球磨川くんがウマ娘にされるとかいうイかれた設定上、名前を変える必要がありました。僕の小さい脳で頑張って考えましたが、この小説を読むような物好きな方の中で「こっちの名前の方が良くね?」と思う人がいたら、提案してください。検討します。よろしくお願いします。
──ウマ娘。
それは異世界から優駿の魂を引き継いだ者たち。
形状はヒトに酷似しているが、一目で分かる大きな違いが幾つかある。
様々な音を拾うためのウマ耳、走行中バランスを取るためにも用いられる尻尾、そして並外れた身体能力。
近代オリンピック選手も驚いて腰を抜かすレベルの彼女たちであるが、競争本能を除けば極めて穏和な性格である。
ヒトの中にはそんな朗らかな彼女たちを見ることによって、心を癒すものもいる程だ。
あーあ、たまには僕もこんな殺風景で伽藍堂の教室じゃなく雄大で広大な野原を駆け回ったりしてみたいものだぜ。
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『……そんで何さ、君は確かに上半身と下半身を輪ゴムでぶった斬られて死んだと思うんだけど?』
「まぁそう焦んなよ、球磨川くん。結論を急いで人を急かす男はモテないぜ?君の場合は改善した所でモテないだろうけど」
『何というか拍子抜けしたね。呆気なく退場しておきながら悪気もなく再入場されちゃ興醒めだ』
「丸くなったねぇ、球磨川くん。昔の君なら今頃僕の顔面目掛けて螺子の2本や3本飛ばしてきてもおかしくなかったのに。先端が綺麗に丸まっちまった螺子なんて一体どこに需要があるんだい?そんな螺子はどこにも刺さらない」
『死人に口なしって言葉を知らないのかな?それに故人に口出しされる筋合いは無いね。いくら君が昔からの知り合いでも、これは僕自身が望んで選んだ変化なんだから』
「……いやぁ、しばらく見ないうちに本当に丸くなったね…球磨川くん」
『別に。ほんのちょっとばかし絆されて、解されただけさ。変わり者だらけの生徒会と愉快な仲間たちにね』
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『それで、君は獅子目言彦に殺されたんだから蘇れないはずじゃ?』
「それがなんとできてしまったという訳さ。ほら、めだかちゃんがあの怪物をやっつけてくれただろう?『倒せない敵』である獅子目言彦が倒されたことによって『壊された物が治らない』って設定も無くなったんだ」
『それはまた随分とご都合主義だね。必死に頑張ってる週刊少年ジャンプのキャラクター達がバカみたいだ』
「事実は小説よりも奇なりってよく言うだろう?それにアイツらは僕から見れば実際バカだ。何度だって言ってやるが漫画のキャラクターたちは友情・努力・勝利なんて謳っちゃいるけどその実才能が全てさ。アホらし。現実は何よりも必然の重なりなんだって声を大にして一曲歌でも歌ってやるさ」
『……君は未だ尖ってるね、安心院さん』
「親しみを込めているようで何よりだぜ」
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「ここまで長々と話してるから端的に要点だけまとめて伝えると、ウマ娘の世界に転生──正確には転移してもらう」
『なんで?』
「何でそうなるのかわかってないって顔だね。まあ理由は単純明快、最近流行ってるからさ。あんな可愛らしい見た目で案外スポ根物だから君のその腐ったドブをコンプラで煮込んだみたいな性格の矯正になるんじゃ無いかって思ってね。あ、そうそう。
『おいおいそれは流石に酷いよ。僕ほど澄んだ精神性の人間は地球上に1人もいないというのに』
「確かにそうかもね。これ以上なく澄んではいるさ。むしろ突き抜けていると言ってもいい。漆黒、いや宵闇、いやいや深淵でさえ生ぬるいほどのマイナス方面に」
『心外だなぁ、僕はこれでも後輩にマックを奢ってやるようないい先輩なんだぜ?だから精神性を矯正する必要はないさ。というわけでさっさと帰らせてもらうぜ。今日は君が差し向けた例の5人にカーネルのフライドチキンを奢らなきゃいけないんだ。時間があったらまた腹いせに、まぁあえて詳細を語るとすれば手足を封印しにここに来てやるぜ』
「手厳しいなぁ。まぁそういうことなら仕方ないか、帰れよ。いい先輩ごっこに夢中になっちまって、つまんねー男だぜ全く。あぁ、そうだ。一つ言い忘れてたことがあってね」
『まったく、しつこい女は今日日流行らないぜ?それとも本当は僕に留まって欲しいから健気にも慣れない事をしているのかな?』
「気色悪くて気味悪い妄想は置いておいて、だ。耳の穴かっぽじって一言一句たりとも聞き逃さないように覚悟を決めて腹を据えてよーく聞けよ?最近心変わりして甘っちょろくなった球磨川くん」
『僕のことをみくびってもらっちゃ困るなぁ。気色悪いとか気味悪いとかそんな言葉は揃いも揃って僕を彩る褒め言葉だ。どんな言葉だろうが僕は受け止めるさ。ここまで会話文だけで長々原稿用紙4枚分以上引っ張ったんだから僕の括弧を外すくらいの一言をくれないと、僕は何するか分からないぜ?普段怒らない奴ほど怒ると怖いって言うだろう?』
「さて、それでは驚天動地の残念なお知らせだ。僕がわざわざ招きたくもねー相手招いてご丁寧に1から9くらいまで話してやってんだ。僕は一度やると決めたら勢いでそのままやっちまう癖があってね。昔の君なら今の状況の異常さくらいには気づいただろうに。とどのつまり、僕の目的なんてとうに達成してるってわけさ。球磨川くん……」
「えっ?」
球磨川が教室を出た先は──駅のホームだった。
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『それで君に流されるままに電車に乗ったわけだけど、聞きたいことが幾つもあるから問い詰めさせてもらうぜ。1つ目、君も付いてくんの?』
「当然ついて行かせてもらう。こんなおもしれーもん見逃す方が愚かだぜ」
球磨川は電車の席に座りながら、安心院は球磨川の眼前で宙に浮かびながら話している。
こんな所を一般人に見られようものなら即座にSNSに晒し上げられ「怪奇!電車内で浮遊する美少女!」と一躍時の人に、動画サイトはコラージュ動画で多少賑わうだろう。
だがしかし車両内には初めて都会にきて高層建造物(実際はそこまで高いわけではない)に興奮を隠しきれず窓の外を見て騒いでいるお上りさんと、それを見て微笑ましい表情を浮かべている親子しかいない。
小声で話していれば角度的にも気づかれることはないだろう。
『まあ見せ物にされるのは別に慣れてるからいーや。2つ目、ここどこ?』
「んー、まぁ強いて言うならここは僕たちの世界じゃなくウマ娘の世界で、東京都内の某路線、ってとこかな」
球磨川にとって1つ目、2つ目の質問はさして重要では無い。最も重視しているのは3つ目の質問だ。
ではなぜ最も大事な質問を3つ目に持ってきたのか。
言ってしまえば大したことはない。3つ目の質問をしてしまうことにより、今現在自分が置かれている現実を真実にしたくない、といういかにも負け犬らしい思考回路によるものだ。
しかしご存知の通り球磨川禊は負け戦であれば百戦錬磨。
常人であれば踏み込むことを忌避する危機にも躊躇うことなく、いっそ嬉々として、プールにでも飛び込むようにその身を投げ出すことができる。
『3つ目。僕の体どうなってんのこれ?どうせ君のスキルだろ?さっさと吐けよ、今ここでもっぺん封印して僕好みの服装に着替えさせてから存在ごと消してやってもいいんだぜ。脅しだと思うなよ、僕はやると言ったら』
『君は、よく知っているだろう?』
球磨川がそう言うと同時に、彼の両手には先の尖った巨大なマイナスネジが現れる。どんなに強靭で崇高な精神を持つ聖人君子だろうと一刺しされればたちまち最底辺で最低の
一度は人外たる安心院なじみを無力化し封印した最悪の天敵である
しかし、安心院なじみは表情筋を一瞬たりとも強張らせることなく、ただ宙を優雅に浮遊しながら、球磨川の渾身の殺意を受け流し、消し飛ばし、そしてこれ以上ないほどの笑顔で嘲笑った。
「その趣味の悪い螺子で僕を刺す分には結構。このまま戦うんじゃああまりにも僕に利がありすぎるしね。ま、封印された所で負けるつもりもねーが。まあ先に質問に答えるとしようか。あぁ、そうだよ。君の身体は隅から隅まで僕好みに染めさせてもらったぜ。それこそ、炭で塗りつぶすみてーにさ。まぁやったことと言えば体の性別を女に変えてヒトの耳を無くしてウマ耳を生やして尻尾も生やして別世界に飛ばして戸籍も弄って名前も勝手に変えたくらいかな? 1京2858兆0519億6763万3865個あるスキルの中からたったの7つしか使ってねーんだぜ?まあ面白いもん見せてくれたら元の世界に戻して身体も戻してやるからさ。そこは安心してくれよ(安心院さんだけに)」
安心院なじみは球磨川を追い詰めるかのように、インターネット上の掲示板での口論で相手を打ち負かすかのように、一息で捲し立てるように喋り切った。
まるで反論なんてさせてやんねーぞと言わんばかりの喋りっぷりである。
それに、と安心院は続ける。
「それにしても君の渾身の
「寝言は眠ってから言えよ、球磨川くん。起きてるなら現実を見た方がいいぜ?今君は人間の男じゃなくて可愛らしいウマ娘だし『球磨川禊』なんていかにも男性って感じの名前じゃなくて『
『僕の相棒を消しておいて随分高圧的な物言いだね。まぁ後々戻してくれるならいいさ。』
『僕は悪食なもんでね、当然TSなんて性癖は標準装備さ。ん?そういうことなら需要と供給が僕1人で完結してるなあ。今度から後輩たちには自家発電先輩と呼ばせようか。』
「……その発言は流石の僕でも引くぜ?めだかちゃん対全校生徒綱引きの結果よりもドン引きだ」
『ようやくそのスカした表情を崩せたみたいで何よりだよ。』
ありとあらゆる女子を愛する(自称)
なぜなら彼に『恥』なんて概念は存在しない。
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「おっと、次は東府中駅だね。さて球磨川くん、ここから東京競馬…レース場に向かうからとっとと電車を降りる準備をしてもらおうか」
『おいおい安心院さん、僕はそれなりに地理にも詳しいから言わせてもらうけど、東京競馬場に行くなら府中競馬正門前駅が最寄りなのは誰だって知ってることだろう?』
「それが、知らない娘がいるみたいなんだよねぇ。だから球磨川くんには柄にもなく人助けをしてもらうぜ。つまり東府中駅から東京レース場までその子を連れて行ってやって欲しいってわけさ。ちなみに断ったら体一生そのままな」
『女の子が困っているならこの僕が助けに行かないわけには行かないね。それでその子は今どこにいるんだい?一刻も早く駆けつけてあげなきゃね。』
あの安心院なじみが
「いやぁそういえばどこにいるか言ってなかったね。僕としたことが迂闊だったぜ。少ししたら向こうから声をかけてくるだろうからそこは心配しなくていいさ。じゃ、僕はスキルで隠れさせてもらうぜ。暫しお別れさ、またね、球磨川くん」
『ばいびー。』
互いに手を軽く振り、安心院がすぅっと姿を消した所で
『……ほんっと、いい性格してるぜ、安心院さん……』
誰が見ても彼女からは明朗快活な印象を受けるであろう、
そのウマ娘の名は───。
98年世代、通称『黄金世代』の一角。
史実では日本ダービーを制し、更にはジャパンカップでも世界の強豪を退け日本の国土を防衛したとされることから、付けられた異名は『日本総大将』。
もっとも、現在球磨川くんの視界に映る彼女は『日本総大将』たる覇気を纏っているとは言い難い。極めて平凡な、何処にでもいる夢見がちな女の子に見えるだろう。
ほら、
あれはそう言う演出さ。平凡に見えるようにあえてちょっとダサくしてみたってわけさ。幾ら『主人公』とはいえ、世界から見ればまだモブでしか無いからね。
それはさておき、球磨川くんの目は箱庭学園・前生徒会長黒神めだかのそばに居続けたことによって鍛えられている。
彼(今は彼女ではあるが)にかかれば、スペシャルウィークが『世界に愛された主人公』であることは即座に看破できる。
さて、ここで重要なのは
ここから分かることは、
『黒神めだかの叙事詩的物語』であると言うことだ。
対して
これは僕の持論ではあるが、1つの世界が受け止められる『主人公』のサイズには限度がある。
「最も『主人公』らしい『主人公』といえば?」を決める大会があったら黒神めだかがぶっち切りで優勝するだろう。
ただ、彼女は余りにも有り余るほどの『
だから黒神めだかに対するカウンターとして、絶対値だけは同じだけど、数直線上で見れば正反対の『
最終的には2人は和解し、同じ組織に属したことでプラスマイナス0となったってわけだ。
ここまで語れば分かるだろうが、球磨川くんは余りにも『主人公』である人物に敵対する性質がある。その性質は相手が強ければ強いほど発動しやすくなる。
そのことを踏まえて、球磨川くんの目の前にいる女の子を見てみるがいい。
この問いの答えも、当然分かるだろう。
分からない奴にはヒントを出してやる。
98年世代組は、通称でなんと呼ばれていた?
まぁ、これが
めだかちゃんが
さて、長々と話し込んでしまったが、つまり黒神めだかの足元にも及ばないくらいの、一見凡人に見える『主人公』の女の子をわざわざ今の球磨川くんが捩じ伏せるか?と聞かれたら───。
『……僕も僕以外のウマ娘に会ったのは初めてだぜ。』
まぁ、答えは否さ。
むしろ、後輩に接するみたいに甘くなると思うぜ。
多分そのうち馬鹿でかいクレープでも奢り始めるさ。
以上、安心院さんの丁寧な補足説明だ。
ご清聴感謝するぜ。
──────────
「あのっ、あなたはトレセン学園のウマ娘さんですか!?」
『まぁそうなるのかなぁ。ほら、僕今日から編入だからさ。そう言う君は、一体どうしてこんな所に?』
スペシャルウィークが興奮した様子で話しかけ、
ミーハーな
「私は東京レース場で待ち合わせしてるんです。あの〜…名前、聞いてもいいですか?」
『あぁ、まだ名乗って無かったね。僕の名前はスクリプトロンガー。名前だけでも覚えて帰ってね。』
「私、スペシャルウィークっていいます!これからよろしくお願いしますね、スクリプトさん!」
『よろしくね、スペちゃん。それと、良いニュースと悪いニュースがある。』
「はい、何でしょう?」
実際は安心院なじみの入れ知恵、文字通り脳内に無理やり入れられた知恵を基に喋っているだけだが、その姿は純粋なスペシャルウィークには頼りに見えるだろう。
『良いニュースは僕が東京レース場まで連れて行ってあげるって事。』
「良いんですか!?ありがとうございます!」
『悪いニュースは君は降りる駅を間違えてるってことだ。』
「えぇっ!?確かに府中駅って聞いたのに…!」
『ここは東府中駅だぜ。まったく、ドジだなぁスペちゃんは。』
「でも、スクリプトさんもここで降りてるのは一体…?」
『……さ、行こうか。早くしないとレースが始まっちまうぜ?』
まさか『知り合いの人外に言われてね。』なんて言えるはずもない。曖昧にして誤魔化す事しかできなかった
スタスタと歩調を早め、交通系電子マネーをかざして改札を出て行った
『……スペちゃん。切符はタッチじゃ使えねえぜ。』
「えっ、あっ!?間違えました……!」
……実際、どっちもどっちである事は、言わずとも分かるだろう。
不安しか残らないが、将来『日本総大将』と呼ばれるウマ娘、スペシャルウィークと、『却本家』と呼ばれるウマ娘、
口調の再現ができていないような気がします。
この小説を最後まで読んだような物好きな方の中に「もっとこうした方が…」と思う有識者の方がいましたら提案してください。検討します。よろしくお願いします。
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