今回は前回予告した通り、ちょっと大変な事が起こります。
サブタイでネタバレしてるけどネ。
ヒュォォォォォォォォォ………
…風が、吹いている。
夕焼けの空に、強い風が。
…その風に吹かれて、〈星のセラム〉は漂っていた。
〈星の森〉の地下で、ケテルが溜め込んでいた膨大な量の〈星のセラム〉。それがケテルの制御下を離れ、今〈アステール〉の上空を漂っているのだ。
…さて、覚えているだろうか?
〈星のセラム〉からは、《ノーマン》が生まれると言う事を。
今、〈アステール〉の上空に解き放たれたのは、ケテルが生み出し、儀式の遂行の為に溜め込んでいた、莫大な量の〈星のセラム〉。
地下でアビスが疑問に思った様に、何故《ノーマン》が生まれないのか、不思議なぐらいの量なのだ。
(ーーーーー因みに、何故生まれなかったのかと言うと、ケテルの制御下にあった為である。)
…そんな大量の〈星のセラム〉が、空に舞っている。つまり、この後起こる事はただ一つ。
コレから、《ノーマン》が生まれる。
◇◆◇
10月 20日
星屑の街〈アステール〉郊外 〈星の森〉 地下空洞崩落部外縁
「ーーーーーーーバサラせんぱーーーい!!!」
ネオを担ぎ、随分と久しぶりに感じる〈星の森〉の大地を踏んだバサラの目に、こちらに向かって走り寄って来る幼女の姿が映った。
「…お、サテライト!ーーー教会ごと吹き飛んだんじゃないかと思ってたが、無事だったか。」
バサラの声に、駆け寄って来たサテライトが頷く。
「うん!何とか!ーーー教会の所はギリギリ吹き飛ばなかったからね。」
そうサテライトは言ってから、バサラ達の背後ーーー
「…うわ……何となく察してたけど…スッゴい事になってる…。」
ーーーーーー彼女の言う通り、ソコは大変な有様となっていた。
地下にあった、ケテルと〈聖者〉達が潜んでいた大空洞…ソレの上部の岩盤がほぼ全て吹き飛び、上にあった〈星の森〉を吹き飛ばしている。
吹き飛ばされた森の大地やら、木やら岩やら何やらかんやらが、辺り一面に散らばり、立ち込めた土埃が未だ尚辺りを包み込んでいた。
街の人達は森で起きた突然の大爆発に、混乱している事間違いなしだろう。
一方で、上部が吹き飛んだ事でその全容を露わにした〈地下世界〉は、夕焼けの光を受けて静かに大穴の中に佇んでいる。
地面に空いた穴の中に、ジオラマの様な草原の景色が広がるさまは、まるで小規模なカルデラの様だ。
「…こっから、這い上がって来たの…?結構大変だったんじゃ…。」
サテライトの呟きに、バサラが頷く。
「…マジで大変だった。行きに通った通路が、完全に崩れてたからよ。…この洞窟の壁よじ登るしか無かったんだよ。」
彼の後ろのハレルヤ達も、同感の意を示す様に頷いている。
「まさか最後にロッククライミングする事になるとは、思わなかったよネ……。」
そう呟いたのはアミダ。…横で、ニュウを背負ったハレルヤが頷いた。
「…それ。ーーーそんなに断崖絶壁じゃ無かったから、良かったけどさ…。怪我してる身としては、キツかったよ…。」
そう呟くハレルヤはあちこち傷だらけだし、背負ったニュウの方も傷が多い。
「…結構こっ酷くやられたね、ハレルヤ先輩。」
ハレルヤは肩をすくめた。
「ま、皆んな無事だから。怪我は帰ってから何とかするよ。」
「…私も手伝おう。治癒なら、なんとかなるしな。」
アルスラーンが、ハレルヤの肩をポンと叩いてそう言った。
「ーーーーーーーんぁ、そう言えば、サテライト。…カノープスの姿が見えねぇが、どうかしたか?」
思い出したかの様なバサラの声に、サテライトはサラッと答えた。
「飛んできた石からパソコン守って、頭を打ったみたいで気絶中。ま、カノープスだから大丈夫でしょ。…息してるし。」
「お、そうか。死んでないなら良いや。ーーー取り敢えず、カノープスも回収して、帰るとするかな。」
「うん、そうだね。行こう、先輩たち!」
「「「はーーい。」」」
…誰も気に掛けなかったとさ。
◇◆◇
〈星の森〉は吹き飛んだーーーーーーとは言え、流石に〈星の森〉全てが吹き飛んだ訳ではない。
サテライト達が待機していた廃墟の教会付近は、ギリギリ崩落範囲には入らなかったし、全体から見れば吹き飛んだのは4分の1程度だろう。
……まぁ、ソレでもかなりの大爆発だが。
ーーーつまり何が言いたいのかと言うと、帰り道はいつも通り長い山下りになった…と言う事だ。
「昔、どっかで聞いた事があるんだが…山ってのは、登るより下る方がダルいらしいな。」
「ほう。そうなのか?」
「ああ…。昔聞いた話だがな。膝痛めやすいんだとよ。」
そんな事を話しながら先頭に立って、道なき道を下っていくバサラとアルスラーン。後にハレルヤ達が続く。
全てが終わった後の、只の帰途につく行軍だ。…特に変わった事が起こる筈も無く………
『フオォォォォォォォォォンンッッ!!!!』
……前言撤回、変わった事が起きた。
「…?!何の声?!?」
「あ?なんだ……今の咆哮は?」
突然あたりに響き渡った謎の咆哮。
不思議に思ったバサラが、夕焼けに染まる空を仰ぐ。
いつの間にか、風に吹かれて空に散っていた筈の〈星のセラム〉が、一箇所に集まっていた。
そして、ぐるぐると台風の時の雲の様に、〈星のセラム〉が空に集まって飛んでいる。
「…アレは……いけない…!!」
アビスが空に集まる星雲を見ながら、恐れる様に呟いた。
「…やっぱり、あの量の〈星のセラム〉が…何も生み出さずに消えるなんて事、無かったんだ…!!」
アビスが、そしてバサラ達が目を見開いて空を見る中、空に集まった〈星のセラム〉は輝きを一層強くし始める。
…やがて、輝きの中から、
ーーー言葉では、とても形容し難い…化け物の様な……。
「ハッ…。今日は朝から晩までマジだりぃ日だな?ーーー厄日かよ!?」
遠くから聞こえて来る、〈アステール〉の防衛システム作動時の警報を聞きながら、バサラがうんざりした様に呟いた。
その隣でアルスラーンが顔を顰めながら、空を睨んで口を開く。
「…やはり生まれたか。《ノーマン》……その、〈
真っ赤に燃える丸い太陽を背に、〈星の森〉の空に新生した《ノーマン》が咆哮するーーーーーー………。
◇◆◇
…警報がひっきりなしに鳴り響き、人々が慌ただしく走り回る音が聞こえる。
ーーーーーーーーー此処は、星屑の街〈アステール〉の中心に位置する〈アステール防衛庁〉の内部。
連邦から独立した新人類の街として、アステールに求められるのは街を守っていけるだけの力だ。
…ノーマンが現れた時、または連邦と事を構えなければならなくなった時、この街を自分達だけで守る為には、強い…過剰にすら感じる程の力が要る。
事実、あのドクトゥール・フォリーが警戒していた様に、アステールの防衛システムは非常に強力である。
その力を持って、今日までアステールは守られ続けているのだ。……ノーマンから、そして連邦からも。
しかし今、その力全てを使っても一か八かの大勝負となる存在が、〈アステール〉に現れた。
ーーーーーーー《六ツ星級ノーマン》……所謂〈上位種〉、又の名を〈絶級〉である。
滅多に出現しない代わりに、一度現れれば災害クラスの脅威となる〈上位種〉…。その存在の降臨に、誰しもが驚きを隠せない。
「…所長!!」
「なんだ?!」
ーーー此処は〈防衛庁〉の発令所。ズラッと並ぶ計器類と、大きなモニターが絶えず様々な情報を読み取っては、次々と表示していっている。
そんな部屋の真ん中で、2人の軍人らしき人間が喋っていた。
「出現した〈絶級〉ですが、現在〈星の森〉の爆発地点の真上に滞空中。ーーーーーー過去の記録から、今回出現した〈絶級〉と合致する存在の照合に成功しました!」
「ーーーそうか、既出の存在だったか!…その〈個体名〉はなんだ!?」
…さて、覚えているだろうか?過去に出現が確認された〈上位種ノーマン〉には、〈個体名〉が与えられていると言う事を。
今の2人の会話の内容は、ーーー今回出現した〈上位種〉が、全く新しい未知の〈上位種〉なのか、それとも既出の情報などが出揃っている〈上位種〉なのかーーーと言う内容であった。…どうも、過去に存在が確認されたものであったらしい。
ひとまず、それは良かった事だ。…全くの未知の存在を相手取るより、少しは手の内を知っている存在の方が、対処しやすい。
「ーーーはい!…今回出現した〈絶級〉の〈個体名〉は、《ジューゴ》です!アレを以降、《ジューゴ》と呼称いたします!」
「《ジューゴ》か…。了解!迎撃の方はどうなっている?」
『所長』と呼ばれた男の問いに、周りにいる人々が次々と答えていく。
「〈ノクス通り〉付近のキャノンベース、キャノンユニット共に発動済みです!」
「ーーーチェイスビームユニットも、既に射撃を開始しています。」
「レーザージェネレーター、準備中!発射まであと少しです!」
所長の男は頷いた。
「…そうか。目標に動きは?」
「いえ…今のところ…。ーーーーーーモニターに映像が出ますので、そちらから。」
職員の声に所長の男が顔を上げると、1番大きなモニターに、今まさに映像が流れ始めた所だった。
ーーー映像は、〈星の森〉があった場所を写していた。夕焼けに染まる空に、〈上位種〉ーーー《ジューゴ》が浮遊している。
…不気味な見た目だ。
紫色に耀く巨大な眼球に、鳥…否、天使の様な翼が付き、鳥の足の様なものが下から突き出している。
化け物じみた外見だが、何故か神秘さすら感じる。………そんな存在だった。
『…………………。』
《ジューゴ》は沈黙している。…その身体に、〈アステール〉の防衛設備から放たれた攻撃が炸裂し、爆発を繰り返しているのに、防御姿勢すら取らない。
「…その程度、痒くも無いという事か。…怪物め。」
所長の男がそう呟く。
彼と職員達が固唾を飲んで見つめる先で《ジューゴ》目掛けて、今度は無数のミサイル弾が飛来する。
…そして着弾。
ドッッ!!ーーーと爆発が発生し、《ジューゴ》が爆炎に包まれた。
「…住民の避難はどうなっている?」
モニターから目を離さぬまま、所長の男が職員に問うた。
「ノクス通りには、既に先ほどの爆発で警報を出してあったので、それを避難命令に置き換えました。…オルディナ街道や、ローデイル区にも、指示は出してあります。」
職員が素早く答える。
「そうか。〈オーステルン〉の支援は得られそうか?ゼウス殿次第だが。」
「それに関しても、大丈夫です。艦長ゼウス殿及び、〈オーステルン防衛兵器管理官〉のケラウノス殿に支援を要請しておきました。…間も無く、彼方の支援砲撃が始まるでしょう。」
…職員がそう言った瞬間、モニターの奥…〈オーステルン〉の方角から、無数のミサイル弾が《ジューゴ》に向かって飛んで来た。
ーーーーーーズドドドドンッッッ!!!
そして命中。爆発が連鎖し、再び《ジューゴ》が爆炎に呑まれる。
…〈アステール〉側の攻撃が止んでも、〈オーステルン〉からの砲撃は止まらない。
「…おぉ、凄い攻撃の嵐だ…。流石は、元〈連邦の4番艦〉………。」
職員の1人がモニターを見ながら呟いた。
所長の男が、発破をかける様に周りに指示を飛ばす。
「…此方も負けてられんぞ?ーーーレーザージェネレーターは、準備できたか!?」
「今、出来ました!」
所長の男は頷いた。
「宜しい!ーーーならば撃て!!」
「了解!!レーザージェネレーター発射しますッ!!」
その職員の叫びと同時に、モニターの端々に光が過ぎった。
ーーーーーーーーーアステールの防衛兵器の内、最も強力な兵器たる〈レーザージェネレーター〉が、《ジューゴ》に向けて解き放たれたのだ。
『ーーーーーーーーー!!!』
今まで何の防御の構えも取ってこなかった《ジューゴ》が、此処で初めてアクションを起こす。
翼を閉じ、盾の様にして身体を守ったのだ。
ドキューーーーーーンッッッ!!!
次の瞬間、《ジューゴ》の翼に〈レーザージェネレーター〉から放たれた光線が、束となって直撃する。
カッと閃光が走り、画面が一瞬ホワイトアウトした。
ーーー今、《ジューゴ》に降り注ぐレーザー光線は、〈ノーマン〉や〈新人類〉が持つレーザー能力を、科学の力で再現ーーー及び超越しようとした物である。(元々は連邦の技術。)
結果的に、再現と威力の増大には成功したものの、発射までに時間が掛かるのが難点なのだ。
ただ、当たればかなりの効果が見込める。四ツ星級ですら、まともに受ければ蒸発する程の威力。
ソレを、翼で受け止めた《ジューゴ》は果たしてーーーーーー…
『………フオォォォォォォォンッッッ!!!』
バッと翼が左右に開き、レーザージェネレーターの光が吹き払われた。
「ッ!!レーザージェネレーターが…!」
「かき消された!」
「…防ぎ切ったか。やはり〈絶級〉の名は伊達じゃ無いな…。」
どよめく発令所。何となく予想していた事ではあるが、実際に最大火力の攻撃が防がれるのを見ると、どよめかざるを得ない。
「…ッ!!続いて、《ジューゴ》に高エネルギー反応!!反撃、来ますッ!!」
モニターを食い入る様に見詰めていた職員の1人が、所長の方を振り向いて叫んだ。
職員達の見る先で、モニターの中央の《ジューゴ》が、翼を広げる。
目が紫に妖しく輝き、《ジューゴ》の周囲に無数の光球が出現した。
「アレは…全部〈グッリターボール〉か?!…なんて数!」
誰かが声を漏らした瞬間ーーーその光球が、紅い空に紫の軌跡を描きながら発射される。
放たれた《ジューゴ》の攻撃は、〈ノクス通り〉の郊外…防衛兵器のある方角へ飛んで行き、着弾。
ーーーーーーズドドドドドォーンッッッ!!!!
無数の爆発が連鎖し、兵器が呑み込まれていく。…爆発の一部は、〈ノクス通り〉の方にも及んだ様だ。通りの建物が幾つか爆発の中に消える。
爆発の振動が、離れた場所にある筈の発令所も伝わり、微かに部屋が揺れる。続いて、被害状況が次々と発令所に入って来た。
「…4番、5番キャノンベース蒸発!!」
「7番と9番のキャノンユニットも、基部が崩落し停止!!」
「8番チェイスビームユニット消滅!ーーーレーザージェネレーターも1基破損しました!」
「ノクス通りにも一部被害が発生!ーーー人的被害は有りません!!」
所長の男が顎をさする。
「……むぅ。一撃一撃が段違いな威力だ…。ーーー取り敢えず、蒸発したユニットの分、他のを回せ!まだ動けるレーザージェネレーターの再装填もだ!!チャージが終わるまで、《ジューゴ》の動きを抑えろ!!」
『了解です!!!』
発令所が再び慌ただしく動き出す中、所長の側に携帯を手に持った職員が素早くやって来て、彼に囁いた。
「所長!……〈イースター〉の獅子皇殿から連絡です!」
所長の脳裏に、真紅の髪が過ぎる。
「は?獅子皇殿から?!ーーー内容は?」
「はい。……自分が出るから、確実な一撃を叩き込む準備をしておいて欲しいと。」
所長の顔に、一瞬光が差した気がした。
「…そうか。ーーー自ら撃って出られるか!……そうだな、我々には〈イースター〉が居たのだった。なら、レーザージェネレーターの準備をより一層急がねば!…行けるか??」
職員が何人か頷く。
「行けます!!」
「よぉし、ならば…〈イースター〉の援護に入るぞ!」
発令所に、職員の声が響く。
『ーーーーーー了解!!』
◇◆◇◆◇
ーーーーーーーゴウッ!!
風を切って、アルスラーンは
…言っておくが、彼女に翼など付いていない。ーーーならば、何故空を飛んでいる事が出来るのか…。
「結構、無茶苦茶な事するよね。…アルスラーンさん。」
隣で緑の翼を広げながら飛ぶカノンが、アルスラーンに声を掛けた。
「…空中に飛ばした《分身弾》に乗って、擬似的に空を飛ぶだなんて…。」
「…なに、慣れれば意外と簡単さ。ただ、貴女や翼を得たネオの様に、自在に飛ぶことは出来ないから、調整が必要だけど…ね。」
ーーーーーーそう、アルスラーンは自分が生み出した《分身弾》の上に乗って、空を駆けているのだ。側から見れば、アルスラーンがもう1人のアルスラーンを肩に乗せて、空を飛んでいる様にも見えるだろう。
分身弾が消えれば、また新しい分身を生み出して掴まり、落ちない様にする…。分身弾に質量と実体があるからこそ、成り立つ力業である。
因みに、今《ジューゴ》に立ち向かっているのは、この2人のみ。
後のメンバーは、空を飛べないor怪我で無理が出来ないので、2人に殿を任せて逃走中である。
また、アルスラーン達も〈絶級〉とたった2人で、マトモに相対するつもりは無い。
あくまでも、〈アステール〉の防衛兵器が、《ジューゴ》を確実に葬れる一撃を放つ迄の、時間稼ぎである。
「…さて、行こうか。ーーーアッチはどうせ、レーザージェネレーターを使うだろうから、私達はコイツがそれを防がない様、気を引いていれば良い。」
「了解。ーーーじゃ、翼を落とそう。」
「ああ。…ま、無理はするな。ーーーなんと言っても、相手は〈上位種〉だからな!」
そう言ってから、カノンとアルスラーンは《ジューゴ》に突っ込んで行く。
『キュオォォン?!』
《ジューゴ》が接近する二つの影に気づく。
「…最初から全て叩き込む!ーーー《スカーレット・アンフィテアトルム》!!!」
アルスラーンが一本の赤雷となって、《ジューゴ》の翼へ突撃する。
一方、カノンは両手を前に構え、小さく呟いた。
「…〈投影天器:終わりの審剣 -苛烈- 〉。」
ザァッ…と彼女の周囲に緑色に輝く無数の剣が出現する。…それら一つ一つが、彼女が普段使う〈ガブリエルの模造剣〉だ。
彼女が手を動かすと、ソレ等が一斉にジャキンと音を立てて、刃を《ジューゴ》の方へ向けた。
「ん、行く。」
カノンが手を振ると、ソレを合図に周りの剣が一斉に打ち出される。
ーーーーーーーズドドドドドッッッ!!!
そして、その全てが《ジューゴ》の翼に突き刺さっていった。
『フオォォオォオンッ!?』
《ジューゴ》が堪らず身体を震わせて、空を舞う。翼に突き刺さった剣が、抜け落ちてバラバラと落下していく。
「……浅かった。」
カノンが小さく呟く。
「ーーーーーーいや、充分だ!!」
アルスラーンが横から分身弾と一緒に飛び出しながら、叫んだ。
「翼に傷は入っている!!…攻撃を続けるぞッ!」
《ジューゴ》へ突撃していくアルスラーン。
『…キュオオンッッ!!』
《ジューゴ》が、分身弾の肩に足を乗せて飛ぶアルスラーンに向けて、光り輝く光球を飛ばす。
「ふっ!」
分身弾を足場にして跳び上がり、光球を回避するアルスラーン。跳び上がった先で、新たに分身弾を生み出し、その手に足を掛けてさらに跳躍ーーー次々と飛来する光球を避けていく。
『オオオオ……!!』
光球を撃ち切った《ジューゴ》が、アルスラーンに向かって、翼を広げて振り回して来た。
振り回された巨大な翼が、アルスラーンを叩き落とそうと迫る。ーーーが、その翼が彼女を地に落とす事は無かった。
「…はっ!」
アルスラーンが分身弾から足を離し、飛んで来る翼を掠める様に、身を捩って《ジューゴ》に迫る。
『………!!』
《ジューゴ》の巨大な紫の瞳に、アルスラーンの姿が映り込み………。
「ーーーーーーー《 スカーレット・プロスケニオン 》!!!」
赤雷を纏ったアルスラーンの一撃が、《ジューゴ》の瞳を横凪に薙ぎ払った。
ーーーズッ……ドォンッッ!!!
一拍遅れて、《ジューゴ》の瞳に赤雷が炸裂。
『ギャオォォォォォォンッッ?!?!』
身体がグラリと揺らぎ、《ジューゴ》が目に見えて怯む。…が、すぐに体勢を立て直し、アルスラーンに向かって翼を大きく広げると、激しく吠えた。
『ーーーーフォォォォーーーーーーン!!!!』
夕焼けの空に轟く、明確な怒りが宿った咆哮。ーーーーーーーその眼に光が再び宿る。
…しかし、その光は終ぞ放たれる事はなかった。
「…〈
淡々とした声が響き、《ジューゴ》の真上にカノンの緑翼が躍る。
手の内に、鋭い輝く直剣を生み出したカノンが、《ジューゴ》を見下ろしながら、滔々とまるで詠唱するかの様に声を放つ。
「《
ーーー
ーーーーーーズドォンッッッッ!!!
…大気が震える程の衝撃、閃光。そして、空に響く《ジューゴ》の苦悶の咆哮。
衝撃波がブワッと辺りに広がり、雲を散らす。
『……ギィッッッッ!!!』
翼の根元を斬られた《ジューゴ》の身体が、大きくふらついて、地に落ちそうになる。翼も、片方が大分とボロボロになった様だ。
ーーーが、それまでだ。…2人の必殺を何度受けても尚、《ジューゴ》は地に落ちない。
…しかし、それで十分だった。
……キラッッ!!
カノンとアルスラーンの背後から、夕焼けの空に幾筋もの閃光が、尾を引いて飛来して来る。
ソレを見ながら、アルスラーンが口を開いた。
「…かなりダメージは与えた筈ーーーーーコレなら、この〈レーザージェネレーター〉を、防ぎ切れまい!!」
『ーーーーーー!?』
《ジューゴ》の瞳に、飛来して来る閃光ーーーレーザージェネレーターの光ーーーが、映り込む。
《ジューゴ》は翼を閉じて身を守ろうとしたが、片方の翼がボロボロになっているせいで、上手く身を守れなかった。
『ーーーーーーッッ?!』
再び放たれた〈レーザージェネレーター〉の一撃が、《ジューゴ》の閉じた翼に直撃。……今度は吹き払われる事なく、傷付いた翼を貫通して紫の瞳に命中する。
ーーーーーーカッッ!!!
…閃光。
ドゴォーーーーーーンッッッッ!!!!
…そして、爆発。
幾重にも束ねられた〈レーザージェネレーター〉の直撃を受けた《ジューゴ》は、断末魔と共に大地へ…〈星の森〉に空いた、あの〈地下世界〉の穴の方へ落ちていき………。
…カーーーーーーーンッッ!!!!
穴の真上で、辺り一面に響き渡る撃破音と共に爆散。夕闇に沈んでいた山々を真昼の様に照らし出し、そして消えたーーーーーー…。
ぶつ切りみたいな終わりでスマソ!
多分次回で2章は終わりですね。
…今回登場した〈上位種:ジューゴ〉ですが、コイツはちゃんとモンストにいるキャラです。トーヴァートやヴィクターと違ってネ。
あと、アルスラーンやカノンが使った必殺技は、ちょっとオリジナル入ってます。ーーーなるべく原作の雰囲気を壊さないようにした…つもり。
最後に、途中でさりげなく〈防衛庁〉の職員が、オーステルンの事を『元連邦の4番艦』って言ってたと思うけど、これについても、機会があれば説明します。…あれば、ね。
(あんまりニュウ達の物語には関わってこない話だけど。)
では、また次回。