モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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この背中に鳥の様に、白い翼をーーーーーーーーー…




7話 〈翼を下さい〉

 

 

 

 

 

 

ヒュォォォォォォォォォ…………

 

 

 

 

……吹き付ける風が、帽子を攫って行きそうだったので、男は慌てて手で押さえた。

 

「…おぉ。…今日は一段と風が強いな。」

 

 そう呟きつつ、男は目を細めて、自分の眼下に広がる景色を見やる。

 

 彼の視界に写るのは複雑に入り組んだ足場と、巨大な歯車たち………。

 

 

 ココは移動要塞都市〈オーステルン〉の下部、巨大な要塞都市を動かす為の動力装置が稼働している場所である。

 

 

 男は、この場所を〈脚〉と呼んでいた。……要塞都市を遠くから見た時、動力装置がある場所が、動物の脚の様に見えるからである。

 

 

 

 ガコン…ガコン…と、音を立てて歯車は動き続けていた。ゆっくりと動く歯車(ソレ)は、何の異常もない様に思える。

 

 しかし、歯車の動きが少しおかしい事に男は気付いていた。……彼はその原因を探りに来たのである。

 

ーーーーーと言っても、大体検討はついているが……

 

 

 

キラ…キラ…キラ………

 

 

 

 回る歯車の向こう、幾つかの小さな歯車の周りに、差し込む早朝の太陽の光を受けて虹色に煌めいている結晶の様なモノが、男の目に写った。

 

「ーーーーーーーーー!!やっぱり…!」

 

 男はため息を吐く。…サボってるんじゃ無かった…と、呟きながら歯車に纏わり付き、その動きを阻害している〈結晶〉を見詰めながら呟いた。

 

「〈星のセラム〉の結晶が、歯車に引っかかってしまってる……。これではこの移動要塞も上手く動けまい……。取り除かないと。」

 

…とは言ったものの、広範囲にこびり付いた虹色の結晶は、自分一人では撤去できない。…そもそも新人類では無い男が触れたら、セラムの瘴気で死ぬだろう。

 

「こりゃ、アレだな。…何時ものあの人に、頼むしかないか。」

 

そう男は呟きつつ、その場を後にした。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーコレは夢だ。

 

 

 

 

 

 

 

…あ!ニュウ!!帰ってきたんだ!

 

 

 

………お帰り、ニュウ兄ィちゃん!!

 

 

 

…お帰り!今回は遅かったね!?

 

 

 

ーーーーーーーーー殺風景な白い部屋の中に入ると、口々に()()に声が掛けられた。

 

…未だ、無邪気さを失っていないその声に、硬く強張っていた表情が幾らかは弛む気がする。

 

 そしてソレと同時に、この幼い声達がこれから辿っていくであろう未来を想像して、心の奥底がズシリと重くなる。

 

「…あぁ、ただいま。」

 

 そう声を返すと、部屋のあちこちで温かな笑顔が広がった。

 

 

ーーーーーーーーー待って待ってしてたんだよ?…遊ぼうよ!

 

 

 そう催促されて、部屋の奥へと連れ込まれる。…体は疲れ切っていたが、断る気にはならなかった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 幼き子らに手を引かれ、たどり着いた部屋の奥には、自分と同じぐらいの歳の少年少女達が何人か居て、皆同じ様に小さな子供達の面倒を見ている。

 

近くを通り過ぎると、皆軽く挨拶を交わしてくれた。

 

 

ーーーおかえり。

 

 

ーーーおかえりなさい。

 

 

 それに返事を返しながら、歩き続ける。……きっと、自分の帰りを待つ人がいる事は幸せなんだろう。

 

ーーーそんな風に自らに思い込ませながら。

 

 

「ニュウくん。」

 

……その中に1人、近くを通った時に声をかけてくる少女が居た。

 

「…なに?」

 

返事を返して振り向く。

 

ーーーーーーーー微かに涙を浮かべた瞳と、視線がぶつかった。

 

(……あぁ。)

 

 何となく、次に放たれる台詞が何なのか察して、顔が曇る。

 

「ーーーーーーーーー▓▓▓▓▓▓が、〈終了〉したわ。」

 

「………………そうか。」

 

 悲痛な響きに、ただそう返す事しか出来なかった。

 

「……頑張っていたのに。毎日、毎日……〈訓練〉が厳しく無いかって、私の事も気に掛けてくれたのに……。優秀な〈成績〉を出せなかったからって………。」

 

 少女はただ肩を震わせて俯く。…()()での別れは一瞬だ。ある日、突然誰かが消える。

 

 

ーーーーーーーーー理由は単純。

 

 

…唯、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

ーーーーーーーーーそれだけだ。

 

 

 

 

少女の肩に手を置いて、自分は呟いた。

 

「……大丈夫。ーーーーーーーーーいつか、いつか必ず…自由になろう。…こんな気が狂いそうな場所から、太陽の照る地へ…空の下へ。」

 

少女はただ首を振った。

 

「…それが〈軍〉に入ることを指すなら、私はそれを自由となんて呼ばないわ。……連邦に縛れる場所が、この研究施設から軍事施設に変わっただけよ。ーーーーーーーーー自由なんて、私たち〈新人類〉に与えられる筈なんて無いのよ……!」

 

 その吐き捨てる様な言葉に、ただ黙るしか無かった。

 

 

(……分かってるよ。本当の意味で自由なんて物は存在していない。ーーーーーーーーーだからこそ、皆んなに自由を手に入れさせたいんだ。偽物じゃ無い…本当の自由を。)

 

 

 心の中で、ニュウは呟いた。そして天井に取り付けられた一枚のガラス窓ーーーーーーーーー(この部屋で、唯一の外界と繋がっているモノ)から見える空を見上げた。

 

 

…自分達を見下す、透き通る様な青空を……。

 

 

(…翼が欲しいよ。翼が有れば、こんな息苦しい世界から逃れて、あの蒼穹を飛び回れる。……鳥の様に、自由に。)

 

 

その願いはーーーーーーーーー…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーッッッ!!!」

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

何度か目を瞬かせ、ニュウはポツリと呟く。

 

 

「……知らない天井だ。」

 

 

…ま、当たり前だろう。此処は軍の実験施設でも、軍事施設でも無い。此処は、〈イースター〉の拠点の中なのだ。

 

「…………まだ、起きるのは早すぎたか?」

 

 直ぐそばの窓から外を見れば、地平線が朝焼けの色に染まり始めた頃だった。

 

「……やっぱ、寝れないな。」

 

 そう呟いて、ベットから起き上がる。そして部屋の中ーーーーー自分に与えられた自室だーーーをザッと見渡して、一息付くと扉を開けて外に出る事にした。

 

(……少し、外を歩こう。)

 

 まだ暗い一階を通り過ぎて、外に出る。〈イースター〉の拠点がある地区は、他の場所に比べれば静かで落ち着いた感じがあるザ・住宅街って感じの場所だ。

 

(……()()()()()()()()()()()()()()。今は、ただ一人でこの辺りをぶらぶらしよう。……()()教えて貰った近辺地理の復習にもなるし。)

 

なんて思いながら、外に出た時だった。

 

 

「………あれ?」

 

 

視界の隅に、水色の髪がチラリと写り込んだ。

 

 

「…今のはーーーーーーー。」

 

 呟きながら、広い駐車場を横切り、道路の方へ足を向ける。

 

 すると、細い小道を歩く、黒のパーカーを着た水色…(少しグラデーションのある色だが、水色っていう表現は正しいのだろうか?)ーーーの髪の少女が、目に入った。

 

 

ーーーーーーーーーネオだ。

 

 

…自分には気付いていない様だったが、会ったのに声を掛けないのもアレかと思って、ニュウはその背中に声を掛ける。

 

「ーーーーーーーーーおはよう、ネオ。………『さん』付けした方がいい?」

 

…ネオが一瞬ビクッとして、こちらを振り向いた。

 

 その顔が、『…ああ、なんだ。』と言った感じの顔になって、挨拶の返事が返ってくる。

 

「……おはよう。」

 

……微かに見ゆる星の様な遠い響きの声だった。

 

「……ネオ…さんも、早起きなんですね。」

 

ネオは小さく肩を竦めた。

 

「……貴方も。」

 

「…俺は寝れなかっただけです。……初めて寝るところだと、よく寝付けない…なんて事、無いですか?」

 

「……覚えてない。」

 

「…あ〜。そっか……そうですか…。」

 

 

ーーーーーーーーー何というか…なんか、話しずらい気がする。自分と彼女の間には、常に5メートルぐらいの間隔が空いているが、これ以上詰めたら、彼女の方がどこかに行ってしまいそうだった。

 

 

 コレはどうしたモンか…と暫し無言になっていると、有難い事に彼女の方から話しかけて来た。

 

「…〈オーステルン〉の内部地形はもう覚えた?」

 

「…ん、あぁ。昨日は一日中バサラさんと、あー…ハレルヤ…さんに案内して貰ったので、大体なら。」

 

…昨日は結局、一日中〈オーステルン〉中を歩き回ってた気がする。お陰で、大体の地形は覚えた。

 

「…そう。なら良かった。」

 

彼女はそう呟いて、歩く事を再開する。

 

「…あ、そこで話終わり?」

 

 ちょっと拍子抜けしながら、彼女の後に続いて歩き出すニュウ。

 

 視界の先で揺れる水色の髪を見ながら、(ーーーやっぱり、『水色の髪』って感じじゃ無いよな……何て表現したらいいのか…。)などと、案外どうでもいい事に悶々としていると、ネオのパーカーの中から鈴の音の様な音が鳴り響いた。

 

ーーーーーーーーー電話の呼び出し音だ。

 

 

 ネオがパーカーのポケットから、携帯を取り出して電話に出る。

 

「ーーーーーーーーーもしもし(ハロー)。ネオです。」

 

…こんな朝っぱらからかけて来るなんて、電話の主は誰なのだろう?ーーーなんて、ニュウが考えていると、思いの外電話は早々と終わった。

 

 終わるの早いな……と思っていると、ネオが携帯を仕舞いつつニュウに話しかけて来た。

 

「…仕事が入った。」

 

「……こんな朝早くから?……何ですか?敵襲??ゲリラ戦???」

 

 ネオの『何言ってるのこの人』みたいな視線がニュウに刺さる。

 

「何でそういう思考に……?」

 

「…あ、いや、気にしないでクダサイ。」

 

ネオは肩を竦めて言葉を続ける。

 

「……私に指名で依頼が有っただけ。…内容は何時もやってる事だから、ゲリラ戦とかじゃ無い。」

 

「あ、そうですか。…なら良かった。」

 

 そうニュウが呟くと、ネオは歩き始めた。少し去りゆく速度が速くなったその背中に、ニュウは声を掛ける。

 

「…あー、それって俺もついて行っていいヤツですか?」

 

ネオが振り向いて、目を瞬かせる。

 

「…別に構わないけど……二人で行っても、する事ないと思う。」

 

「…どうせ今もする事無いし、折角だからご一緒しますよ。…何するか気になりますし。」

 

「…そう。ーーーーーーなら、付いて来て。」

 

 特にネオは拒みはせずに、ニュウに小さく手招きすると、歩き出した。

 

その後を追って、ニュウも歩き出す。

 

 

 

…徐々に、空に何時もの〈蒼〉が広がり始めていたーーーーーーーーー。

 

 

 

 






ニュウくん加入は朝の出来事だったのに、気付いたら話の時間軸が次の日の朝になってた……ナゼ。

私は朝の話しか書けんのでしょうか?

追記2023.6.1 ニュウのセリフ修正


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