モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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今回も短め。




67話〈天空決戦〜侵入〜〉

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

ーーーー時は1月1日まで巻き戻る。

 

 

 

ーーー連邦極秘研究施設〈タルタロス〉内部ーーー

 

 

 

 連邦の首都〈アーク〉の遥か上空に浮かぶタルタロスに、来客の姿があった。

 

 

…廊下を歩く靴の立てる音。そして微かに聞こえる衣擦れの音。

 

 

 その音は、やがてとあるドアの前で止まる。ーーーースッとドアが開かれて、中からしわがれた声が聞こえて来た。

 

「……入ってくれ。」

 

ーーー無言でドアの向こう側に足を踏み入れる来客。

 

ドアが閉まり、部屋に声が響く。

 

「…よく来たの…ーーーーフェルシア。」

 

 来客ーーーー教会国家グローリーの司教フェルシアーーーーは、妖艶な微笑みを浮かべた。

 

「ご苦労様。…Dr.ゾルゲ。」

 

 モニターに囲まれた部屋の中で、ゾルゲが鼻を鳴らした。

 

「…ご苦労か……。確かに苦労しとるーーーーーフォリーの奴のせいでな!」

 

 そうゾルゲが吐き出す様に言い放った時、部屋の隅から人を舐め腐った様な声が聞こえて来た。

 

「まぁまぁ、ゾルゲ氏。ーーー言う程、苦労はさせて無い筈だろ???」

 

ーーーードクトゥール・フォリー、その人である。

 

ゾルゲがため息を吐く。

 

「いいや、苦労しとるの。…毎度毎度、予算をせびりおって。ーーーしかも、ここ1ヶ月は連絡すら碌に寄越さない始末。ーーーそのくせ、ある日突然『極秘研究施設を使いたい』など言い出してのぉ。………今、何をしとるんじゃお主は?」

 

ゾルゲからの訝しげな声に、フォリーは肩を竦めた。

 

「なぁに。私の実験癖は知っているだろう?ーーー証明せねばならん仮説が山盛りなんだ。……ふふふ。」

 

はぐらかす様な言葉に、ゾルゲが顔を顰める。

 

「ーーーーじゃから、一体何をしようとしてるのか、と聞いておる。」

 

 その問いには答えず、意味深な笑みを浮かべたフォリーは、フェルシアと入れ替わりになる様に部屋から出て行く。

 

 彼女の隣を通る時、フォリーは部屋の中を振り返ってニヤリと嗤った。

 

 

「ーーーー私は()()、何もしていないさ。……だがもしかしたら、これから素晴らしい神話が始まる……かも知れないな。」

 

 

「「……??」」

 

首を傾げるゾルゲとフェルシア。

 

「ーーーーふふふふ。………運命が動き出す瞬間を、よく見ておくんだな。」

 

 フォリーはそう言って、部屋から出て行った。後に残された2人は、互いに顔を見合わせて肩を竦める。

 

「頭でも打ったのかアヤツは。」

「さぁね。……彼の様な現実主義者が、神話だなんて…何のことなのかしら…?」

 

 

ドクトゥール・フォリーの真意。ーーーーそれはまだ、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

〜1月3日〜

 

 

 

時刻ーーーAM4:25

 

 

場所ーーー奇巌城(エギーユクルーズ)内部『操舵室』

 

 

 

 

…まだ、暗闇に包まれている空。炭を流したかの様に黒い夜空を、奇巌城(エギーユクルーズ)は飛んでいる。

 

 

……その奇巌城(エギーユクルーズ)の操舵室に、アルセーヌとニュウ達〈イースター〉の姿があった。

 

「……もうすぐですね。もう手動に切り替えてありますか?」

 

ーーーと、ニュウの声。

 

「勿論よ。ーーーあと、どれぐらいかしら?」

 

 それに答えたアルセーヌに、ニュウはモニターの座標を確認しつつ応じる。

 

「…6分と言った所でしょう…。ーーー明確に此処だって言える訳では無いので。……偽装コクーンは展開終わってますか?」

「展開済みよ。」

「分かりました。…なら大丈夫です。」

 

 頷いてから、ニュウはコレからの作戦を伝えるべく、部屋の中の面々を見渡す。ーーーー作戦は、既に丸一日かけて完成済みだ。

 

「…あと少しで、タルタロスが見えて来ます。ーーーーある程度近づいたら、サテライトさん達のドローンによるEMP及び全システムのハックをお願いします。」

「オッケー。既に今回活躍するドローン達は、配備済みだよ!あとはボタンひとつで計画は実行出来るね!」

「ーーーーふふ。この天才ハッカーに万事任せたまえ。」

 

 サテライトとカノープスが其々、自信満々に頷いた。

 

「ーーーーそのまま、カノープスさんとサテライトさんには奇巌城(エギーユクルーズ)に残って貰い、相手側のアンチハックに対抗して貰うつもりです。ーーーーまた、敵の攻撃に備えて奇巌城(エギーユクルーズ)を守る為に、ハレルヤさんとカノンさんにも残って貰いますね。」

「うん、了解。」

「分かった。…任せて。」

 

 ハレルヤとカノンが頷く。ーーーーこの2人を残す理由は、何方も空を飛ぶ能力を持っているからである。

奇巌城(エギーユクルーズ)が攻撃を受けるとすれば、それは戦闘機での攻撃である可能性が非常に高いと、ニュウが判断した為だ。ーーー空を飛ぶ相手には、空を飛ぶ能力持ちをぶつけた方が戦い易い。

 

「…そして、一旦接近してから僕たちが内部に侵入します。」

「暴れる訳だね!」

 

アミダが単純な事だと言わんばかりに頷いた。

 

「そこから先は、僕が指揮を取ります。ーーーー先ずは、内部に無事に潜入する事を目標にしましょう。……かなりシビアな計画ですからね。細心の注意をお願いします。」

 

部屋の皆が頷く。

 

 それを隣で聞きながら、奇巌城(エギーユクルーズ)を動かしていたアルセーヌが、ふと前を見つめて呟いた。

 

 

「ーーーー見えたわよ。」

 

 

「!!」

 

 その声に、勢いよく振り向くニュウ。……見つめるモニターの先に、月をバックに空に浮かぶ影が映り込んだ。

 

 

ーーーー遠くに浮かぶソレは、細長い胴体に2対の鋼鉄の翼を付けた鳥の様に見える。…見間違える事は無い。アレはーーーーーーー

 

 

「…タルタロス。」

 

 

 ニュウは囁く様に呟いた。…自分でも無意識のうちに、両手を強く握りしめていた様だーーーーそっと手を包まれて、ふと我に帰る。

 

「……!」

 

 顔を動かすと、自分の手をネオが彼女の手でそっと包み込んでいた。

 

「…大丈夫。やれるよ。」

 

 強い意志を秘めた表情で頷かれる。ニュウはぎこちなく頷いた。

 

「えぇ。……そうですね…。」

 

彼は深く息を吸ってから、口を開いた。

 

 

「ーーーーーーー始めて下さい。」

 

 

「了解!!!」

 

 サテライトが笑ってパソコンのボタンを押す。ーーーー次の瞬間、奇巌城(エギーユクルーズ)から無数のドローンが鳥の群れの様に飛び立った。

 

「おぉ。凄い数のドローンだな?!」

 

 バサラの驚く声。サテライトが隣で画面を見ながら、素早く説明に入る。

 

「スワームドローンだよバサラ先輩!…アレ1つ1つが集まって、一個の巨大な端末に変化するんだ。……見てて!」

 

 モニターの先で、無数のドローンがタルタロスへ飛んで行く。やがて、それはタルタロスを取り囲む様に円陣を描いて旋回する。

 

 サテライトがパソコンの別のボタンに手を伸ばした。

 

「ーーーーコレが、私の考えた対巨大精密構造物用のドローン戦術……EMPスフィアだよ!!!」

 

そう叫んで、サテライトはボタンを強く押した。

 

 タルタロスの周囲に浮かぶ何十個もの小型ドローンが、同時に同じ方向に向けてEMPパルスを放つ。

 

 無数のドローンが、1つの巨大なEMP発生機に変わった瞬間だった。

 

 〈タルタロス〉の表面を照らしていた灯りが、フッと落ちる。カノープスが、パソコンを素早く叩き始めた。サテライトのスワームドローンを利用して、タルタロスのシステムにハッキングを始めたのだ。

 

「EMPは成功してる!…行ってアルセーヌ先輩!!」

「ハッキングもだ!…行け!!」

 

 サテライトの声に、アルセーヌは操縦桿をグッと押すことで答えた。

 

 奇巌城(エギーユクルーズ)は、一気に加速して沈黙した〈タルタロス〉へ向かう。

 

「皆んな、外へ!……最接近したタイミングで、飛び移ります!…アミダさん!タルタロスの外壁に穴開けてください!」

 

 ニュウは操舵室から外へ向かいつつ、イースターの面々に声をかける。

 

「任されたよ!」

 

アミダが胸を叩いた。

 

 足早に操舵室を飛び出して、奇巌城(エギーユクルーズ)の外へ出るニュウ達。ーーーー既に、〈タルタロス〉は目の前にあった。

 

…まるで自分達を拒むかの様に、聳える鋼鉄の飛行船。それ目掛けて、アミダが自分の銃を撃つ。

 

 放たれたビームの様な一撃が、タルタロスの外壁に命中。…人が一人通れる位の穴が開く。

 

「もうちょっと広げるね!」

 

 更にアミダが銃を連射し、空いた穴の周りを破壊して行く。

 

「ーーーーもう十分です!アミダさん!… 飛び降ります!」

 

 奇巌城(エギーユクルーズ)は、駆動音を響かせながらタルタロスの上を飛び越える様に飛行する。タルタロスのちょうど真上に来たタイミングで、ニュウ達は奇巌城(エギーユクルーズ)から飛び降りた。

 

 そこそこな高さから飛び降りたが、全員怪我無くしっかりと着地する。……高度20Kmの天空に吹き付ける風が、タルタロスに着地した彼らの服をはためかせた。

 

「行きましょう!」

「ーーーーよし来た!任せろ!!」

 

 ニュウの声を合図にアミダの開けた穴から、イースターの面々は飛び込んでいった。

 

 

 

 

 

[一方、タルタロスの内部では。]

 

 

 

タルタロスの職員達は混乱に包まれていた。

 

…突然のEMPによる攻撃と、システムに対するハッキング。……復旧も出来ずに、ただ騒ぐ事以外に出来る事がない。

 

…一体何が起きたのか。いや、分かってはいる。ーーーー襲撃だ。

 

 だが、タルタロスの職員達は信じられなかった。……こんな天空に秘匿されたタルタロスに、誰が、どうやって、辿り着いたのだ????

 

 

 


 

 

 

 

「ーーーメインシステムダウン!!メルキオール、バルタザール、カスパー…全システム共に動きません!!!」

「…各区画の隔壁が開放状態のまま固定されました!……このままでは収容している新人類の脱走が容易になってしまいます!!」

 

ーーーー此処はタルタロスの[メインコントロールルーム]。中では、午前4時という恐ろしく早い時刻に叩き起こされた、タルタロスの常駐職員らが右往左往していた。

 

ゾルゲの姿もそこにある。

 

「…アークに連絡は?」

 

ゾルゲが職員に問うが、職員達は揃って首を振った。

 

「出来ません!タルタロスは今EMPの嵐の中で、強力なハッキングに晒されています!……空の孤島状態ですよ!!」

 

「むぅ……。」

 

顎をさするゾルゲ。…職員の1人が叫ぶ。

 

「ーーー第3アケロンに侵入者です!!…映像が途切れ途切れですが、間違いありません!!」

 

 ゾルゲは思いっきり顔を歪めた。ーーー1年前の新人類優生思想事件が頭を過ぎる。あの時の反省を活かして天空に研究施設を構えたと言うのに、また繰り返すのかーーーーーーー

 

「…誰が来た?」

 

 苦い顔を浮かべながら問うゾルゲに、職員が答える。

 

「え、映像から見るに…彼らは、イースター……イースターですッ!!」

 

「ーーーーイースター!!」

 

 この瞬間、ゾルゲはアビドの計画が失敗に終わった事を悟った。…そして、何故彼らが此処に来れたのかもーーーー。

 

 

「そうか!……その道を選んだのかーーーー」

 

 ゾルゲがコントロールルームのモニターを睨む。…乱雑な電磁パルスで歪む画面に、パッと()の顔が映し出された。

 

 

…それに向かって、ゾルゲは吐き捨てる。

 

 

 

「ーーーーーーーーニュウッ!!」

 

 

 

 

ーーーー同じ瞬間に、タルタロスの内部に足を踏み入れたニュウも、そっと囁いた。

 

 

 

「……僕はもう道を違えない。ーーーー待っててくれ…皆んな。」

 

 

 

 

 天空に封じられし〈タルタロス(地獄)〉で、解放の狼煙が今上がるーーーーーーー

 

 

 






遂にタルタロス攻略開始です!

内部にはフェルシアやらフォリーやらが居るけれど……。さて…どうなる事やら。


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