知らない方がいい秘密もあるよね。
俺の名は鈴木優
どこにでもいる平凡な高校生だ。
学年順位は真ん中、運動能力はそこそこ、部活はサッカー部でレギュラー入りできるか出来ないかくらいで、絵がまぁまぁ描ける平凡な男だ。
そんなうちの高校に、あるお嬢様と呼ばれている女の人がいる。
なんとも財閥の娘らしく、お高く止まり、金で物を言わせるやべえ女とかではなく、皆んなから愛されており、特に僻みもなくうちの女子高生や男子高校生で知らないやつ嫌いな奴はまずいないため、学園のアイドルとなっていた。
さらにうちの高校の制服パンフレットの表紙になったため、うちの高校のパンフレットを欲しいと大量に来たそうだ。
彼女は運動能力もいいし、勉強も出来てさらに教えてくれたり、そして察せるだろうが、めちゃくちゃ美人だ。ぶっちゃけ女優と言ってもわからないくらいの美人だ。
そんなアニメや映画に出てきそうな嘘みたいな存在である彼女は、何故か
毎日、俺と一緒に帰宅する。
そう、何故か俺と一緒に帰宅しているのだ。
ぶっちゃけ、不審者とかやべえ人とか来ても俺対処出来ねえし…
普通にお嬢様らしく車とかに乗って帰ってほしいっす…
と一応本人に伝えたのだが
「父から、普通の人の帰宅方法を知れ。
と言われてますのでお気になさらず。」
そう言って否定されたのだ…
正直、俺より強いし格闘技なんか段持ちで相当強いらしい。
いやなんかさ…男なら女の子を守りたいじゃん…男として…
俺普通にちょっと可愛い系の女の子と付き合ってその帰宅デートとかしたかったんだが…
まさかこんな可愛い人と帰宅するっていつ誰が思えるんだよ…
かれこれ数ヶ月経ってるけど…めっちゃ俺のことジロジロ見てくるんだよ…いや俺なんか見ても得なんかねえし…
それで誰でも勘違いするやん?もしかして俺のこと好きって
まあ聞けないんすけどね!あははは!
俺は彼女とまともに会話することができない…だってこんな美人相手にしたら誰でもすくむだろ…いまだに目も合わせられん…
彼女が気を使って話しかけてくれてるんだけど、俺の返事はうっ…か、あっ…か、ソウッスネ…としか言えねえんだよ…
告白なんてもっての外だわ…割と普通にコミュ力ある方なんだけどな…
そんなこんなで彼女と奇妙な関係は続いているが、周りの視線が完全に死線なのは気にしないでおこう。
そして、いつもの帰宅通路が別れ、彼女は 「では。」
と言うとトコトコと帰ってしまった。
…誰か教えてくれ…
可愛い女の子に対するイケメン対処法を…
俺こんなの続いたらSAN値が減り続けて死んでしまうよ…
えっ?俺は彼女のこと好きかって?
まぁ、可愛いし当たり前だろ
けどラブじゃなくてライクかな。
ちょっと俺には高嶺の花すぎるわ。
はっはっは
というか俺彼女に感謝しないといけないんだけど…また今度言えるかな…いや絶対言わないといけない秘密があるんだけど…
どうしよ…
*
「…チッ…写真や防犯カメラ…学校生活の風景も分かっているのに何故コイツの弱点や秘密がわからない…」
そう彼女が呟くと、爪をかじりながらモニターを確認する。
彼女が何故
彼、鈴木優という平凡男と帰宅を共にしてるかというと彼を知りたいから?…それとも好きだから?
どれも違う
そうそれは、殺人だ。殺すためである。
ただ殺人ではなく、精神的にダメージを喰らわせ自殺させると言った
かなりゲスな方法で殺そうとしていた。
何故彼女が、彼を殺そうと思った理由は単純に目障りといった理不尽なものではない。
普通に見られたからである。
彼女の秘密を
というのも、彼女小さい頃から厳しい英才教育を受け真面目に勉強や習い事をきちんとやっていた反動からか、
誰もいない所の公共の場でオ◯ニーをすると言った狂った行動をしており、最初はまだ何かと誰にも見られない場所でやっていたがなにを血迷ったのか教室でやり始めるというバカなマネをしていた所、彼、鈴木優に見つかってしまうといったことが起きていた。
ただ彼が発した最初の一言
「綺麗だ…」
と言うと、動揺したものの彼女はすぐに彼を気絶、記憶が無くなる催眠術をする為麻酔を打ち、催眠術師に記憶を消してもらった為、彼には記憶が存在せず、いきなり美少女と帰宅すると言った本人にとってはよくわからない状況が起こっていた。
だが、彼女は一刻も早か安心したい為彼の秘密を知りなんとか自殺させるというゲスなことを考え、今に至る。
だが、彼の秘密というのは一向に表れず彼女にとって、ただただ平凡で目を合わせず話もできないつまらない男と言った印象でしかなかった。
「はぁ…なにやってるんだろ…私…
こいつはなんか放っておいてもいいような気がするわ…記憶消してるし…無害そうだし…」
そうモニターを見ていると、彼がお婆ちゃんの荷物を持ち一緒に渡る姿が目に映る。
ただ、悪い奴ではないのだ、むしろいい奴でしかなかった。
そう数ヶ月間見ていて思ったことがそれだった。
「殺すのは可哀想かな…でも不安要素は潰しておきたいし…
んー…あっそうだ!」
そう考えていると、何かを思いついたのか顔をハッと見上げる。
そして明日、放課後に彼を呼び出そうと考えていた。
*
「あの…俺なんで呼ばれたんですか…?」
と困惑気味で放課後、校舎裏に呼び出された鈴木優は内心心臓バックバクで、今から告白されるのではないかと興奮していた。
そんな彼を背に、くるりと回転し「鈴木くん」と彼女は名前を呼ぶ。
「あのさ…」
「ハヒ…」
「気を悪くしたら申し訳ないんだけどね…」
「はっは…!」
「鈴木君の秘密教えてくれないかな?」
「…はい?」
「あーごめんね!いきなりすぎるもんね!
えとね…そうだなぁ…ほら…その…き…な人の秘密を知りたい…んだよね…」
「…はい?!」
「あーごめんなさい!なんでもないの!えへへ」
こっこれはまさか本当にあの彼女が俺のことを好きなのか…!?
とボルテージMAXになっていた鈴木は、興奮しまくっていた。
「それでね…鈴木君の秘密を知りたいんだけど…」
「…あの…ほ…すひません…知ってどうするんですか…?」
「えっ?いやぁあはは…うーん…考えてなかった!
でも、君のことをもっと知りたいなって」
「…なるほどぉ…」
そう納得すると、彼女は内心ガッツポーズをしていた。
そして、鈴木はむむむと考えた後彼女の目を見て質問に答える。
「俺の秘密でしたね…
わかりました。今まで秘密にしていたことを話します。」
「…」
「正直に言います。俺実は…」
「…」
「貴方のオナニー姿をモデルにして同人誌を書いてネットに掲載しました。」
「は?」
「それが好評で今度漫画化も決定して…」
「は?」
「だから貴方には感謝しきれない…本当に感謝してます!」
「は?」
「だから…その…お礼言いそびれてて…
ありがとうございました!」
「殺す」
その後、2人は追ったり追われたりと妙な関係を築いていったという。