モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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 サブタイが意味不明ですが、この章は最終的にサブタイだけ読んでいけば、一つの文章となる予定なんです。

ソレダケ。





47話 〈貴方の行手を阻むだろう。〉

 

 

ーーーーーーーーー11月24日

 

 

場所:何処かの廃棄された都市

 

 

 

 

 

……ザクザクと、誰かが地面を踏み締め歩く音が木霊する。

 

 

ーーーーーーーー此処は、嘗ての大都会。しかし今や、崩れた灰色のビルが乱立し、あちこちに破壊の痕が残るだけの廃墟と化していた。

 

 

 今にも崩れ落ちそうなビルの隙間に、輝きを放つ〈星のセラム〉が霧の様に纏わりついている。……遠くから見れば、星雲の中に街が沈んでいる様にも見えるだろう。

 

「……近くに〈壊獣反応〉は無い?《オペコ》。」

 

……そんな誰もいない筈の放棄された街に、ふと男の声が響いた。…それに答える女性らしき声も。

 

『…居ないわね。ブルー(壊獣)反応は勿論、オレンジ(生物)反応も君達以外誰も…ね。』

 

「…だろうね。」

 

 男の呟きに、また別の女性ーーー今度は少し幼さを感じる声が、答えた。

 

「…居たら怖いドラ〜。」

 

また最初に呟いた男の声がする。

 

「ーーーもしかしたら、新人類のコミュニティが有るかも知れないと思ってたけど…流石に無いか。」

『可能性はゼロでは無いわ。ーーー兎も角、そろそろ着くわよ。…サルベージポイントに。』

 

 通信機越しから聞こえて来るその声に、周りを見渡していた目線を前に戻せば、其処には瓦礫の山が広がっていた。

 

 

ーーーーーー住宅地だ。…もっとも、破壊のかぎりを尽くされて建物は殆ど残っていないが。

 

「…よし。この場所が終われば、この街は全部やれた事になるね。やろう、パンドラ。」

 

 瓦礫の山を前にして、男は隣を歩く少女に声を掛けた。

 

…パンドラーーーそう呼ばれた少女が頷く。

 

「オッケーどら〜。…じゃ、こっち側はやるから、ノアはあっちの方をお願いするドラ。」

 

ノアと呼ばれた男が頷いた。

 

「了解。…チャチャっと終わらせちゃおう。…《オペコ》?来れる?」

『…もう来てるわよ。』

 

ーーーその声に顔を上げると、自分達の真上に影と共に大きな飛行船の様な物が、〈星のセラム〉を切り裂いて現れた。

 

『…見つけた物は、全部舟に放り込んじゃいなさい?ーーーコッチで選別するから。』

 

 その舟から聞こえる女性の声に、ノアは頷いて歩き出した。

 

 

 

………さて、彼等はこんな瓦礫の山で何をしているのだろう?

 

ーーーその説明には、まずノアと言う人物について説明する必要がある。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

ーーーー『ノア』。彼は新人類の1人であり、新人類間でかなりの人気を誇る動画投稿者でもある。しかしそれだけでは無く、〈星のセラム〉に呑まれた街から、残された資源を回収する回収者(サルベージャー)でもあるのだ。

 

…大災害の日以降、地上の殆どの地域は住めなくなった。旧人類にとって毒となる〈具現化した魂〉…即ち〈星のセラム〉が、世界を覆い尽くしたからだ。

 

……その日、僅か一瞬の内に〈星のセラム〉に呑まれ滅んでしまった街々。そんな街には、未だ未回収の資源が多く残っている。

 

…それを集めるのが、回収者(サルベージャー)の仕事だ。そして、集まるのは資源だけじゃ無い。

 

「あ…写真…。」

 

 無造作に転がる鉄骨を持ち上げた時、ノアの目に映って来たのは額縁に入った小さな写真だった。

 

 額縁はひび割れて、中の写真もだいぶと褪せているが、其処には幸せそうな笑顔を浮かべている家族の姿が写っていた。

 

「………。」

 

 それをそっと拾い上げ、埃を払うノア。…そう、資源だけが街からサルベージされるのでは無い。

 

『思い出』もまた、瓦礫の中からサルベージされ(よみがえ)るのだ。

 

 誰かが…名前も顔も知らない誰かが生きた…生きていた証。それは探せば探す程、瓦礫の中から出てくる。

 

「……ん。ーーーコレは指輪か。コッチは…ランドセルだ。」

 

 闇の中に沈んだ誰かの『思い出』を拾い上げ、両手に抱えていくノア。

 

 かつての持ち主は生きているのだろうか?…災害を生き延びて、どこかで笑って過ごしているのだろうか?それとも、もうこの世を去って空を舞う、あの〈星のセラム〉の一部と化しているのだろうか??

 

 

……それは神しか知らない事だ。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 人々の思い出を集めたところで、ノアに出来る事は限られている。回収した遺品とも呼ぶべき代物達は、資源にはならない。でも、それをそのまま放っておく事は、ノアには出来なかった。

 

 だから拾い集め、そして供養するのだ。……持ち主が今どこに居ようと、生きて居ようと死んで居ようと、失われて二度と戻る事の無い日々の中に確かにあった物を、闇の中から見付けられたのだと教える為に。

 

 

 


 

 

 

11月24日(同日)

 

 

場所:とある場所

 

 

 

 地平線の果てまで、十字架が突き刺さっているーーーーーーーーーなんて言ったら、言い過ぎだと思われるだろう。

 

 しかし、あながち誇張した表現でも無い。ーーー何せ、此処は巨大な〈旧人類共同墓地〉なのだ。

 

…大災害の日に、一瞬の内に〈星のセラム〉に呑まれ、死んだ人々。…例え生き延びても、その後現れた〈壊獣ノーマン〉達が生き残ろうとする人々を嘲笑う様に駆逐していった。

 

 彼等の殆どは遺体や遺品の回収も出来ず、滅びゆく街の中に置き去りになってしまった。……だからせめて…せめてその魂の安寧だけでも祈れる様、世界各地に共同墓地が作られたのだ。……しかし、果たして生者の祈りは、本当に死者に届くのだろうか?

 

ーーーそれもまた、神しか知らない事だろう。

 

 

 

 墓地の中心に聳え立つ、巨大な慰霊碑が十字架の森を見下ろす中を、ノアは歩いていく。…横には少女ーーーパンドラと、もう1人…ノアに廃墟で《オペコ》と呼ばれた女性が続く。

 

 やがて、3人は大きな広場らしき所に辿り着いた。其処には中ぐらいの大きさの慰霊碑が点々と建っており、その碑の下には沢山の小物類ーーーアルバムや、ぬいぐるみ、誰かの名前が書き込まれたサッカーボール等が、花束と一緒に置かれている。

 

…すべて、滅びた街から見つかった『誰かが生きていた証』だ。

 

 それに写真の入った額縁と、ランドセル。そして、指輪の入った箱を加えるノア。…そして、小さく手を合わせる。

 

隣のパンドラとオペコも、それに倣った。

 

「…自分達には祈る事しかできないけれど。……どうか、安らかに眠って下さい。」

「ええ…安らかに……。」

「…どら!」

 

 

ーーーーーー優しい風が、辺りを揺らす。…その風に乗って、想いが空に伝わって行く……そんな気がノア達にはした。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー11月24日(同日)

 

 

場所:移動要塞都市〈オーステルン 北商業区〉

 

 

 

 

 空に誰かの叫び声が響く。…拡声器を使っているのだろう。矢鱈と耳に付く、キーキーとしたノイズ混じりの声だった。

 

『…皆さんは死んだら最後、もう2度と愛しい家族や友人達に会えないーーーそう思ってないですか?!』

 

 拡声器越しに声を張り上げるのは、なんだか怪しげな格好をした2人組だ。

 

…道行く人達は、大体が見て見ぬふりをしている。こんな風に街の一角で誰かが騒ぎ立てるのは、別にこの街じゃ珍しい事じゃない。

 

『ーーー死に別れた大切な人達に…ただ祈りを捧げる事しか出来ないと…そう思っていませんか?!』

 

 尚も拡声器から大勢に向かって、問いかける様な声が響く。……足を止めて、その声を聴いている人もチラホラ居るようだ。

 

 怪しげな2人組は、さながら宗教勧誘でもするかの様に、言葉を紡いでいく。

 

『そう思って、悲しみに囚われていませんか?!ーーー最初に言っておきます!もう、死が誰かと誰かを分かつ時代は終わったんです!!』

 

『この世界は、魂の存在が証明されました。…あの日、〈星のセラム〉によって。ーーーーーー亡くなった人たちの魂は、世界を覆う〈星のセラム〉へと還って行くことが判明したのです!!…つまり私達の直ぐそばに、嘗て愛したかも知れない大切な人の魂が、眠っていると言うことなのです!』

 

 身振り手振りを交えながら、2人組は街頭で熱弁する。…よく見ると、肩に何か漢字二文字のロゴマークのような物がーーー……

 

『……もう一度会いたい。触れ合いたい。…その思いを抱えたまま、生きて行くのは辛いでしょう!!ーーーーーーーしかし()()なら、貴方のその『もう一度会いたい』と言う願い……それを、叶える事が出来ます!!』

 

 一体彼等は何を言っているのだろう?ーーーと、半ば疑問に思って話を聴く人達が街頭に増えてきた。

 

『…何故なら、我々は〈星のセラム〉の中から望んだ魂を探し出し、肉体を与え、再びこの世に生を受けさせると言う(すべ)を、研究し続けて居るからなのです!』

 

……中々にぶっ飛んだ話だ。古今東西あらゆる魂が混ざり合い、坩堝の諸相を見せている〈星のセラム〉から、特定の魂だけを取り出し、剰え蘇らせるなど不可能でしか無い。

 

 しかし、もし。…もし、そんな事が可能になったのなら……

 

『ーーー今はまだ未完成な(すべ)ですが、完成した暁には世界から『死』の概念は消える事でしょう!大切な人達を喪っても、魂を見つけ出せば、また会えるのです!…勿論、逆も然りです!』

『ーーー貴方が例え死んでしまっても、また生き返って戻って来れるのです!心残りを残したまま死ぬ…なんて事は無くなるんですよ!!』

 

2人組は尚も声を張り上げる。

 

『死無き世界へ、共に歩みませんか!?ーーーーーー我々〈幽世(ゴースト)〉なら、その世界を実現させる事が出来るのです!!!』

 

 

「ーーーーーーーーーまだそんな事言ってたのか。」

 

 

…と、此処で2人組の話に割り込む者が1人、現れた。

 

ーーーーーーー体に纏った黒いレザースーツ。腰には、装飾の施された一振りの太刀。赤のメッシュが少し掛かった白い髪。

 

……〈イースター〉のリーダー、バサラである。

 

 

 

「…は?…なんですか、いきなり?ーーー貴方は誰なんです??」

 

 拡声器から口を離し、困惑した様に口を開く〈幽世(ゴースト)〉の2人組。

 

 バサラは静かに話し出す。…言葉の端々に、微かな怒り(それとも哀れみ?)を乗せて。

 

「…最近、この街で()()()を聞かなくなったから、てっきり居なくなったのかと思ってたが…。まだそんな世迷言を言ってたとはな。」

 

 二人組を睨み付けながら、彼は話を続ける。

 

「……一つ言っておく。死んだ人間は生き返らねぇんだよ。どれだけ願っても、喪ったモノは帰ってこない。()()()()ライオのおっさんも、アビスのダチだった奴も皆んな皆んな、死んじまったら其れ迄なんだよ。」

「そんな事ーーーーーーー」

 

 何処か達観した様に話し続けるバサラに、〈幽世(ゴースト)〉の2人組が言い返そうとして、バサラに遮られる。

 

「ーーーーーーだからこそ人は己が生きて居る内に、少しでも多くの物を残そうとするんだろ??…信念しかり、生き方然り………。ーーーーー帰ってくれ〈幽世(ゴースト)〉。死者(過去)に囚われ、ずっと後ろばっか見てるお前らみたいな奴が、前を向いて生きようとしてる奴等の足、引っ張んじゃねぇ。」

 

「………!!」

 

両者は街角で睨み合う。

 

 

……最終的に睨み合いに負けたのは、〈幽世(ゴースト)〉の方だった。

 

 恨めしそうにバサラの方を見遣りながら、その場から立ち去って行く。

 

 それを黙って見送った後、バサラもその場から姿を消した。街頭に集まって事態を見守っていた人達も、次々とその場から去って行く。

 

 

 やがて、街は何時もの乱雑とした喧騒に戻っていった………。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「はぁ………。くそ…。」

 

 繁華街の高架下で、バサラのため息が木霊した。

 

 鉄筋の柱にもたれ掛かりながら、バサラは静かに独りごちる。

 

「……あんな事…俺に言えた義理じゃねぇのにな…。」

 

 思い出しているのは、先程自分が〈幽世(ゴースト)〉に向かって言った言葉だ。

 

…あの時街角で、ふと彼等の言葉が耳に入った。そしてソレを聞いた瞬間、おもわず前に出てあんな風に啖呵を切ってしまったが、あの言葉は自分にもそっくり返って来ている気がする。

 

 

「…結局俺も、まだ囚われてるって事か。ライオのおっさんが見たら怒るだろうな…。」

 

自分が居る高架の上を、車が通って行く。

 

その音を聞きながら、バサラは小さく呟いた。

 

 

「ーーーーーーなぁ……お前も、囚われたままなんだろ?……コクウ。」

 

 

 その呟きは誰にも聞かれず空に消える。…その意味を知る者も、今此処には居ないーーーーーーーーー………。

 

 

 

 

 





ノア君ですが、多分この話で出番終了です()

 なんか、気がついたら指が動いてノアの話を書いてたんよ。…フシギダネ。

 んで〈幽世(ゴースト)〉!…バサラがいる以上避けれない存在ですね。
 もっとも、この小説内での彼等の行動理念は、原典とは大分と変わった物になっておりますが。

ほな、また次回〜。
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