モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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今回は前回予告した通り、ちょっと大変な事が起こります。

サブタイでネタバレしてるけどネ。




43話 〈 翼を持つ者〜上位種降臨〜 〉

 

 

 

ヒュォォォォォォォォォ………

 

 

…風が、吹いている。

 

 

夕焼けの空に、強い風が。

 

 

…その風に吹かれて、〈星のセラム〉は漂っていた。

 

 〈星の森〉の地下で、ケテルが溜め込んでいた膨大な量の〈星のセラム〉。それがケテルの制御下を離れ、今〈アステール〉の上空を漂っているのだ。

 

…さて、覚えているだろうか?

 

 〈星のセラム〉からは、《ノーマン》が生まれると言う事を。

 今、〈アステール〉の上空に解き放たれたのは、ケテルが生み出し、儀式の遂行の為に溜め込んでいた、莫大な量の〈星のセラム〉。

 

 地下でアビスが疑問に思った様に、何故《ノーマン》が生まれないのか、不思議なぐらいの量なのだ。

(ーーーーー因みに、何故生まれなかったのかと言うと、ケテルの制御下にあった為である。)

 

 

…そんな大量の〈星のセラム〉が、空に舞っている。つまり、この後起こる事はただ一つ。

 

 

コレから、《ノーマン》が生まれる。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

10月 20日 

 

 

星屑の街〈アステール〉郊外 〈星の森〉 地下空洞崩落部外縁

 

 

 

「ーーーーーーーバサラせんぱーーーい!!!」

 

 ネオを担ぎ、随分と久しぶりに感じる〈星の森〉の大地を踏んだバサラの目に、こちらに向かって走り寄って来る幼女の姿が映った。

 

「…お、サテライト!ーーー教会ごと吹き飛んだんじゃないかと思ってたが、無事だったか。」

 

 バサラの声に、駆け寄って来たサテライトが頷く。

 

「うん!何とか!ーーー教会の所はギリギリ吹き飛ばなかったからね。」

 

 そうサテライトは言ってから、バサラ達の背後ーーー()()()()()()()()()()()、大きな地面に空いた穴を見遣る。

 

「…うわ……何となく察してたけど…スッゴい事になってる…。」

 

 

ーーーーーー彼女の言う通り、ソコは大変な有様となっていた。

 

 地下にあった、ケテルと〈聖者〉達が潜んでいた大空洞…ソレの上部の岩盤がほぼ全て吹き飛び、上にあった〈星の森〉を吹き飛ばしている。

 

 吹き飛ばされた森の大地やら、木やら岩やら何やらかんやらが、辺り一面に散らばり、立ち込めた土埃が未だ尚辺りを包み込んでいた。

 

 街の人達は森で起きた突然の大爆発に、混乱している事間違いなしだろう。

 

 一方で、上部が吹き飛んだ事でその全容を露わにした〈地下世界〉は、夕焼けの光を受けて静かに大穴の中に佇んでいる。

 

 地面に空いた穴の中に、ジオラマの様な草原の景色が広がるさまは、まるで小規模なカルデラの様だ。

 

「…こっから、這い上がって来たの…?結構大変だったんじゃ…。」

 

サテライトの呟きに、バサラが頷く。

 

「…マジで大変だった。行きに通った通路が、完全に崩れてたからよ。…この洞窟の壁よじ登るしか無かったんだよ。」

 

 彼の後ろのハレルヤ達も、同感の意を示す様に頷いている。

 

「まさか最後にロッククライミングする事になるとは、思わなかったよネ……。」

 そう呟いたのはアミダ。…横で、ニュウを背負ったハレルヤが頷いた。

「…それ。ーーーそんなに断崖絶壁じゃ無かったから、良かったけどさ…。怪我してる身としては、キツかったよ…。」

 

 そう呟くハレルヤはあちこち傷だらけだし、背負ったニュウの方も傷が多い。

 

「…結構こっ酷くやられたね、ハレルヤ先輩。」

ハレルヤは肩をすくめた。

「ま、皆んな無事だから。怪我は帰ってから何とかするよ。」

「…私も手伝おう。治癒なら、なんとかなるしな。」

 

 アルスラーンが、ハレルヤの肩をポンと叩いてそう言った。

 

「ーーーーーーーんぁ、そう言えば、サテライト。…カノープスの姿が見えねぇが、どうかしたか?」

 

 思い出したかの様なバサラの声に、サテライトはサラッと答えた。

 

「飛んできた石からパソコン守って、頭を打ったみたいで気絶中。ま、カノープスだから大丈夫でしょ。…息してるし。」

「お、そうか。死んでないなら良いや。ーーー取り敢えず、カノープスも回収して、帰るとするかな。」

「うん、そうだね。行こう、先輩たち!」

「「「はーーい。」」」

 

 

…誰も気に掛けなかったとさ。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

〈星の森〉は吹き飛んだーーーーーーとは言え、流石に〈星の森〉全てが吹き飛んだ訳ではない。

 

 サテライト達が待機していた廃墟の教会付近は、ギリギリ崩落範囲には入らなかったし、全体から見れば吹き飛んだのは4分の1程度だろう。

 

……まぁ、ソレでもかなりの大爆発だが。

 

 

ーーーつまり何が言いたいのかと言うと、帰り道はいつも通り長い山下りになった…と言う事だ。

 

 

「昔、どっかで聞いた事があるんだが…山ってのは、登るより下る方がダルいらしいな。」

「ほう。そうなのか?」

「ああ…。昔聞いた話だがな。膝痛めやすいんだとよ。」

 

 そんな事を話しながら先頭に立って、道なき道を下っていくバサラとアルスラーン。後にハレルヤ達が続く。

 

 全てが終わった後の、只の帰途につく行軍だ。…特に変わった事が起こる筈も無く………

 

 

『フオォォォォォォォォォンンッッ!!!!』

 

 

 

……前言撤回、変わった事が起きた。

 

 

 

「…?!何の声?!?」

「あ?なんだ……今の咆哮は?」

 

突然あたりに響き渡った謎の咆哮。

 

 不思議に思ったバサラが、夕焼けに染まる空を仰ぐ。

 

 いつの間にか、風に吹かれて空に散っていた筈の〈星のセラム〉が、一箇所に集まっていた。

 

 そして、ぐるぐると台風の時の雲の様に、〈星のセラム〉が空に集まって飛んでいる。

 

「…アレは……いけない…!!」

 

 アビスが空に集まる星雲を見ながら、恐れる様に呟いた。

 

「…やっぱり、あの量の〈星のセラム〉が…何も生み出さずに消えるなんて事、無かったんだ…!!」

 

 アビスが、そしてバサラ達が目を見開いて空を見る中、空に集まった〈星のセラム〉は輝きを一層強くし始める。

 

 

…やがて、輝きの中から、()()()()()が現れた。

 

 

ーーー言葉では、とても形容し難い…化け物の様な……。

 

 

「ハッ…。今日は朝から晩までマジだりぃ日だな?ーーー厄日かよ!?」

 

 遠くから聞こえて来る、〈アステール〉の防衛システム作動時の警報を聞きながら、バサラがうんざりした様に呟いた。

 その隣でアルスラーンが顔を顰めながら、空を睨んで口を開く。

 

「…やはり生まれたか。《ノーマン》……その、〈()()()〉が…!」

 

 真っ赤に燃える丸い太陽を背に、〈星の森〉の空に新生した《ノーマン》が咆哮するーーーーーー………。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

…警報がひっきりなしに鳴り響き、人々が慌ただしく走り回る音が聞こえる。

 

 

ーーーーーーーーー此処は、星屑の街〈アステール〉の中心に位置する〈アステール防衛庁〉の内部。

 

 

 連邦から独立した新人類の街として、アステールに求められるのは街を守っていけるだけの力だ。

…ノーマンが現れた時、または連邦と事を構えなければならなくなった時、この街を自分達だけで守る為には、強い…過剰にすら感じる程の力が要る。

 

 事実、あのドクトゥール・フォリーが警戒していた様に、アステールの防衛システムは非常に強力である。

 その力を持って、今日までアステールは守られ続けているのだ。……ノーマンから、そして連邦からも。

 

 

 しかし今、その力全てを使っても一か八かの大勝負となる存在が、〈アステール〉に現れた。

 

 

ーーーーーーー《六ツ星級ノーマン》……所謂〈上位種〉、又の名を〈絶級〉である。

 

 

 滅多に出現しない代わりに、一度現れれば災害クラスの脅威となる〈上位種〉…。その存在の降臨に、誰しもが驚きを隠せない。

 

 

「…所長!!」

「なんだ?!」

 

ーーー此処は〈防衛庁〉の発令所。ズラッと並ぶ計器類と、大きなモニターが絶えず様々な情報を読み取っては、次々と表示していっている。

 

 そんな部屋の真ん中で、2人の軍人らしき人間が喋っていた。

 

「出現した〈絶級〉ですが、現在〈星の森〉の爆発地点の真上に滞空中。ーーーーーー過去の記録から、今回出現した〈絶級〉と合致する存在の照合に成功しました!」

「ーーーそうか、既出の存在だったか!…その〈個体名〉はなんだ!?」

 

…さて、覚えているだろうか?過去に出現が確認された〈上位種ノーマン〉には、〈個体名〉が与えられていると言う事を。

 

 今の2人の会話の内容は、ーーー今回出現した〈上位種〉が、全く新しい未知の〈上位種〉なのか、それとも既出の情報などが出揃っている〈上位種〉なのかーーーと言う内容であった。…どうも、過去に存在が確認されたものであったらしい。

 

 ひとまず、それは良かった事だ。…全くの未知の存在を相手取るより、少しは手の内を知っている存在の方が、対処しやすい。

 

「ーーーはい!…今回出現した〈絶級〉の〈個体名〉は、《ジューゴ》です!アレを以降、《ジューゴ》と呼称いたします!」

「《ジューゴ》か…。了解!迎撃の方はどうなっている?」

 

 『所長』と呼ばれた男の問いに、周りにいる人々が次々と答えていく。

 

「〈ノクス通り〉付近のキャノンベース、キャノンユニット共に発動済みです!」

「ーーーチェイスビームユニットも、既に射撃を開始しています。」

「レーザージェネレーター、準備中!発射まであと少しです!」

 

所長の男は頷いた。

 

「…そうか。目標に動きは?」

「いえ…今のところ…。ーーーーーーモニターに映像が出ますので、そちらから。」

 

 職員の声に所長の男が顔を上げると、1番大きなモニターに、今まさに映像が流れ始めた所だった。

 

 

ーーー映像は、〈星の森〉があった場所を写していた。夕焼けに染まる空に、〈上位種〉ーーー《ジューゴ》が浮遊している。

 

…不気味な見た目だ。

 

 紫色に耀く巨大な眼球に、鳥…否、天使の様な翼が付き、鳥の足の様なものが下から突き出している。

 

 化け物じみた外見だが、何故か神秘さすら感じる。………そんな存在だった。

 

『…………………。』

 

 《ジューゴ》は沈黙している。…その身体に、〈アステール〉の防衛設備から放たれた攻撃が炸裂し、爆発を繰り返しているのに、防御姿勢すら取らない。

 

「…その程度、痒くも無いという事か。…怪物め。」

 

所長の男がそう呟く。

 

 彼と職員達が固唾を飲んで見つめる先で《ジューゴ》目掛けて、今度は無数のミサイル弾が飛来する。

 

…そして着弾。

 

 ドッッ!!ーーーと爆発が発生し、《ジューゴ》が爆炎に包まれた。

 

 

「…住民の避難はどうなっている?」

 モニターから目を離さぬまま、所長の男が職員に問うた。

「ノクス通りには、既に先ほどの爆発で警報を出してあったので、それを避難命令に置き換えました。…オルディナ街道や、ローデイル区にも、指示は出してあります。」

 職員が素早く答える。

「そうか。〈オーステルン〉の支援は得られそうか?ゼウス殿次第だが。」

「それに関しても、大丈夫です。艦長ゼウス殿及び、〈オーステルン防衛兵器管理官〉のケラウノス殿に支援を要請しておきました。…間も無く、彼方の支援砲撃が始まるでしょう。」

 

 

…職員がそう言った瞬間、モニターの奥…〈オーステルン〉の方角から、無数のミサイル弾が《ジューゴ》に向かって飛んで来た。

 

ーーーーーーズドドドドンッッッ!!!

 

 そして命中。爆発が連鎖し、再び《ジューゴ》が爆炎に呑まれる。

 

…〈アステール〉側の攻撃が止んでも、〈オーステルン〉からの砲撃は止まらない。

 

「…おぉ、凄い攻撃の嵐だ…。流石は、元〈連邦の4番艦〉………。」

 

 職員の1人がモニターを見ながら呟いた。

 所長の男が、発破をかける様に周りに指示を飛ばす。

 

「…此方も負けてられんぞ?ーーーレーザージェネレーターは、準備できたか!?」

「今、出来ました!」

所長の男は頷いた。

 

「宜しい!ーーーならば撃て!!」

「了解!!レーザージェネレーター発射しますッ!!」

 

 その職員の叫びと同時に、モニターの端々に光が過ぎった。

ーーーーーーーーーアステールの防衛兵器の内、最も強力な兵器たる〈レーザージェネレーター〉が、《ジューゴ》に向けて解き放たれたのだ。

 

『ーーーーーーーーー!!!』

 

 今まで何の防御の構えも取ってこなかった《ジューゴ》が、此処で初めてアクションを起こす。

 

翼を閉じ、盾の様にして身体を守ったのだ。

 

 

ドキューーーーーーンッッッ!!!

 

 

 次の瞬間、《ジューゴ》の翼に〈レーザージェネレーター〉から放たれた光線が、束となって直撃する。

 

 カッと閃光が走り、画面が一瞬ホワイトアウトした。

 

ーーー今、《ジューゴ》に降り注ぐレーザー光線は、〈ノーマン〉や〈新人類〉が持つレーザー能力を、科学の力で再現ーーー及び超越しようとした物である。(元々は連邦の技術。)

 

 結果的に、再現と威力の増大には成功したものの、発射までに時間が掛かるのが難点なのだ。

 

 ただ、当たればかなりの効果が見込める。四ツ星級ですら、まともに受ければ蒸発する程の威力。

 

 ソレを、翼で受け止めた《ジューゴ》は果たしてーーーーーー…

 

 

『………フオォォォォォォォンッッッ!!!』

 

 

 バッと翼が左右に開き、レーザージェネレーターの光が吹き払われた。

 

「ッ!!レーザージェネレーターが…!」

「かき消された!」

「…防ぎ切ったか。やはり〈絶級〉の名は伊達じゃ無いな…。」

 

 どよめく発令所。何となく予想していた事ではあるが、実際に最大火力の攻撃が防がれるのを見ると、どよめかざるを得ない。

 

「…ッ!!続いて、《ジューゴ》に高エネルギー反応!!反撃、来ますッ!!」

 

 モニターを食い入る様に見詰めていた職員の1人が、所長の方を振り向いて叫んだ。

 

 職員達の見る先で、モニターの中央の《ジューゴ》が、翼を広げる。

 

 目が紫に妖しく輝き、《ジューゴ》の周囲に無数の光球が出現した。

 

「アレは…全部〈グッリターボール〉か?!…なんて数!」

 

 誰かが声を漏らした瞬間ーーーその光球が、紅い空に紫の軌跡を描きながら発射される。

 

 放たれた《ジューゴ》の攻撃は、〈ノクス通り〉の郊外…防衛兵器のある方角へ飛んで行き、着弾。

 

 

ーーーーーーズドドドドドォーンッッッ!!!!

 

 

 無数の爆発が連鎖し、兵器が呑み込まれていく。…爆発の一部は、〈ノクス通り〉の方にも及んだ様だ。通りの建物が幾つか爆発の中に消える。

 

 爆発の振動が、離れた場所にある筈の発令所も伝わり、微かに部屋が揺れる。続いて、被害状況が次々と発令所に入って来た。

 

「…4番、5番キャノンベース蒸発!!」

「7番と9番のキャノンユニットも、基部が崩落し停止!!」

「8番チェイスビームユニット消滅!ーーーレーザージェネレーターも1基破損しました!」

「ノクス通りにも一部被害が発生!ーーー人的被害は有りません!!」

 

所長の男が顎をさする。

「……むぅ。一撃一撃が段違いな威力だ…。ーーー取り敢えず、蒸発したユニットの分、他のを回せ!まだ動けるレーザージェネレーターの再装填もだ!!チャージが終わるまで、《ジューゴ》の動きを抑えろ!!」

 

『了解です!!!』

 

 発令所が再び慌ただしく動き出す中、所長の側に携帯を手に持った職員が素早くやって来て、彼に囁いた。

 

「所長!……〈イースター〉の獅子皇殿から連絡です!」

 所長の脳裏に、真紅の髪が過ぎる。

「は?獅子皇殿から?!ーーー内容は?」

「はい。……自分が出るから、確実な一撃を叩き込む準備をしておいて欲しいと。」

 

所長の顔に、一瞬光が差した気がした。

 

「…そうか。ーーー自ら撃って出られるか!……そうだな、我々には〈イースター〉が居たのだった。なら、レーザージェネレーターの準備をより一層急がねば!…行けるか??」

 

職員が何人か頷く。

 

「行けます!!」

「よぉし、ならば…〈イースター〉の援護に入るぞ!」

発令所に、職員の声が響く。

 

 

『ーーーーーー了解!!』

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

ーーーーーーーゴウッ!!

 

 

風を切って、アルスラーンは()()

 

…言っておくが、彼女に翼など付いていない。ーーーならば、何故空を飛んでいる事が出来るのか…。

 

「結構、無茶苦茶な事するよね。…アルスラーンさん。」

 

 隣で緑の翼を広げながら飛ぶカノンが、アルスラーンに声を掛けた。

 

「…空中に飛ばした《分身弾》に乗って、擬似的に空を飛ぶだなんて…。」

「…なに、慣れれば意外と簡単さ。ただ、貴女や翼を得たネオの様に、自在に飛ぶことは出来ないから、調整が必要だけど…ね。」

 

ーーーーーーそう、アルスラーンは自分が生み出した《分身弾》の上に乗って、空を駆けているのだ。側から見れば、アルスラーンがもう1人のアルスラーンを肩に乗せて、空を飛んでいる様にも見えるだろう。

 

 分身弾が消えれば、また新しい分身を生み出して掴まり、落ちない様にする…。分身弾に質量と実体があるからこそ、成り立つ力業である。

 

 因みに、今《ジューゴ》に立ち向かっているのは、この2人のみ。

 後のメンバーは、空を飛べないor怪我で無理が出来ないので、2人に殿を任せて逃走中である。

 

 また、アルスラーン達も〈絶級〉とたった2人で、マトモに相対するつもりは無い。

 

 あくまでも、〈アステール〉の防衛兵器が、《ジューゴ》を確実に葬れる一撃を放つ迄の、時間稼ぎである。

 

「…さて、行こうか。ーーーアッチはどうせ、レーザージェネレーターを使うだろうから、私達はコイツがそれを防がない様、気を引いていれば良い。」

「了解。ーーーじゃ、翼を落とそう。」

「ああ。…ま、無理はするな。ーーーなんと言っても、相手は〈上位種〉だからな!」

 

 そう言ってから、カノンとアルスラーンは《ジューゴ》に突っ込んで行く。

 

『キュオォォン?!』

 

《ジューゴ》が接近する二つの影に気づく。

 

「…最初から全て叩き込む!ーーー《スカーレット・アンフィテアトルム》!!!」

 

 アルスラーンが一本の赤雷となって、《ジューゴ》の翼へ突撃する。

 

一方、カノンは両手を前に構え、小さく呟いた。

 

「…〈投影天器:終わりの審剣 -苛烈- 〉。」

 

 ザァッ…と彼女の周囲に緑色に輝く無数の剣が出現する。…それら一つ一つが、彼女が普段使う〈ガブリエルの模造剣〉だ。

 

 彼女が手を動かすと、ソレ等が一斉にジャキンと音を立てて、刃を《ジューゴ》の方へ向けた。

 

「ん、行く。」

 

 カノンが手を振ると、ソレを合図に周りの剣が一斉に打ち出される。

 

 

ーーーーーーーズドドドドドッッッ!!!

 

 

 そして、その全てが《ジューゴ》の翼に突き刺さっていった。

 

『フオォォオォオンッ!?』

 

 《ジューゴ》が堪らず身体を震わせて、空を舞う。翼に突き刺さった剣が、抜け落ちてバラバラと落下していく。

 

「……浅かった。」

 

 カノンが小さく呟く。

 

「ーーーーーーいや、充分だ!!」

 

 アルスラーンが横から分身弾と一緒に飛び出しながら、叫んだ。

 

「翼に傷は入っている!!…攻撃を続けるぞッ!」

 

《ジューゴ》へ突撃していくアルスラーン。

 

『…キュオオンッッ!!』

 

 《ジューゴ》が、分身弾の肩に足を乗せて飛ぶアルスラーンに向けて、光り輝く光球を飛ばす。

 

「ふっ!」

 

 分身弾を足場にして跳び上がり、光球を回避するアルスラーン。跳び上がった先で、新たに分身弾を生み出し、その手に足を掛けてさらに跳躍ーーー次々と飛来する光球を避けていく。

 

『オオオオ……!!』

 

 光球を撃ち切った《ジューゴ》が、アルスラーンに向かって、翼を広げて振り回して来た。

 

 振り回された巨大な翼が、アルスラーンを叩き落とそうと迫る。ーーーが、その翼が彼女を地に落とす事は無かった。

 

「…はっ!」

 

 アルスラーンが分身弾から足を離し、飛んで来る翼を掠める様に、身を捩って《ジューゴ》に迫る。

 

『………!!』

 

 《ジューゴ》の巨大な紫の瞳に、アルスラーンの姿が映り込み………。

 

 

「ーーーーーーー《 スカーレット・プロスケニオン 》!!!」

 

 

 赤雷を纏ったアルスラーンの一撃が、《ジューゴ》の瞳を横凪に薙ぎ払った。

 

 

ーーーズッ……ドォンッッ!!!

 

 

一拍遅れて、《ジューゴ》の瞳に赤雷が炸裂。

 

『ギャオォォォォォォンッッ?!?!』

 

 身体がグラリと揺らぎ、《ジューゴ》が目に見えて怯む。…が、すぐに体勢を立て直し、アルスラーンに向かって翼を大きく広げると、激しく吠えた。

 

『ーーーーフォォォォーーーーーーン!!!!』

 

 夕焼けの空に轟く、明確な怒りが宿った咆哮。ーーーーーーーその眼に光が再び宿る。

 

…しかし、その光は終ぞ放たれる事はなかった。

 

 

 

「…〈智天使の模造聖剣(Uriel 's Sword)〉。」

 

 淡々とした声が響き、《ジューゴ》の真上にカノンの緑翼が躍る。

 

 手の内に、鋭い輝く直剣を生み出したカノンが、《ジューゴ》を見下ろしながら、滔々とまるで詠唱するかの様に声を放つ。

 

 

「《 模倣必殺(コピーストライクショット ):エンジェル・ハイロウ 》。」

 

 

ーーー(ごう)ッッと大気を割って、カノンが《ジューゴ》目掛けてほぼ垂直に落下、《ジューゴ》の大きく広げられた翼の根元に、彼女が振り翳した直剣が突き刺さる。

 

 

ーーーーーーズドォンッッッッ!!!

 

 

…大気が震える程の衝撃、閃光。そして、空に響く《ジューゴ》の苦悶の咆哮。

 

 衝撃波がブワッと辺りに広がり、雲を散らす。

 

『……ギィッッッッ!!!』

 

 翼の根元を斬られた《ジューゴ》の身体が、大きくふらついて、地に落ちそうになる。翼も、片方が大分とボロボロになった様だ。

 

ーーーが、それまでだ。…2人の必殺を何度受けても尚、《ジューゴ》は地に落ちない。

 

…しかし、それで十分だった。

 

 

 

……キラッッ!!

 

 

 カノンとアルスラーンの背後から、夕焼けの空に幾筋もの閃光が、尾を引いて飛来して来る。

 

ソレを見ながら、アルスラーンが口を開いた。

 

「…かなりダメージは与えた筈ーーーーーコレなら、この〈レーザージェネレーター〉を、防ぎ切れまい!!」

 

『ーーーーーー!?』

 

《ジューゴ》の瞳に、飛来して来る閃光ーーーレーザージェネレーターの光ーーーが、映り込む。

 

《ジューゴ》は翼を閉じて身を守ろうとしたが、片方の翼がボロボロになっているせいで、上手く身を守れなかった。

 

『ーーーーーーッッ?!』

 

 再び放たれた〈レーザージェネレーター〉の一撃が、《ジューゴ》の閉じた翼に直撃。……今度は吹き払われる事なく、傷付いた翼を貫通して紫の瞳に命中する。

 

 

ーーーーーーカッッ!!!

 

 

…閃光。

 

 

ドゴォーーーーーーンッッッッ!!!!

 

 

…そして、爆発。

 

 幾重にも束ねられた〈レーザージェネレーター〉の直撃を受けた《ジューゴ》は、断末魔と共に大地へ…〈星の森〉に空いた、あの〈地下世界〉の穴の方へ落ちていき………。

 

 

…カーーーーーーーンッッ!!!!

 

 

 穴の真上で、辺り一面に響き渡る撃破音と共に爆散。夕闇に沈んでいた山々を真昼の様に照らし出し、そして消えたーーーーーー…。

 

 

 

 





ぶつ切りみたいな終わりでスマソ!
多分次回で2章は終わりですね。

…今回登場した〈上位種:ジューゴ〉ですが、コイツはちゃんとモンストにいるキャラです。トーヴァートやヴィクターと違ってネ。

 あと、アルスラーンやカノンが使った必殺技は、ちょっとオリジナル入ってます。ーーーなるべく原作の雰囲気を壊さないようにした…つもり。

 最後に、途中でさりげなく〈防衛庁〉の職員が、オーステルンの事を『元連邦の4番艦』って言ってたと思うけど、これについても、機会があれば説明します。…あれば、ね。

(あんまりニュウ達の物語には関わってこない話だけど。)

では、また次回。
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