オリジムシ・ヒンナヒンナ   作:ヤナ麻呂

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カモネのイメージは透き通ってない世界観で送る男になった陸8魔アルって感じです。


八話 嵐の前に

杉元を押し退けワンはバタバタと出口へ向かう。

 

「ワンさん!!あんたどこに行くんだ!!」

 

「医者を呼んでくる。兄ちゃんはそこでミーシャの樣子を見とれ!!」

 

「あぁ!!頼むぜじいさん!!」

 

「おうよ!!すぐ戻る!!」

 

 そう言うと二人はそれぞれ反対方向に駆け出していく。

 

「ミーシャさん!!」

 

 部屋に入った杉元が見たのは仰向けに寝かされているミーシャの姿だった。急いでミーシャの元へ向かうと大きな声でミーシャの名前を呼び始める。

 

「おいッ!!ミーシャさん!!クソっ!!ミーシャさんはいつ倒れたんだ!!」

 

 焦る気持ちを抑えつつずっとミーシャの側で涙を流していたニーナに質問する。

 ニーナは鼻をすすりながら

 

「ミーシャのお姉ちゃん…スギモトのおじさんが返ってくるからっていろいろお仕事してて…。でも早く終わっちゃったからあたしと遊んでてくれたの…。あたしのクマのお人形さんを直してくれたり…。そしたらいきなり倒れて…。」

 

 そこまで言うとニーナは再び涙を流し始める。

 

「ニーナちゃん。ミーシャさんのこと見ててくれてありがとな…。」

 

 その言葉にニーナはコクコクと頷いた。すると突然ドアが開き黄ばんだ白衣の男に引きずられるようにしてワンが入ってくる。

 

「患者はッ!!」

 

「ここだ!!早く来てくれ!!」

 

 男は古ぼけた革の鞄をミーシャの側に置くとテキパキと診察を始める。

 

「……。なるほど…。」

 

「あの…先生?ミーシャさんは…。」

 

医者の男はミーシャの側から離れようとしない子どもたちを見ると

 

「大丈夫ちょっと体調崩しちゃっただけみたいだから。」

 

 その言葉を聞いて子どもたちは目を見合わせて静かに喜びワンと杉元は安堵から静かに息を吐いた。そんな中医者はそっと杉元に近づき耳打ちをする。

 

「ちょっとこっちに…。」

 

 杉元は最悪の事態を想像して顔を強張らせ先に出た医者の後を追いかける。

 医者の男は白衣からタバコを取り出すと咥えて器用に右手だけでマッチをつけた。男は杉元の顔を見て目を細めると静かに話し始める。

 

「お宅のお嬢さん今まで急に倒れたり何か薬を飲んでたりします?」

 

「いや特に聞いてはいないが…。あっ!!そういえば弟さんが鉱石病?だったかに罹ったて…。もしかして何か関係してるかも…。」

 

 そんな杉元のことばを遮るように男は話し始める。

 

「あーもういいです。大体わかったんで、こんな所じゃ詳しい検査なんてできないんではっきりとは言えないけど多分低血糖…。栄養不足みたいなもんです。点滴打ったら帰りますね。」

 

「本当ですか!!ありがとう先生ッなんとお礼を言ったらいいか…。」

 

「お礼なんて……ほら。」

 

 そう言うと男は右手をズイッと前に出す。杉元がキョトンとしていると

 

「慈善事業じゃないからね。タダ働きはお断りだよ。」

 

 焦って杉元がきんちゃく袋を出すとサッとひったくり中から数枚の紙幣を取り出す。

 

「まいどあり。」

 

 そう言って男は吸っていた煙草を踏み消すと部屋の中に消えていった。

 

「ミーシャさん栄養不足で倒れたのか…。」

 

 一人残された杉元はきんちゃく袋の中に入った紙幣の枚数を数えると溜息を吐いた。

 

 杉元が部屋の中に入ると既に点滴が始まっていた。透明なチューブを通して栄養剤が流されていくたびに青ざめていたミーシャの顔に血色が戻り杉元はほっと息を撫で下ろした。

 一連の騒動ですっかり時間は流れスラムには杉元たちの家以外の明かりは消えていた。

 点滴が始まってしばらくするとミーシャの瞼が少し動くと共に唇から小さく行きが漏れた。

 

「んっ…。」

 

「ミーシャさんッ!!」

 

 杉元が慌てて駆け寄ると

 

「…スギモトさん?ご飯できてるよ…。」

 

 まだ意識がはっきりとはしていないようだが少しは喋れるのを見て医者の男は変える準備を始める。

 

「大丈夫そうなんで帰りますね。もしなんかあったら朝から開いてるんで来てください。」

 

「あっ先生ありがとうございました!!」

 

「もらった分の仕事はするので、それでは。」

 

 杉元のお礼を受け流すと男はそのままスタスタと出ようとする。その様子を見て慌ててワンが引き止める。

 

「待ってくだされ先生。このあたりは治安がいいとは言えない…スギモトの兄ちゃんに頼みたいんじゃが、先生を家まで送ってはくれんか?」

 

「もちろんだ!!さっ先生荷物をッ!!」

 

 杉元は医者の男を連れて家を出るとワンから受け取った電灯を手にスラム街を歩いた。

 

「さっき診た娘の弟さんってどこにいるんですか?」

 

「ミーシャさんの弟か…。実は離れ離れなんだよ。チェルノボーグで色々あって…。」

 

「あぁ…ウルサスの…。」

 

 そこで何かを察したのかしばらく無言の時間が続いた。医者の男が口を開く。

 

「君は感染者についてどう思う?…恐ろしいと思うかい?」

 

「感染者ってのは…その鉱石病のことかい?正直よくわからないんだよ。でも鉱石病の家族がいるからってミーシャさんを傷つけていいわけじゃないだろ。」

 

「……。そっか君は…。いや何でもない忘れてくれ。もうここまでで良いよ。送ってくれてありがとうね。」

 

「あぁ…そうかい。じゃあこの辺りで、今日はミーシャさんを助けてくれてありがとな。」

 

「いやこれでも医者の端くれだからね。何かあったらこの場所に来たまえ。特別料金で診てやろう。」

 

「そうか?じゃあ先生今日は本当にありがとう。」

 

 そう言って杉元は来た道を戻る。その後ろ姿が消えるまで男は杉元を見送り続けた。ようやく杉元の背中が消えたのを見て男は自分の家へ入る。

 男は今日あったことを振り返り先程まで一緒にいた傷だらけの顔の男を思い浮かべた。そして白衣の上から左腕にある黒い結晶をそっとなぞった。

  

 杉元が医者の男を送り家に返ってくる頃には既に家の中は暗く静まり返っておりそこかしこから寝息が聞こえていた。皆を起こさないように静かにミーシャの側に向かう。

 ミーシャは静かに寝息を立てながら寝ていた。杉元は念のため朝一で病院に連れていけるように午前中だけでも休みを貰えないだろうか等と考えながら横になった。

 

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 翌朝ミーシャがうっすらと目を開けると3人の子どもたちがミーシャのことをじっと見下ろしていた。

 

「わっ!!皆どうしたの?」

 

 その言葉に返事はなく子どもたちは一斉に部屋の奥へ消えていった。しばらくするとドタドタと重い足音と共に子どもたちが戻ってくる。

 

「ミーシャさん!!おはよう!!体は大丈夫!?」

 

「え…スギモトさん?まぁ大丈夫だけど。あれ?今何時?…朝?」

 

「ミーシャさん……昨日の夜に急に倒れたんだよ。」

 

「そうなの…?」

 

 ミーシャは昨日の夜に何があったか思い出そうとしたが子どもたちと遊んでいたところで記憶が途切れている。

 

「そっか倒れたのか…。」

 

「ごめんな…龍門に来たばかりで家も失くなるしつらいことばかりだよな…。」

 

「いやそんな事ないよ!!確かに大変なこともあったけど悪い事ばかりじゃ無かったし。」

 

 そう言うとミーシャは近くによってきたニーナを抱きしめて頭を撫でる。

 

「そっか…じゃあ仕事に行ってくるけど本当に大丈夫?」

 

「うん!!本当に大丈夫だから安心して。」

 

 そう言うとミーシャは笑いながらその雪のように白く細い腕を曲げて力こぶをアピールする。

 

「とりゃ!!…ほらもう元気だから。」

 

「…じゃあもう行くけど何かあったらすぐ連絡してね!!」

 

「もう!!大丈夫だって!!スギモトさんもお仕事頑張ってね!!」

 

「あぁ行ってきます!」

 

 そう言うと杉元はちょくちょくミーシャの方を振り向きながら仕事へと向かった。

 ミーシャはそんな杉元を見てニーナと二人でクスクスと笑いながら立とうとするとその場に手をつき倒れ込んだ。左足から割れるような痛みが走る。

 

「あれ…?」

 

 急いで自分の足を確認してみると傷一つないいつもと変わらない自分の足があった。

 

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           ∶

 

 一方その頃杉元はペンギン急便のオフィスに向かうために電車に揺られていた。

 

「(家を出て直ぐだけと…ミーシャさん大丈夫かなぁ…。きっと大丈夫だよね。)」

 

 途中の駅に付き乗客がなだれ込んでくる。

 

「(もう会社まで半分かぁ…本当に大丈夫かなぁ…何かあったらワンさんがどうにかしてくれると思うけど…。)」

 

 電車が汽笛を鳴らす。しかし杉元はその音に反応することはなく眉をしかめながら考えていた。

 

「(もうすぐ降りないと…やっぱり心配だ…。もしかしてまた倒れたりしてないかな?まさか!)」

 

 杉元の不安はミーシャから離れるたびに膨れ上がっていった。

 

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           ∶

 

 ペンギン急便一同そして社長のエンペラーは困惑していた。いつもシャキシャキしている杉元はどこかぼんやりとしており、つい先程もエンペラーのモーニングコーヒーをこぼして書類を一枚駄目にしていた。

 

(おいエクシア…。スギモトのやつ朝からおかしくないか?)

 

(やっぱりボスもそう思ってたんだ!!スギモトさん朝からおかしいよね!!テキサスはどう思う?)

 

(……ストレスってやつじゃないか?)

 

(ストレスか…。ウチは福利厚生がしっかりしているところが売りだからな。よしっ!!)

 

(おっボス〜。何か思いついたの?)

 

 エンペラーは机の上にダンッと立つと両手?を広げ話し始める。

 

「お前ら聞いてくれ!!昨日我らがペンギン急便のアジトの一つが襲撃された!!これだけども許せねぇ!!しかもだ俺の秘蔵のドッソレス産の高級テキーラそれと新品卸したてのターンテーブルがお釈迦になっちまった!!」

 

 よいよいと泣くふりをしながらエンペラーはチラリと杉元を見る。杉元は話は聞いているがどこか上の空だった。

 

「そこでだリスナー諸君!!どうすればいい?どうしたら俺の鬱憤は晴れると思う?はいそこスギモトォ!!」

 

 急に指をさされアタフタする杉元

 

「ん……ァ……え?チタタプ?」

 

「OUT!!チタタプが何か知らんけどOUT!!正解はお仕置きだッ!!奴らの鼻っ柱を叩き折り龍門の厳しさを教えてやる!!」

 

 いえーいと声を上げるエクシア。エンペラーは続けて話し始める。

 

「今日のPartyの参加者は俺エンペラーそしてテキサス&エクシアそれから期待の大型ルーキースギモトッ!!!最後は今回が最初で最後の参加者!!愚かにも俺の怒りに触れてしまった哀れなマフィア達多数!!」

 

「ね~ボス?クロワッサンとソラは?おやすみ?」

 

「あークロワッサンは趣味の関係でお休み、ソラはイベントがあるから休みだ。」

 

「オッケー…あれテキサスは?」

 

 エクシアがそう言うといつの間にか姿を消していたテキサスが扉を開け戻ってくる。

 

「準備ができた。乗れ。」

 

「いつも仕事が早いね〜。じゃあ行こっかスギモトさん!!」

 

「…おう。」

 

 車中に移動しても杉元の様子は変わらず何か考え事をしているようだった。

 

(おいエクシア…スギモトのやつ本格的にどこかおかしいぞ。具合でも悪いのか?)

 

(そんなの見てもわかんないよ!!やっぱり本人に直接聞いたほうが…。)

 

(バカヤロウッ!!デリケートな話だったらどうすんだ!!)

 

(え〜でも〜。)

 

「スギモト何かあったのか?」

 

((テキサスがいったー!!!))

 

「え?あぁすいません。実は一緒に龍門に来た娘が昨日急に倒れて…。」

 

「そうか…。大丈夫なのか?」

 

「命に関わる程ではないらしいので…大丈夫らしいけど、やっぱり心配で…。」

 

「そうか…。」

 

「いやこっちこそ朝から迷惑かけちゃって…。」

 

「別に誰も気にしてない…。」

 

(おいエクシア見ろスギモトのやつ普通にテキサスとコミュニケーション取れてるぞ。)

 

(拳ならぬ刃を交えた友ってやつじゃないかな?あんなテキサス初めて見るよ。)

 

「皆、あと少しで到着する。」

 

「お、おう。よしお前ら作戦会議だ。まずスギモトが裏口から入りモニター室を潰す。奴らが困惑しきってるところを正面から俺たちが乗り込んで叩き潰す。モニター室を潰したら合図を頼むぜスギモト。」

 

「ハイッ!!」

 

「よしその意気だ。作戦開始ッ!!」

 

 エンペラーの合図と共にペンギン急便は駆け出した。

 

           ∶

           ∶

 

 その建物は3階建てでマフィアのアジトにはみえないほど普通の建物だった。

 杉元が裏口に回るとそこには煙草を吹かしながら辺りを睨みつけるガラの悪い男がいた。杉元は後ろに手を回して小銃を隠すとニコニコしながら男に近づく。

 

「なんじゃい。」

 

「……中には何人ぐらい居るんだい?」

 

「ああ……?お前バカか?ケガしねぇうちにとっとと失せろ!」

 

「なるほど…好戦的だなマフィアは。」

 

 ガラの悪い男は半ば笑いながら吸っていた煙草を吐き捨てるとポキポキと指を鳴らしながら杉元に近づく。

 

「たまーにいるんだよなァ。てめぇみてぇに幸せそうなツラのヤツを見ると思わず教育してやりたくなるぜ。よぉく覚えておくんだな。」

 

 男が最後まで言い終わり杉元に殴りかかろうとした瞬間に杉元は男の頭をビルの外壁に叩きつけた。

 

「(呆気ないな。音を出したくないから小銃はいらないかもしれん。)」

 

 ビルの外で伸びている男を尻目に銃剣を抜くと杉元は最初の目標であるモニター室に向かった。

 

 今まさに杉元が向かっているモニター室ではトレンチコートを来た紳士風の男と金髪のチンピラがワチャワチャしていた。

 

「ルティアーノ知っていますか?実はこのモニタールームちょっと弄れば映画を見れるんですよ…。」

 

「本当ですか兄貴!!でも自分映画のDVDなんて持ってないです…。」

 

「ンフフフフ実は借りてきました!!極東の映画界の巨匠が監督、出演までした作品『OUT零時』!!これさえ見れば私達も立派なマフィア…いえKYOKUTO-YAKUZAに!!」

 

「兄貴さすが!!あれこの香ばしい香りは?」

 

「ンフフ実はこれポップコーン…。バイト先の映画館から貰ってきました。温め直してるので美味しいですよ。」

 

「おー!!出来立てですね!!」

 

「違います!!さぁ再生しますよ。トイレとか大丈夫ですか?」

 

「ハイッ!!…あれっ?兄貴この映像みてください。」

 

「ン?なんですか?これは…。」

 

 カモネの目に写ったのはマフィア達を薙ぎ倒しながらモニター室まで進む杉元の姿だった。

 映像を見てうつむいていたカモネは突然笑い始める。

 

「…来た。今が好機です!!ルティアーノ!!我らカモネ・ファミリーは今ここで組織から離脱し独立します。あぁいつかこんな日が来るだろうと感じていました。ンフフフ!スギモトさんやはり貴方は幸運の天使ッ!!」

 

「どっちかって言うと兄貴のほうが天使っぽいですけどね。」

 

「こうしちゃおれません!!ルティアーノ!!今すぐ使ってないモニターを全部点けてください!!私はこのポップコーン臭を換気してカーテンを閉めます!!」

 

「ハイッ兄貴!!」

 

           ∶   

           ∶

 

 杉元は次々とマフィア達を薙ぎ倒しながら進んでいく。賭けとハッタリを頼りに生きてきたマフィアでは日露戦争帰りの杉元は止められず銃剣で死なない程度に刺されるか殴られるかしてうめき声を上げていた。

 そうこうしている内に目的地であるモニター室に到着する。息を整え中に踏み込んだ杉元が見たのは真っ暗な部屋の中で光るモニターとそれを遮る影だった。

 呆気にとられているとその影が細い金属音を立てながら回転する。暗闇の中に葉巻の火とぼんやりとした輪郭が浮かび上がる。

 

「ンフフフようこs…えっブフェッ!!」

 

 その影目掛けてドロップキックをすると影はもんどり打って倒れる。

 

「兄貴ッ!!」

 

 暗闇に潜んでいたもう一人が閉じきっていたカーテンを開けるとそこには鼻血を流しながらへニャリと座るカモネと「なんでここに」と驚いた顔を浮かべる杉元がいた。

 

「びっくりした!!何でいんの!!何でいんの!!」

 

「ンフフフお久しぶりです。」

 

「兄貴鼻血が…。」

 

 鼻にティッシュを詰めるとカモネが話し始める。

 

「ンフお久しぶりです。突然ですがカモネ・ファミリーは今まさに独立しましてね…。」

 

「要は裏切ったんだろ。」

 

「理解力Aってところですね…。まぁ元々ファミリーと思った事はありませんよ。」

 

「そうかならもう用はないな。あばよ。」

 

「あ、ちょっと待って下さい。もう少しで終わるから。」

 

「………。」

 

「スギモトさん、ここにはカチコミにいらっしゃったんですよね。」

 

「あぁ…。」

 

「やっぱり!!実はこの下には大量の武器弾薬があります。つまり地下にある倉庫が奴らにとっての命綱であり我々が裏切った今ではアキレス腱でもあるわけです。」

 

「別に…俺はこの後合図を送って先輩方とマフィアを一人残らず片付ける。奴ら地下に行く暇なんてねぇよ。」

 

 その言葉をカモネはナンセンスと言わんばかりにため息をつく。

 

「チッチッチ…こんな言葉があります。『素人は戦略を語り、プロは兵站を語る。』と。」

 

「さっすが兄貴博識ッ!!」

 

「ムッカつくなコイツ。」

 

「つまり言いたいことはあれですよ、あれ。我々と一緒に倉庫を漁り…無力化しましょう。」

 

「やだよ。」

 

「そこをなんとか…ねッ?」

 

 そう言いながらカモネは杉元を地下の倉庫に引きずり込んでいく。

 

「だから行かな…行かないって。すごいちからだッッ!!!」

 

 こうして杉元とカモネ・ファミリーは地下の倉庫に入った。倉庫の中はまさにテラ中の武器の見本市だった。大小様々なボウガンに刀剣類、手投げ弾のようなものから一見すると用途の分からない機械まであった。

 

「すごいなこれは…奴ら戦争でも始めようってのか?」

 

「でしょう!!我々が毎日えっちらおっちら働いて運び込んだんですよ。」

 

「でもこんなにたくさんどうするんだ?」

 

「ンフフそこでこれです!!」

 

 カモネが自信満々に指を指した先には小型のトラックがあった。

 

「あれに詰めるだけ詰め込んでトンズラって感じです!!」

 

「なるほど…ちょっと待て、それじゃあ火事場泥棒じゃねぇか。」

 

「ギクッ。」

 

 自分で口に出すカモネ。しかしその瞬間に杉元の裾にしがみつく。

 

「お願いしますよー。見逃して下さい!!別に敵対してる組織だからいいじゃないですか!!」

 

「うーんでもな~…。」

 

「それに私達カツカツなんですよ。食うのに困って魚団子屋で皿洗ったり映画館掃除したりしてるんですよ!!マフィアなのに!!マフィアなのに!!こんなのそこらへんの大学生と変わらないじゃないですか!!」

 

「兄貴ッ……。俺からもお願いします!!」

 

「まぁ…俺のモンでもないし別にいいけど…。」

 

「本当ですか!!ありがとうございます!!ついでに積み込み手伝って下さい!!」

 

「厚かましいなッッ!!」

 

「私はほら…道案内とかできますよ。」

 

 カモネはそう言いながら夏の終わりの蝉のような動きで駄々をこねる。

 

「あぁ!!うっとおしい!!分かったらから離せ!!」

 

 こうして杉元は渋々積み込みを手伝った。途中でカモネが源石爆弾を落とし倉庫が吹っ飛びかけたがなんとか積み終わった。

 

「よしスギモトさんありがとうございました。じゃあルティアーノ地上に繋がるゲートは開けておくので合図を待っていてください。」

 

「ハイッ!!兄貴ッ!!」

 

「ではスギモトさんの仲間と合流した後にマフィアのボスの部屋まで案内しますね。」

 

「おう。約束通りしっかり働けよ。」

 

 杉元とカモネは建物を出ると外で待っていたエンペラー達に合流する。

 

「スギモトさんどうしたのって誰?」

 

 杉元の後ろにいたカモネは即座に取り押さえられエクシアに銃口を向けられる。

 

「ンフフフ麗しのサンクタのお嬢さんとループスのお嬢さん、そしてペンギン…え、ペンギン!?」

 

「おいスギモトこのふざけたやつは誰だ?」

 

「キェェェェアァァァァシャァベッタァァァ!!!!!」

 

「うおっ!!声でかッ!!」

 

「マタシャベッタァ!!!!!」

 

「あっボス…こいつはカモネっていってあの建物の構造に詳しいので連れてきました。惡いやつではないと…。」

 

「そうなのか…?」

 

「以後お見知りおきを…。」

 

「適応早いなぁ…。」

 

「では行きましょうか。」

 

 カモネを先頭に加え杉元、エンペラー、エクシア、テキサスの順番で中に入っていく。

 

「おいッ武器を持って来い!!」

 

「扉が開かねぇ!!中から閉められてるッ!!」

 

「ハァッ!?やばい首領の部屋まで行かれるぞ!!」

 

 ビルの中は突然の襲撃に大混乱だった。そんな中をペンギン急便は進んでいく。近くにいる敵はテキサスと杉元が、中距離から遠距離はエクシアが対応することで動けるマフィアはどんどん減っていった。

 最後に残されたマフィアの首領の部屋を杉元が蹴破る。

 

「糞がッ*炎国スラング*!!何でエンペラーがここにいるんだよッ!!」

 

「よう!!お前にゃ微塵も興味は無いがやられっぱなしはだと俺が安眠できねぇ!!とっととケツまくって炎国に帰るんだなぁ!!」

 

 エンペラーに煽られたマフィアの首領は顔を真っ赤にするとスーツの懐に手を突っ込む。

 その瞬間エクシアに短機関銃の連射を浴びせられ杉元とテキサスに蹴り出され窓から落ちた。

 

「うわぁ…痛そ…。」

 

 その光景にドン引きするカモネ。しかし気を取り直しペンギン急便に向き直る。

 

「皆様…それでは私はこれで…。ルティアーノ着地任せたッ!!」

 

 そう言うと突然窓から飛び出し視界から消える。

 

「えっ!!ここ3階…。」

 

 驚いたエクシアが窓から見たのはエンジン音を響かせながら荷物を満載したトラックが足をくじいて倒れているカモネを乗せて走り去って行く姿だった。

 

「何だったんだろうな…。」

 

「よしお前らッ!!任務完了だ!!アジトに戻って一晩中飲み明かすぞ!!今日の俺の気分は炎国の真っ赤な火鍋だ!!」

 

「イエーイボス!!最高!!」

 

「スギモトはどうする?一緒に飲むか?」

 

「いや…今日は帰らせてもらいます。」

 

「そうか…。テキサス頼めるか?」

 

「了解した。」

 

 その後エクシアとエンペラーをオフィスに送り、杉元とテキサスは車内で二人きりになった。

 テキサスが口を開く。

 

「スギモト…困ってることがあるなら話してほしい。」

 

「え…はい。」

 

「私達は仲間だからな…。」

 

「テキサス先輩ッ…今日はありがとうございましたッ!!」

 

「じゃあ私はこれで。」

 

「ハイッ!!さようなら。」

 

 こうしてテキサスと別れると足早に杉元は皆の待つ家に向かう。家からは子どもたちの笑い声、そして暖かい光が漏れている。

 それにつられて杉元はドアノブに手をかけた。

 

「ただいま!!」

 

 

 

 

           ∶

           ∶

           ∶ 

           ∶

 

 

 

 

p.m,10:54/チェルノボーグ郊外

 

「ただいま…。」

 

 かつて住んでいた家のドアを開ける。彼の言葉を返す事ができるものは今は一人もいない。キッチンには作りかけの料理が並んでおり悪臭を放っていた。

 自分のことを最後まで守ろうとした母親の寝室へ向かう。ベットの上は血でドス黒く染まり家族で撮った写真が落ちていた。

 仲間が言うには感染者である自分を庇った母は非感染者に殺されたらしい。彼には3人の家族がいた。しかしもう1人しか残っていない。父は仲間が殺し、母はチェルノボーグ市民に殺された。

 

「ミーシャ…。」

 

 4人で撮った写真の中で自分の隣で微笑む姉を指でなぞる。すると外で待たせていた仲間たちに呼ばれる声がした。写真立ては母のベットの上に置いた。

 

「すまない。待たせた。」

 

「…大丈夫か?スカルシュレッダー。メフィストが話があるって…。」

 

「分かった今行く。」

 

 少し歩くと線の細い色白の術師が部下を引き連れて待っていた。

 

「やぁやぁスカルシュレッダー。お母様の事は残念だったね。こっちも部下の何人かが滅多刺しにされてね。お姉さんもそいつに連れ去られたそうじゃぁないか。」

 

「馴れ馴れしく肩に触るな。ミーシャは必ず取り戻す。…ところで母を埋葬したのはお前か?」

 

「…あぁそうだよ。助けようとしたんだけど間に合わなかったんだよ!!間に合っていれば君に家族を失わせるなんて真似はしなかったんだ!!」

 

「別に…お前は嫌いだが母の件については感謝している。母を弔ってくれてありがとう。」

 

「ふぅん……それより聞いてほしい事があるんだ。君の母を殺し姉を連れ去ったかもしれない奴についてなんだが都市を出る直前に大声で名乗ったらしい…馬鹿な奴だよね。わざわざ名乗るなんてさ!!」

 

 スカルシュレッダーはメフィストにグレネードランチャーの銃口を向ける。

 

「お前の意見はどうでもいい。そいつは何て名乗ったんだ?」

 

 メフィストは腰に手を当てため息をつく。

 

「せっかちだね。奴は『不死身のスギモト』ってなのったそうだよ。」

 

「『不死身のスギモト』…覚えだぞ。奴がミーシャを…。」

 

 スカルシュレッダーはメフィストに背を向けると仲間を引き連れて歩き出す。

 

「おや?スカルシュレッダー…何処へ?」

 

「準備を整え次第ミーシャを取り戻しに行く。」

 

「…心当たりがあるのかい?」

 

「あぁ…『龍門』だ。」

 

           

 

 




メフィカスさぁ…。
そして初めて使った*〇〇スラング*。
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