モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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前回の補完

 適応型新人類とは、旧人類が星のセラムに適応して新人類化した人達の事を指します。

…はい、以上!


54話 〈 WHO ARE YOU 〉

 

 

 

 

「ア…アルセーヌ…。ーーーバサラさんが言ってた人?獣神祭で会えるって…。」

 

 ニュウの声が廊下に小さく響く。

 彼の上に馬乗りになっている女性ーーーアルセーヌは、小さく微笑んで口を開いた。

 

「ふふ。彼はちゃんと説明したのね。ーーーいい加減な所あるから、どうかなって思ってたけど、仲間内の事はちゃんとやってる様で何よりだわ。」

 

 そう言った彼女に、ニュウは顔を顰めつつ話しかける。

 

「…つまり、貴女は仲間って事で良いんですよね?」

「ええ。そうね。」

「……じゃあ、なんで屋根の上でコソコソしてたんですか?ーーー泥棒かと思いましたよ。…いや、まぁ実際怪盗だったんですけど…。」

 

 ニュウの疑問に、アルセーヌは然もありなん、と言った顔で口を開いた。

 

「…怪盗は正面からは入らないモノよ。当然でしょ?」

 ニュウは一瞬納得しかけて、すぐに首を傾げた。

「なるほど。………ん?いや、そ、そうなのか??そんなモノなのか???」

 

……もしかしたら、形から入るタイプなのかもしれない。

 

 ニュウがまた口を開こうとした時、近くから此方に向かってくる足音が2つ、聞こえて来た。

 

ーーーーーーコレはおそらく………

 

 

「……おや?アルセーヌ様でしたか。」

 

 ニュウとアルセーヌの前に、チェーンソーを構えたシャイターンが現れる。そのすぐ後ろにネオも居た。

 

 アルセーヌがニュウの上に乗ったまま、軽く手を上げる。

 

「久しぶりシャイターン。…長い事会ってないけど、覚えていてくれて嬉しいわ。」

「…私は一度見た人の顔は忘れませんので。」

 シャイターンがペコリと頭を下げる。そしてチェーンソーを仕舞い、モップを代わりに取り出して口を開いた。

 

「…お二人共、部屋を荒らしては居ませんか?」

 

アルセーヌが頷く。

 

「それなら大丈夫よ。ーーー多少、床の絨毯が乱れた程度ね。今退くわ。」

 

 そう言って、彼女はニュウの上から退いた。少し軽くなった体を起こして、ニュウは小さくため息を吐く。

 

「急に荒っぽくして悪かったわね、ニュウ。…重かったかしら?」

「…重さについて答えたら不味い気がするので、ノーコメントで。」

「ふぅん。…上手く躱したわね。」

 

 ニュウの前で、シャイターンが絨毯をささっとモップで撫でて、立ち去って行く。

 

 一方で、少し唖然となっているらしいネオ。ーーーそんな彼女にアルセーヌは、手を振って挨拶する。

 

「其方も久しぶりね、ネオ。……会うのはコレで2回目かしら?」

「え…あ、うん。そうだね…。」

 頷くネオ。そのまま、彼女は眉を顰めてアルセーヌに問う。

「ーーーーー彼と何、してたの…?4階で。」

 アルセーヌは軽く答えた。

「屋根上でバッタリ彼と出くわしただけよ。ーーー泥棒かと思われたみたい。…ふふ。間違っては無いけど、間違いね。」

 

 ニュウは肩をすくめる。ネオは小さく頷いた。

 

「……そう。ーーーで、貴方は(そう言ってニュウの方を見る)なんで戻って来たの?アミダ達と一緒に居たんじゃ……。」

「あぁ、祭りの熱気にやられましてね。頭を冷まそうと思って。ーーーーーーネオさんは、もしかしてずっとこの屋敷に居たんですか??」

 

 コクリとネオはまた頷いた。

 

「…あぁ。そうだったんですか…。俺、ちょっと休んだらまた街に戻るつもりなんですけど、ネオさんも今度は来ます??」

 

 ネオの頭がピクリと動いて、一瞬彼女の表情が変わる。…でも、直ぐに表情が元に戻った。

 

「…ううん。良いよ。…夜の獣神祭はすごい人になるし。人に揉みくちゃにされるのは、遠慮しときたいな。」

「ん〜。そうですか……。でも折角のお祭りなのに、この屋敷で1人居るのも退屈なのでは??」

「平気だよ。……元々、賑やかなのを外から眺めてるの方が、1番性に合ってるし。…此処にいても、お祭りの空気は感じれるから。」

「……はぁ…。」

 

 そう会話する2人を、興味深いモノでも見るようにアルセーヌは交互に見ていたが、徐ろに会話に入ってきた。

 

「…因みにだけど、ニュウ。…バサラが何処に居るか分かるかしら?」

 

「ーーーーーえ?…あぁ、バサラさんなら…確か中心街に行ってると思いますよ?アルスラーンさん達と一緒に。」

 

 今朝、部屋を出る前に聞いていた会話を思い出しながら、ニュウは答えた。アルセーヌは納得したかの様に頷く。

 

「なるほど。…それじゃ、私も一息付いたら向かおうかしらね。……闇に溶けるのも、溶かすのも、そこそこスタミナを消費するのよ。」

 

 そう言って、彼女はスタスタと歩きだす。…ニュウはネオと顔を見合わせて、彼女に続いて歩き始めた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

ーーー アステール支部 1階 客間 ーーー

 

 

 

 

「……さてさて。一息付くには『コレ』が1番なのよね。」

 

 客間に辿り着いたアルセーヌ。彼女は優雅に椅子に座ると、空中に生み出した〈セラムキューブ〉から幾つかの小瓶を取り出し始めた。

 

 それを見て、驚くニュウ。

 

「キューブの中から、物が出てきてる……??どうなってるんですかソレ??」

 

 アルセーヌは小瓶を開け、何処からともなく取り出した小さなグラスに、中身を注いでいく。……スッキリする爽やかな香りが漂って来た。

 

「……中に入れてるだけよ。…セラムキューブは別次元の様な物。ーーーその内部に入り込めば、姿を隠したり物を仕舞い込んだりも出来る。ポケットみたいな感じかしら??…ま、コレが出来るのは私だけみたいだけど。」

 

 そう答えた彼女は、小瓶の中に入っていた液体で満たされたグラスを、クイッとあおる。

 

…そして小さく息を吐いた。

 

「…ふぅ。ーーーーーただ、キューブの中に自分が入り込むのは、危険を伴うのよね…。他人を入れる時もそうだけど、キューブの()()()()へ呑み込まれない様に己を保ってないといけない……。」

 

 そう言って、彼女はいつの間にか取り出していた2つの小さなグラスに、別の小瓶の中身を注いでニュウとネオにスッと渡した。

 

「…どうぞ。特にニュウ、貴方ヒトの熱気にやられたって言ってわね。ーーーコレが丁度いいと思うわ。…遠慮せず飲んでみなさい?」

「……何なんですコレ?」

 

 一応グラスを受け取ったものの、訝しげな顔を浮かべているニュウに、アルセーヌは答える。

 

「ーーー『スタミナミン』…ソレの精神版とでもいう物かしら?…精神的疲労の軽減になるわよ。」

 

…なるほど、と一口飲んでみれば、柑橘系を思わせる味と香りがスルリと喉を通っていった。……確かに頭が冴え渡った気がする。

 

「…へぇ。」

「悪くは無いでしょ?」

「悪くは無いですね。」

 

 そう答えて、ニュウは残りを飲み干した。それほど量は無かったので、すぐにグラスは空になる。

 一方のネオは、渡されたグラスを机に置いて飲まずに眺めていたが、徐ろにニュウに向かって話しかけて来た。

 

「……凧、上手く揚げられた?」

「ーーーへ?」

 

 唐突な質問だったので、一瞬ニュウは目を瞬かせたが、直ぐに彼女の言わん事を理解して頷いた。

 

「あぁ。…揚げられましたよ。意外と楽しいもんですね、アレ。ーーーーーーアミダさんとかサクアさんとか、メッチャはしゃいでました。…ただカラフルな紙細工を空に浮かべるだけなのに、どうしてここまで心惹かれるのか……。」

 

ネオは小さく頷いた。

 

「そうなんだ。…なら良かったよ。」

「やっぱり、ネオさんも来るべきですよ。…もう夜なんで、凧揚げはムリですが、街に出るのも悪くはないと思いますよ?」

 ネオは微笑んでから、首を振った。

「ありがと。…でも大丈夫。私は此処に居るつもりだから。」

「…そーですか…。」

 

 相変わらず、このやり取りを興味深そうに見ているアルセーヌ。

 ニュウは一息付いて、椅子から立ち上がった。

 

「……あ、そうだ。トイレ借りたいんですけど、何処にありましたっけ??」

「…1階のトイレなら、食堂の手前にあるよ。…場所、分かる?」

 

 ネオが答える。ニュウは頷いた。

 

「食堂の手前ですね。…了解。」

 

 そう言って、彼は客間から出て行く。…ソレを見送って、ネオは一口グラスの中身を口に含んだ。

 

「ん…甘い。」

 

 そう呟いて、二口目を口にするネオ。……そんな彼女を黙って見つめていたアルセーヌは、ふと口を開いた。

 

「んーと…。ネオ?」

 ネオが飲みながらアルセーヌの方を向く。

「…??」

 

 アルセーヌは彼女にしては珍しく、言葉を探す様にネオに向かって話しかける。

 

「…あんまり遠回しに言うと、答えてくれなさそうだから直接的に言うわね。ーーーーーー貴女、彼の事が好きなの?」

「ごふっ?!?!」

 

 唐突に突っ込まれた問いに、ネオは思わず咽せた。ケホケホしていると、アルセーヌがそっと真っ白なハンカチを渡して来た。

 

 ソレで口周りを拭きながら、ネオは目を回す。

「けほ、ごほ、………え??え??え???」

……漫画で書くなら、彼女の目は渦を巻いている様に描かれるだろう。

 

 アルセーヌは肩をすくめながら、言葉を続ける。

 

「…あんまり考えた事無かったみたいね。…ただ、貴女は前より間違いなく変わった。ーーーその心の変化が何故起こったのか…『彼』の存在が貴女にとって何か変化を与えたのか……それを知りたかっただけ。」

 

 ネオはぷるぷると首を振った。まだ軽く目が回っている気がする。

 

「……ううん。違うよ…。そんな…そんなんじゃ…無い……と思う。

 

 最後の方の声が、小さくなってしまったのを自覚する。

 

 ネオは混乱していた。頭の中で絶えず思考が巡って、止まらない。

 

(ーーーーーー好き?好きって何??……一緒に居て楽しいとか、安心するとか、そう言うの??…でも、別にそれだったら皆んなに当てはまる…。アミダやハレルヤとかだって、一緒にいて安心しない訳じゃ無い。勿論、楽しい時だってある。ーーーーーーコレは違うの?…大切な人ってモノ??じゃあ、何をもって『大切』になるの???……分からない。分からないよ……。)

 

ーーー巡る思考の中で、こんがらがりそうになるネオ。…今までこんな事、考えた事は無かった。

 

 そして、この思考に答えを見出すには、余りにも彼女は『感情』を知らなさ過ぎたのだ。

 

 アルセーヌはそんな彼女を見つめていたが、やがて自分のグラスに注いである分を飲み切ってから、椅子から立ち上がった。

 そして、グラスや瓶をキューブにしまうと、彼女の横を通り過ぎて客間の出口へ向かう。

 

「…ただの好奇心からの質問だから、あんまり真剣に考えなくても良いわよ。ーーーーーーただ、一つ言っておくわ。」

「………??」

 

 首を傾げたネオに向かって、アルセーヌは部屋の扉を開けながら言った。

 

「…彼は自由の虜囚。ーーー真面目で根っからの悪人では無いけれど、決して強い心の持ち主では無い。何となく、彼からは何者かの悪意の残滓を感じるわ。…もしかしたら、ソレに踊らされて居るのかも。そして、それが今も続いているのか、もう断ち切ったのか…私はそこまでは分からない。」

 

 アルセーヌの言わんとする事は、ネオにはいまいち分からなかった。…ただ、シャイターンが自分に向かって問うた、ニュウへの懐疑の念の言葉が蘇る。

 

『ーーー連邦政府ですよ。……彼らの冷たい吐息が、あの方から流れ込んで来ます………。』

 

 黙るネオの前で、彼女は手を振った。

 

「…彼と深く関わろうとするなら、その悪意の残滓に触れる可能性があるわ。………心の片隅に留めておいてね。ーーーじゃ、私はバサラに挨拶しに中心街へ行ってくるわ。…貴女は貴女のやりたい様にしなさい。それじゃあね?」

 

 パタンと、客間のドアが閉まりアルセーヌが姿を消す。

 

(??……どう言う事なの?虜囚??悪意の残滓??彼は、別に何も………。)

 

 ネオは1人片手で頭を抱えながら、悶々と思考を巡らしていた。アルセーヌからの謎めいた忠告と、唐突に尋ねられた、彼が好きなのか否かーーーーーー考える事が多過ぎて目が回る。

 

(……後で考えよう。目が回る。ーーー取り敢えず…今はーーー……)

 

 

…と、ここでガチャリと扉が開いて、ニュウが戻ってきた。

 

「あれ?…アルセーヌさん行っちゃったんですか?」

 

 部屋を見渡すニュウ。…ネオは何も言えず、彼を見つめた。

 

「………?」

 

 彼の紫に光る目と視線が合う。ーーーーーー何故かそれ以上視線を合わせれなくなって、ネオは目を逸らした。

 

「…ん??どうしたんですかネオさん??」

「…!……何でもない。」

 

 ニュウは訝しげな表情を浮かべながらも、頷いた。

 

「あ、そうですか…。ーーーーーーじゃ、ちょっと早いですけど、俺アミダさん達の所に戻りますね。アルセーヌさんのお陰で、だいぶと気分が良くなったので。じゃあ、また……」

 

 そう言って、手を振って客間から出て行こうとするニュウ。…気付いた時には、彼のコートの端をネオは掴んで止めていた。

 

「……え?」

 

 彼の困惑した声。…ネオは、自分の意志とは別で体が動いて居る様な気がしながらも、素早く口を開いた。

 

「……やっぱり私も行く。連れてってくれる?」

 

 脳裏によぎるのは、『貴女は貴女のやりたい様にしなさい』と言う、アルセーヌの言葉。

 

 そして2ヶ月前アステールで、あのケテルが自分に対して放った言葉。

 

………自分にとって、ニュウは何なのか。

 

ーーー2ヶ月前は、分からないと答えるしか無かった。

 

 でも今、彼と一緒に行けば…彼と一緒に居れば、何か分かるかもしれない。……悶々としたこの感情の答えを、見つけたかった。このままにしたくは無かった。

 

「お。…行く気になったんですか??……もちろん良いですよ!ーーー行きましょうか?」

 

 嬉しそうに笑う彼。…そして2人は客間から出て行く。

 

 

 

 彼の後について歩きながら、ネオは心の中でそっと呟いた。

 

(教えて…ニュウくん…。()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……この獣神祭で、その答えをちょうだい………。)

 

 

 






(^ν^)…ネオ…オマエ……

 今回で29日分の話を終わらせたかったんですが、次回に持ち越しだなコリャ。

…果たしてコレ、どうなるんだ…。私にも分からなくなってきました()続きが楽しみですネ(棒)

あ、後ここのアルセーヌさんは読心術が使えます。…だからニュウくんについて、あんな事言ったんですね。ハイ。

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