東方紅妖記   作:くるくる雛

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どうも皆さんくるくる雛です。
今回の話が第三編ラストになり、第四編まではかなり間が空くと思いますがこれからもお願いします。
それではどうぞ。


第三編 下ノ二 (酔った人たち(一人除く)

 それから一時間程経って、最初の一杯以降麦茶しか飲んでいない鍋月を除く全ての人間、神が酔って服を、態度を乱していた。

椎唄は二三杯だけ飲んだような態度をして皿を洗いに行ったがその一杯の単位が一升である。

鬼かお前は。

鍋月がそんなことを思っていると不意に声をかけられた。

 

「そういえば鍋月さんって気になっている方とかいるんですかぁ?」

 

 顔が酒で真っ赤になっている早苗が話を切り出した。

ほぼほろ酔いになりながらも椎唄は食器の片付けをしにいってるため、困惑する鍋月しかいなかった。

 

「そうそう、あんたのような料理人だといてもおかしくないわよね。」

 

「なんとなーく私は察しが付いたぜ。」

 

「え?誰々?」

 

 ひそひそ声の魔理沙の声に耳を傾けていた雛は誰?と言いたげに首を傾げる。

その次には霊夢が誰々と集ってくる。

このやりとりには流石の鍋月も自分の意中の人間を言い当てられる恐怖感に晒されていた。

 

「へぇ、でも料理長を任されてるなら仲がいいかもしれないしね。妥当なラインを言ってると思うよ?」

 

「だろー?なぁ鍋月、お前の気になっている奴ってさ」

 

 魔理沙の問い掛けに心臓の高鳴りを感じ、冷や汗が滝のように流れ始める。

緊張しきった指はだらしなくワナワナ震えているが容赦なく言葉の攻撃は続いた。。

 

「咲夜さんでしょうか?」

 

 無邪気な早苗のストレートな問いかけでいともたやすく当てられてびくっと怯み鍋月はおろおろと焦り始める。

 

「ふふ、白状しなさい!」

 

 すると霊夢は酔った勢いで迫る。

こんなの拷問だ。

そう思い、特に話に興味がなさそうな雛に助けてもらおうと目を向けると、雛がぐっすりと寝ているのが見えた。

安らかに寝ていた。

 

「あーもう!確かにタイプバッチリだよ?確かに好みに合ってるよ?でもな、こんな格下の俺には似合わないって」

 

「でも好きなんだろ?」

 

「ただ素敵な人とは思っているけど…」

 

 そんな男気のない答えのやり取りをする鍋月に呆れた霊夢はふと立ち上がり、酒をついでに話を切り、雛をみた。

既に机の上でだらしなくのびていた。

時間的にもそろそろかと魔理沙が呟いた。

 

「そういや早苗、布団は?」

 

「あ、そういえば足りませんね。」

 

 この屋敷には来客用に小さな布団が2つ、早苗自身が愛用している布団が1つ、あとは早苗の“ご両神“が使うためどうしても人数分寝ようにも寝られない。

故に共有しなければいけないという。

 

「何事だ?」

 

「布団が足りないのよ」

 

 そこへようやく洗い物から帰ってきた椎唄が現れ、とっさに霊夢が答える。

 

「俺は地べたでも寝られるからカウントしなくていい」

 

「そう?じゃあ寝ている雛はつぶれた罰であと二人と布団を共有で。」

 

「何でですか!?」

 

「そうだ!そもそも一人用ので寝ても同じだろう!」

 

 そして軽い論争になり結果、ジャンケンを二回することになった。

一回目は場所取り、二回目は余った方を誰に寄せるか、のものであった。

 

「ちょっと用事を思いだしたから、先に寝ててくれ。」

 

 そう言って財布を確認して出て行った椎唄のことは差し置いて、寝床を取り合う“もう一つの戦い“の火蓋は切って落とされた

夜の守矢神社は満月により放たれる優しい光に淡く照らされていた。

もし写真家がいたら、レンズを神社に向けているのだろう。

そんな中、椎唄は改まって賽銭箱の前に立って、そっとその中に五千円札を忍ばせ、祈る。

世話になった上祈って御利益があるというのだから、それこそ硬貨では払いきれないものになっている。

 

 そっと手を合わせ、これからの地霊殿への旅と友人の無事を願った。

顔を上げると茂みに白狼天狗を見つけ、そうだと閃き、呼び止める。

それに反応するところ、椛の因縁によって彼の知名度はそれなり上がっているようでほかの白狼天狗にも顔を覚えてもらっているようだ。

 

「あなたはしい…何でしたっけ?」

 

「椎唄だ。ちょっと椛に伝えておいてほしいんだが。」

 

 そして旨を話す。

内容は昼前に地霊殿で中の様子を伺って待つ。というものだった。

 

「分かりました、それでは。」

 

 白狼天狗は頷くと再び茂みの奥に姿を隠すように消えて哨戒に戻った。

 

「さてと、戻りますか。」

 

 そう言ってふと鳥居を一瞥した際に、その下に二柱の神様の姿を見た。

 

 

 

 

 

 さて屋敷の寝室では、ダブルサイズのベッドと同じくらいの面積を持つ布団の上で、酔いつぶれて寝てしまった雛を寝かせていたところだ。

ジャンケンの結果、霊夢だけが個人の布団を獲得し、早苗と魔理沙、雛と鍋月が一緒の布団で寝ることを余儀なく決定された。

 

「さて、もう夜も更けちまったし、明日の準備して寝るか。」

 

 そう言って分け与えられた布団から離れようとしたとき、雛に袖を掴まれていた。

無意識に掴んでいるようにも思える。

鍋月は無理に引きはがそうとせず、ゆっくり慎重に剥がしていった。

しかし、突然眠気が迫ってくる。

瞼を重くさせ、体を動かす活力を奪っていく。

 

「仕方ない、寝るか。」

 

 そう呟いた途端、雛の頬が少しゆるみ微笑んだようにも見えた。

しかしそれに気づくこともなく鍋月は布団の中に侵入していき、身を埋める。

背中合わせではあるものの、雛には許可を取らずにやってしまった企画である。

もし起きたときのことを考えてしまい、震え上がる。

まぁ起きる前に自分が起きていればいいかと合理づけてそのまま瞼を閉じ、ゆっくりと眠りに

 

「ん、ここは?」

 

 速攻で目が覚めた。

何も知らない雛が目を覚ましてしまった。

あのまま朝まで寝るかと思っていた鍋月は冷や汗を滝のように流しながら頭の先まですっぽりと布団の中に埋めてしまう。

 

「誰かいるの?」

 

 ふと雛が布団をめくろうとした途端、障子の開く音がした。

 

「起きてたのですか、雛さん。」

 

 ひどく酔っていた早苗の声であった。

今の鍋月には知る由も無かったが、早苗は寝間着であった。

当然といえば当然だが、露出度が少し高いのだ。

 

「これはどういうこと?」

 

「布団が足りなくて仕方なく共有する形になっているのです。雛さんは鍋月さんとです。」

 

 バレた。

そう確信して火が噴きだしてもおかしくないほど鍋月は布団の中で真っ赤になり、さらに体を布団の中に埋める羽目になった。

 

「となるとこの中に入ってるのって、鍋月さん?」

 

「そうですよ?」

 

 雛が黙っている間、鍋月は耳元で高鳴る心臓の鼓動を聞いていた。

 

「鍋月さん、もう顔出してもいいですよ。私は背を向けたままにしていますから。」

 

 観念したかのように鍋月は顔を恐る恐る出した。

雛とは背中合わせになっていたから、精神的な抵抗こそ無かったものの、目の前で寝間着姿の早苗を見て突然、見てはいけないという衝動に駆られて目を覆った。

 

「わわっ!」

 

「あの、すみません。魔理沙さんのところの布団ではどうしても寝付けなくて、は、入ってもいいですか?」

 

 元を正せば今使っている布団も早苗のものであり、元々鍋月の性分のせいでその願いに断ることもできず、構いませんと口を開いてしまう。

 

「で、では失礼、します。」

 

 酒精が回っているとはいえ、まだ恥じらいを持っててくれていることに鍋月は感謝しながら。

布団の中央にもぞもぞと移動した。

完全に早苗が入りきると、しばしの沈黙が訪れた。

仰向けになった鍋月と背を向けたままの雛は気まずさに黙りきってしまい、早苗は気持ちが上がってしまい、あわあわと口がパクパク動いているだけである。

 

「あ、あの。」

 

「何だ?」

 

「もう少し、近づいていいですか?」

 

 ようやく落ち着いていた心臓の高鳴りも再び上がってくる。

だが女性のためならとフェミニストな面を持つ鍋月は仕方なしに許す。

 

「し、失礼します。」

 

 そう言って早苗は距離を縮めてきた。

そして外の人間の人肌が恋しかったのかどうかは分からないが、鍋月の腕に抱きつく。

そのせいで鍋月の腕に早苗の豊満な膨らみが当たり、驚いた。

 

「わっ!?何で!?」

 

「料理を教えてくれたお礼…です……」

 

 嘘付け、ただやりたかっただけだろと投げやりに考え、それを言おうとしたころには早苗はすでに夢の中に旅立っていた。

安らかな寝顔を鍋月に向けて。

意中の女性がいるのにそれもお構いなしにアタックしてくる早苗に少しばかりの恐怖を感じた。

やれやれと鍋月は振り払うこともなく、ただそっとしていると、雛の背中から優しく小さな声が聞こえてくる。

 

「鍋月さん。どうして私を酔いつぶれたまま放っておかなかったのですか?」

 

 その小さな声に鍋月は答えた。

 

「放ってはおけませんよ。何というか、信念みたいなものですよ。」

 

「信念?」

 

「あまり話すのはアレなんですけど。女性の曇りのない笑顔がみたいから。それだけです。例えどんな経歴や噂が流れている人であっても。」

 

 力弁する鍋月を雛はくすくすと笑った。

その様子も、背中がピクピクと震えていることから鍋月は察した。

 

「ふふ、あなたは優しい馬鹿そのものなのね。お休みなさい。」

 

 罵りか誉めてるのかわからないような捨て台詞を吐いて、雛は眠りについた。

その証拠かすーぴーと時折寝息が聞こえてくる。

何はともあれと鍋月は二人が寝たのを確認すると仰向けになり、ようやく訪れた安息に瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

「外の人間に会えて嬉しいのね。偶にはいいかも。」

 

 襖にわずかなすき間を開けて覗いていた八坂神奈子がひそひそと呟いた。

 

「でもそんなに外の人間って優しいイメージはないような気がするんだけど。」

 

 それに諏訪子が応じる。

彼女がそういうのも無理はないと隣で壁にもたれていた椎唄は思った。

神々に常日頃の人々の振る舞いがどう映って見えているかはともかく、人類としてみればそれは誇らしく感じられなかったからだ。

 

「人それぞれですよ。鍋月みたいに優しいのもいれば、その逆もまた然り、です。」

 

 溜め息混じりに呟くとどれどれと諏訪子と代わり寝室を覗く。

 

「寝静まったね。ふふ、良い寝顔。」

 

「本当に嬉しそう。」

 

 神奈子が言うとおり、気まずい想いをしている鍋月以外は安らかな微笑みを浮かべて眠りについていて、時折むにゃむにゃと寝言を言ったりもぞもぞ動いたりしていた。

 

「さて、私達も寝るか。なぁ椎唄。」

 

「え?」

 

 ふと椎唄は目を白黒させた。

どうしてそうなると慌て始める。

元々独りでの雑魚寝に慣れてしまった旅人の彼からしては藪から棒の話であった。

 

「確かにどんな感じか気になるもんね!」

 

「ちょっと待っ、おわぁ!?」

 

 そんな椎唄の制止の声を無視し、神奈子は椎唄の右手をつかみ、こいこいと連行していき、それに諏訪子がついて行った。

 




今回もご愛読ありがとうございました。
鍋月爆発しろ。
前書きでも書かせていただきました、今回が第三編の最終話となります。
恐らく2週間ほどあくかもしれませんのでご両所お願いいたします。
それでは皆様また次の話でお会いしましょう。
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