東方紅妖記   作:くるくる雛

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皆さんおひさしぶりですくるくる雛です。
少し日数が空きましたが再開です。
それではおひさしぶりな第三篇どうぞ!


第三編 上 出発準備

 咲夜が妖夢探索に出て三日、たが何の連絡もなくまた帰ってくる気配もない。

晴れ晴れとした青空を望む昼下がりのベランダで鍋月はレミリアのティータイムについていた。

咲夜が不在の時は鍋月か美鈴かのどちらかが側にいるのだが美鈴は門番の仕事をしており、咲夜の影が現れるのを待つためここ最近は鍋月がついている。

茶菓子のチーズケーキを差し出すと鍋月は視線を門に向けたまま話を持ちかける。

 

「中々帰ってきませんね。」

 

「きっと情報が少ないのよ。それに一気に嗅ぎまわるのは命取りだから。」

 

 まだ大丈夫と婉曲的に思わせる口ぶりでレミリアは鍋月に言い聞かせた。

確かに鍋月は以前に椎唄との会話で敵の情報収集をする上での心構えを言い聞かされたのを思い出しなるほどと頷くがそれだけでは払拭しきれず、レミリアに向かって言った。

 

「それでも心配なものは心配です。いざという時は私が出ます。」

 

 レミリアはやっぱりねと分かり切っていたように微笑み、ティーカップを下ろす。

その様子に緊張感さえ醸し出し、次に来るのはきっと痛い質問だろうなと腹を括った。

それはレミリアが口を開いたのと同時であった。

 

「でもその間の家事はどうするの?それとあなたまで行けばフランが心配するわ。」

 

「妖精メイドがいますので家事に関しては問題ありません。彼女たちの指揮を美鈴にやってもらうことになりますが。フランちゃ…フラン様に関してはまだ、」

 

 案の定手痛い質問をされ紅茶を丁寧に注ぎながら言葉に詰まる鍋月にレミリアはやっぱりねと微笑み紅茶の入ったティーカップを受け取る。

 

「やっぱりまだまだだったわね。優秀な部下はできることにはイエスと、できないことにはノー、聞きたいことがあれば引き留めて質問する。そこができてなかったわね。」

 

「つまり?」

 

 頭からクエスチョンマークを乱発している鍋月をレミリアは紅茶を上品にすすり、ふぅと息を吐いて答えた。

 

「もっと私を頼りなさいと言っているの。あの子のことは任せて。」

 

 分かりやすく分解されたレミリアの言葉はその言葉の真意も頭に入ってきて、それは鍋月自身が自分に科していた過剰な我慢の足枷を砕いた。

 

「お嬢様、ありがとうございます。」

 

「別にいいわよ、それよりもティータイムは終わりよ。渡したいものがあるから片づけたら図書館に来て。」

 

 そう言ってティーカップを置きレミリアは館内へと姿を消した。

鍋月はそれを見送ると食器をカートに載せ片づけの準備を始めつつ空を眺め咲夜の安全を密かに願った。

 

 

 

 

 

 片づけを終えると鍋月は先日のフランとの鬼ごっこの一件いらい触れなかった大きなドアを軋ませて図書室に踏み入った。

図書室に入り少し奥に進むと暇そうに魔導書に目を通すパチュリーを見つけた。

視線こそ魔導書にいっているものの時折こっちに向けてくる。

 

「レミィに呼ばれて?」

 

「はい。お嬢様はどこに?」

 

「案内するわ、付いてきて。」

 

 魔導書を閉じると近くにいた小悪魔に魔導書を渡し直しておくように指示すると指で鍋月についてくるように言い先導していく。

その態度には興味がないというか何の感情も混ざっていないように思える。

そのことに恐怖感を覚え、息が詰まるような緊張感を持ってしまう。

あまり足を踏み入れない鍋月にとって図書室は新鮮で不気味な雰囲気を感じるものであったが不思議と長く居れる気さえした。

 

「そういえば咲夜はまだ帰ってこないの?」

 

 横目でパチュリーは問いかけてくる。

料理関連の本がないかと周りを見ていた鍋月はこくりと頷いて口を開く。

 

「はい、まだですね」

 

 パチュリーは苦虫を噛んだような顔をするもそれを鍋月に見せようとはせず部屋に入る。

部屋はまるで外の世界の人間が抱いている中世の魔術師の部屋のイメージをそのまま具現化したような雰囲気と小道具の配置であった。

その部屋の椅子に腰かけていたレミリアは立ち上がり口を開いた。

 

「ようやく来たわね。待ってたわ。さて早速だけどほんだいに入りましょ?パチェ。」

 

「分かってるわ。」

 

 するとパチュリーは鍋月の左斜め後ろの壁にかけてあった鞘に収まった両手剣をひょいと手に取りレミリアの隣に持って行った。

両手剣の透明な鍔の中妖しく仄かに緑の光を放つ煙が封じ込められていた。

レミリアはそれを横目に鍋月に今回の本題を告げた。

 

「鍋月、あなたにこの剣を贈るわ。」

 

「私にですか?」

 

「そ、あなたに。」

 

 全くもって訳が分からなかった。

確かに女性を守るためならいかなる犠牲も厭わないが、料理人が人を喜ばせる物を作りだす手を人の血に染めることは抵抗もあり、助けられた側にとっても心地の悪いものになりかねないと捉えていて、首を傾げた。

するとレミリアは貸してと言わんばかりにパチュリーから剣を取り、お世辞にも華美とは言えない質素な鞘を抜きその両手剣の刃を曝した。

両手剣には切っ先もなければ刃もなく、ただ刀の峰のような平らなものがあるだけで本当に剣として通用するのかと疑問に思った。

 

「この剣は、鍔に封じ込められている魔法で戦うの。」

 

「魔法?」

 

「そうよ。力任せに振るんじゃなくて魔法を力にするの。」

 

 なんとなく言わんとしていることを鍋月は把握したようだが疑問は残るばかりである。

それをまぁ聞いてなさいと目で制し口を開く。

 

「使う魔法の種類によって効果が変わってくるの。たとえば相手の弾幕を切ったり剣を振る速さそのものを底上げしたりね。つまり、血を流すことなく相手を無力化することができるの。あなた好みに仕上げておいてもらったわ。後は使い方を学ぶだけよ。」

 

 その言葉にパチュリーに視線を送ると”夜食作ってくれたお礼よ”と一人呟いていたのを聞いた。

レミリアは鞘に刀身を納めると口を開き、鍋月の前に来て両手剣を差し出す。

 

「あと四日したら鍋月にも妖夢探しに出てもらうわ。咲夜のこともお願いね。」

 

 鍋月は固まった表情で頷いてレミリアが抱えるように持っていた両手剣を受け取った。

鞘もあってか恐らく常人が振っても振り回される側になるだけの重さを誇っていた。

 

「さて、話を通して来ないと。」

 

 鍋月に剣を渡すとレミリアは早足にその場から去っていった。

その背中をパチュリーと鍋月は訝しげに見て物の見事にシンクロした首の傾げ方をした。




いつも後書きまで呼んでいただきありがとうございます。
ついに鍋月の武器が判明しました!
お察しの方もいましたでしょうがこの剣、昔レミリアに挑んできた者が使っていた剣です。
挑んだ人は何故これで勝てると思ったのでしょうか?それほど腕自慢だったのでしょうか?
まぁ今の所書く予定はありませんが。
それと第三篇は長くなる予定ですので、しばらく更新が続くと思います。
それでは皆様、感想・誤字脱字の指摘・等々ございましたら感想欄でお願いします。
ではまた次回に。
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