あ、そうだ。
後書きで書きそびれてたんだけど、ネオの真剣な悩みってヤツは、マジで真剣な話です。最終章に関わるレベルの。
前回長々と書いたけど、取り敢えず覚えておいて貰いたいのは、『イースターがスターダストって言うデカい組織に変わった。』と『ネオの悩み(具体的な内容は、後で書きます。)』そして、『ノーマンの活発化。』ですね。
後は忘れて貰って大丈夫です。ハイ()
87話〈潰えぬ悲しみの輪だとしても〉
果てなき戦い。
湧き上がる戦火。
一つの星の上で、二つの〈人類〉が互いの命を奪い合っていた。
ーーーー『新人類はもはや世界の敵となった!』『我々旧人類は、我々を長年脅かし続けていた新人類を、滅ぼさなければならない!』
誰かがそう言えば、別の所から異なる叫びが上がる。
ーーーー『そうではない!』『我々を長い間恐れ、脅かし続けていたのは旧人類の方だろう!』『そちらが新人類の滅びを望むのならば、我々も抗おう!』
ーーーーーーー互いが互いの滅びを望む戦い。
……もちろん、そう願わない人達もいる。しかし、世界の流れは滅びの願いへと傾いていった。
……星のセラムに満たされた地上で、未だ自由広がる空で、人が生きる為に編み出した移動要塞都市で、戦いは起き続けていた。
空に上がるは、滅びを望む声。戦いの中で失った者達を嘆く声。散って逝った者達の未練、或いは怨嗟の声。命尽きるその瞬間に、魂が上げた悲鳴ーーーー。
数多の声が束となり、人の耳には聞こえぬ哀しき『歌』となって空に満ちる。
ーーーーーーーー哀しき歌響く空には、何時でも何処でも、〈アメノミハシラ〉が静かに佇んでいた。
◇◆◇
「…お疲れ様。旧東京の様子は如何だった?」
薄暗い室内で、何やら会話を交わしている人影が2人。何方も女性の様だ。
「……正直言って不味いかも。とんでもない事が起きようとしてる。」
真剣な口調で交わされる囁き。
「ーーーーえ??どう言う事なの
「……待って、急かさないでよ
カサリ…と、微かな紙の音がした。続いて、その紙を読み上げる微かな声が聞こえる。
「…えっと…なになに??ーーーー
紙の束を読んでいた少女ーーーーイースターの一員にして、スターダストエージェントである『アミダ』は、唖然とした声を上げた。
…この紙に書いてある事は、俄には信じ難い。しかし…コレが本当ならばーーーーーーーー
「……すんっっごい一大事じゃん?!
静かだった部屋の中に、アミダの驚愕の叫びが響き渡ったーーーーーーーー
◇◆◇
ーーーー時は少々遡る。
「お兄様〜!」
讃美歌が微かに響く室内に、誰かが誰かを呼ぶ声が響く。
そして、それに応える男の声もーーーー。
「…だから、『お兄様』呼ばわりは止めろ?!ーーーー
「ーーーーじゃあ…お兄さん?」
「それも却下だ!……そもそも、俺はお前の兄じゃ無え!!」
部屋の中でそんなやり取りを繰り広げる一組の男女。
1人は黒いレザースーツに身を包み、黒いフード付きの上着を被っている。髪は銀髪で、腰には一本の太刀がぶら下げてあった。
もう1人の方は髪も目も緑で、着ている服も緑一色で統一されている少女だった。
「じゃあ………
少し不服そうな顔で、緑の少女が口を開く。
そう呼ばれたレザースーツの男は、やれやれと言わんばかりに首を振って返事を返した。
「…それで良いんだよ。
『カノン
「…この呼び方じゃ、つまらないのに……。せめてバサラお兄さんとか……。」
「………その呼び方はもっと却下だ。」
バサラが、彼にしか分からないであろう苦々しい顔を浮かべながら、首を振った。
ーーーーガチャリ。
……と、ココで扉が開く音がして、別の少女が部屋の中に入ってくる。
「……あ、バサラ。」
どうやら、部屋の中にバサラが居るとは思っていなかったらしい
「よぉ、
ーーーーそう言われた白髪の少女カノンは、少し照れ気味に微笑んだ。…よく見ると、その体は少し仰々しい着物で着飾られている。
「…私は
「またまた、ご謙遜を。」
バサラは意地悪っぽく笑いながら、話を続けた。
「ーーーーこの国の
隣で、カノンⅡが頷く。
「うん、お姉様は本当に凄い人なんだから。……ゴケンソンなんてーーーーーーーーん…?ゴケンソンって何…??」
普段使わないであろう言葉に出くわしたカノンⅡが、不思議そうな顔を浮かべて首を傾げる。
「謙遜って事だね。……謙遜って言うのは、自分の事をちょっと控えめに表現するとか……そういうのだよ。」
彼女に優しく声を掛けながら、カノンはバサラの向かい側、カノンⅡの隣に腰を下ろした。
ーーーー色以外何もかも同じな2人が横に並ぶと、知らない人からはどっちがどっちか分からなくなるだろう。
……だが、緑色のカノンーーーー即ち、カノンⅡの方が全体的に子供っぽい気配を身に纏っているのは、なんとなく分かるかもしれない。
「…ふ──ん。そうなんだ。」
そうカノンⅡは納得した様に頷くと、また椅子の上で足をぶらぶらさせ始めた。
ーーーーさて、この緑色のカノン(カノンⅡ)とは何ぞや?…と思っている方々の為に、説明しよう。
…一年半前ーーーーメタ的に言えば、第6章ーーーーにて、バサラ達はグローリーと戦争を行った。
その時、戦いの終盤で〈カノンシリーズ〉と言われる者達が現れて来たのを覚えておいでだろうか?
…そのうちの1人にして、イースターと戦ったカノンシリーズの唯一の生き残りが緑カノンであり、カノンⅡと今呼ばれている者なのだ。
このカノンⅡは、バサラと戦って倒されたカノンシリーズの1体である。
他のメンバーが、カノンシリーズ達を斬り倒したり、首をへし折ったり、爆縮したり、ヘッドショットを決めたりと、カノンシリーズを
ーーーー結果的に、カノンシリーズは1体残る事になった。
その残った1体は一旦オーステルンに回収され、彼女の原動力となっていた偽りの心を生み出すシステムーーーー〈ダミーハートシステム〉がアフラ・マズダー率いる〈オーステルン中枢〉のメンバー達によって
……結果として、カノンシリーズとしての戦闘スキルは初期化されたが、代わりに人に近い心を獲得する事が出来る様になったのだ。
(ただし、やはり技術の限界があるのか、カノンの様な完全な人の心を持つには至らなかった。例えるなら、人の模倣が上手い機械止まりである。)
とは言え、カノンシリーズとして存在していた頃に比べれば、圧倒的に人間らしくなったと言えるだろう。
……そんなこんなで、元カノンシリーズの緑カノンは、今はカノンⅡと名前を変え、カノンの妹的な立ち位置に収まっているのだ。
ちなみに、バサラと親しくなる事に固執するのは、カノンシリーズとして戦っていた時に最初に出会い、戦って負けた相手だった為か、カノンⅡの心の中にバサラの存在そのものが鮮烈な印象と共に刻まれているらしい。
(アフラ・マズダーは、刷り込み効果の様な物だと言っていた。)
「ーーーーーーーあ、そうだ。」
ふと、カノンがバサラの方を向く。
「…バサラは、なんで来たの?…アルセーヌは?一緒?」
「あぁ。一緒さ。」
バサラは小さく頷いてから、話し始めた。
「ーーーー今は別行動中だけどよ。アルセーヌは多分……7番街とかに居るんじゃないか??んで、俺はちょっくら暇になったから、お前に会おうと思ってな。ーーーーま、元気してる様で何よりだぜ。」
カノンは、なるほどーーーと言う様に頷く。
「ーーーーじゃあ、
「あぁ。…飛んでたら、たまたまグローリーが見えたんだよ。……何処向かってんだ??定期ルートから外れてるみたいだが。」
バサラの問いに、カノンは小さくため息をついてから答えた。
「……〈アステール〉に寄ろうと思って。…バサラもなんとなく気付いてるかもしれないけど、いま壊獣達の活動が活発化してるでしょ?」
バサラは軽く頷いた。
「おう。」
カノンは続ける。
「ーーーーそれでグローリーもココの所、連続してノーマンからの襲撃を受け続けてる。……だから、防衛設備の消耗が激しいの。その整備の為…と言った感じだね。」
「……なるほどなぁ…。」
バサラは顎を摩った。
ーーーーここ最近、ノーマンの活発化が世界中で報告されている。理由は一切謎。ただ現れる量と頻度が、明らかに増えていた。(ーーーー尤も〈星の花〉関連の出来事で、謎が解き明かされた日などなかったが。)
理由を知ろうにも、今は誰しも研究どころでは無い。ーーーー何せ、今世界は旧人類と新人類に二分された勢力争いの真っ最中。
日々何処かで、新人類と旧人類の戦いが巻き起こっているのが現状なのだ。故に、ノーマンの研究などしている暇は無い。
...或いは、人と人の戦いがノーマンを呼び寄せるのだろうか???
ーーーーま、理由はともかくとして、増加したノーマンとの戦闘に新旧両陣営は共に疲弊気味であるのだ。
「…あの、アメノミハシラ?だっけか。ーーーーアレも意味不明で不気味だもんな。」
バサラはそう言って、自分が居る〈大聖堂〉の一室の窓から、北の空を見やる。
世界の何処からでも見える、薄っすらと……だが確かにソコに聳え立つ、まるで何かに耳を澄ましている様にも思える巨大な柱をーーーーーーーー。
「取り敢えずーーーー」
カノンの声が、バサラの耳に入って来た。
「ーーーー私達は、私たちのやるべき事をやらないと。……今を生きる為に必要な事を、ね。」
「…そうだな。………ソレが良い。」
バサラはぼんやりと遠くを見つめながら、浅く頷くのだったーーーー。
◇◆◇
「ーーーーーーーーそれで?」
移動要塞都市ブリタニアの中心地〈ログレス〉に座す『キャメロット城』の内部にて、
今、広い室内には2人しかいない。
「ーーーー
アーサーからの問い掛けに、ネオは椅子に座ったまま膝の上で手を軽く握り締めた。
「…………私。」
しばしの沈黙の後、ポツリとネオは口を開く。
しかし、また口を閉ざしてしまった。……果たしてコレを言って良いのだろうか?ーーーーと心の中の声が囁いて来たのだ。
葛藤するネオを安心させるかの様に、アーサーは彼女の隣に歩み寄り、肩に静かに手を置いた。……手のひらが暖かい。
「…どんな事でも言って欲しい。君が何を言おうと、私は聞き届けるつもりだよ。」
「………うん。」
そっと頷くネオ。そして、彼女は話し出した。
「
ポツリと呟かれたその声に、アーサーは少しだけ身じろぎした。ネオは、言葉を探す様に話を続ける。
「ーーーー新人類の自由の為の、世界を巻き込んだ大きな戦い……私は
ネオは自分の手を見つめながら続けていく。
「ーーーーどうしようもなく、心が揺らぐんだ。自分がしている事が正しいのか、分からなくなっていくんだ……。」
真剣な顔を浮かべ、無言で続きを促すアーサー。
ネオは微かにかぶりを振って話し続けた。
「……私は見たの。……旧人類の街で虐げられていた
ーーーー話しながら、ネオは自分の覚悟を揺るがしている出来事が起きた日へと、意識を漂わせていたーーーーーーーー
◇◆◇
その日、ネオは〈スターダスト〉の軍団によって解放されたばかりの新人類共同居住区〈オールト〉に訪れていた。
市内でかなり激しい戦闘が起きたらしく、街のあちこちに戦闘の痕が色濃く残っている。
そんな街に視察任務の為訪れたネオ。
……そこで、彼女はとある光景に出くわした。
◇◆◇
「ふざけ…────!!」
「お前ら…──!」
「──────!!!」
ーーーーなんて事は無い、ただの道。
しかし、その道の端で何かいざこざが起きている様だ。何人かの人が争う音が聞こえる。
どうやら、1人の女性が何人かの男達に囲まれている様だ。…囲まれて、痛めつけられている様にも見える。
……アレはいけない。ーーーーそう思ったネオは、仲裁すべく彼らの間に割って入る事にした。
「ーーーー何してるの。」
…唐突に声をかけられた男達は、少し驚いた様に振り返る。
「あぁ?!ーーーー誰だいアンタ。コッチは今ーーーー」
「私はネオ。…イースターメンバーで、スターダストのエージェントでもある。」
ネオは、牽制のために自分の身分を明かしておいた。……イースターのメンバーで、スターダストエージェントとなれば滅多に下に見られる事は無い。……と言うか、突然社長が現場に現れた並の衝撃を相手に与えるだろう。
余り自分の地位を見せびらかす様な事はしたく無いが、この場を素早く鎮めるには必要だと判断した故の行動である。
「うぇっ!?イースターのッッ!?」
…やはり、効果はてきめんだった。男達が驚いた様に少し後ずさる。
ネオはそんな彼らにもう一度問いかけた。
「……貴方達、何をしていたの?」
「………。」
チラチラと互いの顔を見合わせる男達。やがて1人の男が口を開いて、地べたに座り込んでいる女性を指差した。
「……この女…捕虜なんだ。」
ネオは軽く目を瞬かせた。
「捕虜……て事は、旧人類?」
頷く男達。
「あぁ。……逃げ出して来たんだよ。捕虜を捕まえてる所から。」
ネオは座り込む女性の方を見た。ーーーー酷くやつれた顔つきをして、見てわかるぐらい震えている。…既に暴行を加えられたのか、顔にアザが出来ていた。
…新人類共同居住区を管理していた新人類ーーーーつまり、連邦の管理者達を新人類が捕虜として捕まえている事は知っていた。
ネオ個人としては、出来る限り新人類と旧人類の間にしがらみを作りたくは無かったので、なるべく旧人類には対等に接する様、新人類達に言い渡しておいてあったのだが、オールトではそうしていない様だ。
「…捕まえる為だったの?…その為だけに、あんなに取り囲んでたった1人を傷付けてたの??」
ネオの問い掛けに、返答に詰まる男達。そのうちの1人が、抑えきれなくなったかの様に叫ぶ。
ーーーーその叫びは、意外なものだった。
「だってよ!!ーーーーこの女の死んだ夫は元オールトの管理者で、まだこの街が管理下にあった時に俺の妻を殺したんだよッ!!ーーーー大した理由も無くな!!」
「!!」
顔を怒りで赤くして、女性を指差しながら叫ぶ男。
続いて、彼はネオに指を向けた。……向けられた指が、心臓に突き刺さった様な気がした。
「ーーーーんで、お前らスターダストは皆んなこう言う!…旧人類と新人類、対等になりましょうね。憎しみだけで戦わないでくださいね、って!!!」
それなりに人の通る道に、男の泣く様な絶叫が響き渡る。
「…でも!!でもよ!!俺たちは憎いんだよッッッ!!!旧人類の奴等が!!!『対等』つったって、俺たちが過去に受けて来た事全部に目を瞑れってのか!?!?目を瞑って、忘れろってのか?!?!」
男は首を振った。
「そんな事出来ねぇ!!もしかしたら、アンタは出来るかもしれないが、俺やココに居る奴らは出来ねぇんだよ!!!」
ーーーー何時の間にか、ネオの周りに沢山の人が立っていた。皆、目に涙さえ浮かべながら、うわごとの様にネオに話しかけーーーー否、訴えかける。
「わしは孫を実験施設に連れてかれた。……もう10年たったが…戻っては来ないのじゃ……。」
「…私は妹を連れてかれたわ。なんの告知もなく、ある日突然!」
「連邦兵士の前を通っただけで、俺は暴行を受けたんだ!……背骨を損傷して、今も後が響いてる!」
「俺に住む家は与えられなかった!いつ連邦の気まぐれで殺されるか、毎日怯える日々だった!!」
「……アタシ達は皆んな酷い思いをして来たのよ!……でも、そんな日々もやっと終わるって…!
辺りに満ちる、悲しみと確かな憤怒が篭った人々の声。
ネオは思わず半歩下がっていた。
「………違う。ーーーー憎しみを憎しみで返すだけじゃ…真の新人類の自由は訪れない。そうしたら〈新人類優生思想〉と同じ轍を踏むことになる。……旧人類も私たちと同じ人間なんだから、彼らに対して人の道を踏み外した事をしてはいけない…。」
半ば反射的に口走った旧人類を庇う言葉。
その声に反応したのは、痛めつけられていた筈の旧人類の女性だった。
「何よッッッ!!!!」
「ッ?!」
ーーーー凄まじい怒声に、ネオは思わず肩を震わせる。
「何で私たちを庇う様な事を言う訳!?!?ーーーーこの戦いを生み出したのはアンタ達イースターでしょッ!?!?……アンタ達が
激しく泣き喚きながら、旧人類の女性はネオに飛び掛かった。
「私の夫を返せッ!!!!この人殺しがぁぁぁ!!!!」
女性の体は、周りの新人類達によって取り押さえられる。
女性の肩を掴んでひねり上げる男が、凄まじい怒気をまとって叫び返した。
「ふざけんな!!!!ーーーー人の道を踏み外した人殺しはそっちだろうが!!!俺の方こそ言わせろ、人殺しの妻!!!俺の嫁を返せッッッ!!!辛いこともあったけど、確かに幸せだった頃の時間を返せッッッ!!!お前の夫が、何の意味もなく俺から奪ったモノを返しやがれ!!!!」
周りの新人類達も、火がついた様に叫び始めた。
「自分の事を棚に上げるな!支配者気取りが!!」
「お前らがワシらを苦しめたのが悪いのじゃッ!!!」
「こうなったのは、アンタらの自業自得だろ!!」
「アンタ達が失せれば良いんだ!!」
人々の怒りの声の輪がどんどん膨れ上がっていく。ーーーーネオはいつのまにか、輪の外に弾き出されていた。
(………なにこれ………。)
何も言えず、ただただネオは唖然としているだけだった。
ーーーー憎しみが憎しみを呼び、怒りが怒りを呼び寄せる。それは、時に力の源になるだろう。
……だが、代償として無くなるのは人々の命。
………こうなる事を覚悟していた筈なんじゃ、無かったのだろうか???
その覚悟を、問われたんじゃなかったのだろうか???
なのに、ネオは震えが止まらなかった。ーーーーすぐにやめて欲しかった。争いを止めて欲しかった。この諍いは無意味だと訴えたかった。
なのに………なのにーーーー
「ーーーーーーーー
場面はブリタニアに戻る。
肩に置かれたアーサーの手の暖かさを感じながら、ネオは言葉を震わせる。
「私の声が、届かない。そして、私の望みも叶わない。私はただ…憎しみのない世界を望み、願っているだけなのに。憎しみ合うことは良くない…でも、彼らの憎しみも分かってしまうの。私はどうしたらいいの??……私は綺麗な世界を夢見過ぎていたのかな…?私だけなのかな?みんなはちゃんと、覚悟を決められているの??
一通り話し終えてから、ネオは俯いた。
「………人類の未来が、今の私には見えない。ーーーーどうしても見えないんだ。」
「………。」
ネオが話し終えた後も、アーサーはしばらく彼女の肩に手を置いていた。
「ーーーー自分の望みと現実は、激しく乖離するモノだ。」
……しばらくの沈黙の後で、そうアーサーは口を開く。
「………。」
黙って聴いているネオ。
アーサーは、自分にも言い聞かせるかの様に、言葉を彼女にかけていく。
「私も王になった時、理想と現実の差に狼狽えたよ。君の様にね。……望みの数は、人の数だけある。自分の望みが全てでは無い。私はその時、そう思った。ーーーー君は、2つの人類の間にしがらみが無い世界を望んでいるのだろう?…そして、その為に覚悟を決めて戦っている。」
「………うん。」
ネオは頷いた。
ーーーーアーサーは静かに続ける。
「………この世界は残酷だ。誰しもが痛みを抱え、誰かを傷つけている。痛みによって人の望みは捻じ曲がり、人の心は狂っていく。ーーーーだが、そんな世界でも自分の望みを曲げずに居る方法はあるのだよ。」
ここで、アーサーは口調を強めた。
「ーーーー『誰にも譲れない想い』を心に持つ事だ。ネオ。…君にとっての想いが
ネオの目の前で、アーサーは手を広げる。
「乖離する現実と望みの狭間で、自分は何が出来るのか、どうすれば望みを叶えられるのか、それをひたすらに探し続けるのだよネオ。……君は、自分の声が届かないと言ったな?ーーーーならば、届くまで叫び続けるのだ。何度も、何度も何度も叫び続けるのだ。人は心の奥で分かり合える生き物だと、私は信じて疑わない。ーーーーであるならば、君の叫びは必ず届く。何故なら、ソレは心の奥からの叫びなのだから。」
彼女は手を下ろした。そして、ネオの肩にまた手を置く。
「………それに、安心して欲しい。覚悟を一度も揺らがせたなかった人など居ない。と言うか、私は『一度も揺らがなかった覚悟』など信頼していない。覚悟の心は、常に壁にぶち当たり、異なる現実を目の当たりにし、何度も何度もコレが正しいのか?と揺らいで、その度に強くなるのだ。ーーーー揺らがない覚悟は、ただ『頑固』なだけだ。自分だけが正しいと思い込み、人の声を聞かない者が持つモノだ。ーーーー君が悩むのは、ちゃんと君が人の声を聞いているからなんだよネオ。」
アーサーは微笑んだ。
「大丈夫。少なくとも、君は間違った事を言ってはいない。それだけは保証するよ。」
「………そう。」
ネオは小さく頷いた。ーーーー彼女の話を聞いたからと言って、今すぐ自分の気持ちが劇的に変わると言うことはなかった。
だが、アーサーから自分は間違っていないと言われた事で、少しは楽になれた気がする。
ーーーーコン、コン、コン。
…と、ココで2人のいる部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ーーーー入ってくれ。」
アーサーが、ドアの方へ体を向けて言う。ーーーーガチャリとドアが開いて、アーサーと似た様な軍服を着た赤髪の男が1人入って来た。
ーーーーこの移動要塞都市ブリタニアの副艦長『エクスカリバー』である。
「エクスカリバーか。…何の様だね?」
アーサーの問いに、彼は小さく笑って返す。
「いや、大した事じゃない。ーーーーそろそろ、〔エッジワース〕の《アンナスル・アッターイル支部》に着く事を伝えにきたのさ。」
アーサーは頷く。
「あぁ、そうか。了解した。……寄港許可は?」
「貰っているとも。ーーーーココなら、消耗した防衛兵器の修復が出来そうだな。…その他資材類の補充も、おそらく出来るだろう。」
「ふむ、それは良い事だ。ーーーー私も街に降りるよ。支部のメンバーとも、情報交換したいしな。」
「お?そうか。分かった。それではーーーー」
(ーーーーアンナスル・アッターイル支部……。そっか…もう着くんだ。)
2人の会話を聞きながら、ネオは心の中でそう呟いた。
〈アンナスル・アッターイル支部〉。
それは、廃墟都市エッジワースの郊外に作られた〈スターダスト〉の支部であり、そしてーーーーーーーー
(ニュウくん……居るかな?居たら良いな……。)
ネオと同じイースターの仲間である『ニュウ』が、拠点としている場所である。
ーーーー何だコレ、地獄か?
新人類関係の話拗れ過ぎでしょ…。どう収集つけんのコレ。
と言うか、イースターメンバーの現状紹介が今回で終わらなかったので、3話目に持ち越します。
てかさ、私が今1番何コレ?ってなってるのが、〔カノンⅡ〕の存在なんよ。…当初の予定には無かったのに、突然生えて来た。
私の書く話は基本こんなんばっかです。
…早く本題に入らないとヤバいっすね()