【カオ転三次】地方神ガチ勢と化した俺たちの話 作:一般俺たち
「あー、父上だいすきー……」
おっと、つい心の声が。
どうもこんにちは、狐巫女です。父上から灰谷葵という名を頂いていたのですが、なんやかんや狐巫女の方が馴染みがよくなってしまいました。
……私は一体誰に自己紹介を? まあいいでしょう。今は父上の話です。
あー、父上……。大好きです父上……。父上はどうしてあんなにカッコいいんでしょうか……。見た目もアイドルですら霞むほどイケメンですし*1、溢れるMAGも暖かくて私好みですし、愛情深くて私の事も愛してくれるし……。
娘である私が、父上にガチ恋してしまっても仕方がありません。物心ついたときからあんな素晴らしい人が常に近くにいたら、男性観が破壊されて当然です。
私が父上の腕と内臓を元に構築されたシキガミなのが関係しているのでしょうか、近くにいるだけで凄く落ち着くんですよね……。傍にいる事が自然なように感じるというか……。
まずいですね。父上の事を考えていたら昂ぶってきました。
「んっ……父上、父上ぇ……っ!」
私は母上のようなチャランポランとは違って慎み深い淑女なので、私が今何をしているかなんて説明しませんよ。ヒントを出すならば、今私の手は下腹部に伸びています。
ああ、父上……。貴方がニコニコ笑って私の頭を撫でるたびに、いったい私がどれだけの劣情を抑え込んでいるか……! 父上も17歳になって、身体が出来上がり始めました。その雄の匂いを嗅ぐだけでクラクラして、もう見ているだけで脳がゆで上がりそうになります。ゴツゴツした指が私の髪を滑るように撫でる感触が、ああ、もう本当にたまりません。あの指で私のもっと違う所を撫でて欲しいです。
あっ、ヤバい、父上の妄想をしていたらもう限界です。せっかく今日は父上の肌着を手に入れたのから、もう少し楽しみたかったのに。ああ、父上、父上っ……!
「……ふう……」
落ち着きました。
人は何故争うのでしょうか。地球とは、宇宙とは……。
びちゃびちゃになったタオルやシーツを片付け、布団にゴロリと寝転がります。
「父上……父上はどうしてあんな色ボケ狐に夢中なのですか……」
色ボケ狐、言うまでもなく母上の事です。一応私の本霊という事になっている、あの見た目だけなら悪女っぽいけど中身はポンコツの狐。彼女が父上の寵愛を独占している現状は、全くもって世の中の摂理に反しているとしか言えません。父上は私とガチ近親相姦キメる方が良いに決まっていますのに。
いえ、母上の事もちゃんと愛しているんですけどね。なんだかんだ非常に可愛げのある、親しみやすい方ですし。ただそれと同時に、同じ男を奪い合う恋敵でもあるというか……。ぶっちゃけ本妻の座をバリバリに狙っているので、どうしても心の中でライバル視してしまうと言いますか……。
最近は私への疑いも強くなってきて、この間はとうとう父上と一緒にお風呂に入ることを禁止されてしまいました。なんて事でしょう。あそこで目に焼き付けた父上の姿を思い出しながら禊(隠語)をするのが日課になっていたというのに……。それでいて自分は恥ずかしがって父上と一緒に入浴しないってんですから、何がしたいんだこの狐はとキレそうになります。貴重な父上の入浴シーンがいたずらに浪費されていくのですよ。
あの狐は一度、独占禁止法というものについて学び直す必要があるでしょう。
「……どうしましょう、もう一回したくなってきました」
母上の隙をついて何とかくすねた、父上のシャツ。父上の匂いが染みついていて、嗅いでいるだけで脳内麻薬の分泌が止まりません。体の奥がズクズクと疼いてきます。魂がこの匂いの主にガチ恋してしまっています。これは二回目の禊、突入してしまっていいのではないでしょうか。いや、流石に色ボケしすぎでしょうか。しかしこの匂いも時間と共に薄れていってしまうと思うと……。
「……………………」
ふう。
私がはたして二回目の禊をしたのかしてないのか、私は何も言いませんよ。観測されない限り、箱の中身は未確定なままですから。シュレディンガーの狐なのです。
布団に寝転がりながら、父上のシャツを嗅ぎます。嗅いでいるだけでムラムラしてくるそれを、力いっぱい抱きしめます。
「父上、好きです……父上が大好きです……父上の寵愛が欲しいです……」
シャツを抱きしめて思いを囁いても、何も返事は帰ってきません。虚しいです。
こんな風に自らを慰めるだけの生活はいい加減飽き飽きです。私の身体もまた疼いてきました。父上に触れてもらえない火照りをずっと持て余しています。正直今すぐにでも夜這いブチかましたい気分です。シキガミは主人と性交する事で強くなることができるので、これは戦力強化的側面から言っても妥当な理由じゃないでしょうか。
「……くそう……あの色ボケ狐め……」
あれだけ父上に愛されていながら、未だ性交の一つもしやがらないなんて信じられません。私なら父上から告白されたその瞬間に押し倒してます。父上が未だ童貞というのも信じられません。世界の損失では無いですか? ここにいますよ、いつでも父上を受け入れる覚悟の愛娘がここに一人。
思えば哀れなものです。母上が独占欲の固まりなせいで、私は渇いた体を一人持て余すばかり。まあ私も父上に私以外の女を見て欲しくないですが、それはそれとして母上には娘にパパをお裾分けする度量を見せて欲しいものです。母娘で仲良くパパと仲良し(意味深)する、これが新世代の家庭の形ではないですか?
「神話的に言えばセーフ、神話的観点から言えばセーフなので……」
私は悪魔なので、人間の倫理とかそういう物とは無関係なところにいます。だから父上は安心して、その劣情を私にぶつけてきて良いのですよ。
……そういえば、父上はどうやって性欲を発散しているのでしょうか?
「………!!!!!!」
その時、狐巫女に電流走る……! です。
どうしてこんな簡単な事に気が付かなかったのでしょう。父上は現在17歳、思春期真っ盛りの年齢です。この前ガイア連合のシキガミさんとお話した時も、その年頃の男はほとんど猿同然であるとおっしゃっていました。父上も、その内側で猛り狂うリビドーを持て余しているに違いありません。
……いや、しかし……これは……どうでしょう……。分かりません。
父上のゴミ箱を漁るって、割と人としてギリギリではないでしょうか。
いや、私は人じゃなくて悪魔なんですけど……! そうじゃなくて、なんかもうそれをしたら取り返しがつかなくなる気がするというか、真っ当なヒロインルートから外れてしまう気がするというか……! しかし正直言うとメチャクチャ欲しいです……!
あああ……こんな事なら気付かなければよかったです……これは悪魔のひらめきです。ダイナマイトを発明したノーベルも、きっとこんな気持ちだったんでしょうか。
「ぐうううう………ぐぁああああああ……!」
深夜2時まで、私は悩みに悩み抜いて、結局このアイディアを忘れる事にしました。悪魔としても超えちゃいけないラインがあると感じたからです。私は父上にふさわしい淑女ですから。
今となっては愚かにもほどがある考えです。そんな事をする奴がいるわけ無いじゃないですか。あまりにも道を踏み外しています。変態ですよ変態。父上が私のゴミ箱を漁ってたら超嬉しいですけど、私がやるのはちょっと違いますね。
……後日、地方霊能家はマジでそういう事をやると知ってかなり引きました。やっぱり人間が一番怖いですね。
「【トラフーリ】」
この前覚えた、テレポートの魔法です。この魔法が、母上が新たな拠点を作る決意をした理由の一つですね。いつでも星霊神社と行き来できるようになったので。ちなみに、星霊神社一帯へのテレポートは厳密に管理されており、私も誓約書を何枚も書かされました。
呪文を唱え終わると、一瞬で目の前の景色が切り替わります。
今までの牧歌的な繁華街から、どこか破滅的な怪しさを漂わせる異界の森林へ。
「ふう。ここからまた長いんですよねー……」
今の私は父上の名代、ガイア連合幹部である【炎心】灰谷蓮の意を汲んだシキガミとして来ています。私たちシキガミは主に絶対の忠誠を誓っているうえに【洗脳】や【運命改変】への耐性が完璧なので、こうやってシキガミが主人の代わりに外交や交渉を行うのはよくある事なのです。
あ、ちなみに【炎心】というのは私が勝手につけた父上の二つ名です。父上の得意魔法と、どんな困難にも負けない父上の心の強さを表した素晴らしい名前です。何を隠そう、私はこういうセンスに関しては中々の物なのですよね。父上の二つ名は掲示板でも好評ですし、他のシキガミが主人に二つ名を付けたい時の相談に乗ったりもしているのです。
なぜかその主人たちは恥ずかしがっていたそうですが。何故でしょう? 【
「ええと、おばあちゃんの家はこの辺りだったはず……ああ、ありました。おじゃましまーす」
「もう。おばあちゃんって言うのはやめてくださらないかしら?」
竹林の奥にある庵に入ると、着物から乳を放りだした妙齢の女性が出迎えてくれました。九尾の狐、【白面金毛九尾狐】です。母上の本霊、つまり母上の母上なので私からすればおばあちゃんにあたりますね。
「今日は【ガイア連合】のお仕事で来たの? それともただの孫娘として?」
「お仕事のほうです。おばあちゃん、お仕事がもっと欲しいって言ってたので、融通しに来ました」
私たち家族は、【ガイア連合幹部】としての仕事を三つに分け合っています。ガイア連合幹部の仕事は一人で背負うのは重すぎますし、私たちはそれぞれに得意分野が違ったので。他の幹部の方々も、仲間やシキガミに仕事を代行させているのは珍しくありません。
まず、人間かつガイア連合の正式な幹部である父上は、ガイア連合からの依頼の調整やガイア連合員からの要望の処理を担当。「日本神にここの異界を守護して欲しい」「こういう加護をこちらは求めている」「もっとSっ気が強い姿に変身して欲しい」など、大小さまざまな要望を調整しつつ、時には自ら【ヒノエ米を手本とした、大規模な異界開発によるアイテム・食料生産の効率化】などプロジェクトを立ち上げています。
また、人間の欲と神の性質、その両方に精通している母上は、日本神tuberたちのプロデューサー。配信を通じた大規模な信者集めに加え、本格的な信徒になりたいと望む者は個別に日本神への顔つなぎを行ったりと、かなり手広く行っているそうです。今は定期的にライブを開催する事で、ガイア連合員と日本神の距離をグッと縮める計画を立てています。
そして絶対的な【洗脳】【運命改変】への耐性を持ち、ガイア連合の人造悪魔である私は、日本神からの要望の処理を担当しています。「あの神よりいい霊地を融通してほしい」「ガイア連合からの【依頼】に不満がある」「信徒とトラブルが起きた」などなど、好き勝手に主張する彼らの要望を取りまとめ、叶えたり叶えられなかったり、ガイア連合へ伝えたり伝えなかったりするお仕事です。
このように三人で分担しているお陰で、今のところは誰も仕事に押しつぶされず、十分に【異界攻略】や家族団らんの時間を確保できています。毎晩、三人そろって母上のご飯を食べるのは、私にとってもかけがえのない時間ですから。
「あら、ありがとう。呪符とかは全部分身でやってしまえるから、もうちょっと高度な仕事が欲しかったのよ」
「分身……そういえば、母上も同じことをしてましたね。なるほど、貴女由来だったんですか」
「多分そうじゃないかしら? 昔からこういう術は得意なのよね。狐は豊穣、多産のシンボルだもの。商売もそうだけど、私たちはたぶん、何かを【増やす】事がすごく好きな生き物なのね。それで、お仕事って?」
「あ、そうでした。ええと、今は【多神連合】の完全壊滅に伴って他神話勢力の流入が止まらないので、悪意ある者を弾くための結界と、受け入れられた者たち向けの異界はいくらあってもいい状況です。おばあちゃんは【九尾狐】なので、私としてはこっちの結界作製が向いてるかなって――」
侵入方法を知り尽くしている泥棒は、転じて良い警察にもなります。FBIにおいても、セキュリティに精通したハッカーを雇い入れる事がよくあるそうです。
彼女は一度国を滅ぼした傾国の怪物、かの有名な【九尾狐】ですから。籠絡や策謀、ありとあらゆる悪意のスペシャリストです。彼女が作る結界は、どんな悪人も通さないでしょう。彼女が一番の悪人なんですから。
高度な結界作製の仕事と、現在同じ仕事に従事している者へのレクチャー。この仕事は彼女のお眼鏡にかなったそうで、おばあちゃんは嬉しそうな顔をしていました。報酬もいいですもんね。
「……それにしても、あの娘があんなにいい男を捕まえるなんて。ほんの欠片程度の霊能しか与えてない、吹けば飛ぶような小さな分霊だったのに。子供の成長って分からないものね」
仕事の話が終わったので、小さなちゃぶ台を囲んでおやつタイムです。今日の御茶菓子はガイア連合特製のかりんとう。この黒糖がかかって艶めいたフォルム、なんともエッチです。
「もぐもぐ……。母上はきっと、おばあちゃんから【運】だけは受け継いだんですねえ。母上と父上の馴れ初め、正直かなり天文学的確率によるものだったと思いますし」
攫った子供にたまたま霊能の才があった程度なら、まだ納得できるくらいですけど。その子供の才能が世界でもトップクラスで、更に何故か攫ったはずの自分にベタ惚れしてくるまで重なると、もう理解できません。
ああ、父上……何かの間違いで、今からでも神隠ししたの私って事になりませんかね……。私を一途に愛してくれる父上、想像するだけで下腹部が熱くなってきます。
「うう、父上……どうすれば父上の寵愛を受けられるのでしょうか……」
「また灰谷くんの話? んー、でも確かにねー。娘と結婚したわけだから、私にとっては義理の息子にあたる訳じゃない? ああいう若い英雄の卵、私もすっごく好みなのよねー……義母の私にも手を出してくれないかしら?」
「娘にも手を出して欲しいです……」
「あら、うふふ。じゃあ母娘三代で親子丼ってこと? それってすっごく退廃的で私好みね」
そう言っておばあちゃんが楽しそうに笑います。傾国の美女と呼ばれるだけの事はありますね……今の笑い方はかなりエッチでした。未亡人の色気というものを感じます。私が精神攻撃への完全耐性を有していなかったら魅了されていたかもしれません。
「でも私、娘にはすっごく嫌われてるのよね。この前も本霊通信で『一回あなたの彼氏、味見させてくれない?』って聞いたらすごい剣幕で」
「おばあちゃんには夫がいたじゃないですか」
「ちょっと誑かしたらすぐ陰陽師けしかけてくる奴なんて嫌いだわ。もう千年以上前に死んでるし。はあ……夫を亡くした私に義息子を少し紹介してあげるくらい、娘ならしてくれないものかしら。ああいう芯が通った心の持ち主をドロドロにしてあげたいわ……」
「完全同意です。母親なら、娘とパパを分け合う度量の広さを持つべきです」
まあ私が母上の立場だったら絶対誰にも渡しませんけどね!
その後は「いつか使うかもしれないから」と房中術のレッスンをして終わりました。かなり勉強になりました。
いつかこれを父上相手に披露したいです……。