やっと上ノ二ですね第四編はいつ終わるのやら・・・
それではどうぞ。
食事も終わり鍋月は洗い物で早苗が手を着けられない後片付けを手伝っていた。
霊夢は二日酔いの魔理沙と共に出発の支度で、諏訪子と神奈子は軒先で何か会話している。
今が好機と思い鍋月は問いかけをぶつけてみる。
「それにしても、何でお前ガンキャ…神奈子様に引きずられてたんだ?」
椎唄は気難しい顔をして溜め息を吐いた。
流石に“ご両神と共に鍋月の寝床の様子を観察していた“と答えては不味いので返答に困り、渋々口を開いた。
「何を言ってるか分からないかもしれないが、夜中に目を覚ましたら何かに引きずられていて寝床に連行されてた。」
あながち間違っていないレベルで椎唄は嘘をついて返す。
もしストレートに答えればここで鍋月は拳を飛ばしてくるだろう。
それに対して間髪入れずに鍋月が卓袱台を拭きながら突っ込んだ。
「いやいや、逃げろよ。」
「起きた頃には遅かった。」
苦笑いしながら椎唄は昨日の酒の瓶を纏めて抱えると答えてその場を後にした。
その切なさを物語る背中になんとなく察っし、同情した。
「なるほどね。ん?」
後片付けも一通り終えると雛が襖を少し開けた隙間から手招きするのが見えた。
鍋月はその隙間の前に立つと問いかけた。
「どうした?」
「あの、鍋月さんあなたの厄をとってあげましょうか?」
「いいのかい?」
「昨日のお礼と仕事の手際へのご褒美です♪」
雛は隙間から居間の様子を察した。
普段守矢神社の屋敷がどこまで綺麗になっているかは分からないが。
十人に見せても、全員が綺麗だと答えるほどの仕上がりを見せていた。
「じゃあ、お願いしようかな。」
鍋月はそう答えて襖の隙間に指を突っ込み、開けて雛のいる部屋に入った。
「略式でいくよ?」
雛の言葉に鍋月は首を縦に振る、すると鍋月の頭頂部に手をかざしてそれを中心として円を描くように回していく。
略式故にそれだけである。
「はい、お終い。」
「ありがとうございます。」
「鍋月、終わったか?」
問いかけてくる椎唄に頷いて応える。
これでなら地霊殿だろうがどこにでも行って生きて帰れる。
そんな気さえした。
「ああ、さて行きますか。」
「あの。お祓いやっていきますか?」
そう呼び止めたのは守矢神社の巫女の東風谷早苗であった。
しかし鍋月は時間を急いでいるため、快くイエスとは言えずうーんと唸る。
「確かに奇跡の巫女だから御利益は期待できるかも…やる?」
脇から意見を差した霊夢がそうよね、と早苗に問い掛けた。
早苗は誇らしげに頷く。
「ひょっとしたら私の能力が少しだけつくかもしれませんよ!」
「厄払いして不幸が減った状態で奇跡に豪運持ちか、無敵になるな。やってけよ。」
そう提案する椎唄に背中をそいと押された。
早苗の目は期待の眼差しを放っていて鍋月は断りようにも断れなかった。
「では、お願いします。」
「はい!」
そうして一行はまた20分ほど時間を取られたものの、守矢神社に背を向けて別れを告げ、地底への穴に入るためには必要と言う早苗と、道が被っている雛を連れていったのであった。
それから入り口に着くまであまり時間は掛からなかった。
着いた頃には既に椎唄が約束していた時間になっていた。
地霊殿のある地底への入り口は前の騒動(霊夢曰く鍋月達がくる前に色々と異変があったらしく、それもその内の一つの反省からと言って早苗と作ったようだ)のこともあり高さ3m程の囲いがついていた。
「ここですね。今は一般の方には容易に入れないように囲いをつけていますし地底側からは監視員を動員して監視しています。」
早苗が丁寧に説明している傍ら囲いに椛が退屈そうにもたれかかっていた。
彼女は一行の中に椎唄を見つけると不機嫌そうな顔をしてみせて椎唄に問いかけた。
恐らく普段の哨戒業務を無理矢理キャンセルしてきたのだろう。
「一体全体何で私を呼んだのですか?」
「何となくだ。」
無愛想に返しては空中にふわりと浮かび始める椎唄を見てぐるると喉を鳴らす。
誰が見ても怒っていると答えるような表情を見せる。
「あなたの気紛れで動くほど暇じゃないんです!失礼します!」
踵を返して激昂した様子でその場を去ろうとする。
「まあ待て。前に行方不明の二人の従者については話したな、それについてだ。ちょっと地底への入り口に誰もいないか、それと地霊殿にその従者はいるか見てほしい。」
「椎唄、何話してるんだ?」
折角の交渉中なのにと横槍を入れてきた鍋月にすこし眉をひそめる。
「本当に地底に従者がいるか見てくれるか、だ。十六夜含めてな。」
椎唄の脳裏が浮かべていたのはまだ外の世界にいた頃にあった一つの戦争であった。
超大国と辺境の砂漠の地に大量破壊兵器を入手したとされている国の間の戦争。
それは世界の憲兵とも謳われた超大国の勝利に終わったが敗戦国には大量破壊兵器が存在しなかった。
結果、砂漠の地が大量の血と硝煙に包まれただけに終わった。
それをここ幻想郷で再現しないための配慮である。
椎唄の旨を理解した椛は確認するかのように問いかけた。
「紅魔のメイド長と白玉楼の庭師が地霊殿にいるかですね。待ってて下さい。」
そう言って囲いの中に入る椛の背中を見送ると鍋月は椎唄に問いかけた。
「何でわざわざ確認するんだ?」
「そうだ、もう目撃談が出てるんだろ?」
魔理沙はともかくまさか鍋月に問いかけられるとは。
椎唄は眉間を抑えると二人に返した。
「もしいなかったらただの荒らしになって変な因縁持たれるだろ?仮に一つの目撃談があってもそれに振り回されて争いのきっかけになったら目も当てられない。」
鍋月と魔理沙はなるほどと頷いては納得した様子を見せた。
それと同時に椛が軽い足取りで戻ってくる。
「どうだった?」
「もうじき監視が緩くなります。突入するのなら今が最適かも。」
「十六夜と庭師はいたか?」
「確かに地霊殿の奥に二人の従者が確認できました。まだ無事でございます。」
「いたのか。ありがとう」
無愛想に返した椎唄の腹に椛の拳による突きが突き刺さる。
当然椎唄は不意を突かれて悶絶するばかりである。
それに向けられる視線には”ご愁傷様”、”因果応報ですね”、”変に調子乗るから”、という意味合いが込められていた。
「これでおあいこにさせていただきますね。」
ある意味その情景に戦慄を覚えていた鍋月や悶える椎唄に代わり霊夢が話を切り出した。
「じゃあ問題はないわね。いつもの監視役も手薄になる頃合も近いし、早いところ済ませるわよ。」
乗り気の魔理沙と正気に戻った鍋月、まだ腹をさする椎唄は同時に頷いた。
それを確認すると霊夢は囲いの中に飛んで入る。
椎唄も飛んで入る。
彼曰く空を飛ぶための装置を出現させているつもりらしいが不可視なのであるため、博麗の巫女や妖怪と同じように空を飛べるらしい。
「そう言えば鍋月さんって空飛べましたっけ?」
ふと雛が首を傾げる。
鍋月はまあなと答え、首を縦に振った。
鍋月の場合は物事を操れる能力を持っているのでそれを応用して飛んでいるらしいが、メカニズムが複雑で抽象的すぎるためここでの言及は割愛させていただく。
「じゃ、先に行くぜ!」
魔理沙が箒に跨がり宙に浮くと囲いの中に入っていった。
その後に続いて鍋月は慣れたように宙に浮いて魔理沙の後を追った。
「初めて入口を見るが、ちょっと深すぎじゃないか?」
そう椎唄が言葉を漏らすほど地霊殿の穴は深いものだった。
外の世界にある25mプールよりも一回りも二回りも大きく、その奥には光は届いていないようにも見える。
「落ちたら確実にあの世、いや、まさに地獄行きだな。」
「だから普通の人間には入れないようにしたのよ。最も、あの厄神様かそこの白狼天狗に追い返されるか妖怪に食らわれるかが先だけどね。」
「なるほど…」
鍋月のぼやきに霊夢はため息混じりに答えて、椛を見た。
森の自警団とも言われるほど縄張り意識も強いと聞いたことがあるため鍋月は納得したように呟いた。
「ま、俺たちみたいに空を飛べるのなら問題はないがな。なぁ霊夢?」
「強かったらね。先行ってるわよ。ついて来て。」
自慢げに語る魔理沙の問いかけに霊夢はめんどくさそうに頷いて応じると穴に降りていった。
余程早く片づけたいんだろう。
鍋月はそう思うと同じように宙に浮いては穴の中に飛び込んだ。
「あ!おい先に行くなよ!」
魔理沙はその二人の後を追って穴の中に入った。
取り残された椎唄は肩をすくめて穴の中を覗いた。
別に高所恐怖症とかそういうのではない。ただ先をこされただけであった。
「やれやれ。」
「椎唄さんは行かないのですか?」
「いや、行くに決まってるさ。」
「何か言いたいことでもあるのですか?」
「別に?あっても今は言わない。死亡フラグにしかならないからな。じゃあな。」
素っ気なく苦笑いして返すと椎唄は背中から穴の中に飛び込んでいった。
誰一人欠けることなく全員戻ってくる。
そう心に誓い、三人の後を追った。
今回もお読みいただきありがとうございました。
さて次回の投稿予定ですが、今度の投稿までは1週間以上かかりそうです。
これからはこのような感じの亀のような遅さが多々あるかもしれませんが、これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。