レース書くの初めてなんで下手なのは見逃してください。それと今回球磨川くん全然出てきません。正直済まんかった。
今回からタグを増やしました。ご都合主義です。めだかボックスに倣って少しだけ展開を優しくしたり厳しくしたりします。
ルビは振りっぱなしで行きます。ご容赦を。
(デビュー戦は芝1,600m右回り、作戦は『無し』、"ここだ"と思った所で先頭を抜かす…。うん、ばっちり覚えてる)
阪神レース場の芝の上、ゲートの中でスペシャルウィークは腹を据えた。1週間という短い準備期間ではあったがチームメンバーとの併走、追い越しの練習、レースにおけるルールの把握など…基本的なことは頭と身体に詰め込んだ。
パドックでは事前にスズカから教わった通りの立ち振る舞いをした為、赤っ恥はかかずに済んだ。観客達は『これが本当に1週間前からのトレーニングの成果か?』と驚きを隠せていなかった。どこから見ても調子は最高潮だった為だ。
地下バ道では
スズカからは「楽しく走らなきゃ」という心構えを。
チームメンバーからは「勝ってこい」と激励を受けた。
背中を押されたスペシャルウィークは今、絶好調だ。
されど今から始まるレースはどう足掻いても
誰から応援されようと結局は一人の闘い。
助言が本当に助けてくれるとは限らない。
だから。
だから受け継ぐ。
助言はあくまで他人事の他人言。
背負って自らの重りにするより、継承して共有する方が肩の荷は軽くなるだろう。頭の片隅に置いておく位が程よい位置付けだ。
「…やる事はやった。考えも纏まった。覚悟も決めた」
スペシャルウィークの視界が絞られる。
ゲートが開いた瞬間飛び出せるように。
万が一にも出遅れることのないように。
『日本一』を目指す者として、無様な真似は出来ない。
『2人』の母親と約束した『自分』の夢を叶えるための旅路の第一歩が、今静寂を切り裂いた。
──────────
《さあ、一斉にスタート…おっと14番良いスタートを切った!14番スペシャルウィーク、一度ハナを取りましたがするりと落ち着いて下がっていきました》
《彼女、ゲートが開く直前から動き始めていましたね。勘が鋭いのか、それとも偶然か…いずれにせよ、『逃げ』の娘たちは掛からないよう気を強く持たねばなりませんね》
スペシャルウィークが実況解説をも唸らせるロケットスタートを決め、会場は一瞬にして沸き上がった。
後少しでも動き出すのが早ければ、前に出るのが速ければゲートに激突してレースどころではなくなっていたが、そんなことが気にならないほどの完璧なスタートだった。
「よっし!いいスタートするじゃねえかスペ!」
『当然だぜ。ね、スズカちゃん。』
「ええ。毎朝スクリプトに叩き起こしてもらった甲斐があったわ」
「おお、俺の方でもスタートの練習はさせたがお前達もなんかやってやったのか。どんなことしたんだ?」
『毎朝スペちゃんが寝坊するからさ、朝起きる時間に起きてなかったら僕の『
「グサッとやるんです。3日目くらいから気配を感じ取ってギリギリで避けるようになって…だから毎朝刺してたのが効いたんだと思います」
「お前らレース終わったら謝っとけよ………」
スペシャルウィークのロケットスタートが毎朝の血みどろモーニングコールの成果だという事実は、この3人以外に広まる事は無かったという。
──────────
(よしっ、良いスタート…!失敗したら後ろから差そうと思ってたけど、この位置なら先行…。ですよね、トレーナーさん!)
スペシャルウィークは極めて冷静にレースを進める。
しかし、他のウマ娘からしてみればたまったものではない。トレーニング開始から1週間の相手に負けるわけには行かない。私たちの方がずっと強いんだ。
その思考が、毒となる。
(おいおい、14番にあてられて掛かってるやつが想定より多いな…。見た感じ9番、4番、2番はあのまま突っ走って最終直線前で垂れる…無視するか)
13番、クイーンベレーはやや後方から全体を観察する。
彼女は自信家だ。自信家であるが故に、油断はすれど掛かって暴走する事はそうそう無い。
(トレーニングは1週間前からって話だが…14番はあんま舐めねえ方がいいな。ペース配分もしっかりしてる…1,600にペースもクソも無え気はするが…脚も残してるな。これは今から前に出とかねえと間に合わねえか)
だが、
クイーンベレーは
──────────
《前の娘たちは掛かっているように見えます!このままでは保たないかもしれません!…おっと、ここで13番クイーンベレー、冷静に上がって14番スペシャルウィークの後ろに付けた!》
《そのまま前に出ましたね。彼女は強靭なパワーが持ち味ですし、その爆発力にも期待が持てますね》
《アームレスリングでは負け無しだそうです》
《力の入れ方が上手いのかもしれませんね》
『沖野ちゃん。あの展開はどうなんだい?』
「
沖野とチームメンバーの目に迷いや惑いは無い。
もっとも、
『やっぱりね。このレースでたった1人の『
「言葉はキツイが…概ねその通りだ。スクリプトもこのレースから学ぶ事は多々ある。良い面も、悪い面もな。しっかり見とけよ?」
『当然!いくら僕が『
「そこは勝つ準備をしようぜ…」
勝つ準備をする『
当然沖野も分かっているのだが、やはりトレーナーの性なのか担当を勝たせる事で頭が一杯のようだ。
別に間違ったことではない。というかトレーナーなら当たり前のことである。
──────────
(第3コーナー!トレーナーさんから教わった通りなら残り600m…だけど13番さんのブロックが上手くて前に出られない…!やっぱりスタートが上手く決まったからってレース全部が上手く行くわけじゃない…!)
スペシャルウィークは少々焦っていた。
それもそのはずである。いくらスタートが上手く決まったとはいえトレーニング期間は1週間。他のレース技術なんてあったもんじゃない。このままでは
(14番…読み通り1週間程度のトレーニングではブロックの対策はできていない。『逃げ』の奴らはスタミナ切れで下がって来たし、上手いこと誘導できれば
クイーンベレーは冷静に、冷酷に作戦を形成した。
非道に思えるかもしれないが
むしろ、中央のレースに出るのであれば『非情さ』というのは少なからず持っていなければいけない。
スポーツの世界なんて所詮こんな物だ。
仲間と切磋琢磨?
ライバルとの大勝負?
負けた後はノーサイドゲーム?
否、断じて否である。それらは殆どまやかしだ。
足を引っ張り合い、相手を潰す気でラフプレーを行い、勝敗が決まれば互いに恨み怨み妬みあう。
上に挙げたのは極端な例ではあるが、禍根の残らない勝負などあり得ない。だからどうせ恨まれるのであれば一思いに。ルールの中でできる事は全てやる。それがクイーンベレーの魂胆だ。
なぜなら彼女もまた、夢を追う身だからだ。
(悪いが私の為に
そして、レースが大きく動く。
──────────
「…なんかしやがったな、スペ先輩の前にいる奴」
「卑怯な事するわね!!恥を知りなさいよ!!」
クイーンベレーが後ろに向けて土を蹴り上げた事をチームスピカの面々は即座に理解した。ウオッカは顔を顰めて嫌悪感を露わにし、スカーレットは先輩の事を思いやって怒りの感情を隠すこともしなかった。
彼女らは未だそこまで他人の悪意に触れていない。
だからちょっとした事でも過敏に反応してしまう。
「ウオッカ、スカーレット。あれも作戦の一つだと私は思うぜ」
「でも!ルールで明確に決まってないからってあんなの…!」
「スカーレット。ゴルシの言う通りだ。クイーンベレーだって人生どころか命賭けてまで走ってるんだ。必死になって何が悪い?」
「…でもあんなのはカッコよくねえよ」
「ウオッカ、お前はお前なりの流儀で走れば良いんだ。他人に強要する物ではねえ。カッコよくない走りだってあるさ。泥臭くて青臭い走りとかな」
沖野は2人を諭す。大人として、トレーナーとして。
同時に、2人の問題点も改善点も見抜いていた。
スカーレットは感情が先行しやすい。挑発などに乗ってしまえば立て直す事は難しくなるだろう。しかしそれは裏返せば、制御さえしてしまえば感情の爆発を末脚として発揮できる事を意味する。
ウオッカは自分の流儀を優先するあまり、戦略の幅が縮まってしまうだろう。ただし、自分の流儀があるということは自分の将来を早めに見据え、そこに向かって日々邁進することができるという事になる。
今はまだ、2人に伝えるには早すぎる。
だから、沖野は胸の内にしまっておく事にした。
いつか、大きな挫折を味わった時にそれとなくヒントを出し、自分から気づくように仕向ける。
『自分で問題点に気づく』ことが最も学びになるからだ。
ウマ娘自身に気づきを与える事において、沖野は、有体に言ってしまえば天才であった。
「…分かったわよ、黙って見てれば良いんでしょ」
「ああそうだ、観察しろ。このレースはお前たちにとっても糧になる。ウオッカも、分かったな?」
「分かった分かった。他人にケチつけるのなんて1番カッコ悪いもんな」
《第4コーナーを回って残り400m!おっと14番スペシャルウィーク前が壁だ!13番クイーンベレーがここで仕掛ける!一気に突き放す!》
《どうやら狙ってこの状況を作ったようです。パワーだけでなく頭もよく回っていますね》
観客があげる声が一際大きくなる。最終直線にウマ娘たちが突っ込んできたからだ。レースは最終局面を迎える。
泣いても笑っても、ここで勝負は決まる。
──────────
(嘘っ、壁になってて前に進めない!13番さんはあんなに前にいるのに、あと400mしかないのに!『日本一』になるって決めたのに!!)
(悪いな、壁が形成された時点で勝負は決まってた。後は思い切り突き放すだけだ!)
スペシャルウィークはそれはもう焦った。
前は3人の『逃げ』ウマ娘で形成された壁、今は後ろには誰もいないがこのままだと押し戻されてバ郡に呑まれ、本格的に身動きが取れなくなる。
クイーンベレーは己の勝利を疑わない。
それもそうだ。普通に考えればセーフティリードを保っている。なれば、後は話題作りのために後続を思い切り突き放すだけだ。
いかにも『
『
スペシャルウィークとて理解していた。
後ろからは誰も来ない。
前からは壁が迫る。
追うべき背中は遥か前方。
しかし、どうしても決め手の一歩が踏み出せない。
大外に回るとして、その時に足をもつれさせて転んだら?
気づいていないだけで後ろからスパートをかけていた娘が突っ込んできていて、壁を避けた瞬間接触したら?
それこそ大怪我では済まない。
中央所属のウマ娘達ならば皆はじめに学び、当然のようにやってのけるレース技術。その技術の圧倒的な欠如。それがスペシャルウィークの心に牙を剥いた。
行かなければいけない。
でも、転んだら?
行かなければいけない。
でもでも、ぶつかったら?
行かなければいけない。
でもでもでも、斜行判定になったら?
そうしてふと、チームメイトの方を見た。
大口を叩いておいてこんな無様なレースをする私を見て、どんな顔をしてるのかな、と思ったからだ。
心配そうにこちらを見るスズカ。
手を合わせて必死にお祈りするウオッカとスカーレット。
期待の目を向けるトレーナー。
険しい目つきをしているゴルシ。
そして、怒りの形相を浮かべる
(…スクリプトさん?なんで、怒って…)
スペシャルウィークには
けれど、何だか前に行かなければならない気がして。
諦めている場合では無い気がして。
スペシャルウィークの耳は未だ轟々とした歓声で埋もれている。大勢の人間が騒いでいて、何を言っているのかなんてはっきり分からないその轟音の中で、たった一言だけがやけに響いて聞こえて。
瞬間、スペシャルウィークは思い切り壁を避け、大外に回る。体を低くし、空気抵抗の少ない形をとる。
正真正銘、フォームがスパートの形となった。
さて、現在スペシャルウィークは全体で言えば前の方に付けているわけだ。横には壁となっていた3人の『逃げ』ウマ娘たち。スタミナは切れ、じりじりと後ろに下がっていく。当然「むぅ〜りぃ〜!」という捨て台詞も忘れずに。
それはそうと、だ。
レース後半に。
他のウマ娘を抜かした。
何が起きるかは、言わずとも分かるだろう。
スペシャルウィークの周辺は夜空が広がる野原へと置き換わった。本来無数の星が降っているはずの空には、たった一筋の微小な流れ星しか無かったけれど。
けれど、それでも今のスペシャルウィークには十分だった。母と約束した『2人の夢』ではなく、『本当の自分の夢』を思い出すのには。
『日本一のウマ娘になって、天国のお母ちゃんとお母ちゃんを笑顔にする』という夢を思い出すのには、十分すぎた。
スペシャルウィークの速度が上がる。
デビュー戦とは思えないスピードで加速していく。
クイーンベレーとの差が徐々にどころでは無い早さで縮んでいく。当然場内はその末脚に沸き上がる。
「なっ!?チッ…なんつう末脚だよ…!?」
気づけば、2人は並んでいた。
あれほどあったセーフティリードも今となっては少しも残っていない。で、あればここからは根性の勝負。
気力が保った方が勝つ。
スポーツの泥臭い部分である。
まさしく
走っている当人達からすれば、時間が何倍にも引き延ばされたように感じていたことだろう。
しかしそれでも、決着というものは残酷なほど、呆気なくやってくる。
「っ…クッソォ!!」
先にスパートをかけていたクイーンベレーの体力が底をつき、後から爆発的な末脚で攻めたスペシャルウィークがそれを差し切った。
正直沖野はギリギリの戦いだったのでヒヤヒヤしていた。
が、本当の勝因は違う。
クイーンベレーが最後の最後でスペシャルウィークを見てしまったのに対し、スペシャルウィークは最後の最後で
これ以上シンプルな勝因はないだろう。
直後、スタンドからスペシャルウィークを祝福する声が響いた。一瞬呆気に取られるスペシャルウィークであったが、すぐさま満面の笑みを浮かべ観客へお辞儀を返した。
2着との差、半バ身。
スペシャルウィークはデビュー戦を無事勝利で飾ったのだった。
そして、スペシャルウィークは走って
『やっぱりね。スペちゃんならやってくれると思ったぜ。』
「はい……危うく約束破っちゃう所でした。『日本一』になるって約束。でも…思い出しました。本当の私の『夢』。ぼんやりとした形じゃなくって、鮮明な輪郭まで」
『そいつはよかった。もうお節介は必要ねえかなあ。あーあ、せっかく僕にずぶずぶに依存させて2人で堕ちるところまで堕ちるチャンスだったってのに、チャンスをみすみす逃しちまったぜ。』
「そんな恐ろしいこと考えてたんですね…。でも…ふふっ、それってつまり、
『…ああ、そうさ。僕は今回も読みを外したってことになる。つまり…。』
「ですよね?」
『全くもってその通りだぜ。』
2人の間は何だか良いムードになっていた。
それこそ、長年付き合ってきた親友かのような距離感だった。その時、スズカが爆弾を投下する。
「スペちゃん、ウイニングライブも頑張ってね」
「あっやべっ」
「ウイニング、ライブ…あ"っ忘れてたぁ!?」
『沖野ちゃん…『中央のトレーナーを…』なんだっけ?』
「すまん、忘れてた…」
「そんなっ、振り付け一つもわかんないですよ!?スクリプトさん助けて!」
『諦めよっか。骨は拾ってあげるよ。』
「そんなあ!!」
「今更不安になってきたわ…このチーム大丈夫かしら…」
その後のウイニングライブでスペシャルウィークが恥を晒したこともあり、なんとも締まらないチームスピカの面々であった。
ちなみに沖野はおわびの焼肉を奢らされた。
ドンマイ。
シングレの小内トレーナーが貝木にしか見えない呪いにかかりました。
助けてくれ。
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『領域』とは別のスキルとか『過負荷』覚えさせるのはあり?
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