開戦前の話はここで終わりです。
「〔アナテマシリーズ〕ーーーーグローリーを代表する戦力の名だ。……その正体は、フェルシアの意のままに動く恐るべき怪物…だと聞いている。」
ーーーー中枢の一角、[艦長室]にてーーーー
部屋の中で、話し合う三つの声が木霊する。
そのうちの2人は、お馴染みオーステルンの艦長ゼウスと副艦長ケラウノスだ。
ーーーーそして部屋に居るもう1人は、元連邦の研究者〔アンソニー・D〕だった。
タルタロスで連邦から離反してネオ達について来て以来、彼はゼウス達〈中枢〉のメンバーに、連邦の情報を知り得る限り提供していた。
グローリーについての情報も、彼から大量に齎されている。ーーーーそれを元に、ゼウス達は交戦の準備を進めていた。
そして今は〔アナテマシリーズ〕についての情報を、アンソニーから聞き出している所である。
「…俺達は限られた情報しか知らない。ーーー元連邦の研究議会所属職員として、君からは出来る限りアナテマシリーズについて聴いておきたい。良いかな??」
「勿論です。…知り得るものは、全てお答えします。」
ーーーーそう頷いたアンソニーは、一歩前へと進み出た。
「先ず〔アナテマシリーズ〕ですが、アレは
ケラウノスが口を挟む。
「ーーーーほぉ、最新型…ね。他のタイプは何体ぐらい居るんだ?」
「…総数不明ですね。ーーーフェルシア自身、国家戦力は秘匿傾向に有りますので。…連邦に申告のあった戦力は、実際より控えめにされているかも知れません。」
ゼウスが顎に手を当てた。
「不明か……厄介だな。ーーーーケラウノス、コッチの戦力は今どれぐらい揃った?…あと、残ってる民間人の数も教えて欲しい。」
ケラウノスが素早く胸元から紙を取り出した。そして、それを読み上げる。
「コッチの兵力は凡そ6000。…アンソニーからの報告では、グローリーは1万人を導入出来るらしいからな。約2倍の兵力差がある訳だ。ーーーーんで、今残ってる民間人は1万人ほどだぜ。……まだ避難は行われてるし、もうちょい少なくなる見込みだな。」
ゼウスは頷いて、小さく呟く。
「そうか………なんだかんだ、半分は避難したか。…今日の午後にでもフィンディアスがコッチに来るらしいし、その時に一旦都市同士を繋げて、残りを直接避難させるとするかな…。」
「お、フィンディアス来んのか?」
「ああ。ヌアザから連絡があった。…避難民の受け入れと、兵の派遣をしてくれるそうだ。」
「成る程な。…じゃ、兵力は少し増えるな。」
ケラウノスは小さく呟いて紙を仕舞った。
そして、アンソニーの方へ向き直る。
「ーーーー話の途中で悪かったな。……他にアナテマシリーズについて分かる事は??」
アンソニーは首を振った。
「ーーーーいえ、これ以上は何も。……何せ、フェルシアはアナテマシリーズに関して、連邦に多くを語らなかったので。」
ケラウノスは納得する様に頷く。
「隠してる訳か。……そういえば、イースターのカノンもアナテマシリーズだし、まだ連邦も知らないタイプがありそうだな。」
「ええ、あり得るでしょう。ーーーーあと、アナテマシリーズとは違いますし、恐らくお2人ともご存知とは思いますが、グローリーの〈対壊獣兵器〉についても少し情報を伝えて置きます。」
ゼウスの眉がピクリと上がった。
「兵器?………あぁ。ーーーー〔
頷くアンソニー。
「はい。ソレです。ーーーー六ツ星級ノーマンにも対処可能な、星のセラムエネルギーを利用した大型防衛兵器。ソレが
ゼウスは苦い顔になって頷く。
「ーーーーあぁ。使われない事を願ってるがな。」
話し合いはまだ続くーーーーーーー
◇◆◇
…足を床につけば、膝から崩れ落ちそうになる。
「はっ…はっ…はっ……。」
滅多に感じることの無い感覚ーーー『疲労感』が足に伝わってきて、カノンはフラついた。
体勢を立て直し、手に持った剣を握り締めて大きく息を吸う。清涼な空気が肺に入って、体に染み渡る。
「……ふぅ。」
一息ついて、再び前を見据えたカノン。……彼女の前には、ネオが立っていた。
ーーーー此処はオーステルンの軍事施設。
昨日、カノンとネオが模擬戦をした場所であり、そして今日も模擬戦の舞台となっている。
「…大丈夫?続ける?」
すこし心配そうなネオの問い掛け。ーーーソレにカノンは頷いた。
「勿論。…まだ倒れる訳には、行かない。私は…やらなきゃ…。」
彼女の、自らを追い込んでいく様な宣言に、ネオは目を細める。
ーーーーカノンは少し焦り過ぎている。……そんな風に思えたのだ。
やっぱりちょっと休ませようか、なんて思っていた時……
「……お。やってますね〜。」
ーーーー模擬戦の舞台となっている広間に、来客が現れた。
「ーーーーあ、ニュウくん!」
ネオが声を上げると、来客改めニュウが両手を挙げた。
…その手には、何かの飲み物が入ったボトルが3本握られている。片方の腕には、ビニール袋が掛かっていた。
「お邪魔してたら申し訳ないですが…。コレ、差し入れ的な物です。」
「ーーー!ありがとう。…今貰うよ。」
コレ幸いにと、ネオはカノンを休ませるべく戦いを中断して、彼の元へ駆け寄る。カノンも戦う相手がいなくなったのでついて来た。
「ーーーおぉ…カノンさん、大丈夫ですか?怠そうですが…。」
近づいて来たカノンを一眼見て、心配の声をかけるニュウ。
一方のカノンは首を振って微笑んだ。
「心配ありがと。……でも、大丈夫だよ。」
そう言って、ニュウから飲み物を受け取るカノン。ネオも彼からボトルを受け取る。ラベルには「ふぁんた」の文字。
「炭酸?」
「そうですね。…シュワシュワでスッキリするのが良いかと思って。」
そう言って、ニュウは自分の分のボトルを開ける。プシュッ、と言う軽やかな音が鳴った。
「ーーーーあとコッチは食べ物です。…コンビニで買って来たヤツですけど、良かったら。」
「…分かった。」
彼が差し出した袋の中を見てみる。…サンドイッチが沢山中に入っていた。
「沢山買ったんだね。……わざわざありがと。」
「いえいえ。ーーー僕も食べたかったので。」
「…そう。じゃ、コレも貰うね。」
「ええ、どうぞどうぞ。」
袋から1個取り出したネオは、広場の床に手を翳すと〈再構築〉を発動。あっと言う間に床が変形して、3つの椅子に変わった。…肘置きには、丁寧にドリンクホルダーまで付いている。
生み出した椅子に座り込み、ドリンクホルダーに「ふぁんた」のペットボトルを置いて、ネオはサンドイッチを頬張った。
「…ん、美味しい。」
ニュウとカノンは唖然として顔を見合わせる。
「……ちょー便利ですね…
「…だね。床が椅子に変わっちゃった……。」
再構築能力の汎用性の高さに驚きつつ、2人は椅子に座り込んで一息付く。
カノンが空を見上げると、ちょうど青い空を鳥の群れが横切って行くところだった。……鳩だろうか?
「…………。」
ボーッとその群れの動きを見ているうちに、カノンの意識はまた遠い過去へと遡り始めたーーーーーーーー
◇◆◇
ーーーーーーーー鳥の群れが、青い空を横切って飛んでいた。
……鳩だろうか?
「あら?…どうしたのカノン?」
フェルシアの声が横から聞こえる。
カノンは目を
「鳥が飛んでいただけだよ。お母様。」
フェルシアはその声を聞いて空を見上げた。…しかし、鳥の群れは既に姿を消しいていて、フェルシアの目には入らなかった。
「……そう。ーーーまぁ、良いわ。コレから沢山目にできると思うし。」
その声に、カノンは首を傾げる。
「…今から何処へ行くの?お母様。ーーーーまた、戦い?」
フェルシアは微笑んだ。
「今日は違うわ。…今日は地上に降りるの。この(ーーーフェルシアは、自分達の後ろに座っている研究服姿の一団を指差す。)人達と一緒にね。」
「……何をしに行くの??」
「調査よ、調査。ーーー地質とか、自然環境とか、動植物の生態とか、そう言うのを調べるのよ。……貴女には、彼等の護衛として働いて貰うわ。」
「……チョウサ?…ソレをして、何になるの?何の意味があるの?」
カノンの疑問は純粋な物だったが、研究者達は苦笑していた。
フェルシアはカノンの頭を軽く撫でて、口を開く。
「大事な事よ。…この世に意味のない物は何一つとしてないの。ーーーー正確に言えば、意味のない物は淘汰されて、意味のある物だけが残ったの。今ある物は、全て必要だから存在している。……そういう物よ。」
「……私にも意味があるの?」
「もちろん。ーーーー貴女の存在にも意味はあるわ。グローリーの守護者として……なにより、私の娘としての、ね?」
その声に、カノンは胸に微かな暖かさを感じた。…この暖かさが何なのかカノンは理解できなかったが、何故か聞く事はせずに顔を窓の外に戻すと、再び空を見上げるのだった。
カノン達と研究者チームを乗せた輸送機が、緑溢れる大地に静かに降り立つ。
湿気を含んだ森の空気を感じながら、カノンは周りを見渡した。
「此処が…地上。……湿ってる。それに…木が大きい…。」
カノンの呟きにフェルシアが微笑む。
「ふふふ……初めて見たものね。確かに、この辺りは湿気が多いわ。湖が近くにあるから、ね。」
「木は?この木はなんでこんなに大きいの??」
「木が大きいのは、〈星のセラム〉の所為よ。星のセラムには、自然を豊かにする力があるの。」
「…自然を…豊かに…。そうなんだ。」
「ええ。グローリーに植林されている物より大きく育つわ。」
そう言ったフェルシアは、カノンを手招きする。
「…さ、研究者の人達はもう先に行ってるわよ?…興味を惹かれるのは分かるけれど、護衛の仕事を始めなさい。」
「ーーーーうん。分かった。」
カノンは巨大な木から目を逸らすと、フェルシアについて森の奥へと向かって行くーーーーーーーー
……森では、思っていた以上に危険な事は起きなかった。一度、トラックぐらいの大きさのあるワニが川から襲って来た程度で、しかも其れはカノンの相手にはならなかった。
ーーーーそして、特筆するべき事も無いまま、アッサリと地上調査は終わりを告げたのだ。
「……何も起きなかった。」
およそ半日程で終わった調査の帰り道、カノンは少しつまらなさそうに呟いた。
上を見上げれば、夕日色に染まった空。…黒い鳥の影が、朝見た方向とは真逆の場所目指して飛んでいる。
ーーーーあの群れも、自分達と同じ様に帰るべき場所に帰るのかな、なんて思いながらカノンが歩いていると、フェルシアが隣から声を掛けてきた。
「…カノン。ちょっとコッチに来なさい。……見せたい物があるの。」
「???」
カノンは首を傾げながらも、フェルシアが手招きする方へ歩いて行った。
「良いのお母様?そっちはチョウサ団の人達と逆の方向だよ?」
「彼等には寄り道するって言ってあるわ。…それにそんなに時間も掛からないから、おいでなさい。」
「………分かった。」
フェルシアが何をしたいのかカノンは分からなかったが、取り敢えず彼女の後をついて歩いて行く。
樹高何十mはある樹々の間を抜け、歩いて行くフェルシア。ーーーーその後を追いかけ歩くカノンの視界が、突然パッと開けた。
「…………わ。『湖』??」
カノンは小さく呟く。……そこに広がっていたのは、巨大な巨大な湖だった。
揺らめく湖面に、夕日の赫が反射して宝石の様に煌めいている。
「……そうよ。大きな湖でしょ??コレを見せたかったの。」
フェルシアの声が横から聞こえてきた。カノンは頷く。
「うん……すごく…大きい。それに…何だろ、この感じは……。」
輝きを放つ湖を見つめるカノンの胸に、1つの感情が浮かび上がってきた。
初めて感じるこの感情が何なのか言い表せないでいると、フェルシアが横から口を挟んで来る。
「〈感動〉よ。ーーーーソレは、美しい物を美しいと感じる心。本来なら、〈アナテマ〉の1人である貴女には
「………かん、どう。ーーーーコレが、ウツクシイもの…なんだね……。」
そう呟いたカノンは、フェルシアの方をチラリと見た。
………その時の彼女の顔はーーーーーーーー
◇◆◇
「ーーーーニュウくん。頬っぺたにパン屑付いてる。」
「え、マジです?…どっちですか??」
「右……もうちょっと左…そうソコ。」
ーーーーカノンは、記憶の彼方からゆっくりと引き戻された。
「………。」
目をパチパチさせる。…直ぐに意識は今に戻ってきた。
「ーーーーコレか……ありがとうございます。」
「ううん。たまたま気付いただけだから。」
目の前でネオとニュウが話をしている。カノンは手に持った「ふぁんた」に目を下ろした。…蓋を開けっぱなしで放置していたのか、シュワシュワと炭酸が抜け続けている。
「…………。」
そっと彼女はソレを飲んだ。…オレンジの味が喉を伝って流れ込む。
キュッと蓋を閉めてホルダーに掛けると、カノンはサンドイッチを手に取った。
食べながら、ぼんやりと昔の記憶に思いを巡らせる。
(……どうしてだろう…お母様の元に居た時の事は、私の中では忌むべき記憶の筈なのに……思い出すのは何故か暖かい記憶…。)
アルセーヌの言葉が頭に過る。
『ーーーーまだ彼女への情が、残っているんじゃーーーーーーー』
(情……?ーーー情って何なの?……アルセーヌの言っていた〈愛情〉なの??…愛情って何??)
カノンは食べる手を止めていた。
(……愛情。)
彼女の目は、目の前の2人に向けられる。
「ーーーーてか、ネオさんの再構築便利過ぎません??…もしや、僕のコートの破れも直せるんじゃ無いですか…?」
「え、破れたの?何処??」
「…コンビニから此処に来る途中で、停めてあったバイクに引っ掛けちゃいまして……裾がちょっとだけ…。」
「本当だ。……多分直せるよ?やろうか??」
「あー、じゃ、お願いしても…?」
「分かった。…………はい、直ったよ。」
「うわ、マジ便利ぃ!!」
カノンの前で、互いに気負うことなく話す2人。この2人の間にあるモノは、何なんだろう?
そんな事を思っていると、ネオがカノンの方を向いた。そして首を傾げて口を開く。
「…?ーーーどうしたの…?」
「あ。何でもない。ーーーー模擬戦、再開しようか。」
カノンは、食べかけだったサンドイッチを口に放り込んで立ち上がった。
「…一個で良いんですか…?沢山買ってきたんですけど。」
ニュウの声に、カノンは頷く。
「うん。…元々、沢山食べる方じゃ無いから。」
「あ、そうですか。」
ニュウは頷き返して、袋の口を閉じた。そして、2人に向かって手を振る。
「じゃ、僕は此処で観戦してましょうかね。ーーーー2人とも、頑張って下さい。」
彼の声にカノンは無言で、ネオは一言「うん。」と頷いてから、模擬戦を再開すべく広場に向かう。
………鳥は相変わらず空を飛んでいた。
◇◆◇
ーーーー〈超弩級移動要塞都市グローリー〉。
ソレは嘗て連邦によって造られた、最初の移動要塞都市の内の一機。
その外観は、一言で表すなら「機械の孔雀」だろう。
2本の長い〈脚〉で大地を動き、他の移動要塞都市に比べても全高が高いのが特徴で、その姿は正に優雅な鳥の様。
そして更に特徴的なのが、要塞後部にある巨大なパネル状構造ーーーーいわば、孔雀の尾羽に当たる部分である。
鏡の様なパネルが何枚も集まって、あたかも孔雀の広げられた羽の様に見えているソレの名前は、〈
アンソニーの言っていた、対ノーマン用兵器である。
……特筆すべきはその大きさか。グローリー自体も非常に巨大な移動要塞都市であるのだが、〔
その兵器に守られる様に、都市部が広がっている。ーーーー
12本の白亜の塔を持つ〈大聖堂〉は、もはや巨大な城の様でもある。
ーーーー更に、その城の手前には何千人も入れる様な大広場があり、その広場の周りには城下町が広がっていた。
そしてその大広場は今、沢山の人で埋め尽くされていた。……全員、白を基調とした服を身につけた人々ーーーーグローリーの住民達である。
彼等は、此処に大司教フェルシアの演説を聴きにきていたのだ。………基本、フェルシアが自ら人前に出て演説をする事は滅多に無いので、誰しもが一体何が行われるのだろう、と少し興奮気味に囁き交わしている。
「ーーーーーーあ、フェルシア様!」
誰かが大聖堂の方を指差して、そう口を開いた。広場の人々は一斉に大聖堂の方を見る。
ーーーー大広場に向かって張り出した〈大聖堂〉のバルコニーに、フェルシアの姿があった。
人々が、ワッと歓声をあげる。
フェルシアはそれに片手を上げて応えた。ーーーーますます上がる歓声。
その歓声に頷きを返し、彼女は手を下ろす。キィーーンと、拡声器の立てる音が広間に響いた。
さっきまでの大歓声が嘘の様に、広場はしん…と静まり返り、聴こえるのは何千という群衆の息づかいだけとなった。
『ーーーー天の恵みに感謝を。……おはよう、グローリーの臣民たち。』
フェルシアの声が木霊する。
『ーーー急な呼び出しで、申し訳なかったわね。だけれど、大事な事だからよく聴いて欲しいわ。』
そう言ってから、彼女は手を少し広げた。
『今、世界は混乱に包まれようとしている。オーステルンが擁するイースターと呼ばれる者達の手によって、新人類解放への圧力が高まっているの。』
広場の人達は互いに頷きを交わした。イースターのタルタロス襲撃は、もはや世界の知る所であるからだ。
フェルシアは続ける。
『ーーーー連邦は私達旧人類の未来を憂い、私達グローリーにイースターを討てと命じた。…しかし、いざ私達が宣戦布告すると、連邦は全ての責を私たちに押し付けてしまったの。』
群衆はまた頷きを交わした。フェルシアは微かに感情を込めた口調で、先を続ける。
『ーーーー旧人類の未来とこの国の未来、私は何方も守りたい。今の連邦は、もはや自己保身しか考えていない俗物に成り下がったわ。……故に私達グローリーは、連邦から離脱する事を検討しているの。』
広場が多少騒めいた。
『イースターとの戦いが終わった暁には、グローリーは連邦から脱退する。…コレから少し状況は苦しくなるかも知れないけれど、貴方達には力を合わせて頑張って欲しいのよ。……大丈夫、私は貴方達を信じてるわ。何故なら、貴方達は信心深き善人なのですもの。私が言うのだから、間違い無いわ。』
この言葉に群衆は心打たれた様だ。既に、フェルシアを崇める様に手を組んでいる人も居る。
フェルシアは両手を広げた。……背後の空に浮かぶ雲から、斜めに光が差し込む。
『宣戦布告から1週間、私はイースター、連邦、その両方に対抗できる様戦力を整えてきた。……恐るべき新人類に、この世界を好きになどさせないし、成り下がった連邦に私たちの未来を決めさせる事も、もうさせないわ。』
フェルシアは腕を合図の様にあげる。
ーーーーバサバサッ!
…それに反応したのか、空から『ナニか』が舞い降りて来た。
ソレは真っ白な色で、天使の様な翼を持ち、限り無く人に近い体型をしていたが、顔は目の無い鳥の様な顔だった。
ーーーーズシン…。
空から舞い降りて来た
頭上の空から差し込む光と合わせて、ソレ等は恰も天使の様に見えていた。
「ア…アナテマの天使…!」
白亜の塔に降り立ったソレ等を見て、群衆は息を呑んだ。ーーーー彼等には、ソレはとても美しい光景に見えたのだ。
白い羽がフワリと辺りに舞う。…雲の裂け目から差し込む光と、塔の上に佇む白いアナテマシリーズを背景にして、フェルシアは声を上げた。…人々の心を揺さぶる様に、鼓舞する様にーーーーーーーー
『今こそ、戦いの時。私達の新たな道は、ここから始まる。ーーーーさぁ……
大広場を、感激に満たされた歓声がつんざいたーーーーーーーー。