ーーーーーーーーー獣の数は幾千にもおよぶ。
◇◆◇
………身体が星に満たされている。
無限の暗黒の彼方で、煌めく数多の星々に。ーーーーーーーーーでも、暖かく無い……やけに冷たい。
ーーーコレは偽りの星だ。…本物の星じゃ無い。本物の星はもっと暖かい。……熱を持ち、生きている。
………でもコレはーーーーーーコレは、冷えて…死んでいる。
『…死を恐れないでください?…貴方は生まれ変われるのですから。』
耳元で…或いはあちこちから、囁く様な声が聞こえる。耳朶に絡み付き、離れない囁き声。
(ケテル………!)
ネオは、目を開こうとした。ーーーしかし、瞳が開かない。身体も動かない。
ーーーただ、辺りが星で満たされているのを感じる。
そして、その星から偏執にも似た感情が自分の中へ………魂へと流れ込んで来るのをネオは感じた。
(…何が、起きてるの…?)
あちこちから、無数の手が伸びて自分を掴んでいる様な………そんな気がする。そして、また囁き声が聞こえてきた。ーーー自分の魂を、心を、見透かす様に………。
『…貴方は新人類の未来を憂いて無いのですか?ネオ。ーーー全ての新人類は今、旧人類の支配下に置かれ、安寧なき日々を余儀なくされています。ーーー貴方もそうだった。ソレが嫌だから、貴方は連邦から離れたのでしょう?…そして、ソレが正しい選択だったのか、分からずに悩んでいる。ーーー自分だけが自由を手に入れていいのだろうか?他の新人類達は、今もまだ囚われの身であると言うのにーーーとね。』
(……!!)
ネオは口を開こうとした。…が、ソレに被せる様にケテルの声が響き渡った。
『…だから貴方は、自分は連邦に居た方が良いと思っている。そうすれば、連邦が最も求める存在である自分1人の自由と引き換えに、他の新人類を自由に出来ると……。しかし、ネオ。ーーーソレは間違いですよ。貴方が連邦に囚われる必要無く、全ての新人類を自由にする事は出来るのです。』
姿の見えぬケテルの声は続ける。
『…確かに、連邦にとっては〈完全な新人類〉たる貴方さえ手中に納めれば、他の新人類達はどうでも良くなるかも知れません。貴方の交渉次第では、貴方以外の全ての新人類は解放されるでしょう。…しかし、ソレでは意味が有りません。新人類が解放されても、旧人類に根付いた差別の心は、侮蔑は、決して消えず新人類を脅かし続ける。…良いですか?新人類が真の意味で自由になる為には、この星に未だ尚蔓延っている旧人類共を1匹残らず滅ぼす必要があるのです。…消し去るのですよ!奴らの思想が、差別が、この世に何一つとして残らない様にッッ!!』
狂気にも似た感情がネオの魂に直接流れ込んで来る気がして、ネオは動かない筈の身体を縮こまらせた。……ケテルの声が、自分の魂を直接揺さぶっている様な気がする。
『ーーーーーーそうすれば、この星は真の意味で新人類の星となります!!貴方が連邦に囚われる必要など有りません!!連邦を、古き生命を滅ぼしてこそ、新人類の自由は訪れるのです!!旧人類の居ない世界!…ソレこそが、私の目指す《星の世紀》ッ!!神の恩寵を受けた者…〈星の子〉だけが創る新世界なのですッッ!!』
自分の魂に流れ込む狂気に抗うようにネオは心の中で叫んだ。
(…ソレは…それは…正しい世界じゃ無い…!旧人類にだって、差別をしていない人達も居る!ーーー私が望んでいるのは、連邦からの新人類の解放…。旧人類の滅亡じゃない!)
新人類を脅かす連邦など無くなれば良い…とは思っている。でもネオが望むのは、連邦が無くなる事であって、旧人類全ての根絶では無い。
姿なきケテルが、やれやれと言わんばかりに首を振るのを感じた。
『ネオ……貴方には世界の在るべき形が見えていない。コレは私だけの意思では無いのですよ?…コレは神が定めた、世界の総意なのです。ーーーそれでも、首を振りますか?否定しますか?…そうなら、貴方はずっと罪を重ね続ける事になります。…自分1人だけが自由を謳歌して、我等〈新人類〉を、見捨てている……と言う罪をね。』
(………………。)
心が、揺さぶられていく。自分の魂の中にケテルが忍び込んで来る様な…そんな気がしてきた。闇に閉ざされた視界が、更に暗くなって行く………
『良いですか?…貴方の自由と、新人類の自由…この両方を同時に得る為の道は1つだけです。星の支配者の交代…即ち、旧人類を滅ぼし、新人類が頂点に立つ事なのです。……それ以外に、貴方の自由を犠牲にしないやり方は有りませんよ。ネオ?』
ケテルは自分の首を縦に振らせようとして居る。…そうネオは思った。ーーーーーー彼の言葉を否定しなければ、ソレは誤りだと、言い切らねば………。
…しかし、抵抗する事を叫ぶ心に反して、ネオは口を開けなかった。自分が嘗て、夜の森で呟いた本心が頭の中にこだまする。
『ーーーーーーー私は私自身の自由か、皆んなの自由かを天秤にかけて…自分自身の自由を選んでしまったんだ。それで今までの1年を…のうのうと生きてて……』
それは罪であると、ネオは思っていた。…ケテルを拒めば、罪をコレからも重ね続ける事になるのだろうか?…もしも、ケテルの言葉に耳を傾ければ………
ーーーーーーーそこまで思った時、ふとネオの脳裏に、あの夜の話の続きが閃光の様に蘇った。
(………そうだ……私は自由なままで良いって…彼は言ってくれた。…私が自由なまま、誰かを救うやり方もあるって…。)
…ネオが自由なまま、新人類達を自由にする。ーーーーーーーケテルが言っている事と、同じ事だ。……けれども、その為に旧人類を滅ぼすなどと言うやり方は、絶対に間違っている…!
ネオは叫んだ。…心の中に過ぎった
(…違う!!もっと、もっと他のやり方がある筈なんだ!!そんな、分かり合えないから滅ぼしてしまおう…なんてやり方、絶対に間違っている!!!)
そう闇に向かってネオが叫んだ時、今まで何方かと言えば微笑みを浮かべている様な雰囲気だった姿なきケテルが、いきなり怒りに満ちた顔に変わった様な気がした。
…周りを漂う星々が、ケテルの意思に呼応する様に真っ赤に光り輝く。そして、ケテルの感情が最早痛みすら感じる程に激しくネオに流れ込んで来た。
『また
…ケテルの激しい怒りが、ネオを揺さぶる。魂に突き刺さる様な感情の痛みに、ネオは耐えながら口を開いた。
(…分からないよっ!!考えた事もなかった!…でも、彼は…私に希望を少しくれたんだ…!それだけだよ!!)
…ケテルに胸ぐらを掴まれている気がする。魂に響く痛みに顔を歪めるネオの目と鼻の先で、ケテルの声が轟く。
『…!!何が希望なものですか!…現実に対し目を瞑る事が希望だとでも?貴方達〈イースター〉は皆そうだ…!反連邦団体を名乗っておきながら、何もしていないッ!!ーーー昔、連邦によって酷い目にあった奴らが集まって、お互いの傷を舐め合っているだけじゃありませんか!!』
ーーー魂が痛い。……ケテルの感情が、自分を侵食して行くのをネオは感じた。…意識が薄れて行く。やがて、全てが遠のいていきーーーーーー意識が途絶える寸前、ケテルの呟きが耳に入った。
『はぁ…。こんな問答していてもムダですね。ーーー何方にせよ、貴方が此処に居る時点で、私の勝利は決まっているのですから。
(…なか、ま…。ーーーーーーーそっ、か。みんなが私を……)
意識が再び暗闇に閉ざされる時、最後に脳裏に映ったのは、〈イースター〉の仲間達の姿だったーーーーーーーー
◇◆◇
ドゴーーーーーンッッッ!!!!
空に轟く爆発音と、大地を揺さぶる振動。……ブワッと土煙が舞い、偽りの夜空を隠して行く。
「……くそッ!?コイツらーーーーーー不死身なのかッ?!」
バサラの戸惑う様な声が辺りに響いた。
「…斬っても撃っても直ぐに起き上がってくる!!ゾンビみたいで気味が悪いよぉ?!」
アミダの半分泣いている様な声が、ソレに続く。
………アステールの地下…隠されし地下世界にて、〈イースター〉は複数の〈聖者〉と交戦していた。
ーーー個々の力はソレ程だが、〈星のセラム〉を吸収し、延々と再生を繰り返し続ける〈聖者〉の物量にやや押され気味である。
「…〈星のセラム〉を呑み込んで…自らの傷を癒していく…!死から生を得る……そんな生命が…存在する筈ないのに…!」
アビスが、理解出来ないと言わんばかりに頭を振る。そんな彼女に向かって、〈聖者〉が剣の様に鋭く変化した爪を伸ばす。
…その爪が彼女を貫く瞬間、バサラが割って入って爪を蹴り上げた。バランスを崩し、ヨロめく〈聖者〉。ソレを回し蹴りで蹴飛ばしながら、バサラが毒づく。
「ーーーーーーーーこんの…壊獣もどきが!!…何度も何度も、起き上がって来やがってよ!!面倒なんだよ、良い加減寝てろ!!」
そうバサラが言った瞬間、頭上からコチラを見下ろしている有翼の〈聖者〉ーーーーーーヴィクターが、まるで彼を窘めるかの様に話し始めた。
「〈壊獣〉…ナドト、品ノ無イ名前デ呼ンデクレルナ。〈イースター〉ノ『バサラ』ヨ。」
「……あ??」
バサラが顔を上げる。彼の見る先で、ヴィクターが両手を広げて言葉を放つ。
「我等ハ〈聖者〉。ーーーケテル様ノ祝福ニヨッテ、神ノ使徒ト魂ヲヒトツニシ、列聖サレシ者。……壊獣呼ビハ、控エテ貰オウカ。」
バサラの顔が益々理解に苦しむ顔になる。
「…いや、訳わかんねーよ!!大体、此処は何なんだ!!お前らは何なんだ!!…お前らと、この地下のトンデモ洞窟と、ネオが…何の関係にあるってんだ?!」
「…全テハ『天聖ケテル』様ガ、神ニナル為。……ソレダケダ。君達がガ知ル必要ハ無イ。」
「ーーーーーーーケテル…だと?」
最後の呟きはニュウのものだ。…彼は思わず戦う手を止めて、空中のヴィクターに向かって問いかける。
「…あの天聖ケテルなのか!?ーーー死んだ筈じゃ無いのか?!一年前……連邦軍と戦って……。」
「ケテル様ガアレシキノ事デ、死ヌ訳ガナカロウ。事実、ケテル様ハ戻ッテオイデニナッタ。ーーー覚醒シ、更ナル祝福ノ力ヲ神カラ得テ……。」
堂々たるヴィクターの答えは、ニュウを強く驚かせるものだった。…勿論、衝撃を受けているのはニュウだけでは無い。他のイースターの面々も、同じ様に驚きの表情を浮かべ、ヴィクターを見上げている。
そんな彼等に、頭上からヴィクターが告げる。
「…今ノオ前達デハ、我等ハ止メレン。ーーー《儀式》ガ終ワルソノ時マデ、此処デ待ッテ居ルガ良イ。…終ワッタ時、恐ラク特等席デ《ソレ》ヲ見ル事ガ出来ルダロウカラナ。」
「儀式……??何のだ…!?」
アルスラーンがそう叫んだ。ーーーヴィクターは答えを返さない。代わりに、周りを取り囲む〈聖者〉達が、口々に声を立てながら、襲い掛かって来た。
「儀式ハ全テノ始マリ。」
「ソシテ、古キ世界ノ終ワリ。」
「…誰ニモ侵セヌ、神聖ナ物。」
呪文を唱える様に、呟きながら迫って来る〈聖者〉達を迎え撃つバサラ達。…再びあちこちで火花と土煙が舞い出す。
「ソノ儀式が終ワル時ーーー」
「ーーーネオハ祝福サレ、神ノ子トナル。」
「…ソノ時、我等ノケテル様ハ神トナリーーー」
ニュウが銃で撃ち倒しても、アミダが剣で首を斬っても、アルスラーンの分身弾が腹を貫いても、〈聖者〉達の歩みは決して止まる事なく、熱に浮かされた様に声を立て続ける。
「…ソシテ、ケテル様ノネオヘノ深イ慈愛ノ心ヲ持ッテーーー」
「ーーー三位一体ハナサレル!!」
アミダが半泣きで剣を振り回しながら叫ぶ。
「ああーもう!!訳分かんないよっ?!…そんなにブツブツ呟きながらコッチ来ないで!!怖いから!本当にっ!!」
その時、半ばヤケクソに彼女が振り回した剣が、偶然にも〈聖者〉の胸を刺し貫いた。
バキッ……!!
「……え?」
何かが、剣先で砕かれた様な音と感触が、彼女の腕に伝わって来る。
「…ガッッ!!?」
そして胸を貫かれた〈聖者〉が、明らかに悶え苦しむ様な声を上げ、地面に倒れて爆散する。…まるで、ノーマンが倒された時の様に……。
カーーーーーンッ…と耳に響く心地良い音が聞こえ、聖者の体は輝くセラムの残滓となって、消え失せた。
…そして、2度と蘇って来ることは無かった…………。
「ーーー!!まさかコイツら…!」
アミダは目の前で爆ぜた〈聖者〉を見て、何かを察したのか、剣を構え直す。そして、自分に襲い掛かって来た別の〈聖者〉の胸を、しっかりと狙いを定めて刺し貫いた。
バキッーーーとまた何かが砕ける様な音がして、〈聖者〉が崩れ落ちる。…胸の傷口から血とは違う、何か赤い色をした破片(花びら??)の様な物が零れ落ち、〈聖者〉の体が十字の閃光と共に爆ぜる。
カーーーーーンッと、ノーマンが爆ぜる時と同じ音が辺りに響く。
「やっぱり…!ーーーーーーーーーコイツら、胸に弱点がある!!…そこを砕けば、普通に倒せるよっ!!」
「お、マジか!それはナイスだぞアミダ!!」
「ーーー助かる。このヒト達の不死身さには辟易してた。」
「…胸ですね!!胸を撃てば良いんですね、アミダさん!?」
確信を得た様なアミダの声に、奮起するバサラ達。そして、バサラが真っ先に前に飛び出すと、勢いよく引き抜いた斬魔刀ヴァジュラで〈聖者〉の胸を貫いた。
ーーーーーーーーーザシュッッッッ!!!
貫かれた衝撃で、地面に叩きつけられる様に倒れる〈聖者〉。それを見て、バサラが一言叫ぶ。
「……やったかッ?」
「あ、ちょ、バサラさん…その言葉は………。」
余りにもフラグ過ぎるセリフを口に出したバサラに、ニュウが口を開いた時、倒れた筈の〈聖者〉がバネ仕掛けの人形の様に跳び上がって、足でバサラの顔面を的確に狙って来た。
「ーーーーーーーは?何で生きて………ぐはっ?!」
モロに顔面に蹴りを受けて吹っ飛ぶバサラ。ニュウが頭を抱えて口を開く。
「…ほらぁ!!やったか?…はフラグですってバサラさん?!」
吹っ飛んだバサラが、勢い良く跳び上がりながら叫んだ。
「ーーーいや、そんなん知るかよ!?……おい、アミダぁ!!胸刺したのにアイツまだピンピンしてんぞッ!?どうなってんだ?!」
バサラが指差す先で、〈聖者〉が元気そうにサムズアップしている。…顔に満面の笑みを浮かべている様な気がした。(目とか口とか無いのに)
(ーーーコレはバサラさん、舐められてるな……。)と、ニュウは心の中で呟く。
「…えぇ、なんで?!さっきは確かに、胸だったのにーーー?!」
アミダも訳が分からずに居る様だ。ーーーその隣で、ハレルヤが呟く。
「もしかしたら、個体ごとに弱点の位置がバラバラなんじゃ……?」
「……はっ!そうなのかも!?」
「……マジかよ?!」
「ーーーーーーーー如何やら、ハレルヤくんの言う通りらしいな。」
そう言うのはアルスラーン。ーーー見ると、彼女の足元で、今まさに1人の〈聖者〉がセラムの残滓となって消えた所だった。
「…私はコイツの肩を斬った。…何かが砕ける感触があったよ。おそらく、弱点だったんだろう。ーーー弱点は胸に必ずしもあるとは限らない様だな。」
そう言って、アルスラーンは手に持った真紅の大剣を地面に突き立てた。
そして、バサラ達に顎で道の先ーーーーーーー草原の奥を指し示す。
「…兎も角、倒し方がある事が分かってよかった。ーーーこれで希望を持って戦える。…キミらは先に行くと良い。此処の〈聖者〉とか言う奴らは、全て私が相手しよう。」
アビスがその隣に立った。
「…私も一緒に戦います。…流石に1人では厳しいでしょうし。」
…手に持つ銀色の巨大な音叉が、清らかな音を鳴らす。
「ーーーーーーそうか…ありがとう。」
彼女が素直に頭を下げる。
…そのやり取りを聞いた上空のヴィクターが、行手を阻む様に漆黒の翼を広げた。
「…先ニ進ムカ〈イースター〉?ーーー残念ダガ、ソレハサセヌ。…儀式ノ邪魔ハーーーーーーー」
そこまで言ったヴィクターの前に、紫色に輝く無数の音叉が投げ槍のように飛んで来た。
「ーーーヌゥッ?!」
ソレらの直撃を受け、大地に叩き落とされるヴィクター。ーーーーーーー音叉の正体は、アビスのセラムキューブが変形した物だ。…ソレが、黒翼の天使を地面に縫いつけて、動きを封じる。
「〈シール・ジ・アビス〉…。ーーーそこで封じられてて下さい。邪魔しているのは、貴方達の方です。」
アビスが音叉の錫杖を構えながら、ヴィクターに向けて口を開いた。
ーーーーーーーーーさらに、音叉を掲げてソレを鳴らす。すると、ニュウ達の周りに薄青い光が宿った。
「……!?これは…。何かの…ステータスバフ??」
光に包み込まれたニュウが、驚いた様に自分の体を見下ろす。ーーー同じ様に光に包まれているバサラが、アビスの方を向いて頷いて見せた。
「…あぁ、助かる。じゃ、任せるぞ?良いな??」
アビスーーーとアルスラーンは頷いた。
「もちろんです。」
「ーーーああ。勿論だとも。」
それを聞いたバサラはニュウ達に叫ぶ。
「ーーーよし!お前ら、行くぞ!!…目指すはネオの居る場所だ!あのケテルもオマケで付いてるらしいがな!!」
「オッケー!!」
「了解です!!」
ーーーーーーーハレルヤとニュウが返事する横で、アミダが口をへの字にしながら言葉を放つ。
「…そのオマケ、世界一要らないオマケだけどねッ!!」
◇◆◇
…アビスの力によって、〈スピードアップ〉のバフを掛けられたバサラ達が、文字通り高速で去って行く。
ーーーーーーーそれを見届けたアビスとアルスラーンは、互いに背中合わせに立った。…依然、周りは〈聖者〉に取り囲まれている状態だ。…バサラ達5人が去ったので、今までよりも対処しなければならない数が増える事になる。
ーーー数は明らかに劣勢。それでも、2人に悲壮感は無い。寧ろ、笑みすら浮かべれるだけの余裕がある様に見えた。
「…貴方達ダケデ、我ラヲ止メル気カ…。ーーーダガ、無駄ダ!」
自らを封じていた音叉を弾き飛ばしながら、ヴィクターが起き上がった。
身構える2人の前で、ヴィクターが手の内側に〈セラムキューブ〉を展開、漆黒の双叉槍を生成し、それを構える。
「…ケテル様ハ止メラレヌ!!オ前達ノ様ナ信心ナキ者ニ!アノ方ハ敗レヌノダ!!…ソレニ、マダ行手ヲ阻ム〈聖者〉ハ居ル。ーーー全テヲ乗リ越エラレルモノカ!」
槍を見せつける様に回転させながら、そう言い放つヴィクターに向かって、アルスラーンは肩を竦めながら答えた。
「…さあ?如何だろうな?言っておくが、彼らは強いぞ?ーーーキミや天聖ケテルも強かろうが、その実力を余り過信しない事だな。」
ヴィクターが槍の先端を此方に向けて叫ぶ。
「…ソノ言葉、ソックリソノママ返ソウ!!〈アステール〉ノ獅子皇ヨ!!」
偽りの夜空の下で、黒翼が2人を包み込む様に広がったーーーーーーーーー……
◇◆◇
ヴィクターと〈聖者〉達をアビス達2人に任せ、ニュウ含めた5人は洞窟を疾走する。
ーーー不思議な感じだ。…此処は間違いなく地下の筈なのに、顔に当たる冷たい風は完全に夜風そのものだし、頭上には偽りのものとは言え、見事な星空が広がっている。
…場合によっては、実に幻想的な風景に見えなくも無いだろう。ーーー最も、今はそんな景色なぞ見ている場合では無いが。
「…お?前になんか見えて来たぞ??ーーーーーーアレは…神殿か?!」
ふと、先を走るバサラが前方を見て声を立てた。彼の見る先へ目をやるニュウ。
……確かに、大理石で造られたであろう白い神殿らしき建物が、目の前に姿を現していた。
その神殿を一目見たアミダが口を開く。
「ーーー本当だ…!あの黒い天使、儀式とか何とか言ってたし、絶対アレの中に何かあるでしょ??」
「だろうね!ーーーーーーーーーただ、神殿の前にも〈聖者〉とか言う奴らが……。」
ハレルヤの言う通り、神殿の前にも沢山の〈聖者〉が立っていた。…如何やら、既に此方の接近には気づいている様だ。
そして、お互いの声が届く距離まで近づいた時、立ち塞がる〈聖者〉の1番先頭に立つ翼を持った〈聖者〉が、ニュウ達に向けて口を開いた。
「…オォ…。5人モコノ神殿ニ辿リ着クトハ…!『ヴィクター』ハ何ヲヤッテ居ルノデショウ??」
そう言葉を発す〈聖者〉は、先程ニュウ達の前に立ち塞がったヴィクターにそっくりだった。違いがあるとすれば、ヴィクターが男性めいた外見だったのに対し、コチラは女性っぽい見た目をしている事ぐらいだろうか。ーーー今の声も、ヴィクターより少し高いトーンの女性的な声だった。
〈聖者〉達の前で立ち止まるニュウ達。…神殿は目と鼻の先だ。
「さて…通してもらうぞ?俺達は神殿に用があるんだ。」
バサラが斬魔刀ヴァジュラを構えながら、口を開く。それに答えるはヴィクターそっくりの女性の〈聖者〉。
「ソレハ出来ナイ。ーーー神殿ノ中デハ、ケテル様ガネオト神聖ナル儀式ノ真ッ最中。…我等ハ邪魔者ノ排除ヲ任サレテイル。ーーー貴方達ノ様ナネ!!」
言い終わるな否や、女性の〈聖者〉は手にセラムキューブを展開し、それを漆黒の双頭槍に変化させた。
それを掲げながら、〈聖者〉は高々と声を発する。
「ーーー我ノ名ハ『トーヴァート』!!〈イースター〉ヨ!!ケテル様ノ御座ス神殿ニハ、一歩タリトモ近付ケサセン!!」
「ーーーーーーーーいや!!近付けさせて貰う!!」
バサラがそう言って、足を一歩前に踏み出す。
「ーーーーーーーーーナラバ死ネ!!」
トーヴァートがそう叫んで双頭槍を振り下ろしーーーーーーーーー…
…ガキーーーーーーンッ!!!
アミダの剣で槍が受け止められた。パッと激しく火花が散って、アミダの顔を照らす。
一瞬の鍔迫り合いの末、トーヴァートとアミダは互いに勢い良く弾かれた。
「アミダ!!」
バサラの声に、アミダが素早く返す。
「コイツは私に!ーーーバサラさん達はどうぞお先に!!」
バサラは素早く頷いた。
「…わかった!無茶するなよ?!」
そう言って、神殿に続く石造の階段を駆け上がるバサラ達。ーーー前後左右から、〈聖者〉達が神殿に行かせまいと襲い掛かってくる。
「ーーーーーー〈パラージショットガン〉。」
「邪魔すんな!!〈ソリッドバレット〉ッ!!!」
カノンとバサラが迫り来る〈聖者〉目掛けて同時に能力を解放。赤と翠の乱れ飛ぶ属性弾が、〈聖者〉の群れを迎え撃ち次々と蹴散らして行く。
ーーー運良く弾丸が弱点に当たり、そのまま爆発四散して行く〈聖者〉も何体か居た。
「やっぱり敵の本丸だけあって、〈聖者〉共が多いな!?ーーーーーーハレルヤとニュウだけでも先に行け!!俺はカノンと一緒にこの階段でコイツらを食い止める!!」
バサラが斬魔刀ヴァジュラを構えながら、そう叫んだ。カノンも白い翼を模した銃を構えて静かに頷く。
「…うん。そうした方が良い。…行って。」
ハレルヤとニュウは顔を見合わせて、互いに頷いた。
「なら、頼むよバサラさん!カノン!」
「ーーーーーご武運を!!」
「そっちこそな!」
バサラの声と、ひっきりなしに響く戦闘音を背後に、ニュウとハレルヤは神殿の中に飛び込んだーーーーーーーーー………
聖者のセリフ読みづらッ?!
というか、話の展開がそんなにあったわけじゃ無いのに、かなり文字数食った。…フシギダネ(タイプ:くさ・どく)
あと、キラリちゃんとか、シャイターンとかはお留守番して貰ってます。…この人たちまで駆り出したら……話が、話が終わらなくなるッ