モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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運命は動き出す(…多分)





51話 〈星屑の街 再び〉

 

 

 

 

 

 〈獣神祭〉。

 

 

 それは、古き年の終わり。そして、新しき年の始まり。

 

 

 共に踊り、共に喜び、共に祝い給え。ーーーーーー新たな夜明けを。新たな時代を。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

12月29日

 

 

場所:星屑の街〈アステール〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(久しぶり…って言うほどでも無いな。ーーー2ヶ月ぶりか。)

 

 

 

 〈アステール〉の石畳の道を踏み締めながら、ニュウは心の中でそう呟いた。

 

 相変わらず、周りには人の群れ。…一度人の流れに呑まれて仕舞えば、そのまま押し流されてしまいそうだ。

 

…しかも、人の数が前の比じゃない。

 

「前も言ったが、逸れんなよ?!ーーー支部に着くまでは、固まって動け。支部に着いたら、もうお前らの好きにして良いからな。」

「分かってるってバサラさ〜ん。」

「うわ……こんなにいっぱいの人が……。凄いね。まさにお祭り…!」

「あぁ…キラリは〈アステール〉は初めてか…。」

「連邦兵としてなら、あの時に……。だから、厳密な意味では2回目??」

「…確かにそうだ。2回目か。」

 

 ニュウの隣で、仲間たちの声が響く。

 

「ーーー前より人が多いですね。……流石、〈獣神祭〉。」

 

 ニュウは、バサラたちに置いてかれない様に足を動かしながら、隣を歩くネオに話を振った。

 ネオが、若干疲れたかの様に口を開く。

 

「…ミキサーで混ぜられてる気分がするよ。…体があっちこっちにぶつかるもの。」

「ふふ……ミキサーとは…言い得て妙ですね。」

 

ーーー確かに、歩く度に誰かの肩やら腕やらにぶつかり、わちゃわちゃとしているこの状況は、ミキサーで混ぜられていると言っても過言では無い。

 

 

 

 この人の多さには、勿論訳がある。

 

 先程のニュウの話にも出て来ていたが、今〈アステール〉は年末年始の祭典ーーーーーーーー〈獣神祭〉の真っ只中なのだ。

 

 

 この世界の実に広い地域で、毎年行われる祭典。それが〈獣神祭〉。

 一年の終わりにのみに開催されるお祭り騒ぎ。地域によって多少の差異こそ有れど、どれも例外なく魅力的な祭典であるーーーーーー。

 

 

 

「……にしても、ちょっと…いや、かなり壮観ですよね…。ーーー()()()()()()()()が、一堂に会していると。」

 

 人混みに揉まれながら、ニュウが上を見上げてそう言う。釣られてネオも顔を上に向けた。

 

……2人の見上げる先ーーーアステールの街の外れには、何隻もの移動要塞都市が停泊している。

 まるで、アステール全体が巨大な城に取り囲まれてしまったかの様だ。

 

「オーステルン一隻だけでも存在感が凄いのに、アレだけの数の移動要塞が有れば、最早圧迫感すら感じますね。…地平線が見えないですよ。」

 ニュウの呟きに、ネオは頷いた。

「オーステルンと同じ〈超弩級移動要塞都市〉は、オーステルン含めて3つしかないけどね。」

「…いや、その3つで西の空が埋まってるんですって。…改めて見ると、デッカいなぁ…オーステルン。左右の〈超弩級〉は、なんて言う都市なんだろ?」

 

 ニュウの疑問に、答えるネオ。

 

「あの銀色の船みたいなのが、〈超弩級移動要塞都市フィンディアス〉。隣の金色にピカピカしてるのが、同じく〈超弩級移動要塞都市トーリー〉。……別に覚える必要はないけど。」

 

 ネオの指差す先にある、2つの巨大な要塞都市を見ながら、ニュウは呟いた。

 

「なるほど…。しかし、あれだけの巨大なモノ…よく人類は作れましたよね。…オーステルン然り。ーーー流石は人類の作った最大の構造物。」

「ーーーそうだね。凄いと思うよ。」

 そう彼女は頷いた。

 

 その3つの巨大な要塞都市と、その周りに停泊する幾回りか小さい要塞都市群に見下ろされながら、ニュウ達は〈アステール支部〉を目指すーーーーーーーーー。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

……〈アステール支部〉の門を叩くのも、コレで2回目。

 

 

ーーーーーーギュイーーーーーンッッ!!!

 

 

「うわあッ!?!?」

 

 

 半開きのドアの隙間から飛び出て来たチェーンソーに、切り殺されそうになるのもコレで2回目だ。

 

 

「び…び…びっくりしたぁ…。そっか…そう言えば、初見で殺しに来るんだった……。」

 

 前と同じ展開に、前と同じ様にネオに支えられながら、ニュウは冷や汗をかいて呟いた。

 

「変だね……。シャイターンはちゃんと人の顔を覚えて、2回目からはちゃんと応対して来る筈なのに…。」

 彼の背中を支えながら、ネオが呟く。

「俺の事、忘れてるとかそんなんじゃ無いですか?久しぶりだし。」

「…でも、2ヶ月だよ?そんなに久しぶりじゃ無い。」

 

 2人が話す前でバサラがドアを開け、中からボサボサ金髪メイドーーーシャイターンが姿を現した。

 

「おはよう御座います。…イースターの皆々様。」

「おう。おはようシャイターン。入っても良いか?」

 バサラの問いに頷く彼女。

「勿論です。ーーーーーーどうぞ。」

 

 バサラに続いて、支部の屋敷の中に入るニュウ達。…彼女の横を通り過ぎがてら、ニュウは彼女をチラリと見た。

 

「……。」

 

 黙って彼女はお辞儀を返す。ーーー少なくとも、自分の事を忘れている様な雰囲気では無い。

 

(ま、良いか。…別に俺の事を覚えてようが、覚えて無かろうが、どうでも良いし。)

 

 そうニュウは心の中で呟いて、先へと進んだ。……後ろでシャイターンが、ジッと自分の背中を見つめている事に気付かぬまま。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「おー、バサラ!!遂に来たか!……獣神祭へ、ようこそ!!」

「ーーーようこそ、です。」

 

 支部の大部屋に入ると、アルスラーンとアビスが彼等を出迎えた。

 

「よぉ。2ヶ月ぶりだな。ーーーーーーそれはそれとして、すげぇ活気だったぞ?街ん中は。…12月とか言う、めっちゃさっむい日に人の熱気で汗をかくとは、思わなかったぜ。」

 

 バサラのその声に、アルスラーン達が笑う。

 

「だろう?ーーーーーーま、仕方の無い事さ。今は獣神祭…しかもこの街初の、連邦の介入が無いお祭りなんだから。…ほら、見たまえ。」

 

 アルスラーンがそう言って、部屋の窓から外を見る。

 

 周りより少し高い丘の上に建てられている屋敷からは、街が一望できた。

 

 

 

ーーーーーーーーーそして、窓の外から見える街並みは、実に活気に溢れていた。…普段なら喧騒とは離れた場所である、屋敷の周辺の住宅街でさえ、今はお祭り騒ぎである。

 

 

 空には凧揚げの凧が舞い、街の建物と建物の間を縫う様に、様々な色に光る提灯が飾ってある。

 

…きっと夜になったら、天の星が地に降りて来たかのような、輝かしい景色になるだろう。

 

 

「おおー。壮観!」

「やっぱり賑わってるね〜。祭りは大好きだよ?私。」

「ふふ…。祭りはやはり、夜からが本番さ。…楽しみにして居ると良い。」

 

 アルスラーンが、窓の外を見るニュウ達に微笑みながらそう言った。…確かに、コレは夜が楽しみだ。

 

 

 

「ーーーよし。…じゃ、解散だ!お前ら後は好きにしろ!俺も好きにするからな!」

 

 バサラがそう言って、手を叩く。

 

 それを合図に、アミダが手を上げた。

 

「やったぁ。ーーーーーー私凧上げたい!…てか、作って来た!!」

 ニュウが驚く。

「作って…?自作??」

「そのとーり!…ほら、見てよコレ。力作なんです!」

 

 バサッとアミダの持っていたショルダーバッグの中から、ムゲンのマークが連なった独特な凧が、顔を出す。

 

「…おお…。なんか…カラフルっすね…。」

「名付けて、インフィニティカイト!…コレ上げたら綺麗なんじゃ無い〜??」

 

 ニコニコで言うアミダ。…確かに綺麗だろう。なんか絡まりそうだけど。

 

「…どう?ニュウ君も上げる?コレ。」

「ーーーえ。凧揚げはやった事ないんですけど…。」

 

 アミダがニュウの肩に手を置く。

 

「大丈夫、大丈夫!なーんにも難しくは無いから、一度で良いからやってみなよ〜!ーーー飛ぶよ?文字通り。」

 

 ニュウは一瞬思案したが、やがて頷いた。

 

「…そう…ですね。どっちにせよ、街には出るつもりなんで…ついでにやってみましょうか。」

 

 アミダはニカっと笑った。

 

「やった。ーーーーーーハル…ハレルヤは〜?凧揚げる〜??」

 

 続いて話を振られたハレルヤは、特に躊躇う事なく頷いた。

 

「うん。やるよ。ーーー因みに、上げるなら広い所を探さないとね。…オルディナ街道とか…良いんじゃ無いかな?」

「オルディナね〜。了解!……あ!あとサクアちゃんも連れてこよ!ついでにフェムトも!」

 

 そう言って、部屋を飛び出していくアミダ。

 

(サクア…サクアって誰だっけ……?フェムトは覚えてるけど……。サクア…?)

 

 一瞬ニュウは考えてから、緑髪ケモ耳少女の事をなんとか思い出した。

 

(あ〜…そう言えば、そんな人いたな。…あんまり顔合わせて無いから、忘れかけてた。)

 

 

 

 一方で、バサラはアルスラーンと話している様だ。

 

「ーーーなぁアルスラーン。ハクビの姿が見えねぇが、アイツ何処に居るんだ?」

「…あぁ。ハクビなら、今此処には居ないぞ。…彼女は、明日と明後日に行われる獣神祭の催し物に出るのからな。その練習をして居るんだ。」

「ほぉ〜。何処で?中心街か?」

「そうだ。ーーーーーー様子、見に行くか?私が案内するぞ?」

「ん〜…。そうだな…行ってみるか。」

 

 

 

 一方、バサラ達が話している近くでは、アビスがカノンと話していた。

 

「…カノンはやっぱり行くの?あの子の所。」

 『あの子』ーーー恐らく、イースターに入る前にカノンと一緒に居た少年……の事だろう。

 頷く彼女。

「…取り敢えず、今日は顔を出すだけにしようかなって。…大晦日にしっかり会う予定だね。」

「そう。……時々会うけど、あの子楽しみにしてるよ?貴女が来るの。」

「……!それは……うれしい、な。」

 

 

 

 如何やら、各々のやりたい事は固まったようだ。ただ1人ネオを除いて。

 

「………。」

 

 肝心のネオは、壁に座り込んで黙って音楽を聴いていたが、彼女の目は部屋の中を彷徨っていた。

 

…バサラとアルスラーン、そしてアビスが部屋を出て行く。入れ違いで、アミダがサクアを抱えるように連れて来た。…如何やら巻き添えを食らったであろう、フェムトも居る。ーーーーーーそして、羨ましい位の笑顔でニュウ達を引き連れて、アミダも部屋を出て行った。

 

 ネオの前で、扉が閉まる。……やけに大きい音を立てるモノだ。

 

 

 

「……1人ぼっちか……。」

 

 空になった部屋の中で、ネオは独りごちる。……と、そこでモップを片手に持ったシャイターンが、ヌッと入室して来た。

 

「おや。ネオ様…他の方とご一緒では無かったのですか?」

 

 シャイターンの気怠げな目が、ネオを捉える。

 

「…あ。うん……。」

 

 ボケっとネオが答えた。…シャイターンはそんな彼女を横目に、モップで部屋を掃除し始める。

 それを何となく目で追っていたネオは、彼女の背中にぶら下げられているチェーンソーを見てふと、口を開いた。

 

「シャイターン。」

「はい??」

 

「………さっき、玄関の向こうに居たのがニュウだって知ってたよね?ーーーなんで、最初の時みたいにチェーンソーを使って来たの…?」

 

 ネオの疑問に、シャイターンは少し立ち止まってから、口を開いた。

 

「不快にさせたのなら…謝ります。…ただ、一つ私は気になるのです。」

「…気になる?」

 

 反芻したネオに向かってシャイターンは、少し真剣な目になって話しかけた。

 

 

「あの方は、本当に〈イースター〉の仲間なのでしょうか?」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

場所:アステール《オルディナ街道》

 

 

 

 

ーーーーーーーーニュウが初めて訪れる《オルディナ街道》は、大きな歩行者天国だった。

 

 所々に広々とした公園があり、何処も人で賑わっている。公園には、アミダと同じ様に、凧を揚げにきた人たちがちらほら見受けられた。

 

 

 

 

「おりゃあ!!いっけーー!インフィニティカイトーーーー!!」

 

 アミダの声と共に、ムゲンのマークが空に舞う。

 

「おおーーー!やったよ皆?!上手く飛んでる飛んでる!!…よし、誰よりも高く飛ばすぞーー。」

 

 空に響く彼女の歓声。キラリが笑いながら呟いた。

 

「…本当にもぉ……。子供っぽいんだから。」

 ハレルヤが微笑んで、口を開く。

「17歳だし、子供だよ。それに……実際、凄い凧じゃん。ーーーコッチまで、はしゃぎたくなる。」

 

 隣に居たサクアが、ハレルヤの横を通ってアミダの方に駆けていく。

 

「アーミーダー!!私にもやらせてー!?」

「おー、サクアちゃーん?!やる??飛ばし方教えよっか?」

「…うん。お願い。」

「よし来た。まっかせなさい!!」

 

 やいのやいのと言いながら、凧を上げていく2人。

 

 それを見て、フェムトが小さく呟く。

 

「…綺麗な凧だ…。とっても…。」

 隣でニュウが頷いた。

「そうですねぇ。ーーーよく目立つ。…処で、アステールでの暮らしは如何です?フェムトさん。」

 フェムトは目を瞬かせてから、口を開いた。

「え…?ーーーあ、うん。みんな、僕の友達になってくれてるよ。…こんなに友達が増えた事なんて…初めてだ。」

 

…嬉しそうに話す彼を見て、ニュウは小さく笑った。

 

「そうですか……。それは良かった…本当に…。」

 

 

 

 

「おーい!キラリ〜!ニュウ君!ハレルヤもー!…凧揚げないの〜?」

 

 公園の真ん中で、アミダが飛び跳ねながら手を振って来た。

 

 

「お、揚げます揚げます!」

 

 そう言って、ニュウが前に出る。

 

「じゃ、揚げようかな。…正直、やった事ないんだよ。俺。」

「大丈夫。ああ見えて、アミダちゃんは教えるの上手いから。」

 

 ハレルヤ達も後に続いた。

 

 

……空にインフィニティカイトが舞う。…誰よりも高く、空の彼方へ届けと言わんばかりに……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………

 

 

 空を揺らす駆動音。

 

 雲海にポツリと影が落ちる。

 

 

 

ーーーーーー影の主は、大きな飛行艇だった。

……不思議な見た目だ。丸っこいドローンの様な形の飛行船の上に、お城が丸々一個乗っかっている様な、奇抜な外見をしている。

 

 

 しかも、その城は無数のスポットライトや、輝くネオンの電光で彩られているのだ。

 

 ネオンの光で、照らされた城付き飛行船。…そんな船には、側面に輝く文字で、こんな言葉が浮かび上がっている。

 

 

ーーーーーー奇巌城(エギーユ・クルーズ)

 

 

 

 

 

「……さて、予定より少々遅くなってしまったわね。……この感じだと、星屑の街に着く頃には夜になりそう。」

 

 城の窓から雲海を見下ろしつつ、1人の女性が口を開く。

 

『ガァ、ガァ!!』

 

 彼女の側で、かなり細長いシルクハットを被ったカラスが、何度か鳴いた。

 

「ふふふ……慌てる必要は無いわ。ーーーヘンドリックス。どうせ、祭りは1日では終わらないもの。」

 

 彼女は窓の縁に腰掛けて、ゆったりとした口調でカラスに話しかける。

 

「会うのは久しぶりね…。本部の皆んなにも…支部の皆んなにも。」

 

 

 

 微笑む彼女の名前は、『アルセーヌ』。

 

 

 

ーーー〈奇巌城(エギーユ・クルーズ)〉の主。天才にして孤高の怪盗。

 

 

 

 そして、反連邦団体〈イースター〉の密かな一員でもある。

 

 

 

 

 

 






………アルセーヌの事忘れかけてたなんて言えない。なんとか思い出しましたけどネ。

 取り敢えず4章〈獣神祭編〉スタートです!

 さて、どんな風に物語は進んでいくかな……?(ノープラン)
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