東方紅妖記   作:くるくる雛

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どうも皆さんくるくる雛です。
今回は後書きにて連絡がございますのでよろしければよんでみてください。
それではどうぞ!


第四編 上 守矢の神

 朝はいつものように東から登ってくる。

見慣れたのに飽きない美しさを放つ太陽が朝焼けから顔を出す。

鍋月はその太陽の放つ光に目が覚める。

そして周囲を見る。

隣には雛がいて、反対側には誰もいなかったが残り香はある。

そう言えばと鍋月は落ち着いて回想し、理解した。

そういえば添い寝してたな。

雛を起こさないようにそっと体を起こし、寝室から出て行った。

昨晩酒盛りでどんちゃん騒ぎの舞台になっていた居間には誰もいなかった。

流石にまた厨房に行くと何か言われるのは火を見るのと同じくらい明らかであった。

仕方なしに座布団に座り込み卓袱台を眺める。

やはりまだ虚しさは拭えていなかった。

 

「畜生、こんなに虚しいものなのか…!」

 

ふと周りを見渡した。

今なら誰も起きてないはずだ。

起きていたにしても早苗は朝食を作っている。

せめて、せめて下見に。

すると壁に立てかけていた腰を上げて引き寄せられるかのように玄関に向かっていった。

今から行くからな、待っててくれ。

靴を履こうとしたその一瞬き、後ろの障子が開いてぺたぺたと誰かが歩いてくる足音が聞こえる。

 

「あれ?なべつき、こんな時間にどうかした?」>

 

 尾を踏まれた猫よろしく驚き呼ばれるがままに振り返るとそこには一人、いや、一柱の少女の容姿をした神が目をこすり見つめていた。

鍋月が外の世界で見た資料より幼く見えた。

 

「す、諏訪子様?」

 

「散歩じゃないね。ぶっそうなものを担いでるし。」

 

 そういって背負っている両手剣を指差す。

人を殺めないために刃などの殺傷能力を極限まで減らし、魔法を込めた言わば魔法の杖なのだが元は剣なのには変わりなく、弁解のしようもなかった。

 

「そういえば、地霊殿に行くのよね。」

 

「え?」

 

 諏訪子の問いかけに鍋月は驚いた。

 

「えへへ、椎唄君が夜中に賽銭を入れてたから聞いちゃった。いい友達ね。」

 

 あの野郎と溜息を吐き、手を腰に当て、下を向き深々と考えた。

前々から人に対しての思いやりの強い奴だ。確かにやっていてもおかしくはない。もしかしたら、用事って願掛けか?

そんな憶測に囚われている最中。

 

「でも、地霊殿って鬼や妖怪とかもいるんだよ?ただの人間一人で行けるの?仲間がいるのに一人で?」

 

 諏訪子の放った一言は今の鍋月の不安をものの見事に代弁していて、彼の心に響く。

確かにそうだ、でも一刻も早く咲夜を助け出したい。

そんな気持ちが一人走りになり焦っていた。

そもそも地霊殿にいるとは確証的な証拠はない。

あって椎唄が仕入れてきた目撃談だけである。

動くにはいい動機になるのだが、それが良い結果に導いてくれるわけでもない。

それを知っていたから、鍋月の足はわなわなとふるえるに止まっていた。

 

「心からの友達って必要よね。神様の私が言うんだもの。嘘はないよ。」

 

 玄関に腰を下ろして諏訪子は語りかけ、隣に座ってと隣の席を叩く。

鍋月は従われるままに座りやすいよう剣を立てかけて置くや否や、諏訪子の隣に座る。

不思議なことに、焦りはまさに氷が溶けるように消えていき、焦燥感はどこ吹く風、ふうと落ち着いた。

神様の隣に座れる自分は、と思ったが現人神の早苗と共に寝ていたことを思い出し、恵まれてるなと実感した。

 

「何でかな、鍋月君って椎唄君よりも暖かい気がする。こんなに心地よいのは初めて。」

 

 目を見開いて鍋月は自身にもたれ掛かって微笑を見せる諏訪子を見た。

彼女は日の元にいる生きとし生けるものの一人なのだから、その温もりもわかるのだろう。

まさか太陽と呼んでくれるとは思っておらず、照れくさくなり鍋月の頬は染まっていく。

 

「あの。」

 

「何?それとタメ口でも構わないよ?」

 

 無邪気に答える。

本当に神様かと思うほどフランクだなと鍋月は思った。

だが八百万の神の一人はそういうのもいるかもしれない。

そうこう思っていると祈れば見つかるかもしれない。

そんな気持ちが芽生えていたような気がした。

 

「事情は聞いたんですよね。一つお願いが。」

 

「紅魔館のメイド長と白玉楼の庭師を無事に見つけられますように、ならもう椎唄君が君の分までやっちゃってるよ?」

 

 そう言うと諏訪子はふふふと可愛らしく微笑んだ。

それにつられて鍋月も微笑んだ。

 

「あ、あの。お取り込み中すみませんが。朝食が出来上がりました。」

 

 寝間着の上からエプロンを着た早苗が廊下の曲がり角から現れ、そう言った。

何かとまずそうな表情で。

勿論それはただの勘違いに過ぎなかったようで。

一人と一柱は何でもないと各々に弁解して居間に歩いていった。

 

 

 

 

 

 居間に入ると昨晩の酒精の臭いは何処かへ飛びそれと交代する形で味噌汁の厚みのある香りがすうっと鼻に通る。

朝の味噌汁の香ばしさと言えばと日本人として恥じらうことなく胸を張ることができる。

入ってきた頃には既に霊夢と魔理沙が座布団に座って各々で食卓の準備をしていた。

 

「あ、おはよー」

 

「よっ…遅かったな…」

 

溌剌と笑顔を振り撒いて早苗の手伝いをする霊夢と机にもたれ掛かって頭を抱えている魔理沙がいた。

どうして痛みに苦しまれているのかは容易に見当がついて、自分も早苗の手伝いに回ろうとするが

 

「手は足りていますから大丈夫です、ありがとうございます。座ってて待っていてください。」

 

 と早苗が得意気にそう言われたのでやることもなくなり朝食の内容を見た。

鍋月には今回の朝食は力を入れたようにも捉えられた。

客らしく大人しくして待とう。

そう思い座布団に足を崩して座った。

間もなくして、神奈子が寝ぼけ眼の椎唄を引き摺って戸を開いて入ってくる。

そう言えば雑魚寝すると言っていたが廊下で見なかったことを思い出した。

まさか自分から…とは想像しづらかった。

顔こそそれなりに整っていて頭も切れるが女性に対しての免疫が著しく低く、触ってきただけで真っ赤になるほどシャイなのだったからだ。

 

「おはよう。」

 

「神奈子様。おはようございます。」

 

「あれ?何で椎唄引き摺ってるの?」

 

 霊夢に問いかけられた神奈子はしまったと思い掴んでいた手を優しく離す。

色々と突っ込みどころしかなかったがとりあえずどういう因果でかはさておいて、椎唄が抱き枕状態になっていたのは把握できた。

 

「大丈夫?」

 

 手から離れた椎唄は床に延びていて何があったのかを物語っているかのように胡乱な目で神奈子を見た。

頷くことはおろか反応すらない。

丁度襖を開けた雛は酔いをとばす勢いで驚き目を見開いた。

 

「何やっているのですか!?」

 

「いや、色々と聞いてくれるものだからな。つい…」

 

 ついですまねぇだろ。

いや神だから済んじゃうのか。

目を丸々と開けて抜け殻のような椎唄の手を引っ張り、居間へ連れ込んで念の為動脈を押さえ脈拍をはかる。

見た目に関わらず元気に拍動している。

仕方なく鍋月は手を組んで気合いを貯めると、一発の拳を椎唄の腹筋に叩き込む。

 

「がっ!!ぐふっ!ぐふっ…!!」

 

 どつかれた椎唄は上半身と下半身が思いっきり跳ねて痛むことなくただむせると身を起こして辺りを見回した。

 

「え?何だ?死人が蘇ったのを驚くような顔して。」

 

 まったくもってそれなんだが。

そう一同が頷いたとき、唯一手を動かしていた霊夢が話を切りだした。

 

「支度できたわ、食べましょう?」

 

 卓上に並んでいた朝食は豆腐に葱の入った味噌汁に川魚の切り身、そして白米に漬け物の沢庵に納豆と、古き良き和食が連ねていた。




今回もご愛読ありがとうございました。
さて連絡ですが今回から投稿形式を変えたいと思います。
今までは1編できたら一気に投稿としていきましたが、これから私生活が忙しくなりどれだけの期間が空くかわかりませんので1話分できたら投稿としていきます。
もし明日も投稿が有ると期待していた人がいましたらすいません。
感想などがございましたらよろしくお願いします。
それではまた次回おあいしましょう。
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