東方紅妖記   作:くるくる雛

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どうも皆さんお久しぶりくるくる雛です。
本当はもうすこし早く投稿したいのですが難しいですね…
それでは久しぶりの投稿となりますがどうぞ。



第四編 中 鬼の街

 椎唄が地底の底についた頃には全員が足に地を降ろしていた。

 

 

「ようこそ、地底へ。ってね。」

 

 椎唄に振り返った霊夢は冗談を飛ばす。

その顔色に恐怖の気色はなく、ピクニックのときに親に子供を任されたお姉さんみたいな気だるさを醸していた。

魔理沙に関してはむしろ”日頃の実験の成果を実践するときだ!”と意気込む始末である。

 

「要人救出か…この様子だと雰囲気出て捗るな。」

 

 そうマイペースな事を口走ったのはやはり椎唄であった。

鍋月の知る限り椎唄は外の世界で軍隊に所属していた時期があり、今は予備人員として一線は引いてるはずなのだが、血の気の多さは相も変わらずのようにも伺える。

 

「まったく、どっかの配管工もこんな気持ちで姫君を亀の化け物の手から救い出してたのかな。」

 

 鍋月はその言葉を自分なりのジョークを交えて椎唄に返した。

彼は料理の知識と技術に加えて元々家庭用のゲームソフトでよく遊んでいたためそういったものの知識にも深いのである。

深呼吸して気を整える。

頭は冷えすぎていても暑くなりすぎても判断力を削りかねないので何か大仕事をするときはいつも心がけていることである。

その動作から不安な気持ちに陥っていることを悟るのは長年の友人として容易なことだ。

 

「よし、行くか。」

 

 粗方終えると清々しい表情で顔を上げる。

そこにはもう準備万端なんだろう、霊夢に魔理沙、椎唄は空中に浮いていた。

 

「飛ぶルートでお願いね。」

 

「歩いてくのは賢明じゃないからな、頼むぜ。」

 

「とんだ方が楽だし早くつく。」

 

 確かに鍋月も飛べる。

だから心配はいらず、全員は飛んでいた。

それに早く助けたいという気持ちもあり、彼は強く頷いた。

 

 

 

 

 

 その後、遠くに旧都と呼ばれる街を望める橋を通過した。

景色もいい場所ではあったがこれを見ようとする人々はおろか往来する人もなく、遠くに望む華やかな旧都とは違い、橋は暗く、ノスタルジックと言うには度が過ぎるほどの寂しさが漂っていた。

 

「今回はついてるわ。あの嫉妬ちゃんに粘着されずに済みそうね。」

 

「あの天狗のお陰だな」

 

 そんな会話を交わす霊夢と魔理沙に椎唄は”嫉妬ちゃん?”と首を傾げる傍ら、鍋月は持ち前の外の世界で得た予備知識で何となく察した。

そもそも嫉妬と聞いて彼女しか思いつかなかった様子で納得したように頷いた。

 

「まぁこの面子だとカップルと間違われても仕方ないか」

 

 ぼそっと愚痴のように鍋月は肩を竦め、橋の手すりに手をかけて遠くの旧都を望んだ。

明暗の対比が美しさを醸し出していた。

 

 あそこに咲夜が…

 

そう思うとふと拳に力が入る

 

「おい鍋月!置いてくぞ!」

 

 鍋月の思考している態度を知らずに椎唄と霊夢は我先にとふわふわと飛んでいきそれの後を追う魔理沙の呼びかけに応じて橋を後にする。

そのときの鍋月の背中は料理人にしては割に合わないほど凛々しく、勇ましいものとなっていった。

 

 

 

 

 

 そして一行は旧都に着く。

それなりに賑わいを見せてはいるもののそこらで店を開いていたりそこに入っていくお客を始め露天でいい威勢を上げながら売り込む陽気な店主ですらかつて地上で頂点に立っていた鬼というのだから驚きだ。

その証拠に額からは立派な角が生えているのが垣間見えた。

しかし、椎唄や鍋月のような外の人間が想像するような荒々しく筋骨隆々としたものではなく。

容姿端麗な方々が練り歩いていた。

 

「ここも結構文明的だな…。」

 

 椎唄は鍋月に耳打ちした。

当然といえば当然なのだが、この旧都の賑わいから”ここで社会を形成してるのは鬼ですよ”とは到底思えるはずもないのが現実だ。

おそらく外の人間に旧都の賑わいについて語れば鬼や他の強力な妖怪といったことを訳注に仕込まなければ人間が営んでいるんだと思うであろう。

 

「それより視線が気になる、俺達が地上の人間だからかな?」

 

「そうね、でも憎しみじゃなくて興味でよ。その辺りは勘違いしないようにね。色々と面倒だから。」

 

 興味なぁと鍋月は呟いて彼らに視線を向けて軽く手を振った。

かつて幻想郷では鬼は人攫い妖怪として名を馳せていたことを鍋月は前々から知っていた。

というのも、人里に下りたとき丁度その手の文献があり、それを手に取り読む機会があったからだ。

ふと鍋月はある酒場に連ねるものを見た。

日本酒、葡萄酒、麦酒が奥の棚に見え、それを鬼や妖怪達が飲んではつまみを口にしてくぅと唸っている。

味覚が同じなら、料理の参考になるのにな。

そんなことをふと鍋月は思った。

しかし、本来の目的は、庭師とメイド長の救出なのだ、料理のことで浮かれてはいられない。

気を引き締めて目の前を向いた途端、鍋月の肩が鬼にぶつかってしまう。

 

「あっ、すいません。」

 

「っと…ん?お前、人間か?」

 

 鍋月より背丈が少し大きな妖怪が問いかけてきた。

顔は整っていて、金糸のように輝く美しい髪を分けるように額からは鬼の特徴とも言える角が生えていた。

まさに凛とした面構えという言葉は彼女のためにあると言ったような容姿であった。

 

「鍋月、どうかした?」

 

「あ、やば…」

 

 そんな気軽に話しかけてきた霊夢や少し顔を青ざめた魔理沙が後ろから追ってくる。

いつの間にか仲間より先に出てしまっていたようで鍋月は頭を抱えた。

 

「なぁるほど、あんたらの連れか。」

 

「ちょっと勇儀?彼には用事があるの。地霊殿にね。」

 

「ヘェ…そいつは失礼したね、でも、ぶつかってきたのはこいつだよ?そのまま見過ごせってのは虫がよすぎないかい?」

 

 そう言って彼女は鍋月を見る。

トラブルの根元になってしまった鍋月はどうしようかと冷静に考えていた。

どうやれば穏便に済ませられるか。

鍋月がそう考えていると勇儀からの提案が出された。

 

「よし、ここは弾幕勝負を一戦交えて話を付けよう。ここに来れる人間って事はそれなりに強いって事だしな。」

 

 三人はそれぞれの顔を見て心の中で溜め息を吐いた。

地霊殿に向かい場合によっては戦うこととなる一行としてはこの鬼の中でも無類の強さを誇る星熊勇儀と会うことは避けたかったのだろう。

それほどに強く、仮に勝てたとて、本来の目的を達成することはかなり困難になるだろう。

 

「ん?そんなに落ち込んでどうかしたか?」

 

 三人が頭を抱える中、椎唄はただ独り棒立ちになり周りを見ていた。

それを見た鍋月はしめたと思い椎唄に近寄った。

 

「なぁ、俺の代わりにあの鬼と戦ってくれないか?勝負申し込まれてさ。」

 

「ふぅん、なるほど…いいぜここは任せときな。」

 

「ちょっと椎唄!?」

 

 ふうとやる気になっている椎唄を霊夢が制止しようとするのを魔理沙は食い止めた。

 

「本当に強い奴は手加減の仕方も上手い。それをあいつは理解していると思うぜ?それにあくまでも弾幕勝負だしな。」

 

「…それってさ、さり気なく勇儀を業者と認めてるのね。」

 

 ぎくっと絵に描いたリアクションをした魔理沙をよそに椎唄は屈伸をしながら勇儀を見て問いかけた。

 

「代打が俺だと駄目っすか?」

 

「いいや?私は戦う気があるならだれでも歓迎さ。それに、お前も人間みたいだしだしね。彼奴も人間としては強そうだが、風格としてはアンタのほうが上のようだ。」

 

「それなら安心しまぜ。」

 

 そうして椎唄は鍋月達に振り返った。

気がつけば周囲に野次馬が現れて人間対鬼の勝負を心待ちにしている。

「大丈夫、ちょっと演武をしてみせるだけだ。先に行っててくれ。」

「任せた!」

 鍋月は頷いて霊夢と魔理沙を引き連れてその場を後にした。

彼らの背中は野次馬の中に消えたのを確認するとその様子を見ていた勇儀が口を開いた。

 

「今回は弾幕勝負だ。その方がフェアだからな。もっとも、空が飛べないなら別だが。」

 

「その点はお構いなく。」

 

 椎唄は微笑んで身構えると神経を集中させ、息を整える。

これまで旅ばかりでなかなか実力を測る機会がなく、多い血の気も溜まりに溜まっていた。

身体にアドレナリンが巡っていくのを感じ、瞳を開けてふうと息を吐いた。

 

「自己紹介が遅れたね、私は星熊勇儀。あんたの名前は?」

 

「椎唄だ。椎唄玖力。しがない旅人ってところ。」

 

「へぇ、旅人かい。それじゃあ椎唄、始めようか!」

 

「ああ行くぜ!」

 

 お互いに頷くと共にその二つの陰は瞬く間に弾幕勝負の舞台の旧都上空に飛び上がっていった。




今回もご愛読ありがとうございました。
こんな作品を待って居る方がいるかはわかりませんが投稿が遅れて申し訳ございませんでした。
遅れている理由は書く時間が足りないらしいです・・・ネタはあるんですが。
それではつぎの話でまたお会いしましょう。
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