モンスターストライク 〜星ノ呼ビ聲〜   作:犬社長

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短いです。




94話〈人殺しが背負うべき罪禍について〉

 

 

 

ーーーーまた、逢えたら良いなって、ずっと想ってた。

 

 

そんな日なんて、訪れる訳が無いのに。

 

 

…でも、まさかこの願いにも近い想いが、叶う時が来るなんて夢にも思っていなかった。

 

 

…惜しむらくはただ一つ。

 

 

 

 

ーーーー『敵』として出逢ったという事だった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「暁…ッ!!」

 

 

ーーーーハレルヤの慟哭にも近い声が木霊する。

 

揺らめく霊体の様な少年ーーーー暁は答えない。

 

「あぁ。ーーーー彼は喋れないよ。」

 

 深町が思い出したかの様にハレルヤに説明し始めた。

 

「さっきも言った通り、彼の魂だけをセラムの中から引っ張り出すには、まだ〈帰魂(リボーン)〉の能力不足だ。ーーーー彼の魂は不特定多数の人間や動物の魂と、混じり合っている。…中には、他のリンクスの魂も居るかもね。だから、自己の意識が定まらない。しかし、彼の形にはなっているんだ。どうだい?素晴らしいだろう???」

 

深町が笑みを深めると、暁が一歩足を踏み出した。

 

 動くたびに、彼の輪郭はぼやけ、何か違う物が見えて来る。

 

ーーーー例えばそれは犬であったり、暁ではない別人の姿だったりした。

 

「もっとも、メインーーーー魂の主導権は暁だ。連邦の研究により、君達が振るうセラムの力は、魂に結びつく物であるという事が明らかになっている。…だから、」

 

深町が指を鳴らした。

 

次の瞬間、ハレルヤとキラリを不可解な圧力が襲う。

 

「きゃッ?」

「ーーーー重力…ッ!!」

 

 地面に膝をつく2人。ーーーー見ると、暁が此方に手を伸ばしていた。深町が自慢げに口を開く。

 

「ーーーー彼の生前の能力は、問題無く使える。…最高だ。帰魂(リボーン)さえあれば、死者の力は私の物になるのだから!!」

 

ーーーーと、ここでハレルヤが鬼気迫る表情で叫んだ。

 

「深町ぃぃ!!」

 

 重力の頸木に捕らえられながらも、彼は起き上がってセラムキューブを展開する。

 

「もう、これ以上……死者の魂を侮辱するなぁぁぁッッッ!!!!」

 

放たれたのは、一条のレーザー。

 

ーーーー光の速さで深町に迫ったレーザーを、直前で暁の霊体が防ぐ。

 

いつの間にか、暁の霊体は巨大な鎌を持っていた。…そしてその鎌で、レーザーを左右に切り裂いて防いだのだ。

 

「死人に口なし、だよハレルヤ!ーーーー私にとってみれば、今のこの状態の〈帰魂(リボーン)〉が最も使い易い!力はそのままでも自由意志が無いから、傀儡にし易いのさ!!」

 

 レーザーを防ぎ切った暁が、一気に地面を蹴って加速する。ーーーー狙いはハレルヤ。

 

「ッ…!!」

 

 ハレルヤは、右手に顕現させたガントレットで鎌の一撃を受け止める。

 

『ーーーー。』

「くっ……。」

 

ーーーー鎌を止める事には成功したが、鋭い蹴りを腹に叩き込まれた。

 

 ハレルヤは地面を転がる。ーーーーそして、起きあがろうとした瞬間、真上に吹き飛ばされた。

 

「ぐっ?!」

 

ーーーー暁が、真上に向かう重力を発生させたのだ。

 

「…そういえば、そんな事も出来てたんだったな…!」

 

 上に落ちながら、ハレルヤは苦い顔で呟く。そして、足の裏から水のエネルギーを放出すると、空中で体勢を立て直した。

 そこに暁が突っ込んでくる。自らの体に重力の力を宿し、あらゆる方向に重力をかける事で、擬似的な飛行能力を得ているのだ。

 

 フォン、と振るわれる鎌がハレルヤのガントレットとぶつかって、火花が散る。

 

 そのまま、両者は空中で互いに攻撃を交わし合った。

 

ーーーー火花と水飛沫が宙に次々と舞って、キラキラと輝く。

 

 

 そしてその真下では、キラリが深町と向かい合っていた。

 

 

「……さて、彼と暁の戦いを見ていたい所だが、そうも行かない様だな。」

 

 深町がキラリに目を向けた。ーーーー既に、彼女はセラムキューブを変化させた翠の矢を弓につがえ、彼に狙いを定めている。

 

「貴方の計画は全て止めさせてもらいます。…大日本帝国の復活から、星の花の分体の力を利用した衛星兵器〈神威奈火(カムナビ)〉の存在。…〈スターダスト〉として、これらの危険分子を見過ごす事は出来ません。」

 

深町は尚も不敵に微笑んだ。

 

「やって見せると良い。ーーーーココで終わるつもりは無いがな。」

 

ーーーーザッ、と深町とキラリの間に、銀色の鎧に身を包んだ兵士らしき人影が割り込んでくる。

 

 そして彼らは、各々が片手にセラムキューブを展開した。ーーーーただの兵士では無く、新人類の様だ。

 

「…〈養殖新人類(リンクス)〉。研究議会の狂人こと、ドクトゥール・フォリーが提唱した〈旧人類を新人類化する技術〉の応用だ。元イースター相手では荷が重かろうが、キミなら相手になるだろう。」

 

 キラリを舐め切った態度で曰う深町に、キラリは鋭く言葉を返した。

 

「…あんまり私を下に見てると、足元掬いますよ。」

「ふふふふ……。どうかな??」

 

 深町が不敵に笑ったと同時に、周囲の兵士達が一斉にキラリに殺到するのだったーーーーーーー。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 ハレルヤ達が戦いを始めた頃、バサラはコクウと睨み合っていた。

 

 ここは、前までコクウ達と話し合っていた建物の外。白石が引かれた、神社の境内の様な場所だ。

 

ーーーーその中心で、2人は臨戦体勢で向かい合っている。

 そして、ぐるりと周囲を幽世(ゴースト)のメンバーが囲んでいた。……アミダもその中に混じって、固唾を飲みながら2人を見つめている。

 

 

「一対一…。助太刀は無し、だ。良いな?」

 

コクウの問いにバサラは頷いた。

 

「あぁ。」

 

彼が抜いた斬魔刀ヴァジュラの刃が、キラリと煌めく。

それを一瞥したコクウが、彼を睨んだ。

 

「…バサラ。お前はまだ、その刀で誰かを殺し、幸せの形を奪っているのか?」

 

 試す様な問いかけに、バサラは微かに首を振る。

 

「ーーーーいや。あの日から、俺は人を斬らないって決めてたんだ。それを破った事はねぇ。正直、あの時のお前の言葉をずっと恐れてたのさ……。」

 

ーーーー独白の様なバサラの呟きが、そっと木霊する。

 

「ーーーーそうだ。俺は怖かった。自分が力を振るう事は、誰かを殺すと言う事であり、殺すと言う事は幸せを奪う事なんだと、お前に言われたあの日から俺は怖くなった。」

 

 バサラは片手にセラムキューブ、片手に斬魔刀ヴァジュラを握ったまま、そっと歩き出す。

 

「そして、イースターとして仲間を率いて戦う選択をした自分に、矛盾も抱えていた。…『自分は人から幸せを奪いたく無いから、戦いません。でも、皆んなは戦って下さい。』ーーーーなんて、ただの自己中じゃないか。」

 

 彼はセラムキューブと斬魔刀ヴァジュラを、そっと交差させる。すると、セラムキューブの持つ火の属性エネルギーが刃を伝い、斬魔刀ヴァジュラが赤く輝き出した。

 

「……でも、俺は今、覚悟を決めたよ。自分の大事な大事な人達の幸せ……それが一番大事な事なんだって、()()()()のお陰で分かったからな……。」

 

…バサラはチラリとアミダの方を見た。おそらく、ここには居ないニュウやネオ含めた、イースター全員の事も連想したに違いない、とアミダは感じ取る。

 

「ーーーーだから、ソレを守ることが出来るなら、何だってする。人殺しが幸せの剥奪ならば、何処までもその罪禍を背負って生きる。己の罪が運命に裁かれる、その日まで。」

 

 不退転の意思を込めた瞳で口を開いたバサラは、次の瞬間、真っ赤に熱したヴァジュラを握り締めて砕き割った。

 

 バキィン……!!ーーーーと音を立てて砕ける斬魔刀ヴァジュラ。そして、彼のセラムキューブがヴァジュラの代わりに、真っ赤な刀身を持つ太刀となって彼の手に収まる。

 

 

「ーーーーお前と向き合う事になった事を、今は感謝してる。……俺なりの覚悟って奴が、やっと定まったからな。俺は戦うぞ、コクウ。……誰かを傷つける事になる事ぐらい、分かり切ってる。その責任ーーーー罪を背負って、守るべき人の為に戦うんだ。大事な奴らが傷つかない様にする為に。」

 

 

 それは嘗てのコクウの言葉に対する、バサラの答えだった。

 

 

「ーーーー大層御立派な覚悟だ。…だが、そんな覚悟しなくたって生きていける様になるんだぞ??帰魂(リボーン)さえ有ればな。」

 

 コクウも、バサラに向かって歩み寄りながら口を開く。

 

「死が無くなれば、誰も悲しまない。傷付かない。罪も生まれない。…素晴らしき世界の幕開けだ。」

 

 2人は互いの目と鼻の先まで歩み寄って、顔と顔を突き合わせた。

 

「死があるからこそ、幸せは大きくなるんだ。死なせたくない、生きてて欲しい。ーーーーそんな願いが力を与え、刹那の瞬間にすら幸福を与えてくれるんだ。俺はそう信じる。」

 

バサラがそう言い放つ。

コクウが彼を睨んだ。

 

「なら、そんな刹那の幸福を他人から奪う選択をしたお前は、実に愚かな大罪人じゃないか。」

「もう言っただろ。……その罪は、全部背負うって。世界中から石を投げられる事になっても、俺は投げ返さない。ソレが覚悟だ。」

「ーーーー利己的で偽善的な思想だな。」

「ーーーーあぁ、言い返しはしない。そう思う奴らがいるのも、承知の上だ。」

「そうか。馬鹿馬鹿しい……。」

 

 

両者は口を噤む。

 

言葉はもう、要らない。

 

 

 

 

 

 次の瞬間、大勢の人々が見守る中で両者は遂に激突したーーーー

 

 

 






 キリの良いところで切った方が、モチベが次回まで持つ事に気付いた。…その代わり、短くなっちゃうけどねぇ……


 バサラさんの話はテーマ自体が拗れまくってる気がするので、果たしてちゃんと筋の通った話を書けているのか。ーーーーそこが最大の疑問。

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