オリジムシ・ヒンナヒンナ   作:ヤナ麻呂

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アニメ終わっちゃった…。


五話 龍門

「ここが龍門…」

 

きらびやかなネオン、そびえ立つ高層ビル群が杉元たちを出迎える。

杉元もミーシャも今までの疲れが吹き飛び興味津々であたりを見回す。

 

「次の人早くきてください」

 

龍門の入国管理官なのか角のようなものがついた黒いプロテクターを着た男に急かされてしまう。

 

「移住希望者ですね。スギモトサイチにミーシャ…確認しました。ようこそ龍門へ」

 

物々しい格好をしていた割にあっさりと入国することが出来た。

 

「まずは銀行で預けているお金を確認しようか」

 

マーシャに教えてもらった事を思い出しながら杉元は先に進む。

 

「ミーシャさんそれにしても高い建物ばかりだね…」

 

「えぇ…すごいわ」

 

杉元もミーシャも初めて見る高層ビル街に声が出ない。そうこうしているうちに目的の銀行に着く。指定された番号をミーシャに打ち込んで貰うと大きな機械音と紙が擦れる音と共に取り出し口が開く。

杉元とミーシャは辞書ぐらいの厚さのある青い紙の束を見て口をあんぐりと開ける。

 

「わぁ…ァ…スギモトさん…これ…」

 

ミーシャは龍門弊を両手でがっしりと掴んだままウロウロし始める。

 

「お、大金持ちってコト!!ミーシャさん誰かに見られると不味い!!隠して隠して!!」

 

数枚を取り出して残りは銀行に再び預けると杉元たちは逃げるようにその場から立ち去った。

 

先程の場所からある程度離れると大きな公園のような場所にたどり着く。ベンチを見つけ腰を掛けるとミーシャと杉元はくすくすと笑い出した。

 

「あんなにたくさんのお金持ったの初めてよ!!けっこう重いのね!!」

 

「ミーシャさんお金持ったままウロウロするから焦ったよ…」

 

当座の資金を手に入れ生活に余裕が見えたからかミーシャと杉元のお腹から音が鳴った。

 

「…そういえばオリジムシばっか食べてたよね…。」

 

「えぇ…オリ味噌焼き美味しかったけど当分食べたくないわ…。」

 

杉元は辺りを見渡すと少し離れた所に屋台のような物が停まっていることに気付いた。

 

「龍門名物魚の団子スープ…。ミーシャさん魚好き?」

 

「大好きよ…」

 

「じゃあ買ってくるよ。ミーシャさんはここで待っててね」

 

「そうさせてもらうわ…」

 

杉元は龍門弊を握りしめると屋台に向かって駆け出した。近づくにつれて魚と香辛料のいい香りが強くなってくる。

 

「すみませ〜ん。魚団子スープを2つください」

 

「へぃまいど。お客さん悪いけど今団子切らしちまってんで。急ぎで作るからちょっと時間食っちまうけどいいかい?」

 

目つきの悪いウルサスの青年はそう言うと器用に魚を捌き香辛料や薬味を混ぜ団子を作り始める。

 

「あぁ大丈夫だ」

 

「悪いねお客さん…」

 

喋りながらも慣れた手付きで団子をこしらえる青年を見て杉元が感心していると青年が口を開く。

 

「お客さんこの辺の人じゃないね。旅行かなんかかい?」

 

「よくわかったね。旅行ではないけどチェルノボーグって所から来たんだ。大変だったぜ。なんせ移動は歩きだからな」

 

「へぇ!そいつぁ凄いね。大変だったろ」

 

「あぁ…食糧はなくなるし、地図は失くすで本当に大変だったよ…」

 

「いやーお客さん凄いねぇ。よしッはい出来上がり。龍門名物魚団子のスープでごさいやす。待たせて悪かったね。あっちでウトウトしているお嬢さんの分もサービスしといたよ」

 

「有難く頂くよ。ありがとな店主さん」

 

「へぃ、またのお越しをお待ちしてやす」

 

杉元は屋台に背を向けるとミーシャの元へ戻る。すでにミーシャはウトウトと船を漕ぎ始めていた。

 

「ミーシャさん…スープ買ってきたけど今食べるかい?」

 

「ん…食べる」

 

ミーシャはスープを受け取るとゆっくりと食べ始めた。

 

「…暖かくて…美味しい…」

 

「あぁ…」

 

杉元もミーシャも隣り合って無言で食べ始める。

 

「…スギモトさん。これもヒンナ?」

 

「うん…ヒンナヒンナ」

 

「ヒンナ…うふふふ」

 

ミーシャのほうが先に食べ終わると連日の疲れにより限界が来たのか杉元の肩に頭をコトンッと乗せると寝始めてしまった。

 

「おやおや…」

 

杉元は食べ終わると空になった容器をゴミ箱に捨て、ミーシャを起こさないように静かにおぶって次の目的地に向かう。

 

「あんな大金や違う都市に家まで用意してあるなんて…ミーシャさんのお父さんは何者なんだ…?」

 

「ん?お父さんがどうしたの?」

 

「あぁ…ごめん起こしちゃったかい。いやミーシャさんのお父さんは何者なんだろうって…」

 

「…お父さん家ではあまり仕事のこと話したがらなかったからあまり良く知らないの…。科学者で何かすごいことを研究してたってことしか…」

 

「へぇ…」

 

「…スギモトさん。今日は疲れちゃったからこのまま寝てもいい?」

 

「うん、いいよ」

 

すると前から揃って同じ制服を着た若者がやってくる。

 

「学校かぁ…いいなぁ…」

 

そう言うとミーシャはまた夢の世界に戻っていった。

杉元はミーシャがチェルノボーグでは感染者の家族という理由で途中から学校に行けなくなったという話を思い出すと複雑な表情を浮かべた。

 

「(ミーシャさん学校行きたいのか…。まだ子供だもんなぁ。いつまでもマーシャさんのお金に頼り切りも良くないし、何か仕事を見つけて働かないと…)」

 

そうこうしている間に目的地にたどり着く。しかしそこには杉元とミーシャが住む予定だった家はなく瓦礫があたり一面に散らばっているだけだった。

 

「あれっ?」

 

杉元は地図を読み間違えたかともう一度確認する。しかし、何回見ても目的の家は瓦礫が散乱するこの場所であった。

 

「えぇ…?」

 

杉元が地図を持ったまま呆然としていると浮浪者のような老人が声をかけてきた。

 

「兄さん、あんたその家に用があるのかい?」

 

「おじいちゃん何か知ってるの?」

 

「気の毒になぁ…。つい三日前にこの辺りでマフィアと運送屋の間でドンパチしててね。制御を失ったマフィアの車がこの家に突っ込んで大爆発したんだ。いやぁ地面がこうズズズンッて揺れてなぁ、家は木っ端微塵よ」

 

「うそだろ…」

 

「兄ちゃんたちここに住む予定だったのかい?」

 

「あぁ…まずいな。いきなり家なしかよ…」

 

「兄ちゃん住むとこ困ってんなら災難だったな。今は年末年始の旅行シーズンだからどこも目ん玉飛び出るほど高いぞ」

 

「どうしよ…」

 

資金があるとはいえ後先考えずに使いたくない杉元は悩む。ミーシャに野宿をさせるわけにはいかないし…。そんな杉元の様子を見かねた老人が声をかける。

 

「あんた、もし困ってるなら儂の家に来るかい?背負ってる嬢ちゃんも風邪引いちまうよ」

 

「…いいのかい?正直助かるよ」

 

「あぁ五月蝿いのが三人いるけどもう遅いし寝てるじゃろ。ついてきな」

 

そう言うと老人はスイスイと路地裏に入っていってしまう。杉元は慌てで跡を追いかけると、

 

「俺は杉元、杉元佐一だ。おじいちゃんの名前は?」

 

「ワン、ただのワンじゃよ」

 

ある程度歩くと老人はドアを開けて中に入る。

 

「ここじゃよ」

 

老人の家はお世辞にも綺麗とは言えず、窓ガラスには日々が入り、所々トタンで補修してあった。

 

「…汚いところだけど外で寝るよりはマシだと思うんじゃな」

 

「泊めてくれるだけありがたいよ。それにしても龍門は世界一豊かで衣食住にはこまらないってきいていたが…」

 

「儂らは龍門の鼻摘み者よ。理想だらけの龍門の裏側がこのスラムじゃよ…」

 

「…大変だな」

 

「フンッ!!あんたに気を遣われんでもしっかり生きていけるわいっ!!」

 

「わかるよ…俺も食いもんが無くて猫と餌の取り合いしたことがあるから…」

 

「兄ちゃん猫と喧嘩して飯食ってたのか!!儂らよりヤバいじゃん!!まぁ今日はそこらへんで寝とけ…」

 

「ありがとう。そうするよ…」

 

ミーシャを寝かせ毛布をかけると杉元も横になった。

 

          ∶

          ∶

 

「キャー!!」

 

ミーシャの悲鳴で杉元は飛び起きる。敵襲と思い側に置いておいた小銃を掴むと着剣して悲鳴の聞こえた方へ走り出す。

そこで杉元の目に写ったのは三人の小さな子供とじゃれ合うミーシャの姿だった。

 

「あっスギモトさんおはよう!!ちょっとくすぐらないで!!とりゃ!!」

 

拍子抜けした杉元はすぐ小銃を背中に隠すとほっと一息ついた。

するとくたびれた熊の縫いぐるみを持った小さな女の子が駆け寄ってくる。

 

「私ニーナ!この子はアイナって言うの。おじさんだぁれ?」

 

「ニーナちゃんって言うのかい。お兄さんは杉元佐一って言うんだ。」

 

「おじさん傷すごいね!!頭のツルツルしたの触っていい?」

 

「変な汁出てくるよ?」

 

「えーうそー!!」

 

杉元はニーナを抱っこすると残りの二人を見る。

 

「そっちの二人は…」

 

「俺の名前はレオだ!!ミーシャ姉ちゃんは特別だけどオッサンは俺より後に来たから俺のコーハイだからな!!」

 

「こらっレオ!!私はメアリーって言います。よろしくおねがいします。」

 

皆元気でいいなと思った杉元は優しげな笑みを浮かべる。

 

「うふふふふっ」

 

「「ヒッ!!!」」

 

効果はバツグンだった。

杉元がしょんぼりしていると奥から王が出てくる。

 

「兄ちゃん来たばっかで悪いけどうちは基本的には働かざる者食うべからずだからな。幸いここでは仕事にゃ困らねぇ。兄ちゃん強そうだから要人警護とか傭兵とかで探してみたらいいんじゃないかな?」

 

「はぁい…」

 

そう言うと杉元はトボトボと家を出る。

 

「(日雇いでもなんでもいいから何か仕事見つけないと…)」

 

杉元がスラム街をぶらぶらしていると突如機関銃の短い射撃音が響く。射撃音はかなり近くどんどんこちらに近づいてきているようだ。

杉元は肩から小銃を降ろすと体を低くして辺りを警戒する。

すると黒いトレンチコートを着た二人組が我先に路地裏から抜け出そうとして杉元の方に近づいてくる。やがて先頭の男が杉元と杉元が持っている小銃に気づくと顔を青くして

 

「げぇ!!!あいつもサンクタだぁ!!」

 

二人組は覚悟を決め懐からナイフを抜くと杉元に踊りかかった。

 

「ちょっとちょっと…」

 

いきなり襲われた杉元は男たちを落ち着かせようとするが男たちは止まりそうにない。

仕方ないので杉元は腰を低くして相手の懐に飛び込むと銃床で鳩尾を殴りつける。その勢いのまま二人目の男の股間に爪先をめり込ませると男は口から泡を吹きながら倒れた。

 

「何だコイツら…」

 

杉元は地面でもがいている男たちが持っていた銀色のアタッシュケースを拾うと辺りを見回す。

 

「すご〜い!!お兄さん強いね!!」

 

声が聞こえた方を見ると短機関銃を持った緋色の髪の天使が杉元を建物の上から見下ろしていた。

杉元は安全子を解除するとそっと銃口をその天使に向けた。

 

 




杉元「As easy as pie !!」
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