モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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ちょっと書き終えるまで長く掛かった…。難産難産。

コ○グ「もう疲れちゃってェ…途中筆が全然進まなくってェ…。」

あと前回、遂にカノンとフェルシアの戦いが始まった!……みたいな感じで終わりましたけど、今回の話にはカノン出てこないです。

\すマーン!!/(デビルマン風)





79話〈聖戦 Ⅲ 〜其々の戦い〜〉

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

[グローリー大聖堂 五階 懺悔室前廊下]

 

 

 

 カノンが扉の奥に行ったのを見送ってから、ニュウはそっと踵を返した。

 

……扉の向こうは、まだ静かだった。少なくとも、いきなり戦いが始まった訳では無いらしい。

 

 ニュウは歩き出す。…一先ず、大聖堂周辺の安全を確保するつもりだった。ネオ達は最新型との戦いが終われば、大聖堂に向かうだろう。

 

 大聖堂周辺には、まだアナテマシリーズと軍隊が居る。ネオ達に先立ってソレ等を排除し、安全な行軍を助けるつもりだった。

 

「ーーーーとは言っても…カノンさん大丈夫かな…。」

 

油断なく銃を構えたまま、ニュウは独りごちる。

 

 カノンがフェルシアに勝つ為に、ネオ達の助けを受けながら特訓的なコトをしていたのは、勿論知っている。…実際に立ち会ったこともある事だし。

 

 しかし、カノンは『何か』を掴みかけたものの、それが形と成って実る前にグローリーとの戦いが始まってしまった。

 

……ハレルヤ曰く、『フェルシアはカノンの全てを知り尽くしている。このまま立ち向かっても、前の二の舞になるかもしれない。』ーーーーとの事だ。

 

 ニュウもカノンの意志ーーーー自分の犯した罪の精算の為に、一人で戦うーーーーと言う意志を汲んではいる。しかし、やっぱり加勢した方が良いのでは……とも、思ってしまうのだ。

 

(直ぐには自分を変えられない。…それはカノンさんも分かってた事……。せめて、掴みかけた『何か』がしっかりとした形になってくれればーーーー)

 

そこまで考えて、ふとニュウは気付いた。

 

 

ーーーー或いは、フェルシアとの戦いこそが、カノンに『何か』への気付きを齎すモノではないか?………と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

[グローリー7番街 商業区域]

 

 

 

 

ドンッ!

 

パリィンッッ!!

 

ガシャーーーーンッッッ!!!

 

 

 

 グローリー7番街ーーーー様々な店が建ち並ぶ商業区域に、戦いの喧騒が齎されていく。

 

 

ーーーーズドンッッッ!!

 

 

 シャッターの降りた店が1つ、爆発で吹き飛んだ。……瓦礫と共に、舞い上がる黒煙。

 

「く……。」

 

ーーーー黒煙の中から飛び出したネオは、素早く槍を複数纏めて生成。生み出したソレを、対象目掛けて投げつける。

 

ーーーーキュインッッッ!!!

 

空気を切って投擲された槍。

しかし、ソレは何物も貫く事なく空に消える。

 

『ギャアアアアアアア!!!!』

 

 直後、女性の絶叫のような声が響き、空から純白の天使が舞い降りた。

 

 

ーーーーーーーーアナテマシリーズ、その『最新型』である。

 

 

「…しッ!!」

 

 舞い降りる天使(最新型)目掛けて、霊柩ノ大剣(コフィン・ブレード)を振り下ろすネオ。

 

 それを無骨な鉄剣で受け止める最新型。ーーーー刃と刃がぶつかって、激しい火花が散る。

 

 鍔迫り合いは一瞬で、直ぐに最新型はネオから距離を取った。そして彼女目掛けて、遠距離から無数のエネルギー弾ーーー《エナジーボール》とも言うーーーを、放ってくる。

 

ーーーーネオの周りに着弾し、次々と爆ぜては商店街エリアの床を抉っていく《エナジーボール》。

 

「…凄い威力。でもーーーー」

 

 舞い上がる粉塵を掻い潜って、ネオは最新型に突撃していく。最新型は迎え撃たずに、空へ飛ぶ事でネオから離れた。

……完全に警戒されている。

 

ーーーー正直なところ、最新型はネオにとっての脅威では無かった。エナジーボールの威力は確かに強いが、回避は比較的容易だ。パワーも高いが、決定的な差では無い。

 しかし、ネオは機動力で負けていた。……最新型は、マッハスピードで空を飛ぶ事が出来る。彼女は遠距離攻撃手段を持たず、頼みの綱の武器投擲も、せいぜい時速160キロ位の速度が精一杯だ。

 

「ーーーー攻撃さえ…当てられれば……。」

 

 空を飛ぶ最新型を見上げて、そっと呟くネオ。周りには、最新型の翼から抜け落ちた白い羽が舞っている。

 

………やはり、()()()()

 

ネオはそう考えた。

 

「ーーーー銃……。」

 

ーーーー少し前から、思っている事がある。

…ニュウと自分の間にある、()()()についてだ。

 

 

ーーーー元旦のあの日。自分は一度死んだニュウを蘇らせた。

 

 

 その時に、自分とニュウの間に何かしらの繋がりが生まれたのだと、アビスが言っていた事をネオはずっと覚えていた。

 

 その繋がりは、ネオに起きた変化をニュウにも伝えた。…つまりネオの覚醒に伴って、ニュウも覚醒に至った訳だ。

 

 更にその繋がりは、ニュウに()()()()()()である〈スピードモード〉と〈シールドモード〉を与えた。これは、ニュウの心臓の代わりとなった〈セラムキューブの欠片〉に宿っていたモノらしい。

 

 ニュウが、心臓のネオのキューブを通して、ネオの力を一部使えるようになった。

 

 

ーーーーじゃあ、()()()()()()()()()()()??

 

 

 

「銃をイメージする……特殊な構造じゃなくて良い…彼の力を……再現する…。」

 

 ネオはセラムキューブを握った。ーーーー欠けた中心…彼の心臓となっているキューブから、力を引っ張り出すイメージ………。

 

 

ーーーー()()

 

 

 ネオは目を開いた。……それは、少し不思議な感覚だった。セラムキューブから武器を作る時は、何というか…『ゼロから作ってる』って感じがする。

 しかし今のは、元々あった物をソコから取り出したーーーと言った感覚だった。

 

チャキッ…!!

 

 微かに金属的な音を響かせながら、目の前に現れたのは一挺の(ライフル)。紫色のソレを手に取ると、眩く輝いて黄色に変わる。

 

 

「………〈セラムキューブ:弔ヒノ銃(バイライト・ライフル)〉。」

 

 

 ネオの呟きと共に、光り輝く銃がその形をハッキリとさせた。

 

ーーーーーーーそして、この時ネオは知らなかったが、ニュウの方にとある異変が起きていた。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

「……ん??ーーーあれ??なんだか…僕の銃が……薄くなってーーーー」

 

 大聖堂から出ようとしていたニュウは、ふと自分が構えている〈レールガン〉が、幻の様に色を薄くしている事に気が付いた。

 

手に感じる重さも、どんどん軽くなっていく。

 

「え。ちょ…なんだコレ…?!」

 

 突然の謎現象にニュウが戸惑っている内に、レールガンは消滅した。

 

「き、消えちゃった……??」

 

 唖然とするニュウ。ーーーー最後に、ネオの手を一瞬見た気がするが……。

 

「…なんなんだよ…。武器無くなっちゃったじゃん……。」

 

 訳が分からず、ニュウは途方に暮れるのであったーーーーーーー

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 消えたニュウのレールガンは何処へ行ったのか?ーーーー答えは単純。

 

「……コレが、ニュウくんの………ーーーー銃。」

 

ネオの手に、空間を越えて移動していたのだ。

 

 その銃の見た目は、今まさにニュウの手元から消えたレールガンに、酷似していた。

 しかし銃全体に、少しシャープな印象を与えるアタッチメントが付く事で形が変わり、更に色も黄色に変化している。

 

……ネオの手に渡った事で、能力の一部が変質したのかもしれない。

 

 構えると、意外としっくりくる重みが手に伝わった。

 

「ーーーいける…!!」

 

 狙うは、空を舞う天使。ーーーーはじめての射撃だ。何処でも良いから兎に角当たれと、念じてネオは引き金を引く。

 

 

ーーーータタタタタタタタタタッッッ!!!!

 

 

 乾いた音が連続して響き、銃口の先端からスパークが散った。

 

 そして、放たれた音速の弾丸が最新型の翼を撃ち抜く。

 

『ギャアッッッ?!?!』

 

 不意を突かれ、蹌踉めく最新型。すかさず、ネオは銃弾の雨をその純白の身体に浴びせた。

 

(凄い……反動が無いし、狙った所にしっかり届く。ーーーーーーまるで、この銃の方から当てにきてるみたいな……)

 

 ネオが、あまりの扱い易さに軽く驚いている間に、銃弾に撃たれ続けた最新型が地に落ちて来た。

 

『ーーーーギィィッッッ!!』

 

 撃たれながらも最新型は身体を動かし、銃弾から逃げる様に飛ぶ。…翼が損傷しているとはいえ、中々の速度だ。

 

「ーーーーでもやっぱり、動かれると追えない…。」

 

 顔を顰めるネオ。ーーーー追いエイムはまだ苦手らしい。しかしーーーー

 

 

ーーーーガコン……ッ!!

 

 

「…?!()()()()!?」

 

 なんと、ネオの意志に関係なく、弔ヒノ銃(バイライト・ライフル)そのものが変形したのだ。

 

 銃口が上下左右に拡大し、その他のパーツも全体的に大きくなる。ーーーーまるで、バズーカ砲……。

 

 カチャ、と言う音と共に目の前に現れた、半透明のサイトを覗き込むネオ。……そのサイト越しに最新型を見ると、十字のマーカーの様な物が表示された。

 

「……マーキング・ミサイル。」

 

小さく呟くネオ。

 放たれたのは、さっき迄の弾丸とは異なり、大きなミサイル弾だった。

 

 それは、マーキングされている最新型を追尾するかの様に飛び、脇腹に着弾する。

 

ドゴーーーーン!!

 

ーーー激しい白爆発が、最新型を横殴りに吹き飛ばした。今度こそ地面に叩き付けられる最新型。

 

 深い傷を負っていたが、まだ戦える様だ。ーーーー此方に向かって、エナジーボールを投擲してくる。

 

「ーーーーそれはもう見慣れた…!」

 

 ネオは軽やかにソレを回避すると、勢いよくダッシュして最新型の懐に飛び込む。

……もう最新型からは、さっきの様な機動力が失われていた。今までの様に避けるのではなく、迎え撃つ事に決めたらしい最新型。

 

ーーーーだが、ネオ相手にその行為は命取りだ。

 

「はッ!!」

『ギャアッ!?』

 

 あっさりと剣を叩き落とされて、霊柩ノ大剣(コフィン・ブレード)で袈裟懸けに斬られる最新型。

 

 ただでさえ、マーキングミサイルの一撃で体力が減っているのだ。ネオとの近距離真っ向勝負に勝てる訳が無い。

 

「ーーーーアナタは結構強いからね…。確実に決める。」

 

 そうネオは宣言すると、霊柩ノ大剣(コフィン・ブレード)を最新型の腹部に刺し込み、逃げられない様地面に縫い付けてから、未だ片手に持ったままだった《弔ヒノ銃(バイライト・ライフル)〉を、最新型の頭部に突き付けて引き金を引いた。

 

 ゼロ距離からの連続射撃に最新型の頭部は晒され、内側から破裂する様に周囲にドス黒い血を撒き散らす。

 

しかし、最新型は頭部を消失しても尚、動き続けた。

 

「…!!」

 

 ネオの首に純白の手が伸びて、強く締め付けられる。

 

(ーーーーッ!?首を絞められた…!このままは危険…!!)

 

 素早くネオは最新型の手首を握ると、思いっきり力を込めて手首の骨を折った。

 ボキィ!!ーーーと音がして、最新型の手の力が抜ける。拘束から逃れたネオは左脚を高く上げ、踵落としの様に最新型の胸に叩き込む。

 

ーーーーーーー肋骨が纏めて粉砕される音が響いた。

 

「これで最後。ーーーー火葬ノ剣(クリメイション・ソード)!!」

 

 トドメと言わんばかりに、生成した火葬ノ剣(クリメイション・ソード)を最新型の胸に刺し込んだネオ。真紅の刃が天使を刺し貫いて、その造られた一生に終止符を打った。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

[グローリー5番街 居住区域①]

 

 

 

 

ーーーー人気の無い静かな住宅地に、剣戟の音が響く。

 

 

 バサラは、『斬魔刀ヴァジュラ』を構えたまま前方ーーーー地に足をつけ、此方をニヤニヤと目の無い顔で見つめる最新型(以下、最新型Aと呼称。)ーーーーを睨み付けた。

 

 彼の後ろには、背中合わせになる様にハレルヤが立っている。

 

…ハレルヤもハレルヤで、最新型の1体と向かい合っていた。(以下、最新型Bと呼称。)

 

 彼等の足元には沢山の折れた剣や、砕けた鎧、白い銃が転がっている。……コレ等は全て、グローリー軍の物だ。

 

 バサラは、ハレルヤの手も借りてグローリー軍を退け、今は最新型2体との戦闘に入っている所である。

……ただどうも、戦況は膠着状態らしい。2人とも大きな傷は負っていないが、立ちはだかる最新型達も、あまりダメージを受けている様には見えない。

 

「面倒な相手だな…こいつ等。」

「そうだね…。でも軍隊は一旦退けたから、今はコイツらに集中できる。」

 

 ハレルヤがバサラの呟きに答え、ガントレットを装備している両手を握り締めた。

 

ーーーーと、同時に最新型達が2人に飛び掛かって来る。

 

「ーーーーうらぁッ!!!」

 

雄叫びと共に迎え撃つバサラ。

 

 斬魔刀ヴァジュラと、最新型Aが持つ鉄の剣が激突して火花が散る。

 

「ふッ…!」

 

 ハレルヤも両腕を使って、迫り来る最新型Bの剣を受け止めた。

 ガントレットと剣がぶつかって、此方も火花を散らす。

 

『ギャアアアッ!!』

『グギャアアアッ!!』

 

 まるで絶叫の様な不気味な声を上げながら、2人を叩き斬ろうとする最新型達。

 

バサラは素早く足払いをかけて、最新型Aを転かす。

 そして、倒れた最新型A目掛けてヴァジュラを振り下ろしたが、最新型Aは横に転がってソレを回避。

 更に起き上がりと同時に剣を横薙ぎに振るって、バサラを攻撃してきた。

 

「ーーーーッと!!」

 

 

 それを上半身を反らして回避したバサラ。ーーーーそしてヴァジュラを鞘に納め、居合の構えをとる。

 

「……お前等、結構体力あるからな…。一撃で決めるつもりでやんねーと、中々終わらねぇ。」

 

 構えた彼の体を、赤い炎の様なオーラが包み込む。

 

ーーーーズッ……、と周囲の細かな礫が震え、何か見えない力に押し退けられる様に、バサラから離れて転がっていく。道に散らばっている鎧や剣も、カチャカチャと音を立てて揺れ始めた。

 

 

……尋常では無い力が、バサラに集まっている。

 

 

側にいるハレルヤは、全身が粟立つのを感じた。

「ちょっと…離れた方が良いかもね。」

 そう呟いて、ガントレットから凝縮した水のエネルギーを放ち、自分と戦っている最新型Bを引き離した。

 

 そして、流されていく最新型Bを追いかける様にバサラから離れる。

 

 ハレルヤが離れていくのを横目で確認してから、バサラは小さく息を吐いた。

 

 彼の周りの空気が、どんどんどんどん揺らいでいく。……噴き上がる火のようなオーラもより激しくなり、見る者を圧倒する。

 

「…どうした。来いよ…!」

 

 バサラは最新型Aに対して、居合の構えを保ったまま口を開いた。最新型Aは一瞬たじろぐように体を動かしたが、剣を静かに構えるとバサラの誘いに乗って、彼に突っ込んでいった。

 

ーーーーマッハスピードで空を飛ぶ事が出来るアナテマシリーズ最新型(TYPE-C)の飛行能力。その全ての力を利用した、初速から音速越えの超加速突撃である。

 

ーーーーしかも、僅か6メートルかそこらの至近距離からの突撃。普通、目で追う事は不可能な筈だ。

 

 

ーーーーーーーザシュッッッッッ!!!!

 

 

 

……青空に鮮血が舞う。

 

 

 僅か一瞬で、最新型Aはバサラの背後に移動していた。

 一方バサラはその場から動かず、ただ刀を鞘から抜いた状態で立っている。

 

 

 

……………ドサリ。

 

 

 

 暫くの静寂の後、最新型Aの上半身がズルリと下半身から滑り落ちた。

 

バサラは刀を振り、スッと鞘に戻す。

 

 カチン!と音を立てて『斬魔刀ヴァジュラ』が鞘に収まった時、彼の背後で最新型Aの下半身が、膝から地面に崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 バサラが最新型Aとの戦いを制したのとほぼ同時に、ハレルヤも最新型Bとの戦いを終えようとしていた。

 

「ふん!!」

『ギャアアア!!』

 

 最新型Bの目の無い顔に、強烈なストレートを浴びせるハレルヤ。

 カウンターで飛んできた剣を片手で受け止め、空いている方の手で剣を叩き割る。

 

バキッ!!ーーーと音を立てて、半ばから砕ける鉄剣。

 

 それを見た最新型Bは、ハレルヤから距離を取った。ーーーー片手に持った剣の破片を投げて追撃するハレルヤ。

 

 最新型Bはそれを回避すると、空に飛び上がった。

 ハレルヤも両脚から水のエネルギーを放出し、空を飛ぶ。

 

『ギイィィッッッ!!』

 

 空に飛び上がったハレルヤに向かって、素早く突撃して来る最新型B。

……音速レベルの突進は回避するのも難しい。故に、ハレルヤは自らを巨大な水球に包み込んで、身を守ることにした。

 

 ザバァンッッ、と水球の表面と最新型Bが接触し、盛大に水飛沫が上がる。

 分厚く貼られた水のバリアとも言うべきそれは、最初の接触で大部分が飛び散り無くなった。

 しかし、忘れてはならない。ーーーー飛び散った水、それ等は全てハレルヤの制御下であると言う事を。

 

「ーーーー集まれ!!」

 

 ハレルヤが腕を振ると、辺りを漂う水飛沫が再び水球に戻った。但し、今度はハレルヤを包むのでは無く、最新型Bの身体を包み込む形でだが。

 

『……?!』

 

 水から脱出しようともがく最新型B。ハレルヤは最新型Bに脱出される前に、水球に向かって掲げた手を強く握りしめた。

 

 次の瞬間、巨大な水球がギュッと縮小し、内部の最新型Bに凄まじい水圧を掛け始める。

 

『ーーーーッ?!?!』

 

 

……それは一瞬の事だった。

 

 

 ハレルヤの水球の内部に発生した水圧は、凡そ水深2,000mに相当する圧力である。

 

 地上の生命体が一身に背負うのには、余りにも高すぎる力。

 

 その圧力に全方位から晒された最新型Bは、肺などの内臓器官が一瞬で潰れ、自らの死すら認識出来ずに絶命するのだったーーーー。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

[グローリー4番街 工業区域]

 

 

 

 

 白い建材を基調とした工場が建ち並ぶ[工業区域]。

 

此処でも、戦いは起きていた。

 

 

 

 戦いの中心に居るのはアミダとキラリ。そして、アルセーヌの3人である。

 

 彼女達は工業区域内にて、最新型2体及びグローリーの軍隊と交戦を行なっていた。

 

 

 

 

「ーーーー《ダンサー・イン・ザ・ダーク》。」

 

アルセーヌの声が、戦場に響く。

 

「…!()()だ!!ーーーー壁から離れろ!!」

 

軍隊の誰かが、そう声を張り上げた。

 それと同時に、アルセーヌの姿が床に溶け込むように消える。

 

「…残念だけどーーーー壁だけじゃなくて、床からも出て来れるのよ。」

 

 彼女の囁きと共に、軍隊の足元の地面からアルセーヌが飛び出して来た。

 

「ぐはっ?!」

「ごふッ!」

「がっ!」

 

 一瞬にして懐に飛び込まれた兵士たちを、アルセーヌは華麗に蹴り飛ばす。反撃しようとする兵士達だったが、彼等の反撃が届く前にアルセーヌの姿が消えた。

 

「ーーーーくそッ!!床に潜ったな!?」

「…正確には、()()()()ね。」

「!!!」

 

 ぬっ、と音も無く兵士達の背後に現れるアルセーヌ。彼女が両手を振ると、彼女の前に浮かんでいる漆黒のキューブから、黒い波動が放たれて兵士達を吹き飛ばす。

 

 

ドンッ、と舞い上がる粉塵。

 

 

ーーーー追撃しようとしたアルセーヌだったが、ココで別の影が戦いに割って入ってきた。

 

 

………アナテマシリーズ最新型(TYPE-C)である。

 

 

「……おりゃッ!!」

 

 その純白の体から繰り出される斬撃がアルセーヌを斬り裂こうとした時、間に割って入ったアミダが剣でソレを受け止めた。

 

大気に爆ぜる火花。

 

 攻撃を止められた最新型は、アミダを剣ごと叩き斬る勢いで力を込める。

 

「うわっ!?」

 

押し込まれたアミダは、思わず片膝を床につけた。

 

 最新型の剣と鍔迫り合い状態の『インフィニティ・ブレード』が、ミシミシと軋む。

 

……このままでは折れるーーーーーーとなった所で、アミダの背後から無数の矢が飛んできた。

 

 深緑の光を纏ったその矢は、アミダと鍔迫り合いをしていた最新型の頭部に突き刺さる。

 

『ギッッ!!』

 

 仰け反って、一歩退がる最新型。その矢を放った張本人であるキラリが、油断なく弓を構えたまま叫ぶ。

 

「…今です!!追撃、入れて下さい!!」

 

応えたのはアルセーヌ。

 

「ーーーー了解よ。」

 

 彼女の、闇色のオーラを纏った回し蹴りが最新型の頭部に炸裂し、吹き飛ばす。

 

 更に起き上がったアミダが、インフィニティ・ブレードを十字を描くように振り回し、体勢を崩している最新型を切り裂いた。

 

 ドッと血を噴き出しながら、倒れ込む最新型。これで1体は倒れた。…だが、まだ最新型はもう1体残っているーーーーーー

 

 

ーーーーそうアミダが思った時、キラリの背後に白い翼が現れた。

 

 

「ッ!?キラリぃ!!」

 

アミダが叫ぶのと、

 

『ギャアアアアアッッッ!!!』

 

 最新型が絶叫して、キラリの首に剣で切り掛かったのが同時だった。

 

「……ッッ!!!」

 

ーーーーキラリが素早く身を翻す。

 

 彼女の首を狙って横薙ぎに振るわれた剣は、キラリの首を捉えることは出来なかったが、彼女の右肩から胸の上を通って、左肩までを一直線に切り裂いた。

 

 パッ、と舞う紅。斬られたキラリは地面に背中から倒れ込みーーーー

 

 

「ーーーー《トゥルー・カラーズ・シャイニーブライト》ッッ!!!」

 

 

ーーーー倒れる瞬間、キラリは弓を(つが)えて叫んだ。

 

彼女の弓から、眩い光が放たれる。

 

 

……それはもはや矢では無く、レーザーであった。

 

 

『ギィィィッッ?!?!』

 

 

 至近距離から迸った一条の閃光に貫かれ、最新型は大きく仰け反る。貫かれた箇所から、バチバチとスパークが噴き出しーーーーーーーー

 

 

『……ギ、ギィィィヤァァアァアッツッ!!!!』

 

 

 耳を塞ぎたくなるような悲痛感のある断末魔を上げながら、最新型は地面に大の字になって倒れ込んだ。……溢れ出した血液が、地面を真っ赤に染めていく。

 

「うっ………。」

 

 同時に、キラリも糸が切れたかの様にドサリと崩れ落ちた。

 

「キラリッッッ!!」

 

 血相を変えたアミダが、倒れ込んだキラリに駆け寄る。

 血を流し倒れ込む彼女をアミダが抱き起こすと、キラリは目を薄らと開いた。

 

「い、いててて……。やったよアミダちゃん。……私、倒せたよ。」

 

 痛みに顔を顰めながらも、キラリは微笑む。アミダは思わず声を荒げていた。

 

「…でも今のは危なかったよキラリ!!ーーーーもし深く斬られてたら、どうするつもりだったのさ?!」

 

 キラリは回避行動に出る際、弓を構えたままだった。ーーー構えを解いて素早く回避していれば、負傷しなかったかもしれない。

 

……但し、構えを解いていた場合、今の様に最新型を倒す事は出来なかっただろう。

 

 少し申し訳なさそうな顔をしながらも、キラリは口を開いた。

 

「…ごめんね。ちょっと無茶したかもしれない。でも、私はタルタロスの時も、獣神祭の時も、ずっと皆んなの足ばかり引っ張ってきて……。私…少しでも皆んなの力になりたかった。だから………。」

 

ーーーーそれは、キラリがイースターの一員となってから、ずっと思っていた事だった。

 

…タルタロスでの戦いの時、キラリはただ守られるだけだった。自分から戦いについて行ったのにも関わらず、あの時キラリは何も出来なかったのだ。

 だから、今度はそうなるまいとキラリは心に誓った。イースターの……ひいてはアミダの助けに自分がなれる様に。

 

ーーーー必ず、皆んなの役に立って見せる。……この戦いが始まる前から、キラリはそう決めていたのだ。

 

「……でも、結局怪我しちゃったら、これからの戦いについて来れないよね。ごめん…。結局役に立てなくてーーーー」

 

 少し目を伏せて呟くキラリ。アミダは反射的に口を開いて叫んでいた。

 

「ッ〜〜!そんな事ないよ!!……さっき私が最新型に押し込まれてた時、援護してくれたじゃん!タルタロスの時だって、獣神祭の時だって、私と一緒に戦ってくれたじゃん!?……無理しなくて良いんだよ。キラリはちゃんと戦えてる。ーーーそれは私が良く知ってるから!」

「………アミダちゃん…。」

 

その叫びを受けたキラリの目が微かに揺らぎーーーー

 

 

 

 

『ーーーー()()()()()・フェザーバースト》。』

 

 

 

 

ーーーー今この場にいる誰のものでもない、第三者の声が聞こえてきた。

 

 

 

「「「ーーーーッッッ?!」」」

 

声の聞こえてきた方を振り向く3人。

 

彼らの目に、迫り来る漆黒の波動が映り込むーーーー

 

 

「ーーーー〈ヒドュン・イン・ザ・ダーク〉ッッッ!!」

 

 

 咄嗟にアルセーヌが叫んで、アミダとキラリの体を紫の光で包み込ませた。

 

 目の前に着弾した黒い波動が爆ぜ、辺りを吹き飛ばす。ーーーーアミダとキラリは、アルセーヌの技のおかげでノーダメージだったものの、1人爆発に巻き込まれた彼女が吹き飛んでいくのを、アミダは見た。

 

 

「アルセーヌッ!?(ーーーー私達と同時に自分を守る程の力が、もう……!!)」

 

 

 次の瞬間〈ヒドュン・イン・ザ・ダーク〉の効果が切れ、アミダとキラリは実体を取り戻す。

 

 アルセーヌは、だいぶ離れた所にドサリと倒れ込んだ。キラリが自身の怪我を他所に、アルセーヌの方に駆け寄る。

 

一方、アミダは攻撃が飛んできた方向を睨み付けた。

 

……しかし、さっきの技名発声。何処かで聞いたことがある様なーーーー

 

 

バサリ…………。

 

 

「…!!」

 

翼の羽ばたく音が聞こえる。

 

ーーーーその羽ばたきに顔を上げたアミダが見たのは………

 

 

()()……()()()???」

 

 

 青空を背景に空に佇む、真っ黒な見た目のカノンの姿であった。

 

 

ーーーーしかも、それだけでは無い。

 

 

 黒いカノンのすぐ隣に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 皆、アミダ達の見慣れたカノンの見た目をしているが、全身が単色の見た目に統一され、首にゴツめのチョーカーを付けているという特徴がある。

 

「……な、何これ…。」

 

 アルセーヌを介抱しているキラリが、唖然と呟いた。アミダも呆然となって口を開く。

 

 

「カ…カノンが……いっぱいだ。」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

[グローリー7番街 商業区域]

 

 

 

 

 最新型との戦いを終えたネオは、人の気配の無い商業区域を走っていた。

 何故か軍隊が追いかけて来ないので、武器は全て消して手ぶらである。ーーーちゃんとニュウの銃も、本人に返しておいた。(遠隔で)

 

 

 おそらくレストラン街と思しき、小洒落た区画を大聖堂目指して走っていたネオだったが、ふと沢山の椅子が置いてある広場で立ち止まった。

 

……何かの気配を感じたからだ。

 

(……なに…?ーーー何か…私を狙っている…??)

 

ーーー彼女の脳裏に、獲物に忍び寄る猫のイメージが浮かんだ。…この場合、自分が猫に狙われる獲物かーーーー。

 

 いつでも武器を生成出来るよう、セラムキューブを手に出現させてから、辺りを見渡すネオ。

 

 

『…カチ。』

 

 

 広場の真ん中にある細い時計台が、(12時)を指したーーーーーーー

 

 

次の瞬間、ネオの側のお洒落な椅子が派手に吹き飛ぶ。

 

 

「ッ!!!」

 

 

空を舞う、11個の椅子。

 

 その内10個をネオは回避し、残りの1個は脚で蹴って弾き飛ばした。

 

 地面に落ちた椅子が、ガラガラガッシャーン!と派手な音を立てる。

 

「……誰!?」

 

 ネオは椅子が吹き飛んできた方向を見て、口を開いた。

 

 

ーーーーそれに、猫のような女性の声が答える。

 

 

「さーーて、誰でしょ〜??」

 

 

 カツン、と硬い靴の音を響かせて、ネオの前に1人の少女が立ちはだかった。

 

 

 ゆらゆらと揺れるコードのような尻尾。…その先端には、鋭い刃のような物が付いている。

 

赤色掛かった髪に、肩には()の文字。

 

 猫のようにしなやかそうに見える体には、普通の生き物には無い筈の球体関節らしき物が見える。

 

 

 ネオは油断なく構えたまま、自分の質問に質問で返した少女に向かって、口を開いた。

 

「………グローリーの…軍隊の1人。かな?」

少女は指を顎に当てる。

「ーーーーん〜、ちょっと違うかなぁ〜。ま、でも別になんでも良いよね。……取り敢えず、『お父様』が貴女を欲しがってるんだ。大人しく、()()()()に来て貰える??」

 

ネオは目を細めた。

 

「…断る。グローリーじゃ無いにしろ、どうせ連邦の差し金だよね。ついて行く訳が無い。」

 

少女は顎に添えていた手を下ろす。

 

「そっかぁ。……じゃあ、無理矢理にでも攫うしかないね。死んでなければ良いって事だし、足とか腕無くなっても…大丈夫だよね?」

 

そのセリフに、身構えるネオ。

 

 少女は両手を広げた。ーーーコードのような尻尾、その先端に付いていた刃が9つに分離する。

 

 対抗するように武器を生成したネオに向かって、少女ーーーー〈人造臣機ノイン〉ーーーーは、笑って叫んだ。

 

 

「早く貴女を持ち帰って、『お父様』に褒めてもらうんだから!……あんまり抵抗しないでよね!!!」

 

 

 その言葉と同時に、9つに分たれた尻尾の先端の刃が、ネオに襲い掛かったーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 






…過去の自分にひとこと言いたい。

「なんでネオの銃を、こんな回りくどいやり方にしたんだ!!!」

…元々、ネオは銃持ってるんすよ。キャライラスト見れば分かるけどね?(あの黄色いやつ)

だから別に何も捻らずに、これからは銃も使えますよ〜ってだけで良かったのに、なんで最初は持ってないって設定にしたかなぁ〜??

一応、伏線?的なものとして、わざわざ連邦兵の1人に「ネオは銃を持ってない」って言わせてるんですよね。伏線ってか、原作との矛盾解消の為?

でも、絶対こんなことせんで良かったよな…。

あ、因みに〈弔ヒノ銃(バイライト・ライフル)〉のバイライトは、「Beileid」って書きます。
ドイツ語で「弔い」って意味っすね。…今までルビは英語だったのに、急にドイツ語になるっていう。…ちな、読みがあってるかは知らん()

ほな、また次回。(ちょっと今、なんやかんな疲れてるからまた遅くなるかも。)
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