モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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84話〈聖戦 F 〜決別の……〜〉

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ドゴ────────ンッッッ!!!

 

 

 

 

 

ーーーー白亜の城に見下ろされし円型の大広場に、爆発が連鎖する。

 

 

 爆発の中心にいるのは、ニュウとバサラ。そして、ハレルヤの3人組だ。

 

 

 彼等は大広場にて、偽物のカノンーーーー〈カノンシリーズ〉3体と交戦している。

 

 

……先程の爆発も、戦いによるものだった。

 

 

 

「ーーーーちッ。カノンの見た目してるだけあって、中々厄介な相手だなコイツら…。」

 

 もうもうと上がる黒煙の中から飛び出したバサラが、独りボソッと呟く。

 

 そんなバサラを追って、黒煙の中から出現する緑色の偽カノン。

 

 彼女が構えている緑色の〈ラファエルの槍〉を見ながら、バサラはため息をついた。

 

「はぁ……なまじ人間そっくりの見た目してるだけあって、ヤり辛ぇ事この上ねぇな……。」

 

 そう言って、彼は手に持った『斬魔刀ヴァジュラ』を構える。

 

「俺は、人に向けて刀を抜かない主義(タチ)なんだけどよ。……いや、主義って言うのはカッコつけ過ぎか……?」

 

独り言を言いながら、偽カノンに歩み寄るバサラ。

 

「本当は…ただの言い訳さ。ーーーー()()()()()()ってヤツを、思い出さない様にする為の……な。」

 

ヴァジュラが、太陽の光を反射して鈍く輝く。

瞬間、偽カノンがバサラに踊りかかった。

 

音速で突き出される槍の一撃。

 

 バサラはソレを斬魔刀の背で弾いて逸らす。そして偽カノンに近づきーーーー

 

 

コ────ンッッッ!!

 

 

ーーーーーーー繰り出した右脚の蹴りが、バリアに阻まれて甲高い音が鳴る。

 

 バサラは素早く足を引くと、カウンターで放たれる槍を回避する。そして後ろに下がりながら、自身のセラムキューブを展開して、能力を行使した。

 

「ーーーー《ソリッド・バレッド》」

 

 彼が突き出した掌から、銃弾の形をとった炎が放たれる。ーーーーそれは偽カノンのバリアを叩くと、爆発して彼女の視界を塞いだ。

 

バサラは偽カノン目掛けて走り出す。

 

 

 そして、爆炎で自分を見失っているであろう偽カノンの背後に素早く回り込んだ。

 

「ーーーー!!」

 

 しかし、偽カノンは気配を察知したのか、背後のバサラ目掛けて槍を振り回して攻撃してくる。

 

「ーーーーっと。」

 

 頭を下げて、横薙ぎに振るわれる槍を回避したバサラ。そして、素早く地面を蹴って偽カノンの懐に飛び込んだ。

 

「………カノン(あいつ)は、攻撃する時に必ずバリアを消す。…じゃないと、自分のバリアで自分の攻撃を防いじまうからな。お前も同じだろ??」

 

偽カノンの耳元で、そう囁くバサラ。

 

「ーーーー俺たちの攻撃のチャンスは、その隙に生まれるって事だ。……悪りぃな。仲間の事なら、俺はよく知ってんだよ。」

 

 

 そう言った彼は、素早く偽カノンの首筋に手刀を決めるのだった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

[ハレルヤ・ニュウ視点]

 

 

 

 

 バサラが偽カノンと戦う一方で、ハレルヤとニュウも其々カノンシリーズと戦いを繰り広げていた。

 

 

 

ーーーー大広場に、紫の銃弾と青い水流が乱舞する。

 

 

 ニュウの撃つ〈電磁砲(レールガン)〉と、ハレルヤが操る水のエネルギーが、カノンシリーズの繰り出す攻撃やバリアとぶつかり合い、激しい爆発を至る所で生んでいた。

 

「ーーーーあのバリアが厄介ですね、ハレルヤさん。」

 

 ハレルヤと背中合わせになる様に立っているニュウが口を開く。

ハレルヤは頷いた。

 

「うん、そうだね……。それに加えて、カノンと同じ天使の武器を操る力も持っているし…。本物と変わらない様にも見えるよ。……色以外。」

 

 そうハレルヤが口にした時、空から紫のカノンと黄色いカノンが突撃して来た。

 

 其々の手に握られた紫のウリエルの剣と、黄色のガブリエルの剣が2人に迫る。

 

 

「ーーーー《シールドモード》ON。」

 

 

 しかしその刃は、ニュウがハレルヤと自分を守る様に展開した巨大な青い盾で防がれた。

 

 青い盾と衝突し、剣先から飛び散る紫と黄色の火花。

 

 そのまま盾が2人を押し退ける様に前に移動し、偽カノン達を引き離す。

そして、盾の後ろからハレルヤが飛び出してきた。

 

「ーーーー革命の……双龍砲ッ!!」

 

 彼の両手から放たれる青い奔流が、偽カノン達に迫る。

 しかし、偽カノン達は空に飛び上がる事でソレを回避した。

 

 ハレルヤの一撃は誰もいない空間を穿ち、ド派手な青い爆発を2つ生む。

 

 その爆発を背景に、再びコチラに突っ込んでくるカノンシリーズ。今度は、紫のラファエルの槍と黄色のミカエルの甲冑に武器が変わっていた。

 

ーーーーニュウが行手を阻む様に展開した盾を左右に避け、近くに居るハレルヤに迫るカノンシリーズ達。

 

「ーーーー俺を一点狙いか。……それで良いのかい?」

 

 ハレルヤがカノンシリーズ達を見つめて呟いた直後、真横から〈マーキング・ミサイル〉が飛んできた。

 

……武装を電磁砲(レールガン)から、〈バズーカ砲〉に換装したニュウが射撃した物だ。

 

「ーーーー?!」

 

 咄嗟に黄色カノンは避けたが、マーキングされていた紫カノンは食らってしまう。

 

 ズドンッーーーと白爆発が発生し、紫カノンを包み込んだ。ーーーーーーーが。

 

「……バリア、か。」

 

 白爆発の中から無傷で現れた紫カノンを見て、ニュウは小さく呟いた。

紫カノンは、バリアでミサイルを防いでいたのだ。

 

「…試作型デスアーク戦の時も思ったけど、厄介ですね。バリア持ちって。ーーーーだけど………」

 

 

……空中に、薄紫色のガラス片の様なものが舞う。

 

 

 それを見ながら、ニュウは再びバズーカ砲を構えた。

 

「今のでバリアは割れたみたいですね。……なら、もう一度食らえばーーーー」

「……!!」

 

 次にニュウがする事を察したのか、紫カノンがニュウに勢い良く方向転換して向かってくる。その動きは素早く、マーキングする暇が無かった。

 

 

「ーーーーシールド・モードOFF。《スピード・モード》ON。」

 

 

 マーキング不可能と判断したニュウは、三対の機械の翼を広げて蒼穹に飛び上がる。それを追う様に空へ向かう紫カノン。

 

空を飛びながら、ニュウはバズーカ砲を変形。

 

ーーーー彼の片手に、一挺の〈短機関銃(サブマシンガン)〉が生成される。

 

「ーーーー《スナイプ・マシンガン》。」

 

 彼の構えた青紫の短機関銃(サブマシンガン)が、同じく青紫の火を吹いた。

 

放たれた弾丸が、紫カノンを襲う。

 

 青空に紫の軌跡を描くソレを、翼をはためかせながら回避していく紫カノン。

 

 避けながら、手に持っていた紫のラファエルの槍を変形させていく。

 

ーーーー槍から、カノンが使う銃によく似た形状の武器へ。

 

「……アレはカノンさんの銃。ーーーー撃ち合う気ですか…!」

 

 そうニュウが呟いた途端、彼方も紫に光る銃弾を放ってきた。

 

……カノンの能力の1つ、パラージ・ショットガンだ。

 

「ッ!!」

 

迫る散弾を閉じた翼で防ぐニュウ。

 

 散弾が機械の翼に当たり、ガキンガキンと激しく火花を散らす。

 

 防ぎながらも、翼の隙間から紫カノンの位置を目視で把握し、常に上をとる様にニュウは動いていく。…時折、攻撃の合間に射撃をする事も忘れない。

 

 

 そして、両者は撃ち合いながらかなり高い所まで上がってきた。

 

 

(ーーーーグローリーの全体像が見える……。結構高い所まで来たな…。)

 

 

 真下を見下ろして、そう思ったニュウ。ーーーーそして辺りを見渡す様に首を巡らせた時、地平線の向こうに動く黒い砦の様な物を見た。

 

 

(アレは……オーステルン?ーーーー思ったより近くに来てたのか。)

 

 見ている間にも、オーステルンの影は少しずつ大きくなっている。その周りでは、ひっきりなしに爆発と閃光が上がっていた。

 

(まだ、オーステルン付近では戦いが継続してる。……だけど、此方は物量で不利だって聞いてるし……。僕達が、戦いを早く終わらせないと。)

 

 当初の計画では、あそこまでオーステルンが前に出てくることは無かった筈だ。

 前に出てきたという事は、おそらく手持ちの航空戦力が尽きたか、尽きる寸前なのかもしれない。

 

ーーーー超弩級同士の直接対決は、甚大な被害を双方にもたらす。……それを理解してないゼウスでは無かろうが、もう取れる手段が残り少なくなってきている可能性はあった。

 

 

ーーーー早く戦いを終わらせねば。

 

 

 そう心に決めたニュウは、翼を大きく広げて太陽を背に飛ぶ。そして、手元のサブマシンガンを素早く変形させた。

 

「ーーーーーーー!」

 

 飛んで行くニュウに狙いを付けた紫カノンだったが、眩ゆい真昼の太陽の逆光に、一瞬目が眩んでしまう。

 

(ーーーーその一瞬が、生死を分けるんですよ…!)

 

 そう心の中で言ったニュウは、変形を終えた銃を構えた。

 

 

ーーーー今現在、両者の距離はだいぶ離れている。反動の激しいサブマシンガンでは、うまく狙いを付けにくいーーーー

 

 

(…だが、コレなら!)

 

 

 ニュウは、先ほどまで手に持っていたサブマシンガンを変化させた銃ーーーー〈狙撃銃(スナイパーライフル)〉を肩に押し当てる様に構えてスコープを覗き込み、トリガーを引いた。

 

「ッ!?」

 

 紫カノンが、スコープの反射光に気付いたその瞬間ーーーーーーーー

 

 

 

タ──────ンッ………!!

 

 

 

 狙撃銃から放たれた1発の『跳弾』が、紫カノンの眉間を的確に射抜き、空から地に撃ち墜とすのだったーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーーーグローリー上空でニュウが偽カノンとの戦いに決着をつけた時、ハレルヤもまた偽カノンとの決着をつけようとしていた。

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーふっ!!」

 

 

気迫を込めて拳を振るうハレルヤとーーーー、

 

 

「ーーーーーーー。」

 

 

ーーーー無表情かつ無言で対応する黄色カノン。

 

 

両者の攻撃が激しく交差し、空気を揺らす。

 

「まだまだ…!」

 

 ハレルヤは、黄色カノンにバリアを張られる事がないよう、常に超至近距離で戦っていた。

 

ーーーー繰り返し散る火花。

互いにもつれ合う様に戦いは進行していく。

 

「…《パワーフィールド》。」

 

ーーーーと、ココで黄色カノンが自らに能力でバフを掛けた。

 

 彼女を中心に広がった特殊な力場が、黄色カノンに力を与える。

 

「カノンの技か…。自分達が恩恵を受ける立場なら兎も角、逆の立場だと辛いね。」

 

 そう言ったハレルヤは、黄色カノンから距離を取ることにした。パワーフィールド内での殴り合いは此方が不利になる。そう判断したからだ。

……パワーフィールドの効力を、仲間としてよく知っているが故の行動でもある。

 

 それを見て、黄色カノンは武器を槍に変えた。ーーーーいつでもバリアを展開できる距離感を保ったままハレルヤと戦闘を続ける為には、丁度良いリーチの武器だ。

 

「ーーーー。」

 

 ヒュオン、と振るわれた槍の先端がハレルヤに迫る。

 

 ハレルヤはそれを避けると、黄色カノン目掛けて流れる海流を生み出した。しかし、迸った荒波の様な攻撃はバリアに阻まれ、黄色カノンの左右に逸れていく。

 

「ーーーーーーーー。」

 

 バリアで攻撃を防いだ黄色カノンが、一歩足を踏み出して槍を突き出してくる。

 

 それを飛び退って避けるハレルヤ。ーーーーパワーフィールドで強化された一突きは、さっきまでハレルヤが立っていた広場の床に突き刺さり、蜘蛛の巣状のひび割れを生む。

 

「…パワーフィールドも敵に回ると厄介だね。一撃一撃が重くなって、どうしても警戒せざるを得ない。」

 

 黄色カノンが砕いた広場を見ながら、ボソッと呟いたハレルヤ。黄色カノンは、そんな彼目掛けて更に刺突を繰り返す。

 

「おっと…!」

 

ーーーーボッ、と大気を貫いて放たれる槍の一撃が、ハレルヤを串刺しにせんと迫る。

 

息も付かせぬ連撃に、回避するしかないハレルヤ。

 

(ーーーー速いし…重い。…こういう時、(あかつき)が居たらーーーーなんて、そんな事言っても仕方ないか………。)

 

 槍を回避しながら、ハレルヤは独りごちる。やがて、黄色カノンの一撃が遂に彼の右肩の端を捉えた。

 

「ぐっ…!」

 

 少し掠っただけで肩のコートが大きく破れ、血が舞う。たたらを踏んだハレルヤの胸に、更なる一撃が迫りーーーーーーー

 

 

「ーーーーしッ!!」

 

 

 ハレルヤは青いオーラを纏った蹴りで、槍の中程を蹴り上げた。ハレルヤの胸を刺し貫こうとしていた槍が、宙に跳ね上がる。

 

 それを見たハレルヤは、全力で黄色カノン目掛けて飛ぶ様に走った。

 足裏に生み出したリング状のセラムキューブ変形体から、ジェットの様な水流を生み出しての超高速突撃。

 

 黄色カノンが槍を引き戻すよりも早く、ハレルヤは黄色カノンに肉薄する。

 

「バリアーーー。」

 

 ココで黄色カノンがバリアを素早く展開した。しかし、ハレルヤは怯む事なくそのバリアに殴りを入れる。

 

 バリアと拳がぶつかり合って、コーーーーーーンと甲高い音が鳴り響いた。

 

「ーーーーこれで終わりじゃないよ!」

 

 そうハレルヤは叫び、バリアに両手をグッと押し当てる。そして、彼の両手から青い光が渦を巻いて迸った。

 

 

ズムッッッッ!!!

 

 

ーーーーバリアに対する、ゼロ距離からの『革命の龍砲』×2。

 

 

 黄色カノンのバリアは束ねられたエネルギーの奔流に耐え切れず、青い爆発と共に砕け散る。

 

 そして、バリアを砕いても尚『革命の龍砲』の勢いは止まらず、咄嗟にミカエルの甲冑で身を守ろうとした黄色カノンを包み込んで、広場の端から端まで吹き飛ばすのだったーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「終わったか、ハレルヤ。」

 

 

ーーーー黄色カノンとの戦いを制したハレルヤが、大聖堂の方を見て突っ立っていると、後ろからバサラが声を掛けてきた。

 

「バサラさん。……そっちも勝ったんですね。」

「あぁ。ーーーーんでニュウは………如何やら勝ったみたいだな。」

 

ーーーーーーーバサラが、空から舞い降りて来るニュウの姿を見て小さく呟く。空から降りてきたニュウは、2人の隣に着地した。機械の翼が、微かな音を立てて背中から消える。

 

「ーーーーお二人ともお疲れ様です。…ほんと助かりました。」

 

 そう言って軽く頭を下げたニュウに、言葉を返す2人。

 

「おう。」「うん。」

 

 

そして、3人は大聖堂の方へ目を向けた。

 

 

 大聖堂は真ん中の1番大きな尖塔がほぼ全壊し、煙を上げている。ーーーーその奥に目を向けると、対壊獣兵器である複数の白いパネルの集合体ーーーー〔アナテマの扉(アナテマゲート)〕が見えた。

 

 ソレも無傷では無く、真ん中辺りの白いパネルに大きな亀裂が入っている。……その亀裂の近くに、2つの人影が微かに見えた。

 

 

ーーーーおそらく、カノンとフェルシアだろう。パネルに背中をつけているのがカノンの様だ。……押されているのかもしれない。

 

「……カノン。」

 

ハレルヤが少し憂いの滲む声で呟く。

バサラが隣で彼の肩を軽く叩いた。

 

「大丈夫だ。……アイツは負けない。」

 

ニュウも頷く。

 

「えぇ……カノンさんは勝ちますよ。絶対。」

 

 

 

 次の瞬間、彼等の見上げる先で翠の閃光が迸ったーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー透き通った光が己を満たす。

 

身体に流れ込むは、光り輝く星の光。魂の輝き。

 

 その光は自分の心ーーーー即ち感情と共鳴し、更に輝きを増す。

 

 

「……コレが…自分だけの力……私の覚醒…。」

 

 広がる光の中で、カノンは温かな力の流れを感じていた。光は尚も輝きを増し、カノンを中心に広がる緑光の十字架のようになる。

 

 

ーーーーーーーそして、その光の十字架はグローリー全体を照らし出していく。………まるで、グローリーに巨大な光の十字架が突き刺さったかのようだ。

 

 

 

ーーーーーーーー誰しもが、その光を見た。

 

 

 

 ニュウ達はもちろん、ネオもアミダ達も、2番街に退避していた兵士達に、操舵室のジョルノロキアも、その荘厳なる光の十字架に目を奪われる。

 

 大聖堂に集まって祈りを捧げていたグローリーの人々や、街の避難シェルターに避難していた市民達も、何かに導かれるように外に出たり窓から身を乗り出したりして、その光の十字架を見つめていた。

 

 

……そしてーーーー

 

 

 

「素晴らしい…!素晴らしいわカノンッ…!!貴女は遂に『覚醒』したのね…!ネオと同じく、完全な新人類へ!!」

 

 

ーーーーーーフェルシアもまた、1番間近でカノンの光を見ていた。

 

 

 その顔は驚きと、それを凌駕するほどの歓喜の表情で埋め尽くされている。

 

 両手を広げて笑うフェルシアに、カノンは静かに向き合った。

 

 

辺り一面に、翠の羽根が舞い散る。

 

 カノンの背中から広がった三対六枚の光の翼が、空を埋める程大きく眩く展開された。

 

 舞い散る羽根の中、カノンは緑に輝く瞳でフェルシアを見つめ、小さく呟く。

 

「ーーーーコレで終わりにしよう。お母様。コレが…私の理想の世界を願う力。……この力で、私は守りたいモノを守っていくんだ。」

 

フェルシアは笑う。

 

「良いわ…!!全て見せてみなさい!理想を願い、覚醒した貴女の真なる力を!!!」

 

 

 再び空で向かい合う両者。そして互いに合図もなく、2人は空中で激突した。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ーーーーダブル・エナジー・サークルッ!!!」

 

 

 大気を裂いて2つのエネルギーの輪が迫る。最初から手加減のない全力だ。

 

「ーーーーバリア。」

 

 バリアを展開して防ぐカノン。ーーーー次の瞬間、2つの破壊的エネルギーがバリアの表面を削り、割り砕く。

 

 

ーーーーだがしかし、

 

 

 

コーーーーーーンッッッ!!!

 

 

空に響く甲高い衝突音。

 

 

()()()()?!?!」

 

 

続いて、フェルシアの驚愕の声が空に消えた。

 

……なんと、カノンは2枚のバリアを同時に展開していたのだ。コレには完全に不意をつかれたフェルシア。

 

 バリアを1枚は破壊したエナジーサークルだったが、2枚目を破壊することは出来ずにかき消える。

 

 エナジーサークルの消滅を確認したカノンは、両手をフェルシアに向けた。

 

「ーーーー《終わりの()剣:荘厳》。」

 

 静かな技名発声の後、カノンの周りに無数の極彩色の光が出現する。ーーーーそれらは、次々と天使達の武器へ変わっていった。

 

そして、その全てがフェルシアへと殺到する。

 

「ーーーーッッッ!!!」

 

四方八方から迫る天使の武器。

 

 フェルシアは回避しようとしたが、何百もの数の武器の全てを回避する事は出来ず、身体のあちらこちらを剣や槍で貫かれる。

 

 

「…がはッ?!」

 

 

 翼を槍で貫かれ、姿勢を崩してしまうフェルシア。そのまま、真下ーーーー大聖堂前の大広場に向かって落ちていく。

 

 更に追い打ちをかけるかのように、カノンがフェルシアに向かって白い銃を構えた。

 

「《パワーフィールド》・《パラージショットガン》。」

 

連続して響く二つの技名発声。

 

 カノンの構えた銃から放たれた散弾が、フェルシアの体を射抜かんと迫る。

 

「ッッ!!!」

 

 翼に変化している片腕を使って、身を守ったフェルシア。ーーーー体を覆い隠す様に広がった黒翼に、パラージショットガンの弾丸が命中し、風穴を開けていく。

 

(ーーーー翼程度では…防げないわね…!)

 

 自分の翼がボロボロになっていくのを自覚したフェルシアは、遠ざかりつつあるカノン目掛けて、起死回生の必殺(ストライクショット)を放った。

 

「ーーーー《哀レミノ黒光》!!!」

 

ーーーーフェルシアが放った漆黒の波動が、パラージショットガンの散弾を包み込んで消し去り、カノンに向かって迸る。

 

「……バリア。」

 

 しかし、カノンはその場から動く事なく()()()()()()()バリアで、黒い光の波動を防ぎ切った。…同時に展開できるバリアの数は、2枚や3枚では無かったのだ。

 

(…!!一体、どれだけの数を一度に展開出来るの…!?)

 

 これまた、驚きに目を見張るフェルシア。更にカノンはフェルシア目掛けて手を翳すと、なんと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はっ?!」

 

 目の前に薄紫の壁が迫ってきたーーーーーーーーと思った瞬間には、フェルシアは『飛ぶバリア』によって全身を強打され、大聖堂前の大広場の床に思いっきり叩きつけられていた。

 

 

ーーーーズドンッッッッ!!!

 

 

 砕け散る広場の床。飛び散った破片と粉塵が、灰色の柱となって立ち昇る。

 

 

「がは……ッはぁ…はぁ……ぐぅ…。」

 

 

全身を剣や槍で貫かれ、散弾で撃ち抜かれ、トドメにバリアで高所から硬い床に叩き付けられたフェルシアは、もう満身創痍であった。

 

「はぁ…はぁ…ふふ。ふふふふふ………。」

 

ーーーーしかし、それでもフェルシアは笑う。満足そうに、嬉しそうに。

 

 そんなフェルシアの前に、カノンは静かに舞い降りる。ーーーー翠の羽根が、相変わらず至る所に舞っていた。

 

「ふふふ……けほっ、こほっ…。流石ね。ーーーーコレが、貴女の力…。貴女が見てきた世界を、守るための力なのね……。」

 

 ふらふらとしながらも、上半身を起こしてカノンと向き合うフェルシア。カノンは、彼女の目をまっすぐ見つめ返した。

 

……カノンを見つめるフェルシアの瞳は、とても優しい目付きに変わっている。ボロボロになりながらも、フェルシアはカノンを誇らしく思っているように見えた。

 

「…私の知らないうちに…貴女はいろんな世界を知った。ーーーーもう、いつの間にか……大きく、強くなって…私の手の届かない所へ行ってしまったのね。」

 

 口の端から血を流しながら、フェルシアはしみじみと呟く。……そこに、もはや敵意は無かった。

 

「…その力があれば…きっと貴女は、己の理想の世界を作れるでしょう。何者にも阻まれる事の無い…貴女の思い描く理想郷を…。」

 

 カノンは静かにフェルシアの話を聞いていた。フェルシアは息を切らしながらも、話を続ける。

 

「…私は嬉しいわ。ーーーー貴女は、私の思い通りにはならなかった。私に歯向かい…そして自分の道を示した。親の言う事ばかりを聞かずに、自分で考えて、独り立ちする子供。苛立ったり、悲しくなったりする時もあるけど…存外、コレも良いものね……。」

 

 フェルシアは息を吐く。ーーーそして、カノンにそっと話しかけた。

 

 

「ねぇ、カノン……。()()()()()()()()()()()。私の予想の全てを超えて……良い子になったわね…。」

「…!」

 

 

 その言葉を聞いて、その顔を見て、カノンは少し目を揺らがせた。その声は、フェルシアの嘘偽りの無い本心であると、カノンは理解したのだ。

ーーー覚醒した事によって、人の感情をより強く感じるようになっていたカノンは、フェルシアの心の中にあった感情にも、触れる事が出来る様になっていた。

 

「……そっか。」

 

カノンは呟く。

 

「ーーーーお母様は…私の事を、本当に大切に思っていてくれたんだね。」

 

 フェルシアの中にあった本心。ーーーーそれを理解したと同時に、カノンは自分の中にあった彼女に対する思いを、否定する事なく受け入れる事が出来る様になった。

 

ーーーーーー即ち……

 

 

「ーーーー私を、この世に生み出してくれてありがとう。お母様。……貴女のおかげで、私は世界を知れた。ーーーー意味のない日々なんて…一個も無かった。………ありがとう。」

 

ーーーーアルセーヌの言っていた、彼女に対する情。…それを、カノンも否定せずに受け入れられた。

 

………そして、それに感謝できた。

 

 フェルシアはただ微笑む。まるで、言わなくとも分かっているーーーと言わんばかりに。

 

そして両手を広げた。

 

「さぁ……貴女は貴女のケジメをつけなさい。ーーーー貴女が犯した罪。私が犯した罪。……それらを清算して、先に進む為に。その為に…今まで生きてきたのでしょう???」

 

……それを聞いたカノンは、静かに白い銃を持ち上げた。

 

ーーーーその銃口に、白い神聖な輝きが宿る。全てを受け入れたかのように、微笑んだまま目を閉じるフェルシア。

 

 湧き上がる光に照らされて、カノンは小さく囁くようにフェルシアに別れを告げた。

 

 

 

「さよなら。お母様。」

 

銃のトリガーが引かれーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー〈()()()ホワイトフェザーバースト〉

 

 

 

 

 

 

一条の閃光が辺りを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 






覚醒カノンは見た目や能力こそゲームの〈覚醒天使〉ベースですが、イメージとしてはまだ存在しない獣神化改のカノンをイメージしてます。

 あと、バリア飛ばしは新劇エヴァの第10の使徒の、A.Tフィールド飛ばしを参考に……ってかパクってます。アレ好き。

次回、この章は最終回になると思います。
ほなまた次回( ´ ▽ ` )ノ
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