モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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新章じゃあーーー!




33話 〈『テレケー』〉

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

10月 20日

 

移動要塞都市ーーー〈ネオ・タラスク〉

 

 

 連邦加盟都市である〈ネオ・タラスク〉に存在する連邦軍事施設にて、この日〈会議〉が開かれていた。

 

 

 

『……うむ。全員揃った様じゃな。』

 

…大きな会議室の中に、しゃがれた声が響く。

 

 声の主は、部屋に設置されているモニターに映り込んでいる男ーーーDr.ゾルゲだ。

 

『……では、コレより始めるとしよう。ーーー宜しいか?バタフライ閣下。』

 

 ゾルゲの声に、モニターに向かい合う様にして、優雅に椅子に腰掛けている蒼髪の女性が頷いた。

 

「もちろん。ーーー誰かさんを呼ぶのに手間取ったんだから、早く始めて頂戴。」

…その『誰かさん』事、ドクトゥール・フォリーはそっぽを向いて知らん顔をしている。

 

『…うむ。では早速。』

 

ゾルゲはモニターの向こうで咳払いした。

 

『…今回の議題だが、まず〈連邦軍新人類部隊〉についての話じゃ。』

 

『ーーーーーーー今、お主達も知っての通り、連邦には試練の時が訪れておる。……分かるな?支配力の低下じゃよ、低下。新人類に対する政策や、実験等を巡り内外で混乱が起きておる。…〈ブリタニア〉ではやや不穏な動きも起きている様じゃ。』

「不穏とは?」

 

…口を挟んだのは蒼髪の女ーーークイーンバタフライ。

 

『…アソコは王たる『アーサー』含め、元々新人類抑圧反対派じゃった。…あの都市ごと、儂等に反旗を翻すかも知れん。』

「…別に良いじゃない。反旗を翻したのなら、その旗を折るだけよ。」

 

…彼女の言葉に、Dr.アビドが横から口を挟んだ。

 

「…お言葉ですが閣下。ーーー連邦軍の力は弱まっています。虎の子の新人類部隊も、今では加入条件を満たす者が少なくなり実力が頭打ちとなっております故。」

 

…此処でフォリーが話に加わった。

 

「ーーーだから言ったのだろう?ゾルゲ氏!?…今は質より量だと!…兵力が少ない時に、どうして加入条件を引き上げた??」

『…だからと言って、フェムトの様な明らかに使えない者を加入させるのはどうかと思うぞフォリー?お前は何時もそうやってーーー……』

 

ーーー脱線しかけた話をアビドが戻す。

 

「…ともかく!ーーー連邦には、更なる力が必要じゃ。……ワシは此処で、そろそろ〈新人類の覚醒〉についての実験を始める事を提言するのじゃが、どうかな?」

 

…その時、ゾルゲとフォリーがアビドの方を同時に振り向いた。(ゾルゲはモニター越しにだが。)

 

『……覚醒か。ふむ…。』

「やめておけ。アビド氏。」

 

 ゾルゲは何やら考え始めた様だが、フォリーがそれを止めた。

 

「どうせ、覚醒した新人類を軍隊に引き入れて戦力アップを図っているのだろうが……覚醒だけはやめておけ。やるなら終了措置行使前提の実験のみだ。」

アビドが首を傾げる。

「何故だフォリー殿?」

クイーンバタフライも横から口を挟んだ。

「ーーーどうしてかしら?フォリー?力を得る事は連邦にとって良き事よ?《総帥》殿もそう仰っているわ。」

 

フォリーは指を振る。

 

「……分からない様なら説明しよう。私の仮説から行けば、新人類には4つのタイプがある。」

…彼は説明を続ける。

「ーーー1つは、旧人類が〈星のセラム〉に触れ適応進化し、新人類となった者。…2つ目は生まれながらにして、新人類だった者。3つ目はその中でも、特に強い能力を持つ『完成された新人類』である者…今の所、あのネオ以外に確認はされていない。」

「……………。」

「ーーーーーーーーーそして、最後が『覚醒した新人類』だ。…コレは先天的ではなく、後天的になるものだと私は考えている。…仮説頼みの話となるが、もし新人類が覚醒した場合、その実力は我々ではコントロール出来ないモノとなるだろう。…連邦は、覚醒した新人類を上手く操れるのか?反乱を起こされれば、鎮圧はほぼ不可能なんだぞ?ーーー支配者と被支配者の関係と、実際の力関係が真逆である……それに覚醒新人類が気付けば、反抗など容易だろう。」

 

 フォリーはクイーンバタフライの方に顔を向けた。

 

「…バタフライ閣下。総帥にも、伝えて貰いたい。ーーー連邦の永きの栄光を祈るなら、新人類を覚醒させる様な事はやめてほしい…と。」

 

…静まり返った会議室に、フォリーの声が響く。

 

「……覚醒すれば、新人類はーーー神の領域へ、間違いなく至るのだから。」

 

 

 

 

『……うむ。それに関してはコイツの言う通りかも知れないのぉ。』

 

ーーーーーーゾルゲの声が、静寂をかき消した。

 

『力だけを求めれば、人の手では扱いきれぬ代物を産んでしまうかもしれん。…見えている地雷なら、踏まぬ方が賢明か。』

 

 一方のクイーンバタフライは顎に指を触れさせながら、思案していた様だが、やがて頷いた。

 

「…ん。ま、私は研究員じゃ無いし…難しい事は知らないけれど、本職の人が言うならそうなのでしょうね。ーーー総帥にそう言っておくわ。」

 

ーーーーーーーーーさて、…とクイーンバタフライは手を軽く打ち鳴らして、議題を変えた。

 

「この話は此処まで。ーーー次の話に移りましょう。」

『うむ。ーーー次は研究の予算だがーーーーーーーーー……』

「それに関してーーーー…」

「ーーー……」

「…」

 

…会議はまだ続く………

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

10月 20日 星屑の街〈アステール〉

 

 

……穏やかな午後の太陽の光が、街に広く遍く満ちている。

 

「アルスラーン、コレどうだ?…小物入れにしちゃあ、結構入るぞ?」

「……ふむ、悪く無いな。…材質も丈夫だし。」

「バサラさん!皿ってこれぐらい有ればいいですかね?」

「ん?おお…良いぞ、充分だニュウ。台所は戦場にならなかったからな。」

「ーーーーこのカーテン綺麗だと思う。」

「本当ですね。買います?ネオさん。」

 

ーーーーーーニュウ、ネオ、そしてバサラとアルスラーンは、アステールの繁華街へ買い物に繰り出していた。

 

 目的は、早朝の戦闘で傷付いたり、壊れたりしてしまった4階の家具類を補充することである。

 

…近隣住民の超協力突貫工事で、4階の復旧はほぼ終わりかけているが、内装に関しては新しく作った所は手付かずになっている。…なので、とりあえず内装として使えそうな物を探しに来たのだ。(ちな、他のメンバーは復旧作業の手伝い中。)

 

既にかなりの物を手に入れたがーーー……

 

「あとはアレだ。食堂のシャンデリアと食卓だな。…シャンデリアは無くとも良いが、机が無ければ話にならん。」

「だか、あの食堂に見合う大きさの食卓があるか…?」

「分からぬ。…だからこうして探しているのだよバサラ。」

 

 食堂の修復について、話し込んでいる2人の隣で、ニュウはネオと街の店々を見て回っていた。

 

「……やっぱり、人が多いですね。…さすが新人類の街。」

「そうだね。」

「ーーーでも、新人類じゃない、普通の人も居るんですね。…〈オーステルン〉と同じで。」

「…うん。全ての旧人類が、新人類を差別してる訳じゃないから。」

「…誰も何も差別しなけりゃ、有難いんだがな………あ、こんな所に服屋さんありますね。」

「…本当だ。」

 

 ネオは彼の隣を歩きながら、彼の話に答えていく。そんな彼女を見て、ニュウはふと話を変えた。

 

「………そう言えば、よく街に行こうと思いましたね。…信者に見つかると面倒だとか、言ってた割には。」

「……うん。何だか、行こうかなって思って。でも、なんで私を呼んだの?」

 

…実は、街に行こうと彼女に声を掛けたのは、ニュウだった。……ネオ的には、なぜ自分なのかよく分からなかったし、何なら、何故自分が首を縦に振ったかも理解していなかった。

 

「ーーーえーっと、アミダさんはキラリさんと一緒に話してて、邪魔したら悪いかなって思って…で、ハレルヤさん、カノンさん、アビスさんは4階修理の手伝いしてたし、バサラさんが4人は欲しいって言ってたから、ネオさんにダメ元で声掛けたって感じです。」

 

 まさか、オッケー貰うとは思ってなかったけどねーーーとニュウは小さく笑って、肩をすくめる。

 

「ま、4人いて良かったですよ。荷物結構あるし。」

 

 そう言って、彼は手に持った袋たちを揺らす。…同じ物はネオの両手にもあった。

…寧ろ、ニュウより多く持っている。それでいて、彼女は涼しい顔を浮かべているのだ。

 

「…重く無いです?ソレ。俺の倍は持ってる気が……。」

「ううん。全然。…何なら、貴方のも持ってあげようか?」

「…それしたら、俺の立つ瀬が無くなるので大丈夫です。」

「そう。」

 

 そんな会話をしながら歩いていると、遂にニュウが密かに楽しみにしていて、ネオが恐れていた(?)事態が、起きる事になった。

 

「ああーーーーーッ!!!ネ、ネ、ネオ様ッ!?」

 

人混みをつんざく声。

 

「あ。」

ネオの顔が一気に困り果てた顔になった。

(…来たか、信者。…ネオさんには悪いけど、一度見てみたかったんだよ…道端五体投地マンってどんな感じなのか……)

そうニュウは心の中で呟いた。

 

…しかし、事態はニュウの想像を超えていたのだ。

 

「ネオ様ッッッ!!こんな所でお会いするとはッッッ!」

「おお!ネオ様!!」

「うぇっ!?ネオ様ぁ!!」

「ネオ様だと!?…皆のもの!頭が高いぞ!控えおろうッッッ!!」

「「「「…ははーーーーーーッッッ!!!」」」」

 

ーーーズザザザザザザーーーーッッッ!!

 

…あっという間に道端は、全身全霊大地賛美五体投地マンで溢れかえった。…将棋倒しで人が倒れた様にも見えなくはない。

 

(水戸黄門か、ライオンキングのシンバを掲げるシーンかな???)

 

 そんな事を思っているニュウの後ろにネオがサッと隠れる。驚く信者たち。

 

「…神がお隠れになったぞッッッ!」

「天の岩戸に隠れてしまわれたッ!!」

「誰ぞ、歌と踊りをッッッ!!」

「…では、コサックダンス行きます!!」

「私はスイスの伝統民謡を!!」

「神よッ私のもすかうダンスを見よッッッ!!」

「リオのカーニバルで鍛えた踊りが今こそ火を吹く時ッッ!!」

「…俺は天の岩戸じゃねーよ!?あと、多分その踊りのラインナップじゃ、アマテラス出て来ないからッ!?」

 

 本当に目の前で歌って踊り出しそうな信者達に、取り敢えずニュウは突っ込んだ。

 

(コイツら……思ってたよりやべぇ奴らじゃねぇか!?)

 

 まだニュウは知らないのだ。…人は崇めるモノの為なら、何でもするし、何でもやると言うことを………。

 

「このノリが私は苦手なんだよ。……見た今なら、分かってくれるよね?」

 

ニュウのコートの影で、ネオがボソッと呟いた。

 

「…分かり過ぎて辛ぇ……終始こんなノリだったら、やり難いですね…。」

 

 そう返事を返したニュウの元に、信者の1人がやってくる。

 

「ーーーさっきからツッコミが五月蝿いぞ、天の岩戸!!」

「天の岩戸ぉっ!?俺、人として扱われて無い?!」

「天の岩戸じゃ無いのなら、君は誰なんだ???」

「……えっと…俺、ニュウって言います。…〈イースター〉に所属してるネオさんの仲間です、はい。」

「…『様』だ。」

「へ?」

「ネオ『様』を付けろ、無礼者がぁーーーーッッッ!!!」

…急にニュウは怒鳴られた。

「はあーーっ??!!」

「なんか、ごめん。…本っ当ごめん。」

 

彼の背中でネオが何故か謝った。

 

…しかし、そこで救いの手が差し伸べられる。

 

「…やめなさい。ニュウさんとネオ様がお困りじゃ無いですか。」

 

…信者達の中から、1人の男が進み出てきた。

 

ーーー黒いフード付きのコートで身体と顔全体を隠しており、声は取り繕ったかの様に平坦で、感情を感じさせない。…今の言葉も、本心からでは無い様に感じた。

 

 フードの端からチラリと覗いた髪は、老人の様に真っ白。…正直言って、かーなーり胡散臭い。夜道で話しかけて来たら、間違い無く通報するぐらいには胡散臭い。

 

「…え?誰…?」

ネオが、ニュウの後ろから顔を出して誰何した。

男が、頭を恭しく下げて自己紹介する。

 

「ご機嫌麗しゅうネオ様。申し遅れました。ーーーワタクシ、この集まりの(かしら)を努めさせて頂いております、『テレケー』と申します。お見知り置きを。」

「……テレケー…。」

 ネオは繰り返す様に彼の名を呟いた。…そして、ふと何かに気付いたかの様にテレケーに話しかける。

 

「…あれ?半年ぐらい前にここに来た時、私にあの恥ずかしい『私を讃える歌』を歌って聴かせて来たおじさんは?…あの人がリーダーだった気がするんだけど。」

 

 それを聞くと、最初にニュウに怒鳴りつけて来た信者が、本当に急に泣き出した。

 

「…おお!ネオ様!!あの者とあの歌を、覚えて下さっていたのですかッ!?ありがたや、ありがたや!!…これであの者も浮かばれましょう!!うおおおんっ(泣)!!!」

「…オッサン、情緒不安定かよ。」

「黙っとれい!NEW(ねぅ)とやら!!」

「ニュウです!」

「さっきから五月蝿い!今はお前と話しておらん!」

リー夫人(理不尽)ッッッ?!」

 

ネオが首を傾げる。

 

「……ん?浮かばれる?ーーーあの人、亡くなったの?」

その問いに、信者の男は頷いた。

「ええ。少し前に、風邪を拗らせて…もうお年ですから、仕方の無い事ですが。」

「…そうだったんだ。ーーーーーその……ご愁傷様。」

「うおおおおッッッ!!なんて有難い御言葉ッッッ!!…天の園にて、彼も喜びに満たされている事でしょうッッッ!!!(号泣)」

 

 そのまま、信者は泣きながらフェードアウトしていった。…暫くは泣き止まないだろう。…周りの信者達も、何故か泣いている。

 

代わりにテレケーが、話を引き継いだ。

 

「私は最近この集まりに参加しましてね。…新参者ですが、かつてのリーダーの方に懇意にして貰いまして、彼が亡くなった後に後釜として色々とやらせて貰ってるのですよ。例えば…」

 

 そう言って、彼は懐から幾つかのキーホルダーらしき物を取り出して来た。じゃら…と金属がぶつかり合う音がする。

 

「ーーーワタクシの作った物の一つ…ネオ様のアクリルキーホルダーです。ニュウさん、お1つ770円(税込)ですが如何です??…送料は全国一律500円…但し6000円以上お買い上げなら送料無料ですよ。」

「…え、あ、いや、結構です。」

「おお。そうですか、なら構いません。失礼ましたね。」

「…なんと!!これらの素晴らしさが分からんと申すかッッッ!?私はグッズに50万は捧げたんだぞ!?」

 

 横から、フェードアウトした筈の信者が唐突に戻って来てそう叫んだ。

 

「…重課金じゃねぇかオッサン。…いや、自分達が作った物を自分達で買っても、金が同じ所を回るだけなんじゃ…?」

「……君の様な活きのいい牡蠣はフライですよ。」

不意にテレケーが呟いて、ニュウは目を丸くした。

「へ?」

「コホン。ーーーーーーーーーいえ、何でも。」

「…あっ、そう。」

 

…取り敢えず、この人達に囲まれていてはコッチまで変になって来そうだと感じたニュウは、ネオを連れてこの場からサッサと立ち去る事にした。

 

「…取り敢えず…失礼して良いですか?…買い物あるんで。」

「あ、うんうん。…私、急いでるから。」

 

素早くニュウの意を汲んだネオが、高速で頷く。

 

「おぉ、それはそれは。…話は聞いておりますよ。支部が襲撃に遭ったとか。…大変でしょう。ーーー信者が引き止めて、申し訳ありません。…どうぞ先に。」

 

 意外とテレケーは話のわかる人なのかも知れない。案外あっさりと道を譲ってくれた。

 

 他の信者達はまだ何か言いたそうだったが、頭であるテレケーが道を譲ったので、それに倣う。

 

「ん。ありがとう。ーーーじゃ、さよなら。」

 

 ネオがスッと先立って歩き始める。…ニュウも後に続いた。

 

「………………。」

 

……去っていくネオの姿を、テレケーはジッと刺す様な視線で見つめていた。…やがて、彼の口元に誰にも気付かれる事の無い笑みが浮かぶ。

 あたかも、長年探し求めていた獲物を見つけた時の様な……粘ついた微笑みがーーーーーーーーー……

 

 

 

 





今回は話がほぼ進んで無い希ガス。

テレケー…一体誰なんだ(棒)

あと、ニュウくん日本知らない筈なのに天の岩戸伝説知ってたり、水戸黄門知ってたりするのは、メタ的なネタだと思って下さい。

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