モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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お待たせしました。

………ちょっと死んでた。

エヴァの二次創作がどうこうとかじゃ無くて、文章を書く力が死んでた。
だからエヴァの方も放りっぱなしで死んでた()

どうするよオイ。グダグダしてる内にモンタナ獣神化しちゃったじゃんかよ………

で、今回の話ですが、もうクソです。うんちです。
ちょっと長めの休みを貰って、リフレッシュを検討するレベルでウンチです。ゴミです。

もう自分が何をしたいのか良く分からなくなってきたので、ここに愚痴を書かせてもらいました。ごめんなさい。

ともあれ、コレで91話です。どうぞ↓


91話〈バサラ:オリジン 後編 〉

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

大災害の後、火ノ国跡地から救助されたバサラ達。

 

 

 その後、彼らは連邦政府が作った避難施設で暫くの安寧を得る。

 

 また、そこでバサラ達は大災害の全容と、自らが星のセラムの瘴気に適合し力を得た存在ーーーー即ち、新人類と呼ばれるモノになったと知るのだった。

 

 避難施設には他にも新人類と化した人達が居て、バサラ達は彼らと共に暫くの間は過ごすこととなった。ーーーーまだこの時は、新人類は普通に扱われていたのだ。

 

 

 世界は混乱していたが、混乱していた故に情報が世界を回らず、新人類は危険な存在で有ると叫ぶ者達の声も届いては来なかった。

 

 

…しかし、大災害の後から暫くして、バサラ達〈新人類〉を巡る状況は一変した。

 

 

ーーーー急激な力を持った新人類達。それによって引き起こされた、一部の過激な新人類による事件。

 その全容が未だ貧弱なインフラで世界を回るにつれ、旧人類から新人類への眼差しはキツくなっていったのだ。

 

 世界が前と同じ情報インフラ水準なら、もう少しマシだっただろう。

…しかし、大災害後の世界では情報が正しく伝わらず、部分的な情報のみが真偽さえ不明のまま世界を駆け巡り、新人類はますます恐れられていった。

 

ーーーー或いは、彼等は無意識に探していたのかもしれない。

 

〈大災害〉と言う、誰にも責任を押し付ける事の出来ないこの星初の超常的自然現象から、全てを理不尽に奪われた恨みと辛みを押し付ける事が出来る相手を。

 

 その矛先は、皆と同じ様にセラムの瘴気に呑まれたのに死なず、むしろ力を得た()()()()()()()()人々に向けられたのだ。

ーーーーそして、連邦政府はそれを是とした。

 

 

 

永い怨嗟の歴史の開幕で有る。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「おい、ちょっと待て!!ーーーー俺等は何もやってねぇだろ!!」

 

バサラの怒号が部屋にこだまする。

 そして、それに答える連邦政府の職員の平坦な声も。

 

「ーーーーコレは命令だ。君達には此処から退去し、我々連邦政府が定める特定の居住区に移ってもらいたい。」

 

 職員の後ろには、武装している兵隊の姿もあった。ーーーー黒く光る銃口は、バサラ達の方を向いている。

 

「君達には、潜在的に世界を脅かす可能性がある。ーーーー以降、新人類は連邦政府が身柄を管理する事となった。抵抗する者には武力行使を取る許可も降りている。……大人しく従ってほしい。」

 

「コイツら……!」

 

 思わずと言った風に、コクウが手の中にセラムキューブを顕現させようとするのを、バサラは片手で止めた。

 

ーーーー今此処で手を出せば、確実に死ぬ。

 

「バサラーーーー」

「今は止めるんだコクウ。…トコヨが、きっと望んでない。」

「!!」

 

 バサラの頭の中には、トコヨの声が木霊していた。……彼女は自分達に生きてほしいと願った筈だ。もしかしたら、今でも。

 ならば、今此処で死ぬ事は彼女の願いに反する。それだけはしたくないーーーーバサラはその一心で、コクウを止めていた。

 

「………良いぜ。連れて行けよ。死ぬよかマシだ。ーーーー勿論、まともに扱ってくれるんだろうな?」

 

 そう睨み付けるバサラの視線に、職員はあくまでも平坦に答えた。

 

 

「ええ。もちろん。」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 こうして、バサラ達は他の新人類達と共に、《アステール》と呼ばれる建造されたばかりの《新人類共同居住区》へ送られた。

 

 

ーーーー大災害が起きてから、5年が経った時の事である。

 

 

 そこには、同じ様に連邦政府に集められた新人類達がおり、バサラ達は彼らと共にその街で生活する事となった。

 

 しかしバサラが願う様な『マトモな扱い』は、全くと言って良い程新人類達に対して為されなかったのだ。

 

ーーーーそれは単に、一方的な恐怖と偏見故の事だった。

 

 

「お前ら新人類は危険な存在だ!!ーーーーよってこの管理区での行動は、我々連邦政府が厳しく取り締まる!例外は無い!!」

 

 

そう声高々に宣言する、アステールの管理者達。

 

 こうして、新人類は徹底的な管理下に置かれる様になったのだ。ーーーーその頃、同じ様な新人類共同居住区は、至る所に出来始めていた。

 

 一方、旧人類達は〈天空都市〉を建造し、其処に住んでいた。地上に住む新人類と空に身を移した旧人類。ーーーー両者は隔絶されたのである。

 

 

 

 不本意ながらも送り込まれたこの地で、バサラとコクウは様々な新人類達に出会った。

 

 

ーーーー皆、星のセラムによって力を得た人達だったが、同時に大切な物を失った人達でもあった。………バサラや、コクウと同じように。

 

 

 

「ーーーー俺は目の前で友人が死んでいった。星のセラムに飲み込まれてな。」

 

「……父さんと…母さんが……。一緒に避難してたのに…………俺だけ生き残って…。」

 

「わしも家族を皆んな失った。…老い先短いわしだけが生き残って、未来ある息子に孫が死んでいった。……理不尽にも程があろう。」

 

「握った手が消えた瞬間の感覚を知ってるか?ーーーーそうか。……呆気ないものだよな。余韻すら残らない。キミも辛いだろう。」

 

「赤子を他人の手に託して、光となった人を見たんだ。…その人は命を賭して、一つの命を助けたんだよ。…でも僕は、周りの誰1人も助けられなかったのに、生き残ってる。皆んな死んだのに…僕だけ。」

 

「だけど…生き残った人たちは俺達を責めるんだ。俺達が何も失わなかった筈なんて無いのに。……なんでなんだろうな。ーーーー失いすぎて、みんな狂っちまったのかな。」

 

 

 

ーーーー誰しも何かを失っていた。失っていない人なんていなかった。

 

 

 

 それは、バサラには乗り越えるべき悲しい記憶の積み重ねとして、記憶に残ったのだが、コクウは少し違う事を思ったようだ。

 

 

 

 

「ーーーーーーー皆んな…誰かが死んで狂っていった。心を失っていったんだ。…死んだ人は蘇らない。誰も死ななければ良かったのに。」

 

 ある日、コクウが、虚な瞳でそんな事を言っている事にバサラは気付いた。

 

「……でもよコクウ。」

 

バサラは、コクウの隣に腰掛ける。

 

「ーーーー人はいつか死ぬぞ。…死の無い世界なんてないさ。」

「ーーーー本当にか?」

「は?」

 

バサラは少し困惑しながら顔を上げる。

コクウはバサラの方を向いていなかった。

 

 その目は遥か彼方ーーーー地平線の彼方から見える空に、星雲となって漂う星のセラムに吸い寄せられていたのだ。

 

「………もしも…死の無い世界があったら?……皆んな、こんなに苦しまなくて良かったんじゃ無いのか……??」

「…んなの、たらればの話だ。コクウ。現実にはそんなの無い。」

 

 バサラはコクウの肩を軽く持った。…そうしなければ、彼は何処かへ消えてしまいそうだったからーーーー。

 

「頼むコウク。しっかりしてくれ。……トコヨがーーーー」

 

バサラの声は、途中でコクウに遮られた。

 

「ーーーーお前はそう思えるよな。」

「…は?」

 

肩に乗せた手が静かに振り払われる。

 

「でも一つ言っておく。バサラ。………お前より、俺の方がずっとアイツと長く居た。俺達は幼馴染。生まれた頃から一緒に居て、共に成長して来たんだ。どんな時もだぞ。どんな時も…!ーーーーあの日…10歳の頃にお前が後からやって来た。…俺の想いとお前の思いじゃ、10年の差があるんだよ…!分かるか!?」

「コクウ……。」

 

唖然となるバサラ。

 大災害以降、トコヨの事について殆ど話さなくなったコクウ。ーーーーそのコクウが今、激情に駆られる様にして話していた。

ーーーーソレに少し驚いたのだ。

 

「俺には出来ない。アイツを過去に置いておく事なんて。忘れ去ってしまう事は、正しい事なのか…?」

バサラは首を振った。

「違うんだ。忘れるわけじゃ無いんだコクウ。……乗り越えるんだ。アイツの生きた証を記憶に刻み、そして前を向いて歩くんだ。悲しみだけを引きずる事は、過去に縛られる事なんだぞ。ーーーーそれじゃあ、きっと人は生きてけない。」

「じゃあ生きてなくたって良い!」

「ッ?!」

 

 コクウは叫んだ。ーーーー張り裂けるようなその声が、虚空に響く。

 

「ーーーー死を抱いて行けばいい。トコヨを忘れる事が生きる事なら、俺は死ぬ事にするよ。アイツの居ない世界に…意味なんて無いからな。」

 

 コクウはそう呟くと、バサラの元からフラフラと立ち去っていった。

 

「コクウ…!!」

 

 追いかけて、立ち止まらせようとしたバサラだったが、彼の足は動かなかった。

 何故なら、彼の言葉を理解してしまう自分もまた、心の中に居たからだ。

 

……だから、バサラは叫んだ。去りゆくコクウの背中に。

 

「死ぬなよ!ーーーーどんだけ絶望しても……命だけは絶つな!!この世界で、まだトコヨの事を想っている奴が死んだら、アイツが生きてた証がなくなるだろ!!!」

「………!」

 

ーーーーコクウの足がビクリと止まった。

 

 同時にバサラは、なんとか脚に鞭打って走り出す。ーーーーそして、コクウの腕をガシッと掴んだ。離さないと言う意思を込めて。

 

「考え直してくれたか…?……生きた証とは記憶の事だ。覚えてるって事だ。ーーーーもう一度言うが、俺は忘れろだなんて言ってない。…記憶に刻みつつ、生きていこうって言ってるんだ。死んだら、意味ないだろ……。」

 

コクウは俯いて、暫く黙り込む。

やがて、俯いたままそっと呟くのだった。

 

 

「ーーーーーーーーそうだな。」

 

 

 

 そう言いつつも、コクウの瞳から暗い闇が消えていない事にバサラは気が付いた。しかし、その時それ以上彼にかける言葉は、バサラには無かったのだ。

 

 

…風が吹いている。冷たい風が。2人は、意味も無くその風に吹かれて佇んでいたーーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

更に時は流れる。

 

 

バサラとコクウの間には、少しずつ亀裂が走っていった。

 

 トコヨの願いの言葉を胸に、死を乗り越えて生きようとするバサラ。

 

 彼女の『未来を生きて』と言う言葉が、バサラの心に深く根付いていた。……それが大災害以降、あらゆるものを失っていく自分の中で、バサラに残された縋るべき縁であり、気力でもあった。

 

 

 しかしバサラにあった縋るべきモノは、コクウには無かったのだ。

 

 

 そしてコクウから見れば、バサラの態度はトコヨの死を蔑ろにしている様に見えていた。

 

 彼はトコヨの最後の瞬間を脳裏に刻み、それに囚われていく。

 

 バサラもまた、コクウがトコヨに掛けていた想いを完全に理解しきれなかったのかもしれない。

 

ーーーーこの世を去ったものを巡る、互いの確執の広がり。

 

 それをなんと無く互いに理解したまま、バサラ達はアステールで暮らしていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 そして、バサラとコクウがアステールに移ってから、5年の歳月が経った。

 

その時、バサラは25歳になっていた。

 

 大災害から10年が経ったこの年は、世界に大きな変化が起きた年でもある。

 

 ソレが〈ティタノマキア事変〉*1だ。

 

 コレは連邦に衝撃を走らせ、更に連邦副総帥の裏切りとソレに対する連邦側の対処の遅れが、連邦政府内部の結束を弱まらせた。

 元より、星のセラムと言うオーバーパワーを各国が手にした瞬間から、連邦の結束は弱まり出していたのかもしれないが。

 

 

 

 兎も角、この〈ティタノマキア事変〉が引き起こした衝撃は未来まで続く世界改革のトリガーとなった。

 

………何故ならコレが無ければ、イースターは生まれなかったのだから。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 この事件より少し経って、新人類に対する扱いは更に変化した。

 

 ティタノマキア事変によって後押しされ、自らの権利を象徴しだした新人類。彼らを押さえつけたい連邦政府。

 

………両者の間の険悪な空気が、より一層濃くなっていった。

 

 

ーーーーそして、そんな中で連邦政府は不安の種にしかならない新人類達を、()()()()する事にしたのだ。

 

 

 即ち、普通と異なる力を持った者達の研究。或いは実験である。

 

連邦は探していたのだ。

 大災害後の世界で、人類が生き抜くための術を。…それを手に入れる為、新人類達が実験のやり玉に上がった。

 

 ある者は壊獣と戦うために強制的に徴兵され、ある者は何をされるかも分からない実験の被験体となっていった。

 

 もちろん、新人類達はそれに反対する。……力を持つ者の抵抗。それは時に、武力衝突を伴った。

 

 それによって、ますます新人類への締め付けを強める連邦政府。

 

 今日まで続く負のスパイラルは、既に始まっていた。

 

ーーーーバサラ達もまた、そのスパイラルを目の当たりにしていく。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

とある日。

 

コクウの視点。

 

 

 

 

 

 

「離して…!!やめて下さいっ!!」

 

アステールに女性の悲痛な叫びが木霊した。

 

「…………また、か。」

 

ーーーー1人、アステールの街を当ても無く彷徨っていたコクウは、その声に足を止めて前を見る。

 

「ーーーーコレは命令だ。…君達は連邦軍により、別の施設に移送させる事が決定した。」

「従った方が身の為だぞ!!新人類共!!死にたく無ければなぁ!!」

 

ーーーーコクウが見つめる先で連邦兵に取り囲まれているのは、何人かの新人類。周りには完全武装した兵士が臨戦体制を取っている。……新人類側は、既に捕縛されている様だ。

 

最近は、この光景を街でよく見る様になった。

 

 連れ去られた人達が何処へ行くのか。ソレはコクウには分からなかったが、噂では壊獣ノーマンと戦わされたり、謎の人体実験の材料にされたりするそうだ。

 

この町に住む限り、訪れるかもしれない悲惨な運命。

勿論、それに逆らおうとする者も居たがーーーーーーーー

 

「貴様らッ!!ソイツを!離せ!!」

 

誰かの叫びと共に、キラッ!ーーーーと閃光が瞬いた。

特徴的な《属性光》。ーーーーセラムキューブの光である。

 

 

「ーーーー〈グロウス……」

「ーーーー区内における新人類の星筐体能力使用を確認。即時射殺する。」

 

 

パンッッッッ!!!!

 

 

 セラムキューブを展開しながら飛び出してきた『誰か』は、能力行使の前に頭部を撃たれて死んだ。

綺麗な石畳の道路に、飛び散った脳漿が広がる。

 

「いやァァァァァァァァッッ?!?!」

 

 きっと、連れ去られそうになっていた女性の知り合いか、或いはもっと親密な仲だったのかもしれない男の死に、取り乱した様に叫ぶ女性。

 

 そのまま、彼女は男を撃ち抜いた新人類の兵士目掛けてセラムキューブを展開すると、兵士に向かって手を突き出した。

 怒りに身を任せた、余りにも素早い動きだった為、誰も反応出来ていない。

 

 そして女性の手に宿ったセラムキューブは、光り輝くエネルギーの剣となって兵士の顔面を刺し貫く。

 

ザシュッ!!

 

 兵士の顔が内側から切り裂かれて血を撒き散らし、兵士は膝から崩れ落ちた。ーーーー即死だろう。

 

「ーーーーこいつッ!!俺の仲間を!!」

「即時処刑だ!!総員、撃て!!」

 

パパパパァァンッッッッ!!!

 

 兵士を1人殺した女性目掛けて、無数の弾丸が至近距離から叩き込まれる。

 女性はたった一言の恨み言を言う暇もなく、血を撒き散らしながら大地に倒れ込んだ。

 

 

 

ーーーーそれで終わりだった。誰が愛する人を殺されて怒りに狂い、人を殺しそして自らも死ぬ。悲しくも、最早ありきたりとなった一幕の終焉。

 コレがこの街の日常だと言ったら、貴方は信じるだろうか???

 

 

 

「……対象の死亡を確認。」

「…この、バカ女が……。俺の大事な仲間をよくも……」

「よせ。もう死んでいる。」

 

 

 硝煙の匂いが晴れた後、其処には3つの死体があるだけとなった。

 

 

「ーーーー遺体の回収と道路の清掃を。」

「直ちに。」

 

静かにテキパキと、戦闘の痕跡の除去が行われていく。

 

「30分後には、この町に星瘴気(星のセラム)が漂流してくる。ーーーー防護服があるとは言え、油断はならん。急げ。」

「了。」

 

 

「……………。」

 

 

 兵士たちが亡骸と新人類達を連れ去った後、コクウは兵士と女が死んだ場所へ歩いっていった。

 

 其処には、石畳の隙間に3つの物が落ちていた。1つは女性が死んだ場所に。もう1つは男が死んだ場所。最後の1個は、連邦兵が死んだ場所に。

 

「………。」

 

そっと拾い上げるコクウ。

 

 新人類の女性と男が死んだ場所に落ちていたのは、お揃いの御守りだった。

 

………この街では、神頼みが流行っている。この状況をどうにかする為には、神にでも祈らないとやっていけないからだ。

 

 きっと、互いの安全と幸せを祈って身に付けていたのだろう。

 

「……。」

 

 連邦兵士が落とした方を見てみれば、ソレは綺麗なロケットだった。

 落ちた衝撃で割れたのか、中の写真が見えている。

 

 中には、笑顔を浮かべた兵士と1人の若い女性の姿があった。

 

 もしかしたら、カップルなのかもしれない。…彼が、今日この手で終わらせた男女の様に。

 

「……コイツが死んだと知ったら…この女は悲しむだろうな…。」

 

 幸せの絶頂の様な笑顔を浮かべる女性の写真を見ながら、コクウはボソッと呟く。

 今日死んだ兵士は、自分たちの知らない所で幸せの形を持っていた。でも、ソレも今日で終わりなんだろう。

 

 

ーーーー誰かが、誰かの幸せを奪い合う。

 

意図せずとも、そうなっていく世界。

 

 どうしてこうなった??何が、幸せの剥奪合戦を生み出した??

 

 

「……『死』があるからだ。……生きる者と死ぬ者が居るから、隔てられた悲しみに狂うんだ。」

 

 歩くコクウの側を、光り輝く粒子が通り過ぎていった。空にも、光の粒が漂いだす。

 

ーーーー此処アステールは、星の花が見える程セラムの源流に近い場所に建造されてある。星のセラムの瘴気にも耐えれる新人類ならば、セラムに呑まれても平気だからだ。(尤も、此処を管理する連邦兵側からしてみれば、実に厄介な話なのだが。)

 

そして、時折星のセラムは街にまで漂ってくる。

 

 先程の連邦兵達の会話にも出てきた、星瘴気の漂流と言うヤツだ。

 

 この町に住むものにとっては、この現象は珍しく無かった。…感覚的には、雨が降ってきた事と同じ感覚になっていたのだ。

 

(今日は多いな。)

 

 そんなことを漠然と思いながら、コクウは星のセラムの流れの中を歩く。

 余り星のセラムが濃くなると視界が遮られるので、迷う前に帰ろうかーーーーと思った所で、コクウは()()()()()()

 

 

 

『あははは。』『うふふふふ。』『はははっ。』

 

 

「ーーーーーーーー!!!」

 

目を見開くコクウ。

 自分の直ぐ側を、光り輝く人影が通っていった様に見えたからだ。

 ソレは何かから解き放たれたかの様に軽やかに、そして優雅に空を舞う。

 

 笑い合いながら空に消えていったその人影は、さっき死んだ男と女に見えた。

 

「…………ぁ。」

 

コクウはこの時、気付いたのだ。

 

この星を満たす、星のセラムとはーーーーーーーー

 

 

「……そうか。みんな居るのか……其処に…!其処にずっと居たのか……!!」

 

 

見開かれる瞳。

 

 コクウはこの時、星のセラムの中に揺蕩う魂達を見た。

 

「トコヨ……!」

 

 そしてその時、一縷の希望を星のセラムに抱いたのだ。…あの中に死者の魂があるのなら、どうにかしてまた逢う事が出来るのではないのかーーーーと。

 

そして、コクウは動きだす。

 

 星のセラムの力を解き明かすべく、そして同じように死別の哀しみに狂う人々を救う為に。

 

ーーーー彼はアステールの街の裏で暗躍を始めたのだ。

 

 

「ーーーーこの世を満たす星のセラムは、魂の残滓。ならば、死に別れた者達も其処に居る。そうだろう??」

「ま、また…会えると言うのか…?親しい人達と。」

 

ーーーー彼の声を聞いた者達に、コクウは手を差し伸べた。

 

「あぁ。ーーーー俺はそう確信している。……共に来ないか?連邦と、運命に奪われた全てを、この手で取り戻すんだ。」

「……おぉ…もし…もしも、ソレが本当ならーーーーーーー」

 

 コクウのその言葉に、確かな希望を抱いた者も居た。

 アステールの闇に蔓延っていた悲しみを、払拭してくれるかもしれない者の登場に、人々は希望を抱いた。

 

…〈幽世(ゴースト)〉。いつの間にか、コクウの周りに集まる人々はそんな名前を名乗り始めていた。

 

 その名は死して霊体となった者と共に歩みたいという願いの現れか、或いは何もかもを失って生きる気力も無く、ただ幽霊の様に日々を貪る自分達への自虐なのか定かでは無いが、アステールの裏で〈幽世(ゴースト)〉は着実に大きい組織となっていったのだ。

 

 

ーーーーしかし、連邦側も黙っている訳ではない。

 

 新人類を管理下に置く以上、これ以上の新人類側の団結は危険であるとして、〈幽世(ゴースト)〉を制圧しようとしたのだ。

 

 一方、〈幽世(ゴースト)〉もまた連邦の動きを事前に察知し、コクウの指揮の元で反撃に備えていた。

 

 アステールの裏側で、密かに両者の戦いの準備が始まっていたのだ。

 

 

 

 そして、小さなーーーーしかし、2人の運命を大きく変えた戦いが始まった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーーー街の外れが燃えている。

 

 

 

バサラは、燃える街の一角で連邦兵と戦っていた。

 

 

 

ーーーー最初に言っておくが、バサラは〈幽世(ゴースト)〉の事などこの時になるまで、何一つとして知らなかった。

コクウはバサラにこの事を隠していたのだ。

 

 故に、バサラは少し混乱しながらも親友であるコクウの為に戦っていた。戦うセンスなら、自分には備わっている。天部に居た時からずっと磨いてきたからだ。

 

 しかし、バサラ達が見習い兵だった時の〈火ノ国〉は一旦の平和を保っており、実戦はして来なかった。

 

 

故に、バサラはこの日初めて人間と戦ったのだ。

 

 

ドサリ……と地面に倒れ込む連邦兵。

 

 血に濡れた斬魔刀ヴァジュラの刃が、辺りを照らす炎を反射して鈍く煌めく。

 

 

「……はぁ…はぁ……くそ……。」

「強いな。お前は。あっという間に、皆殺しか。」

「ーーーー!?」

 

 

 炎の中でふらふらと佇むバサラの前に、黒煙を割ってコクウが姿を現した。

 

 手には、セラムキューブを変化させた物である銃を持っている。

 

「…コクウ…!!お前……なに考えてんだよ!!」

 

 バサラはコクウに向かって吠えた。辺りは既に火の海となっている。

 

 熱され、揺らめく空気に包まれながら、コクウはそっと口を開いた。

 

「哀しき死からの救済だよ。……星のセラムは魂の拠り所だ。ーーーー必ず死者に会う術もある。お前には必要無いみたいだがな。」

 

 コクウの少し煽る様な声に、バサラは顔を顰めて言い返す。

 

「…そんなの……!お前は未来を生きる気は無いのか!ーーーートコヨがコレを望むと思うか?!死に囚われて、こんな無茶苦茶な事をして!」

「ーーーー無茶では無いさ。俺にはついて行く仲間が居る。誰も死なない世界は実現出来るんだよ。バサラ。死が無くなれば悲しむ者も居なくなる。そうだろう?」

 

ガシャリ…

 

 燃えた建物の一部が音を立てて崩れる。…わっと火の粉が舞った。

 

「……んなのーーーー」

 

バサラの言葉を遮って、コクウは口を開く。

 

「ーーーー俺達は互いに互いの幸せを奪い合っていた。…お前が戦っていた兵士達もそうだ。世界の何処かに、その人1人だけの幸せの形を持っている。」

 

 そう言って、彼はバサラの足元に転がる兵士達の骸を指差した。

 

「肉親がいるかもしれない。兄弟や、恋人がいるかも。或いは、家庭を築いているかもしれないーーーー分かるか?お前が殺した奴等にも、幸せの形があったんだ。」

 

「…!」

 

バサラは思わず兵士達の骸に目を落とした。

 

「お前が殺して奪ったんだ。…死のある世界なら、これでお終いだ。幸せは戻らない。でも、俺の目指す世界なら違う!」

 

 彼は両手を広げた。……揺らめく炎の光が、彼をあらゆる方向から照らし出す。

 

「誰でも2度目の生を受けられる。2度じゃ無い!3度だって、4度だって!!幸せは無くなる事がない!!!死の無い世界こそが、この世界が目指すべき理想の姿なんだよ!!」

「ッ…!!」

 

 バサラは後ずさった。この時のコクウは、異様なまでに生き生きとして見えたのだ。

 

 煙が濃くなってくる。遠くから、大勢の人が迫り来る気配をバサラは感じ取った。…連邦兵が大挙して押し寄せてきているのだろう。

 コクウも気付いているのか、バサラからゆっくりと距離を取り始める。

 

「……俺を否定したきゃ、否定するが良いさ。死んだ人間の言葉に頑なに縋っている方が、死に囚われている様に見えるけどな。………もう、お前とは歩むことは無いだろう。」

 

「待てよコクウ!!」

 

 バサラはコクウに向かって走ろうとしたが、彼に駆け寄る前に2人の間に燃える建物の一部が倒れてきて、互いを分断してしまった。

 

「……くそ…!!」

 

悪態を吐いて、バサラはその場から駆け出す。

 

 自分もまた、連邦兵を手にかけてしまった身。最早、この街には居られないだろう。

 

 

ーーーーこうして、2人の道は分たれた。

 

 

 

そして、交わる事は無かったのだ。

 

 

…今日までは。

*1
当時、連邦政府副総帥だったゼウスが引き起こした、移動要塞都市〈クロノス〉の強奪事件。このクロノスが、のちに反連邦の象徴たる〈オーステルン〉へ改修される。







この後、バサラは後にアルスラーンとなる少女に出会うんですが、ソレはまた別の機会に。

次回は話を戻して、日本での戦いに移れたら良いなぁ。

今の自分の状態だと、また遅くなりそう。……でも、失踪はしません(断言)
1人でも待っていてくれる人が居るなら、私はその人の為に書くよ。
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