負完全ウマ娘   作:Minus-4

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UA30,000超えました。ありがとうございます。
って事でスクリプトロンガーを描いてみようかと思いましたが、化け物が出来上がってしまったので諦めました。絵心さえあれば…。
物好きな人がいれば描いてみてください。
僕が喜びます。


第−11箱『大袈裟だって』

『さてさて。スプリングステークス当日になったわけだけど、何か僕に言っておくことはあるかい?』

 

「手の内を明かし切るな。それだけだ」

 

『そうかい、じゃ、行ってくるぜ。』

 

スペシャルウィークが弥生賞で勝利を飾ってから今日まで、色々あった。テイオーがいきなりチーム〈スピカ〉に加入したり……いや、大きな動きはそれだけだった。

とにかく、スクリプト(球磨川)にしては珍しく堅実にトレーニングを積んで来た。本当に珍しいことに。

 

彼女(或いは彼)としても何か思う所があったのだろうか、と邪推しそうになるけれど、決して深い理由はない。

あるのは浅ましい欲望だけである。

 

『そうそう、言い忘れていたことがあったんだけど。』

 

「なんだ?今のうちに言っておけよ」

 

『打ち上げは焼肉がいいなあ。』

 

「……そういうのは勝ってから言え」

 

 

──────────

 

 

端折って話を進めるとしよう。

あの後スクリプト(球磨川)は、パドックの上から下に向かって

『あれ?知らねえ奴らばっかり応援に来てるなあ。』

と、()()心を折った。

スクリプト(球磨川)がファンの顔など、覚える筈もなかった。

 

次に地下バ道で、スペシャルウィークとスズカから激励を受けた。もっとも、その内容は激励というより、脅しに近いものだったが。

さしものスクリプト(球磨川)も、「やり過ぎたら焼肉ナシ」と言われれば、渋々とはいえど従わざるを得なかった。

 

そして返しウマ。

今回は全力疾走はせず、控えめなランニング程度に留めた。控えめとはいってもその速度はヒトの全力疾走と大差なかったが。

 

ふう。

回想、終わり。

では続きをどうぞ。

 

 

──────────

 

 

『今回は15人立のレースで僕は8枠15番となったのでこれ見よがしに他のウマ娘の調子をジロジロと見ているわけだが…うーん、大したことねえな。これなら自力で勝てるかも。』

 

ゲートに入る前から他のウマ娘の敵意を一身に集めるこのウマ娘こそ、『負完全(マイナス)』の中の『負完全(マイナス)』と呼ぶに相応しいスクリプトロンガー(球磨川禊)である。

今日も今日とて、他人のヘイトを集めることにご執心であった。

 

『さすがはG2、この程度の挑発に乗る奴もいねえか。散々喋りまくって集中を乱そうとも思ったけど、この調子じゃあ盤外戦術は使えそうにないなあ。いやあお手上げだぜ全く。』

 

そう言って両手を上に挙げながらヘラヘラと笑っているスクリプト(球磨川)の態度は、他の娘からすればさぞ腹が立つものだっただろう。事実、耳を絞っている娘も数人いた。

 

ここで当然疑問が生じるだろう。

なぜ他の娘たちはスクリプト(球磨川)をスルーし続けているのか。し続けられるのか。

 

答えは単純に、人伝でスクリプト(球磨川)の戦術を聞いたからだ。

スクリプト(球磨川)が何をしても相手にするな。しようものなら勝ち負け関係なく、全てが台無しになって終わるから。

 

たった一度、デビュー戦で色々やらかしただけで、かなりの危険人物としてマークされてしまった。

まあ、それはレースの中の話だけで、学校生活では良好な友人関係に恵まれているし、明確に避けられるとか、イジメられるとかそういうのは無かったようだけれど。

 

『それじゃあ、番外戦術と行こう。もっとも、これはロケットスタートを決めない事には始まらないわけだが…ま、気楽に行こう。』

 

もう周りの空気は極寒だ。

射殺さんばかりの視線がスクリプト(球磨川)に集中していたがそんな物はどこ吹く風、見当違いの方向に流されてしまった。

 

伊達に『風』とは呼ばれていない。

『風』とは呼ばれていないけれど。

 

戯言だ。

なんちゃって。

 

 

──────────

 

 

所変わって、ゲートの中である。

やはり他のウマ娘は多少そわそわしていて落ち着いていなかったけれど、スクリプト(球磨川)だけは違う。

持ち前の呑気さが十分発揮され、ポケットに手を突っ込みながら口笛なんて吹いていた。

 

勿論他のウマ娘からすればたまった物ではない。

やはりスクリプト(球磨川)が邪魔だ。いっそレースからいなくなってしまえばいいのに、とさえ思われている。

 

徐々に集中力は削がれている、が…G2に出走するウマ娘の集中はこの程度で途切れるほどやわでもない。

そろそろ発走だ。大外の邪魔者は徹底的に無視する。

 

ここで、()()()()()()()()()()()()()のが良くなかったのかもしれない。完全に意識から消し去れとか、どだい無理な話ではあるだろうけど。

 

そんな考えも、ゲートが開く無機質な音によって中断される。スクリプト(球磨川)はロケットスタートを決めるとか言っていたし、絶対にハナは取らせないと、全員が最高のスタートを決めた。綺麗な横一線のスタートであった。

 

()()()()()()()1()4()()()()()()()()

 

飛び出した14人の目に飛び込んできたのは、係員が旗を振る姿。即ち『カンパイ』。レースはやり直しである。

 

一体なぜ?と14人全員が考える。

200m程度しか走っていなかったので、振り返れば原因はすぐにはっきり分かった。

 

8枠15番、スクリプトロンガー(球磨川禊)が、開かなかったゲートに激突し、顔を抑えて蹲っていたからだった。

 

 

──────────

 

 

「スクリプト…俺は本当は、お前に走って欲しくない」

 

『まったく、心配し過ぎだぜ。ちょーっと鼻をぶつけたくらいで大袈裟だって。』

 

すぐに走ってきた沖野とスクリプト(球磨川)は話す。

当然、トレーナーとしては頭を強打した奴を走らせるなんてしたくない。なんとしても、スクリプト(球磨川)には出走を取りやめて欲しいのだが…。

 

『僕は意識消失もしていなければ立ちくらみを起こすでもないし、受け答えが遅いとか記憶が飛んでいるとかもないんだぜ?脳震盪の心配をしているならそれこそご無用。勝てるかどうかの心配をして欲しいくらいだぜ。』

 

と言われてしまった。

確かにバイタルチェックでは受け答えもはっきりしていたし、スキップも普通にできていたし、自分の名前も住んでいる寮の名前もチームメンバーも覚えていたし、対戦相手が何人で今日が何日かまで分かっていた。

 

つまりは…異常無しである。

少なくとも、表向きは。

 

「……分かった。ただし、異常を感じたら止まれ。止まらなかったら焼肉は無しだ」

 

『うへえ、それは困るな。分かった分かった。もしなんかあったらすぐに止まるからさ。だからみんなには心配するなって伝えておくれ。』

 

「そのつもりだ。…無事に帰ってこいよ。それだけ守ってくれればいい」

 

『了解。』

 

沖野という優秀なトレーナーでも見抜くことは出来なかった。スクリプト(球磨川)が実は脳震盪を起こしていて、普段であれば使えていた『大嘘憑き(オールフィクション)』をいつも通り精密には使えていなかったことを。

大嘘憑き(オールフィクション)』は意識が朦朧としている時や、気絶している時にはまともに使えないのだ。

 

つまり今のスクリプト(球磨川)は、脳震盪の影響を体から無かった事にしているだけで、脳そのものは未だ朦朧としていた。

 

ここまで、なんと作戦通りだった。

 

 

──────────

 

 

再びゲートである。が、しかし。

先ほどまでの悪意はすっかり鳴りを潜めていた。

当たり前である。怪我人相手に高圧的に出られるやつなんてなかなかいない。

スクリプト(球磨川)に向けられている視線は、どちらかと言うと気遣わしげな視線だった。

 

『あー、ごめんごめん。お待たせ。いやーすまないね。僕のせいというか、ゲートのせいでやり直しになっちまって。僕は悪くない。悪くはない、が…謝罪させてもらう。』

 

なんだ、作戦とか絡まなければ普通にいい娘ではないか。

みんなそう思っていたが、それはそれとして今はレースに集中だ。怪我人が相手でも、躊躇も手加減もしない。

 

当然、先ほどの発言も罠なのだが。

 

今の発言で他の娘の心には『罪悪感』が植え付けられた。こんないい娘に悪意を向けていたのかという『罪悪感』が。それらは心を内側から蝕んでいく物だ。

即効性は無く、遅効性ではあるけれど。

 

そうこうしているうちに、再びゲートが開いた。

今度は15人分、正常に。

開いた、筈なのだが…。

 

またしてもスクリプト(球磨川)の姿が見当たらない。一体どこに行ったのだろう、と考える暇もなかった。

 

『じゃ、精々逃げ惑っておくれ。』

 

姿は見えないのに、後ろから止めどなく噴出する悪意の圧迫を受けて14人は、またしても同じことを考えた。

やっぱり出走停止になればよかったのに、と。

 

そうして、14人は「惑う」とまでは行かなくとも「逃げる」。とりあえず、この悪意から1,800m逃げ切れば勝ちなのだ。いやまあ、200m余計に走っているから本当は2,000mなのだけど。

 

スタートしてすぐの第1コーナーを回る。

スクリプト(球磨川)は動かない。

第2コーナーを回る。

スクリプト(球磨川)はまだ動かない。

バックストレッチに入った所で、スクリプト(球磨川)が前進を開始した頃には、すでに半分近くがバテていた。

 

それもそのはず。

ただでさえ苦手なゲートを2回。

そもそもスタート地点が心臓破りの坂なので坂が2回。

そして後ろからは耐え難い威圧が常に飛んでくる。

スタミナに自信があるウマ娘以外に耐えろと言う方が酷だろう。それでも、食らいつく奴は食らいついてくるのだが。

 

じわじわと前進を開始したスクリプト(球磨川)に対する、罪悪感を抱いている奴から沈んでいく。スクリプト(球磨川)に気を割き過ぎて、ペース配分を間違えてしまうからだ。タチが悪いし、姑息な策ではあるが、それでも策として通用してしまっている以上、文句は言いづらい。

 

第3コーナーに到達した頃には、すでにスクリプト(球磨川)は4番手だった。そして第3コーナーに侵入した瞬間、威圧は弱まった。

 

前3人のうち2人は、「ようやくバテたか」と思って気を抜いてしまった。こんなに急に威圧が解けるなんて普通ならありえないし、いつもなら警戒を解きもしないのだが、何せ相手は頭を打った怪我人だ。まさか再び威圧なんて来ないだろう。できっこないだろう。

 

残念。かの『負完全(マイナス)』には、出来てしまうのだった。

 

ぞわり、と。

肌を害虫が這い回るような感覚がした頃には。

もう遅かった。致命的に。

 

それは威圧とは呼べない代物だった。

だからといって、悪意とか、害意とか、殺意とか、そう言う言葉で言い表せる物でもなかった。

 

表すのならやはり、『負完全(マイナス)』。

 

それしか無かったと思う。

 

気づいた頃には第4コーナーに侵入していたし。

 

気づいた頃には生きるために必死だったし。

 

気づいた頃にはスクリプト(球磨川)は2番手だったし。

 

気づいた頃には第4コーナーも終わりが近かったし。

 

気づいた頃には1番手に迫っていたし。

 

だからという訳でも誰かが悪い訳でも無いが。

 

気づいた頃には。

 

手遅れだったのだ。

 

 

──────────

 

 

沖野はずっと、言葉では言い表せない感覚を感じていた。

今日に限って中央のG2でカンパイが起こるなんて、運が悪いの一言じゃ済まされないし、そのあたりにスクリプト(球磨川)が『負完全(マイナス)』である理由があるのか、と考えていた時のことだった。

 

第4コーナーも終わりに近づき、大凡残りが350mか、といった所で事件は起きた。

事件というより、事故と言った方が正しいかもしれない。

 

スクリプト(球磨川)の前を走っていた娘がガタンと一瞬体勢を崩し、すわ骨折かと考え、いつでも治療に向かう心構えを即座に出来た沖野はやはり、優秀なトレーナーと言わざるを得ないだろう。

 

注意を向ける相手を間違えていたが。

 

(即座に体勢を立て直した辺り、骨折ではなく落鉄の影響っぽいな…何にせよ、怪我人がこれ以上増えなかったことは良いこと…だ……!?)

 

確かに、怪我人は増えなかった。

怪我をしたのはスクリプト(球磨川)だけだった。

 

 

「スクリプト止まれぇぇッ!!!」

 

 

喉が裂けようが関係ないとばかりに叫ぶ。

周りのチームメンバーは沖野が怒鳴る所を初めて見たし、ビクッと肩を振るわせ、そうして時間にして1秒後、ようやく気付いたのだった。

 

スクリプト(球磨川)の頭に落鉄した蹄鉄がぶち当たり、大量出血していた事に。

 

チームメンバーが気付いてからさらに0.5秒後、スタンドから悲鳴が上がる。スクリプト(球磨川)が芝に向かって倒れ込み始めたからだ。どうやら意識を失ったらしい。

 

まあこの場ですっ転んで呆気なく死んじまったとしても暫くすれば生き返る訳だが、そんな事チーム〈スピカ〉の面々が知っているはずもなく。

沖野が自分を責め始めたあたりで。

 

スクリプト(球磨川)は、見ている方が気持ち悪くなるくらいの超前傾姿勢でスパートを開始したのだった。

その顔に薄ら笑いを浮かべながら。

 

ただ、その顔面どころか、体操服まで真っ赤な血に染め上げられてはいたけれど。それでも確かに笑っていた。

 

 

──────────

 

 

スクリプト(球磨川)は、当然前は見えていなかったが、この際関係ない。

どうせ『負完全(マイナス)』のオーラに耐えきれずに、勝手に他の奴が避けていくのだから。だから前に向かって、突っ込んでいくだけだ。それこそ、死ぬ気で。

 

辛うじて心臓破りの坂にいるのは分かったが、どこがゴールなのかがいまいち分からない。だから全力で走っているが、もう400mくらい走っているのではないか、と朦朧とする意識の中考えていた。

 

大嘘憑き(オールフィクション)』を使う余裕なんて無かった。

それでも、ここで走るのをやめて、『主人公(スペシャルウィーク)』との約束を守れないのは、何だか違う、とも考えていた。

 

そうやって走って。

平衡感覚なんてないから坂が終わったかも分からず。

耳鳴りがするから歓声も聞こえず。

血塗れだから前も見えず。

何もかもが不明瞭。

 

()()()()()()()

 

負完全(マイナス)』にとって、この程度は逆境足り得ない。

僕を諦めさせたければ、あの善人(黒神めだか)を連れてこい。

 

そうして、ゴール板を50m程過ぎた所で、スクリプト(球磨川)の体は何かに強く抱き止められたのだった。

 

『…おや、もうゴールしたのかな。生憎耳も聞こえないし目も見えないもんで、それにここは…どこだったかな。確か後輩5人組にフライドチキンを奢る予定だったと思うんだけど…あれ、どういった経緯で僕はここにいるんだっけ。確か…そうそう、思い出した。そういえば後輩5人組にフライドチキンを奢る予定だった、所でなんで芝の匂いがするんだろうね。とにかく約束は守れたみたいで良かったけど、誰とした約束だったんだっけ?覚えてる?覚えてないなら別にいいんだけど。もしかしたら話してるのかもしれないけど生憎耳が聞こえないからなあ。生憎耳が聞こえないし、そもそも君誰だっけ?見えないからわからないんだけど誰だったっけ、誰だろう。さっきまで走ってたのか、だったら受け止めてくれてありがとう。受け止めてくれたんだよね?今どこにいるんだっけ。芝の上か。それにしても頭が痛いなあ。どうなってるか教えてくれない?そういえばよく耳が聞こえないんだった。足も疲れてるしさっきまで走ってたのかな。だとしたら受け止めてくれてありがとう。僕のことを嫌がりもせずに受け止めてくれる奴なんて2人くらいしかいないし、状況的に考えるとこんなに強く抱きしめてくれるのはめだかちゃんかなあ。安心院さんはあんまり力強く抱きしめてくれるタイプではないし…それで、ええと、何してたんだっけ。さっきから前が見えないんだよな、何でだろうね。あれ、さっきまでめだかちゃんと殴り合ってたんだっけ。それなら僕が一方的にボコボコにされてるのも納得がいくってもんだ。ところでここがどこだか分かるかい?もし知っていたら教えてくれると嬉しいんだけど。知らなければいいよ、そんなに大した問題じゃないし。うーん、耳が聞こえないと不便だなあ。『負完全(マイナス)』を名乗ってはいたけど、まともに動けて耳も聞こえて目も見えるって相当幸せだったみたいだね、ここでもまた賢くなっちまったぜ──』

 

「スクリプト、もう喋んな。つっても聞こえてないのか…ほら一回頭冷やすぞ、ゴルシちゃんからのありがたい氷嚢の贈呈だ」

 

「ゴルシさん…スクリプトさんは…」

 

「大丈夫だ、適切な処置さえすればすぐ良くなる…だろ?トレーナー」

 

「ああ…念のため入院する事にはなるだろうが…大丈夫だ」

 

スクリプト(球磨川)からすれば、今自分を囲んでいるであろう奴らが誰なのかとか、何をされているのかとか全く分からなかったが、悪い方向には進まなそうだと判断し、すっと意識を手放した。

 

 

──────────

 

 

『──知らない天井だ、とでも言ってみようか。』

 

スクリプト(球磨川)が目を覚ました頃には、そこは病院だった。

先に言っておくと、脳に損傷が残ったりはしていない。

なのでスクリプト(球磨川)はすっかり元通りである。

 

『はてさて、こういう時はベッドの横に看病疲れで眠ってしまった献身的な美少女がいる、というのがお約束だが…。うん、まあ…看病は大人の仕事だよな。』

 

横にいたのは、予想に反して沖野だった。

 

 

──────────

 

 

暫くして目覚めた沖野は、すぐさまスクリプト(球磨川)に「本当にすまなかった」と謝罪をしてきたが、スクリプト(球磨川)からすれば謝ることはあっても謝られる筋合いはないので、本当に珍しいことに『君は悪くない。』と言って自分の非を認めたのだった。

 

『それで、今日は一体何月何日かな?』

 

「3月29日だ。ちょうど1週間ぴったり意識を失ってたってことになる」

 

『あれ、脳震盪ってそんなに長引くもんだっけ?普通は数時間、長くても1日くらいだった気がするけど。』

 

スクリプト(球磨川)は当然疑問を口にする。

開かないゲートに激突して脳震盪を起こすのも作戦通りだし、前の娘の蹄鉄にぶち当たって脳震盪を起こすのも作戦通りなのだが…当たりどころが悪かったのだろうか。

 

「ああ、当たりどころに関しては寧ろ最高、と言っちゃあ変だが…奇跡的だった。お前、最悪の場合は今頃植物状態だぜ」

 

『ええ…確かにあんなスピードで蹄鉄にぶち当たったのは痛かったけどさ、そこまでの事かい?』

 

「お前…2回脳震盪起こしただろ」

 

やっべえ、バレてやんの。

 

「最初は俺だってただの脳震盪かと思ってたさ。1回目、ゲートの時はお前の言った通り異常はなかったからな。けど2回目の脳震盪の時、意識を失ったからなんか変だと思って病院で精密検査受けさせたら…」

 

『受けさせたら?ただの脳震盪じゃ無かったっていうのかな?』

 

「SIS…セカンドインパクト症候群だと診断されてな。致死率30〜50%の相当危険な症状だと診断されて…それはもう大騒ぎだったぜ。ゴルシとスズカ以外焦りまくって大泣きして…大変だった」

 

『…えっと、ごめん。』

 

「謝るなら俺じゃなくてみんなに謝ってやってくれ。さっきメールで呼んだから、アイツら全員ぶっ飛んでくるぞ」

 

 

「スクリプトさん起きたって本当ですか!?」

 

 

「そら来たぜ」

 

『やあ、スペちゃん。』

 

「っ…!スクリプトさん、本当に…心配したんですよ!」

 

その後はもう滅茶苦茶だった。

スペシャルウィークは大泣きしながら抱きついてくるし、スズカは目に涙を浮かべながらホッとした表情を浮かべていたし、テイオーは大泣きしながら抱きついてくるし、スカーレットは大泣きしながら抱きついてくるし、ウオッカは大泣きしながら抱きついてくるし、ゴルシは珍しくまつ毛が湿っていた。

 

『ゴルシちゃん、きっと僕を止めてくれたのは君だろう?ありがとう。素直に感謝するぜ。』

 

「おう、アタシとお前は親友だからな。いつでも助けてやる」

 

『そうかい。それじゃあこの娘たち引き剥がして欲しいんだけど。』

 

「諦めろ」

 

取り付く島など無かった。

 

『そういえば、スプリングステークスってどうなったのかな。あんなに散々な目にあって4着とかだったら流石に泣くぜ?』

 

「ああ、1着だったよ。ただ、その後すぐに血塗れでぶっ倒れそうになってたし、勝者の姿には見えないほどボロボロだったぜ」

 

『なるほど、つまり僕はまた不様な姿を晒したってわけか。そんな姿を晒しておいちゃあ、やはり胸を張って勝ったとは言えないなあ。』

 

「確かにアタシには勝者の姿には見えなかったな。つまり」

 

 

『『また勝てなかった。』』

 

 

『おっできた。話し方これで合ってる?』

 

『大正解。本当君は何でもできるんだね、羨ましいぜ。』

 

話し終わる頃には、スクリプト(球磨川)の病衣は涙とか鼻水とかでぐしょぐしょだった。しかし『これも罪を洗い流すための禊か。』と考え、皆が帰った後もそのまま過ごすのだった。




脳震盪を起こしたらその日の運動は控えましょう。
マジで洒落にならないので。

感想・評価よろしくね。

『領域』とは別のスキルとか『過負荷』覚えさせるのはあり?

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