負完全ウマ娘   作:Minus-4

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ありがとうございます。
次は24014を目指してみましょうか。
なんて。それこそ──戯言だけどね。


第−10箱『きっと今頃』

さて。

ここで一つ、謝らなければならない事がある。

 

弥生賞当日まで、スペシャルウィークは様々なトレーニングを積んだ。チームメイトに教えを乞い、トレーナーと意見の擦り合わせをし、自分なりに最善だと思うトレーニングメニューに励んだ。

 

そこまでならいい。寧ろとてもいい。自分なりに考えて動く事は練習効率の上昇にも繋がることだ。

 

よくなかった事は、教えを乞うた中にスクリプト(球磨川)もいた事、そして僕もその光景を面白がって、特にそれを制止しなかった事だろうか。

 

結果、スペシャルウィークが新しく武器を手にしてしまった。

 

ここは敢えて、球磨川くんの作法に則り、謝罪紛いのことをさせてもらおうかと思う。

 

何が言いてーかっつーと、つまり。

 

 

僕は悪くない。

 

 

──────────

 

 

《さあ、デビュー三連勝は伊達じゃない!1番人気のキングヘイローがゲートに入ります!》

 

「キングに相応しい走りを見せて差し上げましょう」

 

観客たちが、大きな声援を上げる。

それもそのはず、今回のレース、弥生賞はグレードがG2、それもクラシック三冠への足掛かり、もとい足切りとなるレースである。

応援に自然と力が入るのも当然だろう。

 

当然、気合が入るのはウマ娘側も同じことである。

キングヘイローは歓声を一身に浴び、気合を入れ直した。

全ては、自らの誇りを知らしめるため。

 

《そして3番人気、セイウンスカイがゲートへ!》

 

「う〜ん、どうしよっかな〜…」

 

いつもは飄々としていて内面が掴みづらいセイウンスカイが迷いを表に出している。彼女にしては本当に珍しい、感情コントロールのミスであろう。これならばあの策士を出し抜けるかもしれない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

この程度で策士を出し抜けると思うなかれ。

猫も杓子も、策士に嵌められている事には気づかない。

絶対に気づかせてなどやらない。

全ては、皆をあっと驚かせるため。

 

《そして大外13番、2番人気のスペシャルウィークが最後にゲートイン!》

 

「よし。今日も、勝ちに行く」

 

スペシャルウィークは今日も突っ走る。

自分を東京に送り出してくれた母のため。

自分に合った練習をさせてくれた沖野のため。

レース前夜に応援してくれたスズカのため。

激励してくれたウオッカとスカーレットのため。

ダンスレッスンをしてくれたテイオーのため。

慰めてくれたスクリプト(球磨川)のため。

 

それら全てを肩に乗せて勝ちに行く。

全ては、自分の夢のため。

 

スペシャルウィークは自分に向けられた歓声すらも自分の力に変えてゆく。それをみすみす見逃すセイウンスカイではない。

すぐさま茶々を入れた。

 

「いや〜スペちゃんモテモテだねぇ」

 

「かっ、揶揄わないでくださいよー…」

 

「2番人気なんて、セイちゃん嫉妬しちゃうな〜。いやでもやっぱり注目されるのは窮屈そうだなぁ」

 

「そうですね…私もまだ注目されるのには慣れないです…時々田舎が恋しくなったり」

 

「分かる〜。私ものんびり釣りとかしたくなるんだよね〜。というわけであんまり急ぐのは性に合わないし…自分なりのペースでゆるりと行か」

 

セイウンスカイの言葉は『ガコンッ』という無機質な音によって遮られる。言うまでもなく、ゲートが開いた音である。セイウンスカイはまず、会話し続ける事による出遅れを狙ったわけだ。

 

それは他のウマ娘にも充分効果があったようで、多くのウマ娘は集中を削がれ出遅れたようであった。

 

《スタートしました、G2弥生賞…おっと大勢出遅れたか!?》

 

「よしっ、決まった…」

 

セイウンスカイはほくそ笑む。

まさかここまで上手く決まるとは。スペシャルウィーク以外にもキングヘイローを含む『その他大勢』が巻き込まれたようだ。

 

おかげで皐月賞では警戒されるだろうが…それはそれで幾らでもやりようはある。あとはとにかく、先頭をキープしてレースメイクするだけ。

 

ああ、これから先こんなにも上手くいくレースがあるだろうか?今だってほら、私の耳には11人分のもがくような足音と、『してやられた!』という風な息遣いが聞こえてきている。だから他人を策に嵌めるのはやめられない…。

 

 

──1()1()()()

いやだって、それはおかしいだろう。

今回の弥生賞は13人立てのレースではないか。

まさか出走直後に転んで競走中止?

いやいや、それならアナウンスが入っている頃だろう。

ならば、何故…と思い立った所で、セイウンスカイの思考は遮られる。足音や息遣いではなく、明確な声によって。

 

 

「行かせませんよ?」

 

 

「…生憎、競走相手は募集してないんだけどね〜」

 

「まあそう言わずに」

 

セイウンスカイは動揺をひた隠す。

大丈夫だ、ここまでは想定していた。

いや、嘘だ。()()()()()()()()()

 

レース中にも関わらず、スペシャルウィークは体の力を抜いていたし、話す余裕まであるし、なにより息が荒くなく未だ平常の呼吸だ。無茶をして付いてきたわけではない。

 

つまり、スペシャルウィークはさながら昼休みに友人と会話を楽しむかのように、平常心でレースに臨んでいたのだ。

 

 

──────────

 

 

「よし、まずは第一段階突破だ」

 

『へえ、第一段階ね。一とか二とか三とか、そうやって数字で表す量で済めばいいけど。』

 

「極論、一体セイウンスカイがどこまで考えてやっているのかなんて、セイウンスカイ本人にしか分からない。空は気紛れだ、晴れてると思ってたら豪雨に降られるなんてザラだからな」

 

『そのくせ掴みどころがある訳でもない。いやあ中々どうして厄介じゃないか。策を弄して浪費して、それなのに出すのは有効打。一つ一つが無駄打ちじゃねえってのは充分脅威だぜ。』

 

沖野とスクリプト(球磨川)は分析を進める。

当然といえば当然だ。このまま予定通りに進めば皐月賞ではセイウンスカイとどうしてもぶち当たる。

まるでキングヘイローはお呼びでは無いかのような考えだが、そう言う意図がある訳ではない。

セイウンスカイ以外に意識を向ける余裕が無いだけだ。

 

「スペには『とにかくセイウンスカイの好きにさせるな』とは言ったが…あそこまで上手いことやるとはな…スクリプトが教えたのか?」

 

『いいや、僕が教えたのは軽い威圧の仕方だけだぜ。それ以外のことを教えちまうと本格的に勝ちの目が無くなっちまうからさ。』

 

「そりゃあそうか…と、なると()()は独自に編み出した…いや、あれもしかして偶然か?」

 

『まあ多少は狙ってやってるとは思うけど。でも結構パニクってるとも思うなあ。』

 

「ああ…ゲートが開く音がしたから反射で飛び出したらスタートが上手くいって…それでセイウンスカイの隣につけちゃったし、ついノリで話しかけたのか」

 

パニクっているとはいえ、普通ならレース中に話しかけたりはしないのだが、そこは『異常(アブノーマル)』なので『普通(ノーマル)』を説くのはお門違いだろう。

 

先ほどの言葉は訂正しよう。

スペシャルウィークはパニクってつい走り出してしまっただけで、平常心からは程遠かった。会話を楽しむとか、もってのほかであった。

 

 

──────────

 

 

《セイウンスカイ、ぐんぐんと進む!現在2番手のスペシャルウィークとは3馬身ほどの差ができているぞ!》

 

《セイウンスカイとしては少々苦しい展開でしょうね。このリードをキープできるといいのですが》

 

(随分と簡単に言ってくれるじゃん…!)

 

実況解説の言う通り、現在の状況はセイウンスカイにとって喜ばしいものではない。無論、このまま行けば勝ち目は着々と減っていくだろう。

 

だからここで仕掛ける。

罠に掛けて、スペシャルウィークを釣り上げる。

 

セイウンスカイは後ろから追走してくるキングヘイローの方をちらりと一瞥し、わざと薄ら笑いを浮かべてみせた。2番手のスペシャルウィークからすればたまったものではない。前のセイウンスカイを最大限邪魔しながら、後ろからやってくるキングヘイローにも気を配らねばならなくなった。

 

キングヘイローとしても、あんな挑発するような笑みを向けられては、応えないわけには行かない。王が挑戦を受けない筈がない。

 

(スカイさん…いいでしょう、受けて立つわ!)

 

後ろから一気にキングが上がってくる。つける場所はスペシャルウィークのすぐ後ろ。前からはセイウンスカイの威圧が飛んでくる。スペシャルウィークは威圧によって板挟みされる結果となった。

 

こうして再び、盤上はセイウンスカイによって、たったの一手で最悪の形に整えられた。とことんまでスペシャルウィークのスタミナを削る布陣である。

 

《おっとこれは、スペシャルウィーク苦しそうだ!前からも後ろからもマークを受けている!》

 

《なんとか脱出したいですね。非常に不利な状況に陥りました》

 

敵の敵は味方。

この時、セイウンスカイとキングヘイローは互いにスペシャルウィークを排除しようと動いていた。そうしてそのままレースは進む。その間スペシャルウィークは不気味なほどに、何もアクションを起こさなかった。

 

再びレースが大きく動いたのは、やはり第四コーナー付近だった。初めに動いたのは、意外な事にキングヘイローだった。息が切れてきたスペシャルウィークに見切りをつけ、標的をセイウンスカイへと定めたのだ。

スペシャルウィークを追い越し、スパートをかけてセイウンスカイを追い詰める。この時、スペシャルウィークの顔は確認しなかった。

 

次に動いたのはセイウンスカイだった。

直線で後ろからキングヘイローが突っ込んでくる事は初めから分かっていた。だから()()()()()()()()()()()()()()()()。直線で使う脚を残すために。

もちろん罠だとバレないように、敢えて腕の振りを大きく見せて、躍動感を演出していた。周りから見た時と比べ、その実速度はかなり遅いものだった。

 

キングヘイローも、セイウンスカイも、どちらかが一着でどちらかが二着だと確信していた。確信してはいたのだけれど、確認はしなかったのだ。だから、このレース唯一の失敗はここであった。

 

まあ、過ぎたことに今更『ああすれば良かった』とか『ああしておけば』とか言ったとしても、所詮はたらればでしかないわけだけれど。

 

さて、ここで大きく話は変わるのだが。

『死亡確認』というものは、医療現場において確実に行わなければならない。仮にこれを怠って、生きているのに『死んだ』と判定を下したとしよう。実は生きていたその死体が、目覚めた時には炎の中だなんて、到底笑い話にすらできたものではない。

 

つまりこの場合、キングヘイローもセイウンスカイも、スペシャルウィークは『死んだ』と考え、その存在を認識の外へと置いたのだ。生物というのは意識の外からの衝撃にはとことん弱い。だから、ここまでの話を短くまとめるとするならば。

 

 

2人とも、スペシャルウィークを舐めていた。

 

 

敗因があるとすれば、やはりただそれだけ。

たった1行で表せるその心理がいけなかった。

 

ここで、漸くスペシャルウィークが動き出す。

第四コーナーも終わりに近づき、そろそろ直線だといった所で、スペシャルウィークは荒げたフリをした息を潜めた。キングもセイウンスカイも『マズい!』と思っただろうがもう遅い。

失敗を取り返すには些か遅すぎた。

 

 

そして、狩人が如き威圧が放たれた。

 

 

──────────

 

 

「うっ!?何よこの圧迫感!?」

 

「スペ先輩の威圧かこれ!?」

 

「スクリプトお前何教えたんだ今すぐ吐けぇ!!」

 

『前の人を威圧する方法教えてって言われたからさ。走ってる奴らのことを『螺子で叩き起こしてきた時の僕』だと考えてみてよっていったら、うん。この通りさ。』

 

「なんてことしてくれてんだお前ェ!!」

 

いくら温厚なスペシャルウィークといえど、流石に毎朝螺子で刺されれば恨みくらい湧く。このとんでもない威圧はある意味スクリプト(球磨川)とスズカの毎朝の特訓の賜物だった。

 

それはそれとして、スズカはこれからスペシャルウィークを起こす時は優しくすると決めた。

 

会場を見ると、特に騒ぎにはなっていなかった。それでも何人かは狼狽えていたが。

つまり、スペシャルウィークと普段から関わっているからこそ、スペシャルウィークに注視していたからこそ分かる変化だったということだ。

 

「てゆーかさ、スクリプト先輩」

 

『何かな?ウオッカちゃん。』

 

「これってスカイ先輩とキング先輩に向けられてる威圧なんですよね?」

 

『まあ状況的にそうだろうね。それがどうかしたのかい?』

 

「いや、別にオレたちに向いてる訳じゃない威圧でこれって、じゃあ直接威圧されてるあの2人は一体どんな感じなんだろうって思って」

 

『ああ、それなら簡単なことさ。』

 

 

『きっと今頃、後悔してるだろうね。』

 

 

──────────

 

 

(間違えた掛け違えた読み違えた!!こんな威圧っ、練習を盗み見た時もしてなかったのに!!)

 

(この程度でっ…諦めるわけには行かないのに…!脚が残ってない…威圧だけで削られたっていうの!?)

 

セイウンスカイもキングヘイローも逃げるように逃げる。

最終直線でこの狩人の相手をしたせいで自滅とか、そんなの認められない。

 

認められないから、また間違える。

少なくとも今、背後から放たれる威圧を無視さえできれば、まだスペシャルウィークを抑えることはできただろう。今差すのではなく、残り50mでスペシャルウィークをほんの少し差せば、十分逆転は狙えただろう。仮定を語っても、既にどうしようもない所まで足を進めてしまった訳だが。

 

キングヘイローの背後から聞こえたのは爆発音。

いや、厳密には爆発音ではない。スペシャルウィークがスパートを開始した音だ。その音はセイウンスカイの耳にも届いた。

 

(来たっ、スパート…!坂の前でスパートをかけてくれたのならまだやりようはある…!)

 

セイウンスカイは敢えて歩幅を乱して坂を登る。坂に刻まれた足跡で距離感を乱し、呼吸を乱し、歩調を乱し、スタミナを浪費させスパートの速度を落とす作戦()()()()()()()

 

次の瞬間セイウンスカイの耳に聞こえた音は、別にスペシャルウィークが坂で苦しみ喘ぐ声とか、必死でスパートをかける時の雄叫びとか、思い切り芝を踏み込む足音とか、そういうものではなかった。

 

音が、()()()()()()()()のだ。

まるで、卵の殻にヒビが入るかのような、ピシリという音が。確かに聞こえた気がした。

 

そして、後悔した。

時が止まったかのように錯覚した。

自分が前を向いているのか後ろを向いているのか。それすら不明瞭だったが、幸いな事に、不幸な事に自分を追いかけてくる強烈な存在感がそこにある。ならば逃げなければ。逃げ切らねばなるまい、息が切れようとも。

 

セイウンスカイは全力で逃げるため、今一度肺に酸素を取り入れる。その時、脚は止まらなかった。

止まったのはきっと、息の根だ。

 

 

「どいて…!」

 

 

さっきまでキングヘイローの少し前くらいにいただろとかそういうのは今は関係ない。単にセイウンスカイが考えるより早く隣に並んできただけ。セイウンスカイからしてみれば瞬間移動でもしたかのように見えただろうが。

 

それもそのはず。いくら策士といえど、『領域』なんて考慮して策は練れない。だって彼女はまだ、『領域』の存在なんて知らないのだから。スペシャルウィークが『レース終盤に前の方で相手を抜くと勢いに乗って速度が上がりさらに加速力がちょっと上がる』なんて分かる筈もない。

 

それに加えてスペシャルウィークが放つ威圧がある。

常日頃飄々としている彼女のことだから、徐々に近づいてくるならまだ受け流すことも出来ただろう。

生憎現実はそうは行かない。どれだけ飄々とした態度であろうとも、気づいたら隣に飢えた羆がいたとか、到底生きた心地はしないだろう。

 

要するに、セイウンスカイはスタミナも気勢もすっかり削がれてしまったのだ。

 

削がれて、刈られて、狩られた。

 

『策士策に溺れる』というより、『ミイラ取りがミイラになる』と言った方が正しかった。

スタミナを削ってやるつもりが、削られたのは自分自身だったなんて、冗談じゃない。お笑い種と言うまでもない。精々苦笑いがいい所だろう。

 

(…はっ!?こんなこと考えてる場合じゃない…!)

 

スペシャルウィークが自分の隣にいる事に気がついてから、一拍遅れてセイウンスカイもスパートをかける、が。十全な末脚相手に、付け焼き刃でどうこうできる筈もなく。

気づいた時にはスペシャルウィークは自分よりも2バ身ほど前にいたし、気づいた時にはゴール板を踏んでいた。

 

言葉通りの茫然自失。

自分がどの辺りを走っていたのかも分からず、悪戯にラスト200メートルを無駄にしてしまった。

 

一着、スペシャルウィーク。2番手とは2バ身の差をつけての()()だった。

 

──────────

 

レースを終えたセイウンスカイは、皐月賞に向けてスペシャルウィークを観察しようとしたところで思い至る。今尚膝に手をついているかの猛獣は、息も絶え絶えで、到底余裕があるようには見受けられないではないか。と、そこでセイウンスカイは気づいたのだった。

 

策に嵌められたのは、自分のほうであったと。

 

(今になって考えれば、出走直後だけ私に…『逃げ』のウマ娘にくっついて焦らせるのもセオリー通り。その後に敢えて抑えて、なおかつ適度に私に存在を意識させて集中力を削ぐのもセオリー通り。差したと思って油断した所で差し返して気勢を削ぐのもセオリー通り…威圧でスタミナがギリギリなのを隠すのもある意味セオリー通り…)

 

スペシャルウィークの走りは場面ごとにみれば、なんてこと無い平凡な走り。平凡でなかった、()()でなかった所をあげるとするならば…。

 

「スパートの時…あのヒビ割れの音か…」

 

あれだけがどうにも分からない。セイウンスカイの理解の外にある。が、しかし。一度してやられたものを、対策しないなんてことはありえない。

 

考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考える。そうやってたっぷり熟考して、罠に掛け、策に嵌め、最後には釣り上げる。釣りというのは、相手が大物であればあるほど燃えるものだ。

 

「スペシャルウィーク…次は私が勝つよ」

 

気合は十分。

この場にいるウマ娘の中で、最も早く皐月賞へと心を切り替えたのはセイウンスカイだった。

 

 

──────────

 

 

『お疲れ、スペちゃん。いやあ良かったぜ!威圧も上手く決まったようだしね。さすがだぜ、『狩人』さん。』

 

「本当に良かったわよ。こっちまでピリピリしちゃったもの」

 

「スクリプトさん、スズカさん、ありがとうございます!で、えーっと、その…『狩人』って何ですか…?」

 

スペシャルウィークはやはり一目散にスクリプト(球磨川)とスズカの下へやってくる。褒めてくれたのは素直に嬉しいのだが…聞き慣れない呼び方でスクリプト(球磨川)に呼ばれ、困惑していた。

 

『おや、実況を聞いてなかったのかい?それはそれでいいと思うぜ、よっぽどレースに集中してたって事だろうし。じゃあスズカちゃん、任せたよ。』

 

「えぇ…私?まあいいわ…スペちゃんの威圧、やけに上手く決まったでしょう?」

 

「はい!なんだかいつもより効き目が強かったような気がします!」

 

「コーナーの方の威圧じゃなくて、スパートの時の威圧が強過ぎて、観客席まで届いてたのよ」

 

「……はい?」

 

スペシャルウィークからすればまるで意味が分からない。

確かに威圧を教わったのでやってはみたものの、その威圧が観客席まで届く?ちょっと理解が追いつかない。

 

「それでね、実況解説も、観客もみんな盛り上がっちゃって…それで徐々に他のウマ娘を追い詰めるその姿はまるで『狩人』だって…ウマッターとかちょっとした騒ぎになってるのよ…はい、これ」

 

スズカが見せてきたウマッターには「中山の『狩人』スペシャルウィーク」の文字があった。それも大量に。レースが終わった直後の書き込み数とはどうしても思えなかった。

 

「あのー、これ…どうにかなりませんかね…」

 

「どうにもならないわ…私も『先頭狂』とか『先頭民族』とか呼ばれているもの」

 

『僕も『却本家』とか『風』とか呼ばれてたなあ。そこまでの器では無いんだけどね。』

 

「ということで、スペちゃん。諦めましょう?」

 

「はい……」

 

これも強いウマ娘の宿命である。レースで勝ち続ければいずれこうなる、というのは分かってはいたが…まさかまさか、『狩人』なんて物騒な異名がつくとは予想できなかった。

 

ちなみにスクリプト(球磨川)は『風』なんて呼ばれ方はしていない。中身の伴わない虚言である。

 

つけられたくもない二つ名をつけられたスペシャルウィークは、半ばやけくそ気味にウイニングライブで歌って踊り、ストレスを発散したのだった。

ちなみに、棒立ちはせずに済んだ。




あいも変わらずレース描写が下手です。
レースだけ僕の代わりに誰か書いて欲しいくらいです。
上手い人が書けば、きっとこの作品も進化すると思うんですよね。
なんて。それこそ──傑作だぜ。

感想・評価よろしくね。

『領域』とは別のスキルとか『過負荷』覚えさせるのはあり?

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