今回は割と早い時間での投稿になりました。
それではどうぞ。
咲夜が妖夢を探索に出かけて4日目の夕方、椎唄は妖怪の山のとある洞窟の仮住まいから出てきて川を伝って麓に降りていく道中にいた。
理由は椎唄が妖怪の山に住処を下ろすのと引き換えに、妖怪の山にいる限りはそこの哨戒もといパトロールをし、入ってきた外来人含む人間を人里までエスコートすることを義務化されたのだ。
一見難しいと思われるが彼曰くた人さえ出なけりゃただの散歩のようなものだと前に鼻で笑っていた。
ただ、最近はそれに加えて、今朝来た紅魔館の従者を名乗る妖精から人捜しの依頼が舞い込んできた。
何故俺かと当然の突っ込みをすると、“料理長の鍋月さんの友達ですから“と返してきて断りようが無くなってしまったのだ。
依頼主はどれほど信頼しているのだろうかが伺えた。
内容は紅魔館のメイド長十六夜咲夜を探すことであった。
「椎唄さん?もうすぐ日が暮れますよ?」
仮住まいから三分とも経たないところ哨戒の任を全うしていた椛の姿があった。
ここまで下ってのパトロールは天狗達曰くしなくてもいい箇所と言っていたが、それも構わず彼女は任をこなしていく。
「あぁ、すぐ帰る。ついてくるか?」
「私は仕事中ですよ。」
「はいはい。」
仕事中となれば仕方ないと少し適当に返すと椛とは反対方向に見慣れない人影に気づいて椎唄は歩みを強めた。
適当にあしらわれて少しむっとしては仕事中と本人が言ったにも関わらず、椎唄の後をひっそりとついて行った。
人影は近づくにつれ特徴がよくわかるようになってきた。
全体的には小柄でふんわりとした黄緑色の髪を持ち、その上から黄色いリボンが一周巻かれた黒い帽子をかぶったりと一見人間の幼女のようにも見えるが、そのそばを浮遊する目のようなものがそれを根底から否定した。
「アンタは誰だ?ここで何をしてる?」
「ん、私?私は散歩だよ?というかお兄さんこそ誰?ただの人間にしか見えないけど。」
無礼なと当たり前の事実の言い草に呆れて椎唄は目を細める。
まあ名乗るときは自分からが当たり前かと当然のことを思い出しそれを行動に移さなかった自分とどっこいどっこいかと合理的になり内頬杖を噛み口を開く。
「最近妖怪の山に住み始めた椎唄玖力だ。」
「ふうん…よくお兄さん危険な妖怪の山に住もうと思ったね。深いわけでも?」
「名前を教えてくれたら答えてやるよ。」
そのときについてきた椛は椎唄の陰からすっと現れて黄緑色の少女を見てあっと声を漏らす。
それを聞き捨てなかった椎唄は咄嗟に聞いた。
「知ってるのか?」
「はい、彼女は古明寺こいし。地霊殿の方です。こうして散歩に出歩くのでたまに見かけるのですがご存知なられなかったのですか?」
「どうもタイミングが悪いみたいで。」
自嘲気味に笑い肩を竦めるとこいしに交換条件であった自身が妖怪の山に住処を置いてもらえた経緯を話した。
何故かと言われても、名前を教えてくれたらと言っただけで、誰からかまでは定義していなかったためである。
「へぇ、つまりアルバイトみたいな感じ?」
「そんなところだな。そうそう、最近十六夜咲夜っていうメイド姿の女性は見なかったか?」
そう聞かれた途端こいしは誰?と聞きたげな表情になり、隣で椛は何でそんなこと聞くのですかと首を傾げた。
椛に関してはさておき咲夜の見た目の特徴を告げる。
「銀髪で肌は白く紺色のメイド服を来てたらしいのだが…見てないか?」
するとこいしは閃いたように思い出し口を開く。
「その人なら四日ほど前に見たよ!確か旧地獄街道の近くに似たような見た目のお姉ちゃんがいたから多分その人かも!」
「四日前にな…有り難い。」
「見つかるといいね!またね!」
まあなと肩を竦めてこいしの背中を見送る。
すると椛がもの聞きたそうな目を向けてくる。
「まだ旨、話してなかったな」
「全然聞いてません。ただその、咲夜さんっていう…あれ?紅魔館の咲夜さんですよね?」
「あぁ。そのメイド長が、白玉楼の庭師を探しに行ったところ、なかなか帰ってこないから当主が心配してな。その遣いの妖精が今朝方頼みに来た。」
「何故あなたのところに?」
「妖精曰く、信頼できる部下の友達だとよ。」
いつの間にか腰掛けていた椎唄はふうと息を吐いた。へ?と首を傾げて椛は椎唄を見た。
鍋月については一切話したことがないからだ。
「ま、有力な情報が出てきただけ有り難いわ。さ、帰るぞ。」
橙色に染め上げられた夕焼け空は見る見るうちに群青が東の空から忍び寄ってくる中、椎唄はパトロールついでに遠回りして仮住まいへと戻っていった。
咲夜が外出してから一週間が経ったが、まだ音沙汰無しの状態は続いていた。
鍋月はどこか物足りない朝日を浴びて苛立ちと不安を胸のもどかしさを有耶無耶にするため調理室に戻り自分が前に自分用として買った紅茶のためのお湯を沸かしていた。
別に咲夜を信頼していないわけではないがこうも寂しさは来るものなのかと初めて実感したのである。
そしてその心の隙間にカフェインを上品に注ぐように口に紅茶を運んでいく。
「チーフ?」
すると寝起き顔のチェリーが瞼をこすりながらぴたぴたと歩いてくる。
どこか可愛さが溢れていてそれを一見しただけで興奮する輩もいるのではないのだろうか。
しかし、そんなことも気に咎めず、ただ紅茶を飲むとチェリーに向いて軽くよっと挨拶する。
しかしそれも今の鍋月の表情では元気だという説得力は持つことすら許されてなかった。
それほど不安なのである。
「十六夜さんのこと?」
「まあな。」
溜め息混じりに答えるとチェリーは自分の椅子を持ってきて鍋月の前に座り、背中を曲げて彼を見つめた。
「大丈夫よ。確かに一週間経ったら妖精達が探しに出てくれるわよ。それでだいたい見つかったりするから」
「おう、そうなのか。」
「そんなものよ?」
その後他愛もない話で盛り上がるが、それと紅茶では不安は拭いきれず、ただ時間が過ぎていくだけである。
こうしてちゃならんなとだらしなく感じる自身の心に鞭を打ち立ち上がり料理の支度を始め、包丁を握った。
「正午には出られるようにしていなさい。」
レミリアは朝食を終えて洗い物で流れる水の音がとりわけ響く後片付けの時間に鍋月をエントランスに呼び出して命令した。
咲夜を探しに行きたくて仕方がなかった鍋月にとっては朗報以外の何物でもなかった。
ようやく我慢していたことを、咲夜さんを探しにいける。
「無理はしないように。助けに行くつもりが命を落としたなんて、助けられた側にしたら深い傷になるわ。」
「分かってます。」
料理人の服から一転、伸縮性があり動きやすい黒のチノパンに黄色いパーカーの姿に身を包み、両手剣を背負った姿は何かしらの覚悟のような凛とした表情が見える。
すると二階の手すりにもたれて様子を見ていたフランはそのまま直接降りてくる。
どこかもの寂しさを感じさせる眼差しを浴びせてくる。
「お兄さま、行っちゃうの?」
「なあに、すぐ帰ってくる。」
「約束だよ。」
レミリアが制止するよう求めたがそんなの知らないわと言わんばかりにシカトして鍋月に近づいて抱きついてくる。
身長差があるためなかなか愛らしいのだが、それどころではないということは鍋月もフランもわかっていた。
「まずは人里に行くといいわ。そこに腕の立つ助っ人を団子屋に用意しておいたから。」
「誰ですか?」
「鍋月に協力的で腕の立つ人よ。」
鍋月は安心したように微笑んだ。正直、質を操る程度の能力では彼の知る巫女や妖怪達を相手取るのは難しい。
そういう配慮があって心から助かると胸をなで下ろしていた。
一通りの覚悟を済ませると、扉に手をかけて押した。
「行ってきます!」
今回もお読みいただきありがとうございます。
今回は話すネタがないのでさっくりと。
誤字脱字の指摘などがございましたら感想欄にておねがいします。