今回は初のバトルシーンです。
それではどうぞ。
「この山に入るつもりなら私と一度勝負してください!」
「はぁ!?」
唐突に開口一番一戦を交えて欲しいと叫びビシッと鍋月を指差し決める雛に思い出したように鍋月以外の面々は頷き、各々に呟いた。
「そういや妖怪の山の出入りって…」
「そーそー、雛に実力を認めてもらわなきゃ。」
「すっかり忘れてたぜ。」
どういうことだと面を向けてきた鍋月に手短に椎唄は答える。
「実力を見せてこいってことさ。スペルカードバトルで。丁度どこまで戦えるか気になってたところなんだ。やってこい。」
「そういうことです。ではルールの方を話させていただきますね。」
内容はスペルカードの枚数、どれだけ耐えれるかの制限時間の設定、あとは勝敗による相互の条件であった。
鍋月が勝てば妖怪の山の出入りを自己責任で認可し、雛が勝てば今日のところは帰ってもらうことになった。
制限時間は5分であり、これ以上耐えれば鍋月の勝ちとなる。
使用可能なスペルカードは鍋月に合わせて二枚となった。
「じゃあ私は先に行ってるわ。早苗に旨を伝えてこなきゃ。魔理沙、審判お願い。」
そそくさに霊夢は反対する魔理沙の制止を振り切って妖怪の山の中へと消える。
仕方ないと溜息を吐く。
「椎唄、時間計測頼むぜ」
「あいさ。」
椎唄は自身の能力でスポーツタイマーを虚空から生み出し実体化させる。
しっかりと色まで付き、ティーカップの頃より進歩していることが伺えるがその頃を知るのは誰もいないだろう。
タイマーを五分にセットすると綺麗なサムズアップで準備できたと魔理沙に伝える。
「じゃあ準備はいいか?」
「いつでも戦えるわ!」
「もうなるように…な」
「始め!」
溜息混じりで鍋月が独りでに宙に右記身構えるより先に雛は手加減することなく数多の光の弾とお札を鍋月に投げつける。
密度は中々のもので、パチュリーよりはまだ大丈夫な方とは思うものの、やはり間隙を狙って回避するのは怖いものである。
雛は空中に飛んで回りながら弾幕を放っていく。
彼女の動きもトリッキーで鍋月に隙を与えまいと弾幕を拡散させていく。
まだ剣の中に収められた魔法で拙くあるものの空を飛び雛の弾幕も危なげに避けられている。
しかしおかげさまで鍋月は背中に背負った両手剣を抜刀できずにいた、すると雛は何かを唱え始める。
それを機にやっと鍋月は抜刀する。
白く鋭さのない刃からはがほんのりと緑が揺らめき帯びていた。
「中々いいセンスを持ってるじゃない。でも行くわよ!。創符『ペインフロー』!」
すると彼女を中心として渦巻きを内側から赤と紫の光を放つ結晶を集めて象っていき、それを拡散、収縮させていく。
その不規則な機動をみせて鍋月に飛んでいく。
「ちょっともの足りないな。何故だ?」
「とはいえスペカはスペカだ。鍋月、気をつけろ!あと四分だ!」
戦ってる隣から魔理沙と椎唄が首を突っ込んできているのにも気に咎めることなく鍋月は慎重に動いていく。
まだ飛んでくる水晶間の距離は短く見積もっても1メートルもないだろう。
水晶の隙間を縫っては雛の隙をうかがう。
しかしその隙は全く見当たらない。
戦い慣れてるわけではないから仕方ないがこのまま逃げ回っても完全に証明しきれないだろうなと思っている。
それ故何か力を示さなくてはならない。
そう意識して鍋月はぐっと両手剣を握る。
最初に現れた『ペインフロー』の水晶を完全に避けきる前に隙を与えまいともう一度雛は『ペインフロー』を放つ。
「冗談だろ!?」
「こんなの避けれなきゃここは通せないわ!あなたもびびってないで攻撃してきなさい!」
言わせておけばと鍋月は軽く両手剣を振る。
当然、刀身は空を捉えるがその軌道からは衝撃波を放ち、水晶を切り裂き、雛の隣を突き抜ける。
パチュリーから教わったやり方だ。
しかしまだ成熟していない鍋月の剣術の腕では一閃然る後の隙はどうしても埋められない。
しかし、飛んでくる『ペインフロー』は突如として消えた。
雛もこのことは予期してたわけもなく、再び周りながら通常弾幕を放つ。
ただ能力を持たない人間からすれば通常弾幕も必殺技みたいなものだが。
「あと一分半!」
椎唄がカウントすると雛は奥の手をといわんばかりに回り始めて詠唱し始める。
なにが来てもいいように鍋月は身構えて力を抜いた。
回避機動にも攻撃にも移ることにより柔軟な対応ができるようにと美鈴から教わったことである。
「耐え抜いてみなさい!悪霊『ミスフォーチュンズホイール』!」
すると回転しながら自分の正面方向にまたあの水晶達が放たれていき、波を形成し拡散していく。
一見波があるから耐えられると侮ること無かれ、回避しきる前に再び出して、正面方向だけではなく左右からも飛んでくるようになるからだ。
「うわっ!なんだこれちょっ!」
何か言いたげに喚くがそれも届かず焦り辛うじて避ける。
するとふと自分の飛ぶべきルートが見えた。
そのルートの先に雛がいた。
一か八か、やるか否か、それを考える前に自分の腕を証明するために文字通り“花火“の中に突っ込んだ。
するとどうだろう、飛ぶルートを見いだし、飛んでくる水晶の弾幕は道端の縁石でしかなくなる。
希に飛んでくるものは両手剣で切り落とし、ルートを守る。
そして雛との間合いも近づき、後ろを向いている際に全方位に衝撃波を放つ。
衝撃波は飛んでいる水晶を打ち壊し夕焼け空をきらきらと輝かせる。
「あっ!」
「俺の勝利だな。」
そうして切っ先も刃も無い両手剣を雛に向ける。
そのときに椎唄のタイマーのブザーが鳴った。
試合終了の合図だ。
「私の負けね。これからの妖怪の山への往来を許可するわ。」
冷や汗を流しながら雛は地面に降りた。
鍋月は両手剣を鞘に納め、ふうと汗を拭った。
「ありがとう。」
その言葉を放つ鍋月の後ろでは魔理沙が目を輝かせていてタイマーを消した椎唄はやるじゃねえかと言う。
そのとき交渉を終えた霊夢が降りてきた。
「霊夢、どうだった?」
「OKよ。話が通しやすくて助かったわ。」
以前に守矢神社に訪れたことのある霊夢はそんなことを呟いていた。
さて夕焼けに映える守矢神社では霊夢と同じ巫女の東風谷早苗が箒を掃いて境内を掃除していた。
彼女からの情報では久しぶりに外の人間が来ると聞いて普段から信仰心を集めようと心がけている掃除もより捗っていた。
終いには、鼻歌を歌う始末であった。
「待たせた?」
「いえ、むしろ今出てきたところです。お客さんは…」
「俺と霊夢に、外から移住してきた人間二人、そして雛だぜ。」
移住、確かに似たようなものだけどと椎唄と鍋月は苦笑いした。
キャンプをするつもりで外の世界で言う『長野の諏訪湖の畔』に繋がるトンネルをくぐったら突然紫の隙間幻想郷にいたなんていう笑い話を具現化してしまった二人なのだから。
ちなみに雛が付いてきたのは霊夢の“お誘い“という名目の“強制連行“があったからだ。
「そちらの二人ですね。初めまして、東風谷早苗と申します。本日は参拝いただきありがとうございます。」
そう言って箒片手に早苗はお辞儀する。蛙の髪留めの付いた髪は若葉のような緑色で、それはすらっと整った背中を軽く覆っている。
巫女服の露出度は肩と脇が出ている程度で霊夢のものと大差はないが巫女服の上からでもボディラインはどこか大人びている。
霊夢と魔理沙は参拝者じゃないからと苦笑いしてそのやり取りを漫才を見るような目で見ていた。
「初めまして、椎唄玖力です。以後お見知り置きを。」
「料理人の鍋月守同だ、よろしく。」
二人は各々に挨拶を軽く済ませる。
するとまあまあ中へと早苗は屋敷の中へと誘導していった…
今回も読んでいただきありがとうございます。
連絡事項は明日は諸事情により本編を昼に投稿予定です。
それではまた明日~