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雪山でアイヌの少女と軍帽を被った傷だらけの男が身を寄せ合っている。
「杉元…静かに…音を立てると逃げてしまう」
「アシㇼパさん俺が裏から回ってあいつを捕まえるよ」
「頼んだぞ、杉元」
少女が棒を力強く投げる。
「オラーッ!」
しかし兎は杉本の腕をすり抜け明後日の方向へ逃げていく。
「逃げられたッ」
「杉元ッ脳味噌が逃げるッ!!!」
「アシㇼパさんは先に小屋に戻っていてくれ。俺があいつを捕まえる」
「杉元、あっちの方は崖になっている所があるから気を付けて行け」
「分かった、すぐ戻る」
∶
∶
「あった足跡だ」
雪の上にある足跡を踏まないようにして歩いているとピョコンと先っぽが黒い耳が飛び出しているのが見えた。
「キィッ」
「あッ」
目があった瞬間兎は駆け出していく。
「まてコラッ!」
追いかけること数十分ついに兎は崖の先まで追い詰められる。
「ハァハァ…やっと追い詰めたぜ。観念して大人しく捕まるんだな」
「キィッ…キィッ…」
兎は真っ直ぐと杉元の目を見つめ哀しそうな顔を浮かべる。
「キイッ…」
「そんな目で見ないでくれよ…仕方ないだろ。お前をチタタㇷ゚にしないと俺がアシㇼパさんにチタタㇷ゚されちまう」
「キィ…キィ…」
「やめてよォ!!!そんな哀しそうな声で鳴くの!」
遂に兎は蹲りか細く鳴き始める。
「あぁ…もうわかったよ。アシㇼパさんには途中で見失ったて伝えとくよ…」
「キィッ?!キィッキィッ!!」
杉元が言ったことが伝わったのか兎は嬉しそうに辺りを飛び跳ねる。
杉元はしかたなそうに笑ってから
「次見つけたらとっ捕まえてからチタタㇷ゚にしてオハウにしちまうからな。もう見つかるんじゃないぞ」
そう言ってから杉元はもと来た道を引き返そうとするが兎は杉元から離れようとしない。
「コラコラ…さっき言ったろう。次あったらチタタㇷ゚だって。」
「キィ…」
「そんな悲しそうな顔したってダメッ!ほらもうあっち行った行った」
「キッ!!キィィ……」
「あぁ…ごめんよ驚かすつもりはなかったんだ」
「キィ…」
「ヨシッ!じゃあアシㇼパさんと合流する前までは一緒にいこうか」
「キイッ!」
「よ~し良い子だ。ほらおいで」
兎は杉元の服の中に入り込むと胸元からピョコンと耳を出す。
「確かアシㇼパさんは兎のことイセポって呼んでたな。じゃあイセ、イポ、セポちゃん、いや…違うな。インポ…インポちゃん、インポちゃんだ!!今日から君の名前はインポちゃんだ!!よろしくなッ」
「キィッ?!キ、キィッ!!キッ!!」
「そんなに嬉しかったのかい?気に入ってもらえたみたいで良かったよ。」
「キィィ……」
「杉元?お前遅いから心配して来てみればさっきからなにインポインポ言ってるんだ?」
「はッ」
恐る恐る振り返るとそこには大きな弓を持ち腰から山刀を下げたアシㇼパさんが…
「やあああぁ!!ち、違うんだアシㇼパさん!!この子は…この子は一緒に山を駆け回った親友なんだ!!もう名前も付けてるっ!!」
「なぁにを言ってるんだぁ?杉元ぉ?」
ジリジリとアシㇼパさんはにじり寄ってくる。その目には燃え盛る熱い食欲という炎が燃え盛っていた。
「待ってくれ…まだ、話もろくに出来ていないんだ!!」
「杉元どうした?捕まえたのなら早く小屋に戻ろう。私も早くその兎を食べたい」
「いやっ…そういうんじゃなくて。その今回は兎は無しってことには…」
「あっ、そういうことが杉元。仕方ないな〜コイツ〜」
「あぁ…やっと伝わったか。アシㇼパさん今回は申し訳ないけど、兎はなしってことでいい?」
アシㇼパは皆まで言うなと言わんばかりに片手で杉元の話を遮った。
「ほんとっゴメン。アシㇼパさんこの埋め合わせは必ずするから」
「いいんだ杉元。私も気配りが足りなかった、そうだなウンウン」
「アシㇼパさん…」
「脳味噌と目玉はお前にやる。獲ったものの特権だからな!!」
「えッ」
「キッ」
「いや〜ついに杉元が進んで脳味噌を食べたがるとは…感慨深いなぁ〜」
「やっ、違ッ、そうじゃなくて…」
「安心しろ〜杉元、最後はニリンソウと行者にんにくと一緒に刻んで骨まで丸ごとオハウコースだ!!!」
「いやあああッ!!」
「キィィィィッ!!」
具体的な調理法まで言われた杉元はインポちゃんを抱きかかえたまま後ずさる。
「おい杉元どこへ行くつもりだ?あまり崖の方に行くな。聞いているのか?」
守らなきゃ…俺がこの子をチタタㇷ゚の魔の手から守らなくては…。
あぁ…アシㇼパさんが俺とインポちゃんを見下してる。
あの目はチタタㇷ゚すると言ったら必ずチタタㇷ゚する目だ…。
あれ?何で俺より身長が低いアシㇼパさんが俺とインポちゃんを見下せているんだ…?
アシㇼパさん何でそんなに驚いているんだい?
「この阿呆ッ!!『雪庇』の上に立つな馬鹿たれッ!!」
「ん?え…うおおおおおお!!!」
「キィィィィ!!!」
アシㇼパさんとの距離がどんどん離れていく。
重心が保てなくなり吸い込まれるように転落していく。
畜生!!インポちゃんが…絶対に死なせねぇ…!!
『俺は不死身の杉元だッ!!!』
杉元がインポちゃんを抱きかかえると同時に北の大地の小さな川に大きな水飛沫が上がった。
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路地裏を銀髪の可愛らしい少女が歩いている。
その頭の上には熊の耳のようなものがついている。
少女が曲がり角を右に曲がるとずぶ濡れの男の体の上で白いウサギがあたりを見回していた。
「おじさん、そんなところで何してるの?」