーーーコレは厳しいな!!」

 

 刺股を高速回転させ、弾丸を叩き落としていくクシミタマ。…だが、この攻撃は囮でしかなかった。防ぎ切った後、彼が顔をカノンの方に向けた時には、既に彼女はそこに居らずーーーーーーーーー

 

「…!!ーーーーーーー居な……。」

 

フワリーーー…頭上に純白の影が舞う。

 

「ーーーーーーーーーしまった!?」

 

 クシミタマが見上げた時には、カノンは行動を終えていた。……構えた純白の銃に翡翠の光が宿る。

 

「……ホワイトフェザーバースト。」

 

 

ドキューーーーーーンッッッ!!

 

 

 銃口から放たれた一撃が屋根の一部を抉って、クシミタマを吹き飛ばしたーーーーーーーーー…

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ーーーソコに並べってんだろォ!?…さっさとしやがれ!!」

 

ーーーーーーーーー《乱気弾》!!

 

 荒ぶる叫びと共に、アラミタマは焼きごてを振るい、青い炎の球を乱れ打ちしていく。

 

「…!!アンタは退いてて!ーーーキラリに話があるんだからぁ!!」

 

 アミダがそう叫んで、〈セラムキューブ〉を展開ーーーーーそれを拳銃に変えて、乱気弾目掛けて弾丸を放つ。

 青い炎の球と、放たれたレーザー染みた弾丸が次々とぶつかり爆発。

 

 4階の廊下の壁が広範囲にわたって吹き飛び、随分と解放的な空間になった。

 

「…長話などして貰っちゃあ困るんだよ!!コッチとしてはなぁ!!」

 

 叫び返したアラミタマが空中に印を押す様に焼きごてを翳すと、目玉の様な丸い模様が付いた逆三角形が空中に現れ、ソコから仄暗い蒼色の極大レーザーが放たれた。

 

「ッ!!」

 

足元に迫るソレを飛び退って避けるアミダ。……だが、レーザーは床に当たると微かな閃光と共に、()()。ーーー天井に向かって伸び、天井に当たると、また天井から反射してアミダの上に降り注ぐ。

 

「…反射レーザー!?」

 

 アミダが顔を顰めたその瞬間、光の奔流に彼女は呑み込まれる。

 

「…!アミダ様…?!」

「アミダちゃん!?」

 

 シャイターンとサクアがアミダに近付こうとするが、乱気弾に阻まれた。……2人の体に気弾の蒼炎が絡み付く。

 

「痛ッ!?ーーーーーーーーーえ?…何これッ!?」

「…???」

 

 2人の顔に、アラミタマの焼きごてに付いている刻印と同じモノが浮かび上がった。

 

「……さぁ。踊れ!!俺の印が命ずるままに!!」

 

 2人の体が蒼炎に包まれ、意志に反して動き出す。

 

「…2人とも?!」

 

レーザーを剣で切り裂いて凌いだアミダが、心配そうに声を掛けた時、唐突に2人が彼女に飛び掛かった。

 

「え!嘘ッ!!」

 

「申し訳ありません!!ーーーどうやら…」

「…身体が勝手に動いてるんだよ!!」

「…えええっ!!??」

 

 チェーンソーと、サクアの鋭い獣の爪がアミダに迫る。…剣で受けるアミダ。ソレを横目に、アラミタマが近くで震えるキラリに声を掛ける。

 

「キラリ。…新人類部隊として他の新人類と戦うって事は、こう言う事だ。…もしかしたから、肉親や…旧友と戦わなきゃならねぇ時もある。ーーーお前は覚悟したんじゃ無いのか??」

「………で、でも私…私は……ーーー」

 

アラミタマはため息をついた。

 

「…はぁ。面倒だな…情ってものは。俺みたいに、湧く相手が居なけりゃ楽になれるかも知れないのに。」

「………。」

「まぁ良いや。今のお前は戦力になりそうに無いし、じゃあーーーーー」

「ーーーーーー!!!」

 

 アラミタマが焼きごてをスッと構えた所で、廊下から新たな影が2つ…飛び出して来た。

 

「行くぞ!姫!!」

「分かっています!!王!!」

 

…アルスラーンと、ハクビだ。

 

「あぁ?!ーーーーーーマジか!?」

 

ーーーーーーガキィーーーンッ!!

 

 アラミタマが翳した焼きごてと、アルスラーンの真紅の大剣がぶつかり、火花が散る。

 

「…来やがったな、アルスラーンッッッ!!」

 

そう叫んだアラミタマの顔に、横から脚が飛んで来た。

 

「ーーーーーーあたしも忘れるな!!」

「ぐはっ!?」

 

…2人目ーーーハクビの足に顔面を蹴り飛ばされたアラミタマが瓦礫塗れの廊下を転がる。

 

「痛ッてぇ!?……あ〜…面倒臭ぇーーー纏めて吹っ飛べ!!」

 

 アラミタマの叫びと共に、無数の乱気弾と反射レーザーが同時に2人に向けて放たれる。…ただ、完全に後ろのキラリを巻き込む軌道だが……。

 

「……仲間を巻き添えにするのか?!」

 

 アルスラーンがそう驚愕して、迫るレーザーを大剣で横に弾いた。ズキュンッッと音を立ててレーザーが弾かれ、廊下の壁に当たると、キラリの方へ飛んで行く。

 

「……反射レーザーだったかッ!!」

「ひっ!?」

 

 キラリが肩を竦めた。……間に勢い良くアルスラーンが割って入る。そして大剣を一閃し、レーザーを壁の崩れた部分から屋敷の外に向かって弾き飛ばした。…しかし、無理な姿勢で弾いたせいで、剣も一緒に外に飛んで行ってしまう。

 

「ーーーーーー頑張るなぁ。ソイツはお前らの敵だぜ?何故庇う???」

 

 アラミタマが若干呆れた様に口を開いた。…そんな彼に、ハクビが戦いながら語る。

 

「あたし達の王は、敵だとか味方だとか、その様な事は気にしないのだ!!護るべき者は必ず護る!!ーーーーーーー今のお前の行いは罪だぞ!!何故、仲間を巻き添えにしようとした!?」

 

「ーーーーーーこの戦いには役立ちそうに無いからさ!!…足引っ張るなら、一旦気絶して貰った方が楽なんだよ!」

 

「なんて事をッ?!」

 

 ハクビとアラミタマは怒鳴り合いながら、廊下で激突する。……ハクビが自らの〈セラムキューブ〉から創り出した長い棒の様な武器を、彼に振り下ろし、アラミタマが焼きごてでソレを受け、甲高い音が鳴り響く。

 

 キラリはただ床に黙って座り込み、その戦いを見詰めていた。ーーーアルスラーンが、その戦いに加勢する。

 

「…剣無くしたんだろ?!大人しくしてろよライオンの女王様ぁ!!!…その方が俺が楽だ!!」

 

 アラミタマが乱気弾をアルスラーンに放つが、アルスラーンは全てを避けて手を翳した。

 

「…()を失えば、ライオンは戦えないのか?ーーー違うな。」

 

 バシュンッと音を立て、アルスラーンの隣に明るい赫色の光が生まれた。ソレはアルスラーンの姿形をとると、アラミタマに突撃する。

 

「チッ!!…分身か!?」

 

…ただの分身では無い。彼女の〈セラムキューブ〉が変化して生まれた物であり、ソレそのものに実体と質量が存在している。……周りの瓦礫を吹き飛ばして弾丸の様に加速した分身が、アラミタマに迫った。

 

…その加速と威力たるや、もはや《分身弾》と言っても良いだろう。

 

 

ーーーーーーーーーバキッ!!!

 

 

 焼きごてで防ごうとしたアラミタマだが、構えた焼きごてをハクビの棒で上に弾かれ、懐がガラ空きになる。

 

「……あぁッ!!くっそォ!!」

 

 彼が悪態をついた瞬間、赫く輝く一筋の弾丸となったアルスラーンの分身が彼の鳩尾を抉り、彼を裏庭まで吹き飛ばしたーーーーーーーーー

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

……遠くから、剣戟の音が聞こえる。

 

 

 戦いが始まった頃ハレルヤは、フェムトを連れて屋敷から離れていた。

 

 石畳みの道をフェムトを連れて急ぎながら、ハレルヤは目指す場所へと足を進める。

 

……2人の目指す場所は〈オーステルン〉。万が一の事も考えると、そこが一番良いとハレルヤは考えたのだ。

 

「ハレルヤ…さん。」

 

手を引かれるフェムトが、彼に話しかけた。

 

「…?どうしたんだ?フェムトくん。」

「何で、僕達はこんな目に遭わなきゃならないんですか???」

 

「ーーーーーー!!」

 

 その問いかけに、ハレルヤは目を見開いた。彼は月明かりの下で声を震わせながら、ボソボソと呟く。

 

「……新人類として’『力』を持って産まれた…。ただ、それだけで、どうしてこんな目に遭わなきゃならないんだ。ーーー違う生き物の様に隔離され、使えるとか使えないとか、道具みたいに見られて…ッ。」

「………。」

「……別にこの力を悪い事の為に使おうとか、考えてるわけじゃ無いのにッ。…誰かに逆らおうとか、考えてるわけじゃ無いのにッ!むしろ、この力が誰かの助けになれば良いのにとか、そう思ってるぐらいなのに!!…それなのに罪人であるかの様に扱われて、自由を奪われて……。そうやって生きてかなきゃならないなんて、おかしいよッッッ!!!」

 

 フェムトの叫びに呼応して、彼のセラムキューブが輝き出す。ーーーハレルヤが彼の肩をそっと掴んだ。

 

「…落ち着くんだフェムトくん。……俺もそんな世界、おかしいと思ってる……。」

 

 そう言うハレルヤの視界に、夜空を横切る青い流れ星の様な光が見えた。……ソレは真っ直ぐアステール支部の屋敷に向かって飛んでいる。

 

「…でも、そんな世界を変える為に戦える人達もいる。ーーー昔、俺が出来なかった事を少しずつでも、やり遂げようとする人達が。………明けない夜は無いんだよ。フェムトくん。ーーーーーー俺は今でも、そう信じてる。…そう、信じたいじゃん。でないと………。」

 

「………?」

 

 ハレルヤの見る先で、青い流星が一際大きく瞬いた。

 

 

◇◆◇

 

 

 

「ぬうっ…!」

「くっ…。」

「だぁっ!?痛えッ!!」

 

 フォリー、クシミタマ、アラミタマの3人は裏庭にそれぞれ別々の場所から、吹き飛ばされて追い詰められた。

 

…1階からアビスとバサラ、4階の廊下からアルスラーン達が飛び降りてくる。屋根の上からはカノンがフワリと舞い降りて3人の前に立った。

 

 横には、アミダが戦意を失ったキラリを抱きしめる様に立ち、隣でハクビが、アラミタマに操られていたシャイターンとサクアを両脇に抱えて此方を見下ろしている。

 

「…ゲホッ……チッ。やっぱり面倒な事になったじゃねぇか。フォリーの馬鹿がよぉ。ーーーあー、帰りてぇ。」

 

……随分と荒々しい口調になったアラミタマが、そう呟く。…分身弾鳩尾直撃はかなり効いたのか、顔の汗が凄い事になっているが。

 

「……口が過ぎるぞアラミタマくん。」

 

そう返したフォリーも、白衣がぼろぼろだった。

 

バサラが一歩、前に出て口を開く。

 

「……終いだな。連邦軍。ーーーコッチにはアンタらを生かして返す理由はねぇが、このまま帰るのなら、追う気は無い。フェムトの事は諦めろ。ーーーーーー丁度、居なかった奴も来たしな。」

 

「…む?」

 

 フォリーが上を見上げると、ちょうど()()()()が此方に飛んで来た所だった。

 

ーーーソレは地面スレスレで急減速。…青い光がパッと弾けて消え、光に包まれていた二つの人影を露わにする。

 

 

「ごめん、お待たせ。」

「ーーーようやく来たか。どこ行ってたんだよマジ。」

「…ちょっと遠くまで。」

「…………うぷ。おれ、生きてる…?」

 

 〈スピードモード〉を解除して涼しい顔を浮かべるネオと、彼女の肩から崩れる様に離れるニュウ。…高高度を超高速で移動すると言う初体験の所為か、産まれたての子鹿みたいに震えていた。

 

ソレを見たフォリーの目が揺らぐ。

 

(……ネオ!!ーーー居ないと思ったが、別の場所にいたか!……コレはダメだな。…というか、隣の男どっかで見た気がーーーーーーいや、ソレは後だ!!先ずはーーーーーーーーー)

 

 心の中で、次の算段を決めたフォリーは口を開いた。………ポケットの中で、通信機のスイッチを入れるのは忘れない。

 

「ーーーーーーフェムトを何処かに逃してるらしいな?もう屋敷を離れた頃か。」

「…!」

 

片眉を上げるバサラに、フォリーは話しを続ける。

 

「気付かないとでも?…フェムトくんには発信機が仕込んであるからな。…〈オーステルン〉に行くつもりらしいが、ソレはさせない…!」

「…だが、今のお前らに出来る事なんてーーーーーー」

「ソレが有るんだなぁッ!!!」

 

 バサラの声に被せる様に、フォリーは叫ぶ……夜空に向かって。

 

 

「来い!!ーーーーー()()()ッ!!」

 

 

ーーーーーーーーー次の瞬間、屋敷の上空に爆音と共に、屋敷全体を覆い隠して尚余り有る巨大な真紅の影が、上空より飛び込んで来た。

 

「……!!何これ?!」

「なっ!?」

「…大きい。」

「ーーーーーーーーー!!何だありゃ!?ロボット!?」

 

…驚愕するイースターの面々。……アミダに抱き抱えられているキラリが、小さく呟く。

 

「…〈エール・ソレイユ〉。」

 

 その呟きが聞こえたわけでは無いだろうが、フォリーが両手を広げて唖然とする〈イースター〉の面々に叫んだ。

 

「コレが私の虎の子の一手だよ、アビス!!……紹介しよう!!…私の作った汎用人型機動兵器ーーーーーーー〈エール・ソレイユ〉だ!!」

 

 自慢げなフォリーの説明の後、エール・ソレイユの後頭部がガコンと開いた。

 そして、中のコックピットが剥き出しになる。…そこには1人の青いナース服を着た女性が座って居て、此方を見下ろして手を振ってきた。

 

 

「ーーーーー博士〜私の紹介も忘れないで欲しいデース。」

 

 

フォリーの顔が一気に面倒臭さそうになる。

 

「あぁ。…一応紹介しておこう、助手のアムール・ソワンだ。…以上。」

「…もっとちゃんと紹介して下さい〜。」

 

コックピットの女性…アムール・ソワンの頬が膨れた。

 

「…そんな事は今は良いだろう!?ーーーーーー行くぞ、ソワン!!…フェムトくんの元へ!!」

 

 そう言って、フォリーはエール・ソレイユの腕に乗り、コックピットへ向かう。アラミタマとクシミタマも後に続いた。…キラリは一瞬躊躇ったが、アミダに手を握られて踏み留まる。

 

「……あっ!!」

「…待てッ!!」

 

 バサラが止めようとするが、エール・ソレイユの方が一足早く飛び立った。

 

「くっそ…!?」

 

 吹き付けるジェットエンジンの凄まじい風圧で、バサラ達は立ち往生を余儀無くされる。

 

…夜空に、赤い機体が轟ッと舞ったーーーーーーーーー

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「…フェムトはアッチデスね。」

 

 コックピットの中で、ソワンがエール・ソレイユを動かして行く。眼下に映る六芒星の街並みを見下ろしながら、フォリーは口を開いた。

 

「全く…コレは脱出に使いたかったのだがな。…念の為『夜の森』に隠しておいて正解だった。」

 

…『夜の森』とは、〈アステール〉を取り囲む3つの森の内、霧の森の丁度反対側に位置する森の事である。

 

ーーーかつて、新人類優勢思想が拠点として居た大きな廃墟が多く残っている『夜の森』は、エール・ソレイユの大きな機体を隠すのにはうってつけだったのだ。

 

「…あそこは沢山廃墟があって隠れやすかったデスね。……そう言えば、さっき飛び立つ時に隣の『星の森』からナニかの光が見えたんデスけど、何だったんでしょうカ?」

「星の森から?知らんな。…君の気のせいだろう。」

「…デスよね。」

 

…ソレでその話は終わった。

 

「ーーーーーーーところで、ソワン。…ちゃんとステルス機能オンになっているだろうな?…〈オーステルン〉や〈アステール〉の自動迎撃システムに狙われたらフェムトくんの元に行けないぞ?」

 

 フォリーはふと、思い立った様にソワンに尋ねた。もう、街の人達にこの機体は見られているだろうが、人力で迎撃システムを動かすのには、どうしてもタイムラグが生まれる。…警戒すべきは自動迎撃システムなのだが、コレはステルス機能をフルに使えば、無力化出来る。

 

…むしろ、ステルス機能が無いと住宅地スレスレまで接近してフェムトを捕らえるのが困難になるのだがーーーーーーーーー……

 

 

「え?」

 

 

……帰って来たのは、ソワンの気の抜けた声だった。

 

「…は?」

「…コレはーーー」

「ーーーうん。やってねぇな。その顔は。」

 

3人が顔を見合わせた瞬間………

 

 

ヒュン…ヒュン…ヒュン…ヒュン…ヒュン………

 

 

 アステールの郊外から、無数の閃光の尾を引いてミサイルが飛んで来た。ーーーーーーーーーアステールの対壊獣用自動迎撃システムが、エール・ソレイユをターゲットにして、砲撃を開始したのである。

 

 

「馬鹿なのかソワンーーーーーーッッッ!?」

「ごめんなさい博士ぇーーーーーッッッ!?」

 

 

 コックピットの中が、一瞬で阿鼻叫喚の場となった。

 

ーーーーーーーシュボボボボボボボボボッッッ!!

 

 続いて郊外に停泊している〈オーステルン〉側からも、白煙を引いて誘導弾が飛んで来る。

 

「完全撤退するぞ!ソワンーーー操縦変われ!!」

「…すみませ〜〜ん?!」

「マジかよッ?フェムトを取り返しに来たのに、目的を果たせず、しかもコッチは1人減って帰る事になんのか?!」

「……キラリは離反したのか。アラミタマ?」

「あぁ、知り合いと戦えんとか何とか言ってなぁ!!ーーーーーー何笑ってんだよ、クシミタマ…もしかして、喜んでるのか???」

「………いや、何でも無いさ。」

「キラリくんはもう良い。……元々終了措置を取られるところを、あのアンソニーがゾルゲ氏に頼み込んで新人類部隊に入れたらしいからな。代わりは幾らでも居よう。ーーーともかく、先ずは〈アステール〉から離れるぞ!!空の藻屑には成りたか無いだろ?!」

「ええ、そうですね。」

「取り敢えず帰らせてくれるなら、何でも良いよッ!」

 

 

……4人の乗るエール・ソレイユは、無数のミサイルに追い立てられる様に、〈アステール〉から飛び去って行った………。

 

 





…キラリ関係の話はもうちょっと深掘りするかも。(するとは言ってない。)(いつするとも言ってない。)

あと、汎用人型機動兵器とかいうエヴァとガンダムがフュージョン失敗したみたいな名前よ…書いてて笑っちまったね。

取り敢えず、次回後片付けして〜第1節 脱走者編 〜は終了です。

また次回。
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