モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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新章です。





45話 〈世界の夜明け前〉

 

 

 

◇◆◇

 

 

ーーーーーーー11月11日 AM6:00

 

 

場所:移動要塞都市〈オーステルン〉外縁部。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

……朝だ。

 

 

 なんの変哲もない朝。ーーー変わる事の無い1日が、今日も始まる。

 

「………………。」

 

 ネオは、〈オーステルン〉の端…外縁部の柵の上に座り込んで、足を虚空に投げ出し、ボンヤリとしていた。……周りには、誰も居ない。

 

ーーー新調したヘッドホンが、心地いい音楽を耳朶に響かせている。

 

「………。」

 

 そのまま、彼女は空を見つめていた。……足元には広がる虚空。手を滑らせれば、何百メートルもの高さから真っ逆さまだろう。

 

(……なんだろ。なんだか、スースーする。)

 

 ネオは1人で座り込んだまま、着ているパーカーを手繰り寄せた。…でも、寒い感じが無くならない。

 

(…太陽の…この朝の光も…いつもみたいに、溶けていく暖かさが無い…。)

 

…風邪でも引いたか?ーーーと思ったが、なにか違う。この体というか、胸の中に直接風が入り込んで来るかの様な冷たさはーーーーーーーーー

 

「………私、寂しいの??」

 

 ネオは思わず1人で呟いた。ーーーーーー答える者は、勿論居ない。

 

 今まで、ネオは基本1人で居た。…どちらかと言えば、1人で居たかった。ーーー勿論、仲間は居る…イースターの皆んなが。

 

……しかし、やはり何処かで距離を自ら置いていたと言うか、何か1人になりたい様な気持ちがあったのも、事実なのだ。そして、自分はそれで良いと思っていたのに………。

 

(……初めてだ。…なんだか、自分の周りがヤケに広い気がするのは…。)

 

 イースターの皆んなは、自分に自由をくれた。ーーーソレはとても幸せな事なんだろう。

 

 その、手に入れた自由を持って、ネオは今までこうして1人で好きにして来た。…側に誰もいなくても良い、たった1人の静かな時間が、自由を表しているのだと、そう思っていたのだ。

 

 そしてその考えが、ネオの持つ儚げな雰囲気を作り出していた。ーーーアミダの云う、何処かに行ってしまいそうな雰囲気…とでも、呼ぶべき雰囲気を。

 

(でも………なんだか、違う。…コレは…もしかして、『自由』じゃ無い??)

 

…心の中で、ネオは今人生最大の疑問にぶつかっていた。ーーーーーーーたった1人で生きる事は、果たして自由なのだろうか??

 

(きっと、自由…。自由って言うのは、自分の好きに生きる事なんだから…。私は1人が好きーーーだから、自分にとっての自由は1人で居る事なんだって…………。)

 

『………本当に?ーーー気付いてしまった寂しさを、抱えたまま生きる事が自分の好きな事??』

 

 別の自分が、そう問いかけて来た気がした。

 

「…はぁ。」

 

 ため息を吐いて、ネオは柵から内側に戻った。床に脚をつけ、歩き出す。

 

(…まだ早いけど……本部に帰ろう。)ーーーーーーーーそう思った。…アソコへ帰れば、皆んな居る。今は何故か、誰かと居たかった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

11月11日 AM6:10

 

 

場所:〈イースター本部〉2階

 

 

 

「ねー、今日が何の日か、知ってる?カノーン??」

 

 大部屋の方から、アミダの元気な声が聞こえて来る。…それに答えるカノンの静かな声も。

 

「え…?…今日…?…知らないかも。」

「おぉ〜。知らないなら教えてあげるね!ーーー今日は11月11日…即ち、ポッキーの日です!!」

 

 そう言って、大部屋に卓を囲んで座り込むアミダが、ポッキーの箱をカラカラと振った。…既に開封済みで、何本かは消えて居る。

 

 カノンが首を傾げる。…傾げすぎて、白いフクロウみたいだ。

 

「……??なにそれ??」

「ポッキーの日だよー、ポッキーの日!…国民の休日なんだよ?」

「そうなの??」

 

 カノンの純粋な疑問に、アミダはニコニコと笑いながら頷く。

 

「そうそう!ーーーソレでね、11本のポッキーを纏めて食べると、願いが叶うんだって!…やってみたら?」

 

カノンが面白そうに両手を合わせた。

 

「わぁ…。そうなんだ…やってみる。」

「うんうん、良いよ良いよ〜此処に11本あるからやって見てね。ハイどうぞ。」

 

 ハレルヤが、2階の大部屋の端ーーー台所から顔を突き出して、苦笑しながら2人の話に割って入った。

 

「…盛り上がってる所悪いけど、カノン。ーーー君は嘘を教えられてるよ。」

 

 カノンが衝撃を受けたかの様に、手で口を小さく隠した。

 

「…えっ?!嘘なの!?」

 

アミダが軽〜くむくれる。

 

「もー、ハレルヤくん。言わないでよソレ。ーーーポッキーいっぱい咥えてるカノンが見たかったのに。」

「……どんな欲望だよソレ。」

 

 突っ込むハレルヤの横から、フワッとした金髪の少女の頭が突き出して、アミダに向かって口を開いた。

 

「…と言うか、朝ご飯今からなのにお菓子食べちゃダメだよ?アミダちゃん???折角作ってるのに。」

 

アミダが怒られた犬の様に、縮こまる。

 

「…ごめんってキラリぃ……。」

 

 その会話を聞きながら、ハレルヤ達と同じ台所に居るニュウは、小さく笑った。彼の手には包丁が握られ、横のまな板には切り刻まれたアボカドが載っている。

 

「…ふふふ…もしホントに願いが叶うなら、嬉しいんですがね。」

 

横でハレルヤが溜息をついた。

 

「…もし本当だったら、ポッキーの日が来る度に世界はひっくり返ってるよ。誰にだって、叶えたい願いの3つや4つは有るしね。」

「…そうですね。」

「あと、ニュウ。もう、アボカド切らなくて良いよ。ーーー切り過ぎて、アボカドペーストの一個手前みたいな感じになってるから。」

「…おっとっと。」

 

ニュウが慌てて切るのを止める。

 

「あー、『おっとっと』も美味しいよね〜〜。」

 

 ソレを聞いたアミダが、ニコニコとしながら呟いた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

ーーーーーーーーー11月 11日

 

 

場所:連邦極秘研究施設〈 ▓▓▓▓▓ 〉

 

 

 

 

 青白い光に満ちる部屋の中で、1人の男がモニターを見つめていた。

 

 全身を包む黄色いローブ、半ば機械化した体。ーーーーーーー連邦の研究員『Dr.ゾルゲ』だ。

 

ーーーーーーーどうやら、彼は各地から送られてくる〈新人類〉に関する、実験データの報告書を読んでいるらしい。

「…ふむ。…むぅ…なるホド……。」

 ゾルゲは時折呟きながら、モニターに映し出される専門用語だらけの文章の羅列に、素早く目を通していく。

 

 やがて、彼の目に1つの報告書が留まった。………報告書と言うよりかは、凄まじく上から目線の愚痴みたいな物だが。

 

「…また、アヤツか。フォリー……研究費の増加は、もう出来ないと言ってあるのに…。ごね始めると止まらんな。」

 

 ソレをサラッと読んで、ゾルゲは次の報告書に取り掛かる。

 

「ーーー次は……深町氏か。…〈星の花〉の『分体』の成長について…だな。…ふむ、〈旧東京〉は上手くいって居る様だな。」

 

ゾルゲは顎をさする。

 

「ーーーとは言え〈旧東京〉が、何時迄も我らの味方とは限らん。……連邦の力が落ちてきた事を、皆感じ取っている。…深町氏は、特に警戒すべき男…。彼方の方には、〈養殖リンクス〉と言う自前の戦力もあるしな。ーーー嘗て、あのゼウスが引き起こした〈ティタノマキア事変〉の、再来になる可能性がある。」

 

 ゾルゲはそう独りごちながら、次の報告書へ目を移す。

 

「……次は〈グローリー〉のジョルノ・ロキアと、最高司祭フェルシア殿からか。………新しい実験体が欲しいのだな。手持ちの分はすぐ使ってしまうのが、困った所だ。」

 

彼はため息を吐いて、画面を動かす。

 

「…〈グローリー〉もコレからどうなるか…。連邦から離反する可能性も、ゼロでは無いな。〈旧東京〉と同じで、彼方にも秘匿戦力〈アナテマシリーズ〉が有るのだしのぉ…。ーーーーーーまったく……不安要素ばかりだ。」

 

ゾルゲは軽く舌打ちした。

 

「……ぬぅ…其れにしても、ニュウは…あ奴は何をやって居る…??あ奴からの報告は、未だに無い。ーーーーーー『完全なる新人類ネオ』の力を手に入れなければ、連邦は力を取り戻せん。少し猶予を与え過ぎたか…?」

 

……そう呟きながら、彼は次の報告書に目を通していく。

 

「…む、コレは〈北極禁域監査局 O-N-56〉からか。ーーーーー『〈星の花〉が10月21日頃に、一瞬不安定な状態となった』??…どう言う事だ…。アレに変化が起きるなど、聞いた事がないが…。」

 

 何かに興味を惹かれたかの様に、ゾルゲはその報告書を読み出した。

 

「………ふむふむ……むむむ……なるほど………分からん。〈星の花〉は謎が多過ぎる。…近づこうにも、星瘴気用防護服すら貫通する高濃度の〈星のセラム〉のせいで、近付けんしな……。」

 

 アレに近付けるのはネオぐらいだろう、とゾルゲは思いながら、モニターを動かした。

 

次が最後の報告書になる。

 

「……最後は…Dr.マターからだな。……まだ、〈星のセラム〉の保存に関する実験は続けている様で何よりだ。ーーー最初の副産物こそ、今や我等の敵だが、それ以降の物は全て連邦の為に役立っている。このまま続けて欲しいものだ。」

 

 文章を読み終わった彼は、満足気に頷いてモニターを消した。…青白い光が消え、部屋が暗くなる。

 

「さて……。」

 

 立ち上がった彼は、壁の端へ歩いていく。ーーーーーー彼の接近を感知して壁の端が動き、窓の様に横にスライドして、外の明るい景色をゾルゲに見せた。

 

……どこまでも広がる蒼穹。

 

遥か下に見える白い雲。

 

ーーー空は青と黒の境の様な色に染まり、地平線が丸く見える。

 

 

…此処は何処よりも高い場所。上空20km…即ち『成層圏』。

 

 

 何よりも高い場所から、下界を見下ろしながらゾルゲは呟いた。

 

 

「……連邦は変わらなければならない。…これから世界は動き出す…間違いなく。大事なのは、その動きをどうコントロールするか…だ。我等はやり遂げねば。人類の閉ざされた未来を開く為に、必要な事を……。」

 

 

その呟きは、蒼穹に消えたーーーーーーーーー…。

 

 

 





今回は短め。

…と言うか、3章は全体的に短くなると思うッス。

色々と初出の単語が多いと思いますが、3章は4章以降の布石をばら撒く章なので、回収は後…の予定。

じかーい次回。\ドンドンドブラーザッ/

アミダとキラリの話をちょろっとしてから、今までチラホラ出てきていた連邦の《総帥》様が、遂に御目見予定!一体誰なんだー(棒)
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