この話を持って、長かった2章は終了です。
やっと…やっと次に行ける…。ーーーあ、今回の話も戦闘描写ゼロなのに、一万文字行ってしまったので、読む際は計画的に。
〜アステール防衛庁制作:六ツ星級壊獣出現による被害状況等報告書〜
作成日時:星暦XXXX年 10月20日
−防衛兵器の被害−
全壊:レーザージェネレーター [1基]
キャノンベース [6基]
キャノンユニット [4基]
チェイスビームユニット [3基]
半壊:キャノンユニット [2基]
レーザージェネレーター [1基]
(耐熱限界の為)
その為兵装には、軽微な損傷有り。
〜人的被害〜
無し。
〜建造物等被害〜
〈ノクス通り〉 倒壊家屋:68棟
〈オルディナ街道〉倒壊家屋:19棟
〈ローデイル区〉 倒壊家屋: 8棟
他の区画には被害無し。
〜追記事項〜
〈星の森〉で発生した爆発については別途記載。
◇◆◇
……大きな丸い月が昇る夜。
反連邦団体イースターの〈アステール支部〉にて、何やらバチバチと鳴る音が聞こえる。
「「「…あばばばばばば?!」」」
…それと、何やら騒がしい声も。
「…む、あんまり騒がないでくれ?ーーーソレ程痛くは無いだろう??」
そう眉を顰めながら、両手に赤雷を纏わせた真紅の髪の少女ーーーアルスラーンが呟く。
「いやぁ…あんまり痛く無いんだけど…何だか、
「くすぐったい、です…。」
「うぅ〜…なんかムズムズするよね〜…。」
アルスラーンの前で椅子に座り込む3人ーーー喋った順番からハレルヤ、ニュウ、アミダーーーが、互いに顔を見合わせながら口を開いた。
「…ムズムズするのは、傷が塞がっていくからだ。後少しなんだから、頑張ってくれ。」
3人に近寄りながら、アルスラーンがそう言う。
そして彼女は、赤雷を纏う手をハレルヤ達の身体…傷を負った所に押し当てて、小さく念ずる様に呟いた。
「…癒せ、アンフィテアトルム。」
バチッと音を立てて、アルスラーンの手から赤雷がゆっくりと放たれ、ハレルヤ達の体に広がっていく。
彼等の身体についた傷口をなぞる様に広がる赤雷。…その光が過ぎ去った後には、ソコに有った筈の傷が塞がっていた。
「…回復も出来るんですね…。アルスラーンさん。…その力、万能じゃないですか。」
相変わらず体を包む、このくすぐったい感じに軽く震えながら、ニュウが彼女に話しかける。
アルスラーンが、顔を上げずに答えた。
「大した事じゃない。力と言うのは…結局、其れを振るう者の意思によって、破壊にも再生にもなる。ーーー意思は大事だぞ?…意思無くして振るわれる力なぞ、只の暴力にしかならない。」
彼女は、自分の中で何かを噛み締める様に言葉を紡いでいく。
「ーーーーー我々新人類には、力がある。生まれながらに持つ、強い力が。…この力を如何使うか、誰かを傷つける為に使うのか、誰かを助ける為に使うのか…。」
「……………。」
ニュウ達と同じ部屋に居るフェムト、キラリ、ネオがジッとアルスラーンを見つめる中、彼女は話し続ける。
「強い力であるからこそ、我々は良く考えてその力を使わなければならない。他人からの受け売りになるが、『大いなる力には、大いなる責任が伴う』からな。」
バチッと赤雷が弾ける音と共に、アルスラーンが手をニュウ達から離した。
「…取り敢えず、コレで傷は塞がっただろう。…あまり無理な動きをしなければ、開くこともない筈だ。ただーーーーーーー、」
彼女は前置きしてから、ニュウの腕…あの時、〈星のセラム〉の中に居たネオに向かって差し出した方の腕…を持ち上げて、少し困った様な顔付きになる。
「ニュウ。…君のこの腕の傷跡は、どうやっても消えないのだよ。高濃度の〈星のセラム〉に手を突っ込んだ時に、負った傷なのだろうが…どうも不可解な事に、跡が消えないのだ。」
そう言って、アルスラーンがニュウの腕ーーーまるで、稲妻の様な裂傷痕が残る腕を、さすさすと撫で回した。……くすぐったい。
「負ったばかりの様に赤い傷跡だが、本当にもう痛みは無いのか?」
「…え、ええ。全く。アルスラーンさんの治療のお陰で、痛みはもう引きました。」
ニュウの声に、アルスラーンが微妙な顔をしたまま頷いた。
「……ならば良いが。コレは一生残ってしまうかもな。私の治癒の意思が、足りないのかも知れん……本当にすまない。」
頭を下げた彼女に向かって、ニュウは慌てた様に手と首を振った。
「あ、いやいや?!…跡が残っても、全っ然気にしないから大丈夫です!ーーー今は冬だから長袖で傷は隠れるし、元々俺は見た目とか気にしない人なので!」
「そうか。…すまんな。」
アルスラーンが再び頭を下げる。その横からネオがやって来て、ニュウの傷付いた腕をジッと見つめた。
「…あ、ネオさん。ーーーーーーそう言えば、もう体調大丈夫なんですか??さっきまで、ずっと寝てましたけど。」
ニュウの問いに、ネオは頷く。
「うん。もう平気だよ。」
「…そうですか。…なら良かった。」
安心したかの様にため息を付いたニュウの横で、彼の傷付いた腕を見ながら、ネオが顔を暗くしてポツリと呟いた。
「………ごめんなさい。」
「……え?ネオさん?」
ニュウが困惑したかの様に声を立てる。
ネオは顔を暗くしたまま、謝る様に部屋に居る全員に向かって、口を開く。
「………私が攫われてしまったばかりに、皆んな痛い目とか大変な目に遭って…。」
その部屋に居た全員が、一瞬キョトンとした表情を浮かべて顔を見合わせる。
「…いやいやいや!?ネオは謝らなくて良いから!?」
驚く様なハレルヤの声に、ニュウ達が口々に続く。
「ーーーネオさんは全く悪く無いですよ?!寧ろ、あの時貴女を1人にしてしまった俺の方が、謝らなきゃいけないぐらいですから!」
「そうそう!悪いのはあのケテルとか、〈聖者〉…だっけ?ーーーアイツらなんだからさ!!」
ニュウとアミダの声に、アルスラーンも頷いて見せた。
「…ネオ、君が責任を感じる必要は無いぞ。」
そう言って、彼女はネオの頭にポンと手を置く。
「…!」
「攫われたと聞いた時には、不安になったが……君の身に何も起こらなくて良かった。本当にな。」
「…………。」
…優しさが滲むその声に、ネオが少し俯く。
アルスラーンが小さく微笑んで、手を離した。
「ーーーーーーーーーさて、治療も終わった事だし、疲れただろ。…後はゆっくりと、休んでくれ。」
そう言って、彼女は部屋から出て行ったーーーーー……。
◇◆◇
夜は明け、翌日ーーー10月21日。
〈上位種〉出現に関する騒動も一応の落ち着きを見せ、〈ノクス通り〉の方では既に建物の修復が始まっていた。
そんな〈ノクス通り〉の一角で、話を交わす影が5つ。
…サテライトとカノープス、ニュウとネオ、そして彼等に協力していた『ネオ信者の元リーダーの妻』である。
「…先ずは、ありがとうございました。貴方達には、とても感謝しています。」
そう言って頭を下げる元妻。
ニュウが首を振る。
「いやいや、此方こそ、手伝って頂いてありがとうございます!」
「「ーーーありがとうございます。」」
隣でサテライトとネオも頭を下げる。
小さく苦笑する元妻。
「…私は特に何もして無いわ。……ただ、安全な所から見ていただけだから。ーーー兎も角、真相を…夫の死についての真相を、教えてくれてありがとう。」
その言葉はネオに向けられたものだ。彼女はそのままネオに向かって、言葉を続ける。
「ーーーまさか、テレケーにあれ程の野心が有ったとは露知らず…貴女を酷い目に合わせてしまった様で、申し訳ないわ。」
「…いや…そんな。」
ネオが
「…でも、コレから信者達どうなるの?曲がりなりにも、テレケーがリーダーだったし、そのリーダー死んじゃったけど。」
「まぁ、何とかなるでしょう。私の方から既に、あの地下世界の映像も含めて信者達には説明してあります。貴方達も知る様に、ドローンの映像は途中で途切れてしまいましたが、実際に〈星の森〉に地下世界が露わになっているので、説得力はありましたよ。」
サテライトは頷いた。
「…そっか。ーーーそう言えば、あの地下世界ってどうなるんだろ?」
その声を聞いて、〈星の森〉の方角を見やるニュウ。…此処からでも、森の一部が抉れているのが良く分かる。
「アレについては、後回しでしょうね。…先ずは街の修復が先でしょうから。」
元妻の答えに、カノープスが頷く。
「…ま、アソコには、もう何もねぇもんな。ただ広いだけだ。」
ニュウも首を縦に振った。
「…そうですね。ーーー埋め立てるのも大変だろうし、特に何か重要なモノが残っている訳でも無いし。」
「ね〜。」
暫く5人は〈星の森〉の抉れた地形を、街の通りから眺めていたが、ふと思い出したかの様に、元妻がネオに声をかけた。
「あ、そうだ。ネオさん。」
「…はい?」
「信者の皆さんが、貴方のこと心配してましたよ。それはもう、大変な勢いで。会ってあげたらどうかしら?」
ネオの顔が微妙な顔になった。
「……心配してくれてありがとう…とだけ、言っておいて下さい。会うのは、ちょっと…疲れるから……。」
「あら、そう。わかったわ。」
元妻はそれ以上は言わなかった。ーーー彼女も、ネオ信者達の熱狂具合は良く知っているのだろう。
ソコで5人は別れた。ニュウ達は〈アステール支部〉の方へ、サテライト達は〈オーステルン〉へ戻る事となる。
一方、〈アステール〉に物資補給の為に寄港していた〈オーステルン〉は、〈上位種〉襲撃による被害を受けた〈アステール〉の都市部修復支援の為、寄港期間を少し延ばすことを決定。
その間はニュウ達も〈アステール支部〉に留まる事となった。
◇◆◇
ーーーーーー10月21日(同日)
星屑の街〈アステール〉 繁華街
視点:ニュウ&ネオ
「あ!……そうだ、忘れてた。俺、無くしたんだ!」
サテライト達から別れ、繁華街を〈支部〉目指して2人で歩いている時の事。
ーーーーーふとニュウが足を止めて、何かを思い出したかの様に手を打った。
少し先を歩いていたネオが、足を止めて振り返る。
「……無くした?…何を??」
「いや、キーホルダー。」
「きー…ほるだー?」
疑問符を浮かべるネオに、ニュウは説明する。
「いや、昨日ネオさんの手がかりを探してる時に、立ち寄った店で買わされたんですよ。……ネオさんのキーホルダー。」
…そう言って、彼は肩を竦めた。
「ーーー出来は良いから、見せたかったんだけどなぁ〜。〈卵〉の中で、服と一緒にどっか行っちゃったみたいだな。…勿体ない。」
ニュウのちょっぴり惜しむ様な声に、ネオがキョトンとした顔付きになって目を瞬かせた。
「…え、それってケテルが言ってたキーホルダー?貴方、買ったの??」
ニュウは再び肩を竦めた。
「…『買った』って言うより、『買わされた』って感じですかね。サテライトさん達と一緒にね。」
それを聞いたネオの顔が、何故か申し訳なさそうな感じに曇った。
「それは……ごめんなさい。私の信者達が、貴方達の財布に勿体無いことを…。」
ニュウが謝る彼女に向かって、両手を前に突き出して振る。
「あ、いやいや。確かに買わされたのは買わされたんですが、悪いモノつかまされた訳じゃ無いですし?!…サテライトさんは喜んでましたし、実際それなりに出来は良かったんで………。てか、ネオさん何も悪く無くね??」
ネオは眉を顰めてため息を吐く。
「…なんだか、私の所為な気がして来て。…信者達って…本当に…。」
「ま、アレですよ。皆んなネオさんが大好きなんですよ。……約1名、それ拗らせて大変な事しでかした奴が、居ますけどね。ーーーケテルって言うんですけど。」
「…ケテルの話なら、しなくて良いよ。名前すら聞きたく無い。」
ネオがあからさまに不機嫌な顔付きになって、ピシャリと言った。
「……ははっ。」
その顔を見て、微かに笑うニュウ。笑う彼を見ながら、ネオが首を傾げる。
「…?…なんで笑ってるの?」
「いや、言うなぁって思って。ーーー最初会った時は、全然感情を顔に出さない人だと、思っていたのに…中々表情豊かですよね。ネオさん。」
「…………。」
それを聞いた彼女は、何とも言えない表情を浮かべて、顔を前に戻した。ニュウはそれに気付かない。
ーーーーーそのまま暫く2人は歩いていたが、途中でニュウが徐ろにネオに声をかけて来た。
「ーーーーーーさて、ネオさん。…俺、ちょっと支部に帰る前に、寄って来たい所があるので、良かったら先に帰って貰って良いですよ。」
「………?」
ネオが首を傾げた。
「ーーー何処か、寄りたい場所があるの?」
ニュウが、なんて事は無いと言う様に、苦笑して答えた。
「いやぁ、服屋ですよ服屋。ーーーコートが一枚無くなっちゃいましたからね。…替えはもちろん有りますが、この際に新しい服を買ってしまおうと思いまして。服屋は、昨日買い物に行った時に見つけてますし、ササっと終えてくるので。」
そう言って、ネオから離れて横道に逸れていくニュウ。ネオは一瞬迷う様に体を動かしたが、すぐに彼の後ろに着いて歩き始めた。
「…私も行く。」
「ん?…そうですか?ーーーーネオさんも服、買います?」
ニュウの声に、彼女は小さく頷いた。
「…黒パーカーは何着あっても良い。」
「はぁ。ーーーそう言えば、ネオさんってもしかして、同じ服めっちゃ持ってます?ーーー昨日無くした筈なのに…。」
ネオは頷いた。
「うん。…上着は兎も角、服はオーダーメイドだから。たくさん作って貰ってる。」
そう言った彼女は、パーカーの下に着ている服に軽く触れた。
「…オーダーメイド何ですか?それ。へー…それはまた…どうして?」
「…普通の服だと、苦しいんだよ。ーーーココが。」
ーーーーーそう言って、彼女は服の露出している胸の上辺り、〈紋様〉がある場所を手で触れた。
「…この紋が、隠れていると苦しいんだ。ーーーでも、ココが空いている服はそんなに無いし、有ってもちょっと私には合わないし…。」
「はぁ…。ソコ空いてるの、ちゃんとした理由あったんですね。……苦しいのか…。不思議な………。」
そう言いながら、彼女の胸の肌に刻まれた星ーーー〈紋様〉を見やるニュウ。
ふと、ネオがサッと手を彼の前に翳した。
「?」
「あんまり…ジッと見られるのは…困るかな。場所が場所だし……。」
「ッスーーーーーー!!…すいませんん!!」
ニュウが弾かれる様に距離を取ったーーーーーーーーー。
◇◆◇
結局、ニュウは立ち寄った服屋で新しいコートを買うことが出来た。…ただ、前の様な真っ白なコートが無かったので、白を基調としつつも少し黒色が差し色で入っているコートになったが。
「…ま、そこまで白にこだわる必要はないし、コレで良しとしますかね。」
帰り道で、買ったコートを包装越しに見ながらニュウが呟く。ネオが肯定する様に、首を縦に振った。
「良いと思う。多分……似合う。」
「…だと良いですが。」
そんな取り留めもない会話を続けながら、2人は繁華街を抜け、静かな住宅地の側に立つ、〈アステール支部〉目指して歩き続ける。
冬の寒空が、彼等を見下ろしていたーーーーーーー…
◇◆◇
ーーーーーーーーー10月25日(一連の事件から5日後)
移動要塞都市〈オーステルン〉は、10月25日をもって〈アステール〉での復旧作業を終了し、再び航行を開始。
…12月末の〈獣神祭〉開催に合わせ、再び此処に寄る事になるので、それに間に合う様、余り遠くには移動せず〈アステール〉近辺を1ヶ月半掛けて航行する事となる。
これによりニュウ含めた〈イースター本部組〉は、オーステルンと共にアステールを離れ、本部へと戻る事となった。
脱走兵フェムトは〈アステール支部〉に留まる事となり、もう1人の元連邦兵キラリは本人、及びアミダの希望により〈イースター本部〉の方へ編入される事が決まった。
ーーーーーー以上を持って、〈星屑の街〉で起きた一連の出来事の、総括とする。
『パリィ………ンッ。』
ーーーーーーーーー10月22日 時刻:22時40分
街も、中心街以外が寝静まった後。
〈アステール〉郊外〈星の森〉。…〈ケテルの地下世界〉を見下ろせる陥没痕の端で、何かが割れる様な音が小さく響いた。
……そして、まるでパネルが剥がれるかの様に、穴の側の景色が剥がれていく。
剥がれた景色は六角形のパネル状に変化して、地面に消えていく。剥がれた景色の向こう側には、一機の戦闘機らしきモノが地面に着陸姿勢で、停まっていた。
「…偽装コクーン解除完了デス。…博士。」
「…ああ。
戦闘機のハッチが開いて、モノクルをかけた長髪の白衣に身を包んだ男ーーーーードクトゥール・フォリーが現れた。
彼の後ろには、助手ーーーアムール・ソワンが続く。
「…さてさてさて…。色々あってほぼ1日程遅れたが……コレは一体どう言う事なのかな??」
フォリーは、視界の先に広がる〈地下世界〉を見下ろしながら、口を開いた。
自分達が〈アステール〉から退却したのが、21日の早朝。…その日の午後からは議会があって、それが深夜まで縺れこみ、更になんやかんやあって再訪がほぼ1日遅れたが、その僅か1日の間に、〈星の森〉は様変わりしていた。
「…な、なんか…森が吹き飛んでまスが…?」
「ーーーふむ。遠目に見た感じ防衛設備も破損している様だ。……六ツ星級でも出たのか?」
フォリーは素早く情報を判断し、推察する。
「…しかし、穴の中にはどう見ても人工的な構造物の跡がある。…ただの穴じゃ無い。ーーーつまり、元々地下に何らかの構造があった…と。ーーー連邦の物じゃないな。連邦管理時代に地下施設の記録など無い……。ならば……」
フォリーが地下を見下ろしながら呟いていると、戦闘機のコックピットから、ピーっと言う音が響いて来た。
「ーーー警告音デス。…〈星のセラム〉が近づいて来てますよ博士?ーーー私達旧人類は死んじゃいますぅ〜。」
「…ん?」
フォリーは、彼女の横からコックピットを覗き込んで、口を挟む。
「ただの警告じゃ無いな。ーーー高濃度反応…この穴の中心に、何かあるぞ。」
コックピットの計器類が、皆全て穴の中心地点あたりに〈星のセラム〉の高濃度反応がある事を示していた。
穴の中心地点に目をやるフォリーとソワン。…しかし、此処から月明かりで見える穴の中心に〈星のセラム〉の姿は無い。
「セラムが無いのに、高濃度反応が出ている。ーーー計器類の故障でなければ、中心に何かあるのか?…実に興味深い。」
フォリーのモノクル越しの目が光った。ソワンは知っている。ーーーこの目になった彼は止まらないのだ。
「行こうかソワン。…〈防護服〉を着ろ。中心に行く。」
「はーい。」
ソワンは何の疑問を呈さずに、防護服を取り出し始めた。
◇◆◇
宇宙服めいた『対星瘴気用防護服』に身を包み、中心に辿り着いたフォリーとソワン。
……辿り着いた先は、崩れ落ちた神殿だった。
差し込む月明かりが、瓦礫の山を明るく虚しく浮かび上がらせている。
ーーーーーーーその瓦礫の中に、
「…な、なんデスか……アレ。ーーー
一方のフォリーは目を輝かせていた。…長年待ち望んでいた、何かに巡り会えたかの様に………。
「おぉ…。ソワン!ーーー歪だが、私の求めていた物があるぞ!…まさか、こんな所に用意されていたとは…!」
ソワンが顔を顰めた。
「…コレが??どう見たって、ただの肉塊の化け物デスよ?!」
ーーーーーーーーーソワンの言う通りだ。……2人の前にあるのは、巨大な肉塊だった。…白い毛が所々に生えている死人の様な浅黒い肉の塊。
ソレはドクドクと脈動し、ブルブルと
時々、肉塊から〈星のセラム〉が体液の様に吹き出して、空を舞い、消えて行く。…どうやら、この肉塊そのものが〈星のセラム〉を溜め込むタンクの様になっているらしい。高濃度反応はこの肉塊だったのだ。
その肉塊からは、一本の腕が突き出ている。…死んだ様な土気色の腕。その指先に握りしめられる様に、一本の細い
…周りの全てが死んだ様に暗いのに、その髪の毛だけは光を帯びて輝いている様に見える。
ーーーそして、そのすぐ側に顔があった。
肉塊と半ば融合している蛇の様な男の顔。……フォリーは、その顔に見覚えがあった。
「…天聖ケテルーーーか。……事件以降、姿が見えんと思っていたがやはり生きていたのだな。ーーーーーーまぁ、今のこの状況を見るに、もうマトモに生きているとは言えん姿だがな。」
…そう、この肉塊は嘗ての〈天聖ケテル〉の成れの果てだった。ニュウ達との戦いに負けたケテルだが、最後にネオの髪の毛を一本、手に入れる事が出来た。
それに縋り、ごく僅かに残された〈星のセラム〉を使って、ネオの死にゆく一本の毛根の細胞を
しかし、ソレは余りにも…あまりにも歪な神だった。
それでもケテルは生に縋り付き、上位種《ジューゴ》が地下世界の穴の上で爆散した時に、穴の中に降り注いだセラムの残滓を使い、体を再生させたが、元が歪な存在ゆえに再生した姿ですら、歪な姿になってしまったのだ。
そんな歪な神に、フォリーが一歩近付く。ソワンは遠巻きに見守っていた。
「……おぉ…ちぃ…近づ…くな…無礼……ものぉ…。」
肉塊にくっ付いた顔がピクリと動き、口が粘液の糸を引いて開くと、曇った声が放たれた。フォリーは少し驚いた様に、足を止める。
「ほう…?喋れるのか。ーーーコレはコレは。てっきり、息をするだけの肉の塊かと思っていたがーーー…。」
地を這う肉塊と化したケテルは、辿々しく続ける。
「……はぁ、はぁ…我はぁ……あ…
フォリーは見下す様に肩をすくめる。
「まさか。ーーーヒルコの様な神に、誰も傅かんよ。哀れだな、元天聖ケテル。…いや、今は神か。」
彼は腰にぶら下げていた、丸鋸を取り出した。…スイッチが入り、丸鋸が無慈悲な刃の回転音を響かせ出す。
「…なぁ、なぁにを……ず、する気、だ…。」
「君がどんな風に、この世界の上位生命体ーーー即ち、『神』とやらに近付いたかは知らんが、
フォリーは、ケテルの指先にあるネオの髪の毛を指差す。
「ーーーーーーその指先のモノを、貰うだけさ。ソレが神に近づく為の物なんだろ?…
「……は、は?」
……次の瞬間、丸鋸がケテルの体を切り開いた。
ぐしゃあっ!!ーーーと肉片と血が飛び散る。
「がっあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?!?!?」
ケテルの体が震えて、絶叫が夜の闇に響く。
「五月蝿いな。…黙ってくれ。」
「ーーーーー%#%£*!?!?!?!?!?」
フォリーが丸鋸をケテルの口に突っ込み、彼の舌と口腔内をズタズタに切り裂いて
そのまま彼の体を切り開き、流れる鮮血の中から脈打つナニかを掴んで、ブチブチッと引きちぎる様に取り出す。
「…コレは…心臓か。ーーー生命の象徴…。コレなら使えるかもな。」
ケテルが口から血の泡をブクブクと吹き出す。ーーー何かを言おうとしているらしいが、口腔内がめちゃくちゃに切り裂かれたので、声が出せない様だが。
「……まだ死ねないのか。可哀そうに…曲がりなりにも、〈神〉となったせいで、死のうにも死ねないのかな??」
見下す様にそう言ったフォリーは、彼の指先を素早く切り落とし、地面に落ちたソレを拾い上げる。
そして、指先で揺れるネオの髪の毛を見詰めて呟いた。
「…おぉ、素晴らしい…コレは生きている。ーーーーーー私の仮説が、次々と満たされて行く!!知識と科学を持って、神に近づいているのだな!?ははははっ!!!」
フォリーはケテルの目の前で狂気的な笑みを浮かべ、声を出して笑った。
「待っているが良い!!
フォリーは体を揺らして笑いながら、遥か彼方に見える〈星の花〉を指差した。
「ある本には…こんなことが書いてある。『あなたの神である主を試してはならない。』ーーーと。」
血塗れの丸鋸を腰にぶら下げ、ケテルの心臓とネオの髪の毛が付いた指を握りながら、フォリーは〈星の花〉を睨む。
「ーーーーーーーーーだがね、人は疑うものだ。神を、奇跡を、目に見えぬモノを。ーーー何故か?……
ソワンが軽く引きながら見る中で、フォリーは最後にこう呟いた。
「さて………ヒトの身で、『神』を
月に雲が掛かる。
光は消え失せ、闇が濃くなっていく……何者をも、逃さぬ闇が広がっていくーーーーーーーーー………
何時かの後書きで言ったでしょ、ケテル君♡キミは、楽には死なせ無いって♡
フォリーの発言も、あんまりよく考えずに聞き流して下さい。マトモに考え出したら、ガバが露呈するので。
後、フォリーがなんで〈アステール〉にまた来たかに付いて、忘れてるかも知れないから、もう一回言っておきますね。
『ソワンが謎の光を〈星の森〉で見たから調べに来た』…です。
因みに、この光はケテルの体から流れる〈星のセラム〉の光だったんですよ。…作中で言って無いから今言っとく。
……てか、私キャラの会話描くの苦手すぎる。たった20文字そこらのセリフ描くのに、ガチで30分ぐらい要った。変な所も多いケド許して()
ま、コレで2章は終わりッス。次の3章は、4章以降の展開へ向けた布石をばら撒く章…の予定。1章みたいに、短い話の連続にするつもりデス。