モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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イスカリオテのユダ

新約聖書に現れる、イエス・キリストの弟子(十二使徒)の一人。
イエスを裏切ったとされているため、「裏切り者」の代名詞となった。

ーーーpixiv大百科辞典より



59話 星降る夜のユダ

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

〜数時間前〜

 

 

ーーーーーー12月30日 

 

 

場所:〈連邦極秘研究施設〉

 

 

 

「ねぇ…。アビド氏…。」

 

ーーー暗闇の中から囁いてくる様な声が、耳に滑り込んで来る。

 

「…むぅ。なんじゃ、マター。…何ぞ用があるのか??」

 

 その声に、下を向いてパソコンを弄っていたDr.アビドは顔を上げた。…ちょっぴり、煩わしそうな表情である。

 

 そんな彼に、前を開けた白衣に身を包んだボサボサ髪の女性ーーー連邦の研究者にして、研究議会の一員『Dr.マター』が声を掛ける。…闇の中から聞こえる様な、囁き声だ。

 

「……ネオは諦めたの?」

 

アビドの眉がピクリと上がった。

 

「ん?…まさか。ーーーなんで儂にそんなことを聞く?」

 

肩を軽く竦めるマター。

 

「…だって、最近〈覚醒実験〉ばっかりじゃない。…新人類の覚醒が成功すれば、もうネオは必要ではないんでしょ…?ーーー彼女は野放しにしとくつもりなの…?」

 

 アビドはパソコンを弄りながら、口を顰めてマターに話を始める。

 

「いやいや。ーーーネオに関しては、ゾルゲ殿がニュウのヤツに任せてある。…ま、儂も奴のお目付役みたいなコトしとるがの。ーーー基本、向こうからの連絡待ちよ。……全く寄越さんけどな。」

 

 そうアビドは言いながら、少し鬱陶しそうにため息を吐いた。

 

「……はぁ…。そろそろ、彼奴にまた連絡を取る必要があるの…。ゾルゲ殿からも、いい加減連絡をしろと言われとる。ーーー今日の夜にでも、コンタクトをするつもりだ。…発破をかけるつもりでの。」

「ーーーふぅん。」

 

 マターは、アビドの向かい側で机に肘をつきながら、視線を乱雑な研究室内に彷徨わせた。ーーーそして、また口を開く。

 

「…議会は、中々思い切った計画を立てたわね。ーーー彼をほぼ手放した様な物なのに。……裏切りとか、考慮しなかったの?彼は連邦軍の中でも数少ない、極秘研究施設を知る者…。そこそこの機密情報だって持ってるのに……。」

 

 アビドはそれを聞いて、フッと笑った。ーーー笑いの意味がわからず、首を傾げるマター。

 

「???」

「裏切りか。ーーーその心配は無いぞ、マター。」

 

 アビドは掌を広げる。そして、そのまま何かを掴む様に手を握った。

 

「ーーー奴はこの研究所の仲間達の為に、今まで身を粉にして来た。…彼奴は自由を求めてやまないーーーが、自分自身の自由は最早諦めている。しかし、仲間の為なら奴はまだ足掻けるのだ。……我々の手の内にある仲間の影をーーー自由への切符を、ちらつかせれば良い。…それだけで、奴は何でもする。」

 

ーーーニュウが抱く、施設に囚われている仲間達への思いを、いとも容易く利用したその発言に、Dr.マターの顔が悪事を働く人を見ているかの様な、顰めっ面になる。

 

「…悪いこと考えてるねぇ…。人質みたいなものじゃん。」

アビドは否定しない。

「身も蓋もない言い方をすれば、そうだな。ーーーーーー故に、裏切りなど考えなくとも良いぞマター。…奴は裏切りはせん。もし裏切れば、どうなるか…良く知っているからな。」

 

 まるで悪役の様な、卑屈な笑みを浮かべるアビド。

 

「…じゃあ、もしも裏切ったら?」

 

「ーーーその時は、死んでもらうさ。」

 

…アビドはあっさりと言い放った。

 

 

 


 

 

そして、時は夜へ進む…………

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

ーーー12月30日 PM 21:09

 

 

場所:星屑の街〈アステール〉

 

 

 

 

 

 ニュウはベットに腰掛けたまま、両手で顔を押さえて俯いていた。…指の隙間から覗く瞳が、ふらふらと揺れている。

 

…まるで、彼の心の揺らぎを表しているかの様に………

 

(ーーーー俺は……俺はどうしたいんだ……どうすれば良いんだ……。)

 

 

 

……ブブ…ブブ……。

 

 ふと、胸に掛けてある小さな携帯式ライトが、2回震えた。

 

「……!」

 

 顔を上げるニュウ。ーーー続いて胸元に手を入れ、首に掛けてコートの中に仕舞い込んでいた、小さな細いライトを取り出した。………これは、只のライトでは無い。ーーー内部に発信器と極小無線機を内蔵した、通信機器でもあるのだ。

 

ーーーこれが震えたと言う事は………

 

「ーーー連邦。」

 

…連邦が、彼を呼んだと言う事だ。

 

「……………。」

 

 ニュウは暫く黙ってライトを見詰めていたが、やがて立ち上がると窓際へ歩いて行った。

 

 そして通信機へと変わったライトに向かって、小さな声で囁く。

 

「……ニュウです。」

 

 ライトの中に内蔵されている極小のスピーカーから、かつて聴き慣れた声が聞こえて来た。音量を絞って耳元にライトを当てるニュウ。

 

『ーーーアビドじゃ。…久しいのうニュウ。』

「…ええ。」

 

 ニュウはポツリと小さく相槌を打った。アビドの声が、スピーカーから微かに響く。

 

『…上手くいっとるか?』

「………はい。」

 

 短く頷くニュウ。ーーーちょっと、()()()()()()()()()()が。

 

発信器の向こうのアビドは頷いた様だ。

 

『…そうか。ーーーその真理は兎も角、そろそろタイムリミットじゃぞ…ニュウ。…儂等としては、年明けの一月位には何らかのアクションが欲しいと思っとる。ーーー時間が無いのだ…分かるな?』

 

 ニュウはただ黙って窓の外に広がる街並みを見下ろした。ーーー眼下に広がる祭りの灯りが、目に飛び込んでギラギラとする。

 

「…分かっています…。ですが…」

『議会はーーー』

ニュウの言葉を遮る様に、アビドは口を開いた。

 

『ーーー議会は、新人類の選別を強化している。…斯く言う儂も、最近は実験で多くの被検体を消費した。ゾルゲ氏の意向だ。ーーー前よりずっと、基準が上がったのだよ。』

 

…それが意味する事に、気付かないニュウでは無い。息が一瞬詰まった様になる。

 

『…分かるだろう。急かす様だが、君に残された時間は無い。碌に報告もせず、何をくっちゃらべってるのか知らんが、君がこうしている間にも君の同胞は消えて行く。…一月だ。一月にケリをつけろ。』

 

「………!!」

 

 ニュウは思わず、ライトを持つ手をダラリと下げた。

 

 頭の中に、無機質な白い廊下が浮かび上がる。ーーー見慣れた廊下…。あそこで自分の帰りを待っていた、沢山の仲間達。

 

ーーー自分の名前を呼ぶ小さな子供達。そして、自分と同じ位の歳の仲間…。

 

(……いやだ。)

 

ーーーそんな彼等が、ただ静かに『終わって』いく様が、ありありと思い浮かぶ。

 

(……自分は……皆んなを自由にしたくて……。)

 

 その為に、ネオを連邦に連れ戻そうとしていたのだ。…ネオさえ…彼女さえ、連れ戻せばーーーーーー

 

「……ダメだ。」

 

 自分は連邦に囚われた彼女の姿を思い描いた。彼女が連邦でどんな目に遭ってたか、全てを知ったわけじゃ無い。…でも、これだけは知っている。

 

ーーー彼女の自由は金輪際失われる事になる。

 

…彼女の笑顔が、頭によぎる。ーーーアレが…消えてしまう。でも、彼女を犠牲にしなければ、新人類に自由は齎されない。彼女は、新人類研究のマスターピースなのだから。

 

「いやだ…。」

 

ーーー連邦に囚われ自由を無くしたネオ。解放された仲間達。

 

「ダメだ……。」

 

ーーー此処で幸せに生きていられるネオ。囚われたままの仲間達。

 

「いやだッ……。」

 

ーーー此処で生きているネオ。無能の烙印を押され、死んでいく仲間達。

 

「ダメだッ……。」

 

ーーー広い世界に再び解き放たれた仲間達。自由を失い、生きながらに死ぬネオ。

 

「ーーーーーーそれだけは……!」

 

 半狂乱になった様に、ニュウはガクリと両膝を床について、頭を抱えた。

 

 

開け放たれた窓。

 

靡かないカーテン。

 

街を満たす、獣神祭の輝き。

 

夜空を彩る無限の星々。

 

ーーーしかし、最早その全ては空虚だった。

 

 ニュウが無責任にも目を逸らし、頭の隅に追いやり、遠ざけていた運命の選択が今、彼の心をどうしようも無く蝕んでいた。

 

 

ーーーーーーザザッ…と、スピーカーからノイズが聞こえて来て、ニュウは我に帰る。

 

『…ニュウ?分かったな?ーーーこの連絡も、次で最後にしよう。一月だ。…じゃあの。』

 

通信が途切れそうになってーーーーーー

 

「待って下さい!」

 

ニュウは思わず叫んだ。

 

ーーー自分の視界が歪んでいるのを感じている。ネオの笑顔が…ついさっき出会ったばかりの、服の入ったこじんまりとした袋を、胸で抱き締めて笑った顔が脳裏によぎり、ノイズと共に消える。

 

「……これ以上はムリです……。」

 

消え入りそうな声で、彼は呟いた。

 

…そうだ。ムリなんだ。気づいてしまったから。心を埋める淡い想いに。だからコレをもうこれ以上引き伸ばせない。これ以上伸ばせば、自分は多分、彼女を選ぶ。

 

 だから此処が最後のチャンス……糞みたいなチャンスなんだ。

 

 息が荒くなっている。今から言う事は、ニュウという男の人生史上、最も酷い事だろう。

 

「はぁ…はぁ……俺ーーー()はーーーーー。」

 

…最低だ。最悪だ。正気じゃ無い。ーーーでも、自分はもう引けなかった。

 

 ()()()()()()()()()()()()ーーーーーー()()()()()…。

 

「ーーーやります。」

 

『……ん?』

 

 通信機の向こうのアビドに向かって、泣きつく様にニュウは声を掛けた。

 

 

 

「ーーーーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「は………?」

 

Dr.アビドは、パソコンの前で固まっていた。

 

 一拍置いてから、〈sound only〉の表記が浮かぶ画面の向こうに向かって、唖然とした様に口を開く。

 

「…何を言ってるか分かっとるのか、ニュウ?!…発信器の情報によれば、お前はいまアステールの獣神祭に居る筈じゃ!ーーーフィンディアス然り、トーリー然り、数多の反連邦国家が集う場所に行けと???しかも、明日???いきなりがすぎるぞ。」

 

『分かってます…。でも、そうして下さい。…お願いします……コレ以上は、俺は………。』

 

 画面の向こうから、ニュウの声が聞こえてくる。…アビドの聞いたことのない、消えそうな声。ーーーなぜ彼は、こんなにも弱々しくなっているのだ??

 

「むぅ………明日…明日か……。」

 

 しかし、その声からは、確かに危うい響きがあった。何かが、ニュウを苛んでいる…そんな気がしたのだ。

 

 今を逃したら、ニュウはこの計画を辞めてしまうかも知れない。ーーーそう感じたアビドは頷く。そして、口を開いた。

 

「良いだろう。ーーーただ、今から全速力で此処を発っても、着くのは明日の深夜…と言うよりかは、1月1日の日の出ギリギリになる。それだけ分かっておけ。……お前が強硬手段も厭わないと言うのなら、儂は〈対新人類連隊〉でそちらに向かおう。ーーー待っていろ。…良いな??」

 

『………はい。』

 

 ニュウが長めの沈黙の後、小さな声で答えた。アビドは頷いて、通信を切る。

 

 そして、勢いよく立ち上がった。ーーー躊躇いなく手元にある通信機…(ただの通信機では無い。最高機密情報を扱う時にのみ使う、特別な物だ。)を手に取ると、その向こうに厳しい表情で話しかける。

 

「ーーー儂だ。アビドじゃ。……これより、統帥閣下が研究議会に与えた『新人類対策に関する軍部への命令権限』を、儂ーーー『研究議会所属研究員NO.02アビド』の下に、行使する事を宣言する。ーーー内容を伝達する。静聴せよ。ーーーー兼ねてより進行中だった、特殊作戦の最終段階遂行の為、〈対新人類連隊〉に出動命令。および『T』に招集命令。ーーー目的地は〈アステール〉。詳細は招集時に伝える。ーーー復唱せよ。」

 

 通信機の向こうで、重苦しい声が彼の言葉を繰り返した。

 

『復唱致します。ーーー〈対新人類連隊〉に出動命令。及び、『T』に招集命令。目的地はアステール。詳細は招集時連絡。ーーー以上。』

 

 アビドは研究室から足取り早く移動しながら、さらに言葉を続ける。

 

「ーーー宜しい。…今作戦は部隊の招集者が儂故、責任者である儂が指揮を取る。急げ。」

 

『了解。』

 

サッと通信が切れる。

 

 真っ白な廊下を歩きながら、アビドは白衣をしっかりと羽織直した。

 

「……厄介な事になるぞ。ーーー慎重に行かねば。」

 

ーーーーー彼の去り際の呟きは、廊下に舞って消えていった……

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

〜12月31日〜

 

 

時刻ーーーAM5:16

 

 

 


 

 

 

…目が覚めた。

 

 

「……此処も、知ってる天井になった…。」

 

 ベットの上で天井を見つめながら、ニュウはそんな事を呟いた。

 

 体を起こして窓の外を見てみれば、まだ空は暗かった。…5時ではまだ太陽も昇るまい。

 

「………さむ。」

 

 窓を開けると、そこから凍える様な風が入り込んで来て、ニュウは思わず窓を閉めた。

 

 少々早く起きすぎた。…昨日、連邦と連絡を取ってから直ぐに寝てしまったが故に、いつもより早起きになった様だ。

 

(アレから、誰か俺の部屋に来ただろうか?)

 

 直ぐに寝たのは、殆ど現実逃避の為の様なもんだ。…眠ってしまえば、何も考えなくとも良くなるから………。

 

「……あぁ…。」

 

ーーーただ大きなため息を一つ吐いて、ニュウはベットの上で項垂れた。

 

「最低だ…俺って。」

 

 膝を抱えて声を漏らす。………今日が運命の日だ。避けようの無い、運命の日……。

 

「……ごめんなさい…。」

 

 暗闇に向かって、そっと謝る。ーーー勿論、返事はない。それに、謝ったからって何になると言うのだ?『僕は君達を騙してました。今までごめんね。悪気はないんだ。コレも皆んなの為なんだ。』…で終わらそうだなんて、虫が良すぎる。しかも、その()()()の中に、ネオは入っていないと言う役満っぷり。

 

 全てが終わってもきっと、昨日今日の選択は自分の心に残り続ける事間違い無いだろう。

 

 

 ニュウは膝を抱えたまま、朝日が〈アステール〉を囲む山々を照らし始めるまでベットの上に居た。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

時刻ーーーAM 8:05

 

 

 

 完全に日も昇った朝。煌めく太陽の光と、軽快な小鳥の囀り。…柔らかな風が、換気のために開け放たれた廊下の窓から吹き込んで、分厚いカーテンを靡かせる。

 

 もう、みんなも起きた頃合いだろう。…そう判断したニュウは部屋のドアをガチャリと開けて、明るい廊下へと足を踏み出してーーー

 

 

ーーーそして、朝焼けの髪とバッタリ出くわした。

 

 

「あ。」

「…あ。」

 

 扉の前で固まったニュウと、同じく固まった朝焼け色の髪。…透き通った青い瞳が、此方を捉える。

 

「………ネオさん…。」

 

…ようやっとの事で彼女の名前を絞り出す様に呟いたニュウ。

 

「おはよう。」

 

 彼女の声が耳に響く。…何の疑いも無い、純粋無垢な声。ーーーそれだけで、打ちのめされそうになる心を必死に堪えて、ニュウは答えた。

 

「…ええ…。おはようございます……。」

 

…歩き出すニュウ。横をネオがついて歩く。

 

「ーーー昨日は、その、大丈夫だったの?…あの後、食事も取らずに寝ちゃったんだよね?」

「……疲れてただけですから。ーーー気にしないで下さい。」

 

…ちょっと、返事がそっけなかったかも知れない。ネオが言葉に詰まった様に、視線を宙に彷徨わせながら呟く。

 

「…あ、そう…。ーーーえっと…昨日のアレ、ありがとね……。まだ、着てないけど…なんだか、勿体無く?…て。」

 

…ニュウの顔が歪んだ。ネオは気付かずに話し続ける。

 

「……よく考えたら私、貴方に貰ってばっかりだよね……。」

 

ニュウが、困惑した様な顔をしながら振り向いた。

 

「は…?ーーー何言ってるんですかネオさん。…俺、貴方に何もあげてませんよ。…昨日のアレ以外。」

 

 彼女は、微かに()()()()で首を振った。朝焼け色の髪が、サラサラと揺れる。

 

「…ううん。くれたよ。…沢山ね。なんとなく分かってきたんだ。…貴方が何を私にくれたのか。」

 

「…え…いや…。俺は、何もーーーーーー」

 

 戸惑う様なニャウの声に、ネオは笑った。…無垢な声が、廊下に響く。

 

「くれたんだよ。……貴方が思ってるより多くの物をね。…だからーーーーーー」

 

 そこまで言ってから、ネオは彼に少し顔を近づけた。

 

「ーーーだから、何か…お返しさせて。……何か欲しい物があるなら、言って欲しいな。」

 

「いやいやいやいや。そんな…別に何も要らないですよ…。そう云うのを求めてた訳じゃないですし…。」

 

両手を突き出して拒む様に振るニュウ。

 

「……でも貰ってばかりじゃ、()が納得いかないんだよ。それに、アミダ達からプレゼント貰ったら、元々何かお返しするつもりだったし。貴方もくれたんだもの……ね?ーーーーー本当に、何も無いの??」

 

「いや、でも…そんなの俺にはーーーーーー」

 

 ニュウがそこまで言ったところで、横から2人の間に人影が割り込んで来た。

 

「よ!ーーーニュウ君おっは〜。」

 

ーーーアミダである。若干寝癖のついた髪がフワリと揺れて、彼の隣に並んだ。ネオがほんの微かに口を尖らせた気がしたが、気の所為だったかもしれない。

 

「ーーー昨日大丈夫だった〜?…帰りが遅かったし、帰って来るなりご飯食べずに寝ちゃったみたいだからさ。ーーーちょっぴり心配だったよ〜。」

ニュウは首を振った。

「…心配してくれて、どうも。……大丈夫ですよ。」

「ん〜、なら良かったけど。ーーー今日はどうするの?…因みに私達は支部(ココ)でノンビリするつもりだよ。…連日お祭り騒ぎだったし、大晦日はテレビでも見て過ごそうかなってね。」

 

 アステールの放送局が、面白いの流してるんだよ。ーーーと、言って笑うアミダ。

 

「……そうですか。」

 

 心ここに在らずと言った感じで頷くニュウ。アミダが彼の顔を覗き込んだ。

 

「どったの?ニュウ君。……浮かない顔して。ーーーあ、勿論ニュウ君は、好きにしといて良いんだよ?…こっちに付き合う必要は無いからね。」

「…分かってますよ。ーーー元々、今日は外に出るつもりは無かったので、それはそれで良いんですけど。」

「お。そうなんだ〜。じゃ、今日は皆んなのんびり日和だね〜。」

 

ーーーのほほんと笑うアミダ。

 

 3人は会話している内に、一階の食堂に辿り着いていた様だ。

 

「…おー、おはようニュウ。」

 

 食卓の1番手前の席に腰掛けて、ナイフでリンゴの皮をサクサクと剥いていたバサラが、ニュウを見て片手を上げた。

 

 側の皿には、沢山の切り分けられたリンゴが乗っている。

 

「おはようございます。」

「おう。…大丈夫か?なんか顔色が優れねぇみたいだが。ーーー昨日、夜食ってないんだろ?飯は大事だぞ。顔とか洗ったらリンゴ食え。な?…顔洗うのに台所使って良いぞ。」

 

 コロン…と皿に追加されるカットされたリンゴ。……台所からパンの焼ける香ばしい香りが漂って来る。

 

ーーーネオも、アミダも、バサラも、皆んなが自分の事を気にかけてくれている……その事実が、ニュウの良心を苦しめて顔をより曇らせる。

 

 それを悟られまいと、ニュウは食堂の隣の台所へ向かった。

 

 台所には、シャイターンとラフな格好をしたアルスラーンが居て、此方に気付くと挨拶してきた。

 

「おお。ーーーニュウか。おはよう。」

「……おはようございますニュウ様。」

 

「…おはよう御座います。」

 

 そう短く返事を返し、広い台所を横切って流し台で顔を洗う。

 

「……ッ。冷た…。」

 

…真冬の水の冷たさが、顔中に突き刺さって目は冴えた。ーーーでも、心は冴えない。

 

「……はぁ。」

 

 溜息を吐き顔を拭く。その溜息を聞いたのか、背中にシャイターンの訝しげな視線を感じた。ーーーそれは気に留めず、ニュウは食堂に戻ると席に着く。

 

…明るい朝日の光が差し込む中で、テーブルに並ぶ食事はとても綺麗に見えたが、ニュウの気持ちは晴れることはなかった。

 

「ーーーほら、コレ食いな。このリンゴ美味いぞ。…アステールは農産物の品質が良いからな。蘇った大自然の恩恵をよく受けてやがる。」

「…あ、どうも。」

 

 バサラから差し出された、リンゴの乗った皿を受け取るニュウ。ーーー嬉しかったけれど、味は感じ取れなかった……

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーー朝食の後は、各自好きな事をして過ごす事になった。…年明けの瞬間をどう過ごすかは、各々の判断に任されているらしい。ーーーそれは、ニュウにとっては都合が良かった。

 

…自分のする事が、あまり怪しまれずに済むのだから。

 

 一階の大部屋で、年明けは皆んなでジャンプしたいねー、とキラリ達と会話しているアミダを横目に見ながら、ニュウは外の景色を見ているネオの方に歩み寄る。

 

…そして口を開きかけて、閉じて、また開きかけて、結局声は出せずに彼女の隣に座り込んだ。

 

 ふかふかのソファが、自分を受け止める。…同じソファに腰掛けていたネオが、こちらを見た。

 

「……大晦日だね。」

 

ーーー彼女の口が開いて、そんな声が掛けられる。

 

「そうですね。」

 

ただニュウは相槌を打った。

 

「…初日の出、見たいな。」ーーーそうネオが呟く。

 

「そうですね。」

 

ニュウの返事に、ネオが首を傾げた。

 

「…ねぇ、本当に大丈夫??ーーー貴方なんだか、今朝からずっとぼんやりしてるよ。」

 

「そうでs …いや、大丈夫です。」

「……本当に…??」

 

 心ここに在らずな返事に、ネオがますます首を傾げる。ニュウはそんな彼女に、頷いて見せた。

 

「ええ。…本当に大丈夫ですから…。」

 

 そう言ってから、ニュウは最初に言おうとしていた事を口に出した。

 

「……ネオさん。」

「…??」

 

 首を傾げるネオ。ーーー彼は、あくまでも自然な感じを装って話を続ける。

 

…さっきネオが言った事と絡めて、自然な感じに……ただの会話の様に……。

 

「……初日の出なら、〈霧の森〉から見れるんじゃないですか?ーーー俺も見たいですし……一緒に見ませんか?話したい事も有りますし。」

 

「…え。ーーー良いの…?」

 

 ネオが目をパチクリさせた。…声に微かな喜色が混じる。それを感じ取れるからこそ、ニュウの気持ちはますます沈んでいくのだが、彼は平静を保って頷いた。

 

「ええ。…貴女が良ければ。」

「うん、私は良いよ。…じゃあ一緒に見よっか、初日の出。」

 

 笑顔で返された良い返事だった。ーーーま、彼女は断りはしないだろう。…口実は上手くいった。嬉しくなどないがーーーーーー

 

 

 

ーーーと、此処でアミダが2人を呼ぶ。

 

「お二人さーん??……すごろくしない?…ハクビが準備してくれたんだよ〜??」

 

 見ると、部屋の机の上にすごろくが広げられていた。…一瞬ニュウは返答に詰まったが、彼が答えるより先にネオが答えた。

 

「…うん。する。」

 

アミダがニッコリと笑う。

 

「お、ネオちゃん。良い返事じゃん?…ニュウ君は?」

 

ーーーーーーニュウは頷いた。

 

「オッケー、じゃ始めるよ〜。みんな集まって集まって〜〜。」

 

 アミダの声に、部屋にいた皆んなが集まって来る。

 

「はーーい!!したいしたい!!」

「…すごろく…何それ??僕初めて聞いたな…。」

「お、フェムトは知らないんだ。…じゃ、俺が教えるよ。」

「…あら、楽しそうね。」

「おぉ…コレ、姫が作ったのか??」

「まさか。買ってきたんですよ。」

 

賑やかになる部屋。

 

 そうして始まったすごろくで、ニュウは何度も『振り出しに戻る』のマスを踏んでいた………。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

時刻ーーーAM10:10

 

 

 

ーーー時は過ぎていく。

 

 

 

時刻ーーーPM15:15

 

 

 

ーーー刻々と。

 

 

 

時刻ーーーPM20:20

 

 

 

ーーー容赦無く。

 

 

 

時刻ーーーPM23:59

 

 

 

ーーーそして、新年(運命の刻)を迎えた。

 

 


 

 

 

日付ーーー1月 1日 時刻ーーーAM00:00

 

 

 


 

 

 

 

『せーのっ……ハッピーニューイヤーーーー!!!!』

 

 

 アミダの声と共に、応接間に歓声が響く。時刻は午前零時。ーーー年明けの瞬間だ。

 

「明けましておめでとうだよ皆んな〜〜〜!!!ーーーほら、サクアちゃん?起きて起きて!!年明けだよ!」

「うん。おめでとう皆んな。」

「アミダちゃんも、おめでとーー!!!」

「ありがとキラリぃーー!!ことよろーー!!」

「…やったぞ姫!!…私は寝なかったッ!!ちゃんと起きて年越しを迎えZzzz……。」

「王ーーーッ?!ここで寝ないで下さいーーッ?!」

「…寝かせてあげましょう。元々朝型の人間ですし。…私も寝る事にしますね。」

 

 さっきまで、眠気と闘っていた面々が一気に賑やかになる。

 

 ソレを横目に、ニュウは座り込んでいたソファから体を起こすと、隣のネオに囁く様に声をーーーーーー掛ける前に、ネオの方から彼に話しかけて来た。

 

「…明けましておめでとう。今年も宜しく…ね。」

 

その言葉に、ニュウの顔がグシャリと歪む。

 

(…ッ!!ーーー今年も……か。)

 

 ニュウにとってはもう今日が最後の日なの(今年もクソも無い)だが、ネオがそんな事を知るはずも無い。ーーーただの何気ない年明けのテンプレな挨拶が、またニュウの良心を砕いていく。…もう、死体撃ちにも程があるが。

 

 ニュウは平静を装って頷きを返すと、ネオに今からの予定を話し始めた。…テレビによると、アステールに初日の出が訪れるのは朝6時頃。…今はまだ日付が変わったばかりなので、時間がある。

 

「…取り敢えず、俺は今から仮眠を取るつもりです。ーーー5時には、屋敷を出発する予定ですので、ネオさんは好きな時に〈霧の森〉に向かって貰えれば良いですよ。…あの場所で、待っています。」

 

ネオは頷いた。

 

「分かった。ーーー5時だね。…なるべく、時間を合わせるよ。森の方は寒いから、待たせたくは無いし。」

 

「了解です。」

 

 ニュウはそう言って、賑やかな雰囲気に包まれた応接間から、静かに出て行ったーーーーーーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

時刻ーーーAM5:03

 

 

 

 

……暗がりの中で、ニュウは目を開けた。…枕元の携帯を見ると、液晶に5時3分の表記が浮かぶ。

 

 

「…………時間か。」

 

 

 ニュウはそう呟いて、闇の中で身を起こした。額に手を当て、ため息を吐く。

 

「……皆んな…ごめん。」

 

 ボソリと呟いた独りよがりな懺悔は、ただ闇に溶けた。

 

 思い出すのは、この4ヶ月共に過ごして来たイースターの面々。ーーーバサラ、ハレルヤ、アミダ、カノン……そして、アステール支部のメンバー……。

 

 バサラと一緒にバイクを駆って、〈オーステルン〉の道路でゴロツキ相手に銃撃戦をした記憶が蘇る。ーーー相変わらずの自由人な彼は、大晦日も何処かを彷徨っているのか、朝に食堂で見て以来その姿を見ていない。

 

「俺、あの人の自由さが眩しかったんだ……。本人は自堕落とか言ってたけど、俺にとってあの人は自由を体現してた……気がするんだ。」

 

ーーーハレルヤとは何気ない会話が多かった。…若干、彼の方が年上だが、年齢が近いのもあって色々世話になった。ーーーまるで友達みたいに……。

 

「…ハレルヤさんにも……あれだけ良くして貰ったのに……。」

 

 白黒のコートを羽織り、立てた襟に顔を埋めながら、ニュウはそう呟く。

 

 アミダーーー彼女の明るい性格は、なかなか忘れようとしても、忘れられない物だろう。太陽みたいな人だった。

 

「いつでも明るくて…心が強い人だった。ーーーアレだけの心の強さが有れば、俺も少しはマシな道を歩んでたのかな……。」

 

 白のワークキャップを思いっきり深く被ると、ドアを静かに開けて暗く冷たい廊下に歩み出す。

 

「…カノンさん……ーーーあの人は、静かな感じだったからなぁ…。ーーーでも、ちゃんと自由だった。…ちゃんと、自分で自由を勝ち取ってた。」

 

 少し浮世離れした雰囲気のカノン。…人造新人類と言う、特殊な生まれによって連邦に縛られていた彼女も、己の力でその束縛を振り解きイースターで自由を得ていた。

 

 

ーーー自分()には、出来なかった。

 

 

「………さよなら。」

 

 真っ暗で誰もいない廊下に向かって囁くと、ニュウはドアをそっと閉めて歩き出した。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

時刻ーーーAM5:07

 

 

 

 そっと静かに暗い廊下を通り、2階の階段を降りて1階へ。そこから屋敷の外へ向かう。

 

ーーーーーー重たいドアを開け、星空が煌めく夜空の下へ歩み出す。

 

そして、玄関先に出た時だった。

 

 

 

「…あ、来たね。」

 

 

 開けたドアの向こう…屋敷の前庭に立つネオの姿が、ニュウの目に映り込んだ。

 

「……!!ーーーネオさん………。」

 

「おはようニュウくん。…おはようで良いかな?」

 

そう言って微笑むネオ。

 

 彼女は何時もの黒のパーカーでは無く、昨日自分が渡した白いコートを羽織った姿で、輝く星空の下に立っていた。

 

ーーー自分が来るのを、わざわざ待っていてくれたのだろうか。

 

 自分と目が合うと、彼女の笑みが深くなる。ーーー口元から白い息が流れた。

 

「あ…………。」

 

 暫くニュウは動けなかった。ーーー呆然としたままの彼に、ネオは微笑みながら話しかける。

 

「ねぇ、起きてるの??ーーーーーー外、流石に寒いと思ってコレ着てみたんだけど、どうかな?…似合う???」

 

 ニュウの前でネオが自分の体を見下ろして、問い掛ける。ーーー彼女の体の動きに合わせて、フワリと夜の空気が揺らいだ。

 

ニュウは呆然としたまま頷く。

 

「……ええ…。ちょっと驚く位、よく似合ってます。」

 

ーーーその言葉は嘘じゃない。…正直、ここまで彼女にソレが合うとは思って居なかった。

 

 白も案外似合うから、良いんじゃないかな〜、程度の認識だったのに、いざその服を身を包んだ彼女を見た時、もうソレ以外を身につけてる姿が想像出来なくなる位には、似合っていた。

 

彼の声に、ネオはふっと笑う。

 

「……そう…良かった……。ーーーもう一度言うね…ありがとう。」

 

 彼女が見せた、心の底から湧き上がって来るような笑みに、ニュウの心の中の良心は木っ端微塵に砕け散って、自分の全てがガラガラと崩れ去っていくような気がした。…いや、実際そうなんだろう。

 

ーーー今から自分は全てを崩す……自らの手で。

 

 

「…日の出まで後1時間です。…行きましょう、霧の森のあの場所までは、少し時間が掛かりますからね。」

 

 ニュウはそう言って、ネオを後ろに連れて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

時刻ーーーAM5:40

 

 

 

場所ーーー霧の森

 

 

 

 

…先を行く黒と白のコートを追って、私は森の小道を進む。

 

 辺りの風は冷たく、吐く息は白くなれど、私は何も寒さを感じなかった。……(これ)のおかげかな?

 

「……ねぇ。」

 

 先を行く彼に話しかけた。…彼が振り向く。月と星あかりの下で、彼の顔は朧げになって浮かんでいた。

 

「なんですか……。」

 

 極度の緊張に置かれたかのような、微かに震え、すこし掠れた声。ーーーやっぱり今日は朝からずっと、なんだかおかしい。

 

ソレは一旦隅において置いて、私は口を開いた。

 

「ーーーー貴方は、本当に何も要らないの?…なんでも良いのに。」

 

ーーー何かを返したかった。…彼に自覚が無くとも、自分は沢山の物を彼から受け取っていた。…ソレをいちいち言葉に起こすのは、何だか気恥ずかしくてはぐらかしていたけれど、其れは其れとして何かを返したかった。

 

…感謝の気持ちだろうか?ーーーなんだか、ソレよりもっと心があったまる様な感情が、このプレゼントを受け取った時から、心の中に湧き上がっていた。……この思いを、何か形にしたかった。

 

 彼は首を振る。そして立ち止まり、空を見上げた。…私も釣られて空を見上げる。

 

 

「…あ。」

 

 

ーーー気がつくと、何時も私が星を見ている開けたあの場所に、辿り着いていたみたいだ。

 

 相変わらずの満天の星空。全ての星々が、冷たい夜の透き通る様な闇に散りばめられた宝石の如く、凍り付いて光を放っていた。

 

 街から遠く離れ、オーステルンなどの移動要塞の包囲網も無く、人工の灯りの届かない場所だからか、とても綺麗によく見えている。

 

ーーーーー風は無く、辺りは完全に静まり返っていた。

 

「わぁ…。綺麗……。」

 

 思わず声が出た。ーーーこの場所で見てきた星空の中で、1番………いや、今までの人生の中で1番綺麗な星空だった。

 

「綺麗だね。…こんなに夜空が綺麗に見えたことなんて無かったよ、ニュウくん。」

 

…私は無意識のうちに彼の事を名前で呼んでいた。彼がーーーニュウが、こっちの方を向く。

 

…その紫に光る瞳が、自分の事を見つめていた。

 

「………?」

 

 私は首を傾げる。ーーーそう言えば、何か私に話したい事があるって、言ってたっけ。

 

…此方を見つめて立ちすくんだままの彼の後ろから、風が吹いてくる。顔に吹き付ける風に、私は目を窄めた。

 

「……ん…風…?」

 

ーーーいや、彼の後ろからだけじゃ無い。上からも、横からも、風が吹いてくるのだ。

 

…これは、自然の風なんだろうか……?

 

 

「ネオさん……。」

 

 彼がポツリと呟いて、片手を此方に向かって差し出す様に動かした。

 

 

 

「ーーーーーー()()()。」

 

 

 

 そんな言葉と共に自分に向けられた彼の手の中には、一挺の拳銃が握られていてーーーーーー

 

 

 

「………え?」

 

 

 

理解が出来ず、立ち尽くす私。

 

 

 

 2人を見下ろす夜空に、さぁっ………と、無数の流れ星が流れた。

 

 

 

 

 

 









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