東方紅妖記   作:くるくる雛

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どうも皆さん紅妖記ではものすごくお久しぶりなくるくる雛です。
本編の前に色々いうのもあれなのでまずは本編からどうぞ!



第四編 下ノ二 戦い、終結

「童唄(わらべうた)”アンデルセンの白鳥の子”!」

 

 やけくそに剣をブンブンと振るとその軌道が光を帯びて形になり複数現れる。そしてその光は各々の速度を持って複雑な動きをした。速度の質をも操る彼ならではの芸に富んだスペルカードである。変則的で個々を避けるのは何ら苦ではないが凪いだ跡が飛ぶ故に横長になる。それが多少避けられる程度に調節は施されているものの、どの弾がどの速度で飛んでいるか、可変するか否かも鍋月は把握していない。

 そんな弾幕に空は僅かながら取り乱す。そのほつれから焦りは波のように押し寄せてきた。自慢の翼やマントを掠めながらも辛うじて避けている。

 

「えっ!ちょっ!」

 

「いい的だ。」

 

 にやりとしたり顔で鍋月は必中の一閃を放った。空は他の弾に錯乱しているようにもとれ、注意は逸れている。必中も時間の問題だった。

 しかし、ただで食らう空ではなかった。弾が干渉してとどめの一閃が打ち消されないように注意を引いていた弾幕に隙が空いた。その隙間に空は飛び込んだ。一閃は空の服の一部を切り裂くだけに止まり、鍋月は驚いた。

 

「もらったわ!未熟者!」

 

 思いっきり制御棒で鍋月を下に打ち下ろす。鍋月の杖は飛んで壁に突き刺さる。下はぐつぐつと煮えたぎる溶岩が支配している。沈めばコンティニューなしで即三途の川行きだろう。

 

「クッソ…!」

 

 直ちに姿勢を立て直し幸か不幸か全身を軽く炙られた程度で済んだ。それにしては右腕の感覚が生きていない。

 もしやと思い目をやると肩に切り口は火を噴いていて腕は既に持って行かれたようだ。あまりのことに痛みが追い付かなかった。その後耐えかねない程の痛みが一気になだれ込み、声にならない叫びを上げた。

 

「あ…」

 

 何処かやりすぎたといいたげに口から言葉が漏れる。空にとって腕が蒸発するのは想定外だったみたいだ。

 武器もなしに痛みにもがく鍋月は空にとって絶好の的だ。だが制御棒を下ろし、鍋月の杖を拾い上げた。疑問に思った鍋月は金網の足場の上で呼吸を半ば強引に整えて問いかけた。

 

「なぜ止めを刺さない。」

 

「久しぶりに体を動かすからね。楽しくなってきちゃった。ほら。」

 

情けがあってか鍋月の目の前に彼の杖が置かれる。

 

「二つに一つ、戦うか逃げるか。」それもそうだったと苦笑いしながら鍋月は振り返った。堂々と入る必要は無かった。さとりに頼んで奥までつれて来てもらえば腕ももがれることは無かったのだろうか。何にせよ、たらればは良くない。鍋月は言葉を進めた。

 

「同じ穴の狢って奴か?」

 

「そうなんじゃない?その言葉よくわからないから答えよう無いけど。」

 

「同じなら意見も理解できるだろう。お互いの次のスペルカードで最後にするという意見を。」

 

 空はやれやれと肩を竦めた。それでも相手の状況を見てなんとなしに長くはやり合えないなと判断してその要求を飲んだ。首を縦に振り言葉を連ねた。

 

「そうね。アンタが耐えしのぐことができたら勝ちでいいわ。準備は?」

 

「先手は譲る。」

 

 即ち臨戦態勢に入ったことを暗に示していた。空は理解しなかっただろうが先手ということで前座の弾幕を放った。それを鍋月は最小限の動きで避けていき、当たりそうなものだけを凪いで落とす。然る後に鍋月は一閃を飛ばし、それを間一髪空が避ける。しばらくこの一連の繰り返された。

 

「そろそろ本気でいくわ。出し惜しみは無しよ?」

 

「メインディッシュか…腕の見せ所だな。」

 

 再び心の奥底からサイレンの叫びがこみ上げてくるがそれを押し切り鍋月は己のスペルカードの準備を淡々と、驚くほど冷静に呼吸を整えていった。外の世界での僅かな予習が役に立ったと安心していた。

 空の制御棒に少しずつ光が集まってくる。しかも先程のニュークリアフュージョンとは桁違いな量だ。こりゃとんでもないのが来る。

 

「爆符”ペタフレア”!」

 

 すると爆発そのものが空の目の前に複数現れ、子弾を炸裂させてから鍋月の前に飛んでくる。しかし届く頃には小さくなってるあたりまだ良心的だ。だが何処かで覚えたのか時折熱線も繰り出すため、油断はならない。

 あぁ、この弾幕をもっと遠くから見れたら、どれほど綺麗に見えるのだろう。鍋月は何処かでそう思いながら避けて、身をひねり、周り、時折壁を蹴って避ける。気がつけば杖に緑色の光が溜まっていた。

 

「斬術”パーティクルリング”!」

 

 まずは大きな弾を五つ拡散させる、それを斬撃で切ると小さな輪の弾幕が爆発するように弾け飛ぶ。料理の微塵切りと輪切りを模したが、中々気に入っている。爆発のような光が空を隠しているため何処を狙えばいいのかは分からないが、広範囲にばらまく弾幕だ、どこかで当たる。あとは根比べだ。

 熱線、火球、子弾、その全てを全身を用いて紙一重でかわしていき、パーティクルリングを続ける。すると爆発の向こうから当たった感触があった。弾幕の奥にきゃっと聞こえたのだ。それを皮切りにペタフレアが止む。空が両手を広げて微笑んでいた。

 

「負けよ。私のね。」

 

 これで会える。その安堵が全身に巡ると緊張が操り人形の糸よろしくに切れ、足場に崩れ落ちる。

 

「終わったみたいだな。」

 

 丁度そのときに出入り口から椎唄が出てきた。全てを察したのか鍋月に近寄り右肩に早急な手当として簡素で人間の手そのものに近い義手とアダプターを作り出し、鍋月の肩に装着する。元々義手のアダプターに関しては考えてあったためかすぐにつけられた。何か埋まっているように見えるが、気のせいだろう。

 

「よく分かったな。腕が無くなっていること。」

 

「お前右利きなのに何故剣を左手に持つ。満身創痍じゃ見せる顔も無いだろう?あいつらにせよお前の姫さんにせよ。」

 

 その後から魔理沙、霊夢がさとりと燐とともに出てくる。そっちも終わったようだな。あとは…。

 

「案内してもらおうか。」

 

 空は頷いて答え、鍋月達を奥に連れて行った。

 体がやけに重くなるのを感じながら。

 

 

 

 その頃、灼熱地獄から外れた洞窟に作られた簡素な檻の中に咲夜と妖夢はいた。咲夜が聞いた話によると、空はただ主であるさとりの苦労を少しでも軽くしたかった。それに対してこいしの相手をしてるからいいじゃないのと燐に諫められたが、そうじゃなくてと首を振ったそうな。料理や家事といったほうのだろう。そこで白玉楼の庭師に教えを乞うが交渉が決裂、強引に地霊殿に連れてきたらしい。以降家事についてのレクチャーだのそのものも任された。待遇はなかなかだったが主のことが心配だったそうな。それからは咲夜の体験してきた通りだ。

 

「あの、もうそろそろ帰ってもいいんですよね?」

 

「この檻が破れるなら是非ともそうしたいわ。でもあの地獄烏、懇切丁寧に結界の札を貼ってるからそういうわけにもいけないわ。」

 

「そういえば、もうそろそろの刻だというのに、来ませんね。」

 

「寝坊したんじゃない?あの地獄烏のことよ。」

 

 そのとき、ぎぎぎと金属を軋ませながら扉が開けられる。いつもの地獄烏と化け猫か。それにしては色々と談笑が飛び交っている。

 出てきたのは先の二人に加えて霊夢と魔理沙、さとりに見慣れない青年に、鍋月だった。何もいわずに地獄烏は鍵を開けて札を懐にしまった。もう自由なのだ。

 

「空と燐はあとで説教よ。如何なる冗談も許しません。」

 

「はい…」

 

 青年はさとりが心を読む妖怪だと知ってか否か気の毒そうに眉をひそめた。幻想郷ではあまり見慣れない人であったが彼が鍋月の友人だろうか。

 それよりも鍋月もだがここまでの人数で地獄の奥底にまで足を運んだ

 

「貴方達がなぜここに?」

 

「その料理人の我が儘に付き合っただけよ。」

 

「私もな。」

 

 青年もこくりと頷いて答えた。鍋月がここまで来るとは思ってなかったようで暫く思考が止まった。

 

「さ、お嬢様が帰りを待っています。」

 

 鍋月は左手を差し伸べた。それもそうねと咲夜も手を伸ばし、檻の外に出る。家事やその他諸々の用以外で出るのは久しぶりだったのか、くうぅと背伸びをした。

 

「魂魄さんも。早く帰ってきてくれないと貴方の主のせいで紅魔の食料庫がいつ底をついてもおかしくないのです。なるべく早急に戻っていただけると幸いです。」

 

「はい!」

 

 鍋月の冗談で咲夜の後に続いてお辞儀の後に妖夢が出てくる。すると白楼剣と楼観剣を手にとり腰に携えるとほっと小さな胸をなでおろした。

 これで丸く収まった。顔に疲労が色濃く残っている鍋月は早く帰りたそうに見えた。

 

「さ、出ようか。さとりさん、ご迷惑をお掛けしました。」

 

「こちらこそ、いずれ謝罪に向かうから、またその時に会いましょう?くれぐれも…」

 

 さとりの瞳は鍋月の奥底に何かを見たのか口を慎み一礼した。いずれ聞く必要があるわ…。

 

「さて、地上に帰ろう。」

 

 一同タイミングはバラバラであれど口を揃えて頷いた。その後灼熱の洞窟、地霊殿を通り地上を目指した。




今回もお読みいただきありがとうございました。
まさかの主人公がいきなり片腕になってしまいましたね。
そしてそれを読んでいた椎唄…まさか先読みの能力が!?
まぁ、そんな変な考察はおいといて…また次回!
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