負完全ウマ娘   作:Minus-4

8 / 26
共通テストに誤字があったっていうニュース見ました?
めだかボックス読んでた人ならみんな脳裏に浮かんだと思うんですよ、このセリフ。

?「『拳』ゆう漢字と『挙』ゆう漢字はよう似てはりますわあ。」

今更ですが、うちの球磨川くんは本編終了後の球磨川くんなので『虚数大嘘憑き(ノンフィクション)』を持っています。
しかし、『大嘘憑き(オールフィクション)』の方が語感がいいので本小説ではこちらで通します。よろしくお願いします。


第−8箱『モブキャラのみなさん』

スペシャルウィークのデビュー戦から1週間経った。

編入後僅か1週間で出走したレースの後半の爆発的な末脚やウイニングライブの大失態、先日のレースで危なげなく勝利したサイレンススズカの移籍などもありチーム《スピカ》は学園内外問わず注目を集めていた。

そして今日、さらに注目を集めることになる。

 

「よーし、スクリプト。パドックで変な事するなよ?するにしても決めポーズくらいにしておけ」

 

『あのさあ、沖野ちゃん。スペちゃんが1週間の短期トレーニングで勝利できたからって僕ができるとは限らないと思うんだけど。』

 

「お前なら何とかなるだろうし、何とかするだろ?」

 

『調子狂うなあ。それに今日は曲がりなりにも《スピカ》のメンバーである僕を見ようと大勢集まってるらしいし、緊張しすぎて欠伸が出ちまうぜ。』

 

「自然体もいいところじゃねえか…」

 

と、先程まで沖野とスクリプト(球磨川)は話していた。

現在スクリプト(球磨川)はパドックの裏で待機している。

そう、まさかまさかのデビュー戦だ。

舞台は阪神レース場2,000メートル右回り。天候は晴れ、バ場状態は良好である。

パドックはチーム《スピカ》のメンバーであるスクリプト(球磨川)を一目見て、今後活躍した時に「デビュー戦を見た」と古参ぶりたい奴らでごった返していた。

 

《さて、続いて7枠12番……》

 

『おっと、今の娘の次が僕か。どうやら僕のことを見にきてる奴らが大勢いるらしいし、ファンサービスの一つでもしてやろうかな。』

 

先に言っておくがスクリプト(球磨川)に悪意はない。

ちょっと心変わりして甘くなったスクリプト(球磨川)は、『これも今のうちしか楽しめないし』という考えでちょっとちやほやされたかっただけだ。

だから決して悪意はない。決して。

 

『…さて、行こうか。』

 

スクリプト(球磨川)は、パドックの上へと歩を進めた。

 

 

──────────

 

 

《続いて8枠13番、スクリプトロンガー!チーム《スピカ》が送り出す期待の新人2人目です!奇しくも先日デビューしたスペシャルウィークと同じレース場、同じ枠!》

 

スクリプト(球磨川)が舞台に姿を現し、ジャージを放り投げた瞬間、わあっ、と歓声が上がる。原因は様々だが、やはり最も大きかったものはスクリプト(球磨川)のルックスだろう。

 

艶々とした黒鹿毛、中性的な見た目、平均身長よりやや低めの身長、そして小動物的な印象を与える表情。

 

今まであまり明言されているのは見た事がない…というと失礼な気もするが、球磨川ははっきり言って見た目がとても良い。それがウマ娘になったのだから、当然さらに美人になる。どちらかというと可愛らしい美人って奴だ。

 

だから応援に来たチーム《スピカ》の面子以外はスクリプト(球磨川)の姿に呆気に取られていたわけだが…その次の瞬間スクリプト(球磨川)が大きく息を吸い込み、そして叫んだ。

 

 

『モブキャラのみなさん』

『こんにちはーーー!!!』

 

 

それを聞いたとある男は魂胆を見抜かれていた恥ずかしさで撃沈した。それを聞いたとある女は可愛らしい見た目から想像できない暴言のギャップで脳をやられた。

 

以前よりも大分優しくなった口撃であるとはいえ大小様々な人間には耐え難い。人々が心に何らかの影響を受け倒れ行くその光景は正しく世紀末、或いは世界の終焉(アポカリプス)。チーム《スピカ》が更なる注目を受ける事が確定した瞬間だった。

 

「あの野郎…何もすんなって言ったのに…」

 

「でもスクリプトさんらしいですね!」

 

「スクリプト…大丈夫かしら…」

 

「ちょっとスクリプト先輩!手加減しなさいよ!」

 

「言葉だけで薙ぎ倒すとか…カッケェ…!」

 

「私も今度やってみっか」

 

当然の権利のようにチームメンバーは無事だった。

 

 

──────────

 

 

地下バ道で沖野の説教を受けたスクリプト(球磨川)はそのままの勢いで返しウマで全力疾走をかましてスタンドを盛り上げていた。競バ有識者の方々はそれを見て「目立ちたいだけの娘か」と既に見切りをつけていた。普通のウマ娘なら返しウマで全力疾走なんてしないからだ。

 

しかしスクリプト(球磨川)は『負完全(マイナス)』の中の『負完全(マイナス)』、

普通(ノーマル)』だなんて勘違いも甚しい。

 

何てったって彼…彼女の『過負荷(マイナス)』は『大嘘憑き(オールフィクション)』、疲れなんて残らない。スクリプト(球磨川)が残すのは禍根だけである。

 

『さて、走法はどうしようか。スズカちゃんみたいな大逃げ、スペちゃんみたいな先行策、ゴルシちゃんに吹き込まれた追い込みも良いかもなあ。』

 

「…ちょっと、そこのアンタ」

 

『ん?どうしたんだい、そんなに怒っちゃってさ。ほら、笑顔でいないと幸せが逃げちまうぜ?』

 

レース直前に作戦を決めるなどという舐めた真似をしていれば当然怒る娘も出てくる。周りを見てみれば、話しかけてきたのが1人であるだけで全員が敵意を露わにしていた。

 

「さっきのパドックの時もふざけるし…今だって無駄に集中力を削ぐような真似ばっかりして…邪魔しにきたんだったらさっさと帰ってよ」

 

『おいおい、僕は至って真面目だぜ?これでもさ。折角これから()()()()()()()()()()()()()()()が見てるんだし、ちょっとファンサービスするくらい許してくれよ。』

 

「…決めた。お前はぶっ潰す」

 

『そうかい。ま、精々気が済むまですり潰しておくれ。』

 

今度は明確な悪意を持って言葉を吐いた。

自分に対して甘い奴にはとことん甘くなってしまうスクリプト(球磨川)ではあるが、悪意に対しては人一倍敏感だ。当然悪意には悪意で返す。

 

「スクリプトロンガーさん、準備お願いしまーす」

 

『はーい、今行くよ。』

 

スクリプト(球磨川)はレース場職員の言葉に軽く答え、ゲートの中にすんなりと収まっていった。

 

 

──────────

 

 

「そういえばトレーナーさん。さっきスクリプトさんと何か話し込んでましたけど何話してたんですか?」

 

「ああ、いや何、作戦のこと…まああれを作戦って言って良いものか分からねえが…とにかくレース展開についてだな。『微妙な勝ち方をしろ』ってな」

 

沖野とスペシャルウィークはスタンドで話していた。

スペシャルウィークはさっきまでゴルシ焼きそばを食べていて2人の話を聞いていなかったし、このタイミングで聞いてしまおうと思い立ったわけだ。

 

「へえ、私には『作戦ナシ!』とか言ったのにスクリプトさんには作戦伝えたんですね」

 

「お前ならレース展開に関しては心配することはなかったからな。ただ、スクリプトは…()()()()()()()()でな」

 

「やりすぎそう?でもスクリプトさんは常日頃から『自分はマイナスだからどうやっても勝てない』とは言いますけど…だからってそんな滅茶苦茶しますかね?」

 

「違う、違うぜスペ。()()()()()。確かに俺に対しても『マイナスは勝てない』と言ってはいたが…『負ける』とも『勝たない』とも言ってはいない。そもそも『領域』だって効果はよく分からないし…だから一応釘を刺しておいたってわけだ」

 

沖野は語った。未だ未知数な部分が多いスクリプト(球磨川)の手の内を必要以上に明かすのはデメリットでしかない。ならば出来るだけ手の内は見せるな。

それを聞いてスペシャルウィークはどうしても言わずにはいられなかった。

 

「そこは釘じゃなくて螺子にしません?」

 

「そこに何のこだわりが?」

 

 

──────────

 

 

『へえ、ゲートって狭くてイラつくって聞くけど…案外大したこと無えな。これならここでキャンプとか出来るかもなあ。』

 

(((13番うるさ……)))

 

流石はスクリプト(球磨川)、空気の読めなさと精神の図太さ、嫌がらせに関しては世界最高水準である。

ちなみに今はゲートの中である。案外集中を乱す戦略として機能してしまっているから余計にタチが悪い。

 

『お先。』

 

「「「あっ!?」」」

 

《さあスタートし……おっと13番スクリプトロンガー良いスタート…というより他の娘たちが大幅に出遅れた形になるか。ともかくこれは幸運なことですね…おっとこれは…『大逃げ』か?》

《既に13番は後続に6バ身ほどの差を付けていますね、これは彼女自身のスタートの上手さもあるかもしれません。スイスイと進んでいきます》

 

「クソッ…やられた…!」

 

ゲート内というのは非常に狭いためウマ娘にとってはストレス環境でしか無い。そんな所で延々と聞きたくも無い独り言を聞かされていれば当然集中力は削られる。スクリプト(球磨川)は他人の精神を削ることのプロフェッショナルだ。この程度、序の口でしかない。

 

(いや…落ち着け…ここで『掛かり』でもしたらきっと13番の思うツボ…幸い距離は2,000m、あと1,800m程度ある。今は落ち着いて奴を観察する…!)

 

現在3番手の3枠3番の娘は『掛かる』直前で文字通り踏み留まる。

この娘は実力の低さを賢さで補おうと猛勉強した過去がある。持ち前の頭脳を用いて13番(スクリプトロンガー)を打ち倒す事にしたようだ。

 

(ハナを進んではいるけど、あんな啖呵切ってた割にはそこまで速くない…?成程、最高速度はそこまで速くないからこその精神的な揺さぶり、出遅れを誘発させてハナを取る。恐らくこれは『大逃げ』に見せかけているだけ、段々と速度を落として最終直線で再びスパートする…であれば本当は『逃げ』ではなく『先行』策なはずスタミナに自信があるからこその視覚的な幻惑話ぶりから自信があるのは確実それか余程のバカでないと返しウマで全力疾走なんて…)

 

『3番ちゃんいいのかな?このまま放っておいても。』

 

「なっ!?」

 

スクリプト(球磨川)がそんな単純な策を立てるわけがない。

一度揺さぶって駄目なら二度。

二度揺さぶって駄目なら三度。

今までだってそうやって全てを混ぜこぜにして生きてきたのだ。例え甘くなっても敵を甘くは見ない。

 

(私の考えが読まれている…のは想定内だ。揺さぶりをかけてくるってことはそこそこ頭だって回るはず…って事までは考えていたけど!()()1()3()()()()()()()()()()()!?)

 

3枠3番の娘は頭を高速で回す。13番(スクリプトロンガー)が何を考えているのか、今後どのような動きを見せるのか、本当に注視すべきは13番(スクリプトロンガー)だけなのか。

 

(本当はあいつだけずっと見ているわけにはいかないけれど…だからと言って目を離すのはまずい気がする…。残り1,200m、どちらにせよそろそろ前に出ないと私の勝ち目は薄くなる…あいつの声の事は後回しだ!)

 

 

──────────

 

 

《13番スクリプトロンガー少し下がってきたか?そして3番少しずつ上がってきた!2番手の8番も同時に出てきた!残り800mで先頭に2バ身差まで詰め寄った!》

 

《13番は苦しそうに見えますね、やはり返しウマでの全力疾走とここまでのハイペースが響いた形になったのでしょうか、しかしいい笑顔ですね》

 

「トレーナーさんどうしましょう!?このままじゃスクリプトさん差し切られちゃいますよ!」

 

「どうするったって…レースが始まっちまった時点で俺たちに出来る事は祈ることと応援、そして走ってる奴を信じて待つことだけだ。今からどうこう出来るもんでもねえ」

 

「そうよスペちゃん。いくらスクリプトが心配でも、信じて待っているのが友達ってものでしょう?」

 

「スズカさん…そのー…」

 

「何かしら?」

 

「そんなにそわそわしながら言われても説得力がないです…」

 

「…そうね」

 

段々と追い詰められているスクリプト(球磨川)をみてスペシャルウィークは悲鳴を上げたくなった。沖野は大人なので割り切れてはいるが、それでもしかし勝って欲しいという思いは変わらない。スズカに至ってはどう見ても落ち着けていない。体を前に乗り出して両手を合わせてお祈りしている奴は落ち着いているとは言い難いだろう。

 

「というかスクリプトさんなら『領域』使えば簡単に勝てるんじゃないですか?」

 

「いや、出来る限り『領域』は使うなと言っておいた。映像に残されて研究されるのが1番困るからな」

 

「でもトレーナーさん。スクリプトさんって『使わないで』って言って使わないような性格じゃないと思いますよ?」

 

「それは大丈夫だ。『もし使うならバレないように』って言ったからな」

 

「あー…それは他の人が可哀想ですね…」

 

「ん?そこまで派手なことは出来ないだろうと思ってたが…というかスペ、スクリプトの『領域』がどういう効果なのか知ってるのか?」

 

「今までの付き合いからの推測ですけどね」

 

スペシャルウィークとて何も考えず日々過ごしているわけではない。ウマ娘としてスクリプトの『過負荷(マイナス)』を毎朝食らい続けていれば嫌でも想像なんてつくだろう。

 

「多分スクリプトさんの『領域』って思ってるより単純なものだと思うんです。これは毎朝刺されてる私と計画犯のスズカさんと…あと多分ゴルシさんも知ってることだとは思うんですけど…少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んです」

 

「と、いうと?」

 

「きっとスクリプトさんの『領域』は…」

 

 

「何かを無かった事にする能力。」

 

 

「…多分ですけどね?」

 

「流石にそんな滅茶苦茶じゃあない…よな?でも、仮にそうだとすれば…」

 

「それこそ、『異常(アブノーマル)』じゃねえか」

 

 

──────────

 

 

《3番、13番を追い抜いてハナに立った!8番は現在3番手、直線で一気に差し切ろうという構えでしょうか

 

《13番は未だ笑顔を浮かべていますね、これはもう一つ驚かせてくれるかもしれません》

 

(残り500m、阪神の直線は356.5mだからここからスパートをかければ私が勝つ、とはいえ13番がそれで終わるはずがない!今だって余裕が残ってそうな表情、まだ何かやってくるはず!)

 

「油断は、しない…!」

 

普通であれば『逃げ』のウマ娘を一度捉えてしまえばそこから再び差されるなど考えないだろう。しかし3枠3番の娘は客観視はすれど楽観視などしない。

その油断が命取り、寝首を掻かれる要因となるからだ。

 

(後ろの奴らは無理して上がろうとペースを崩したせいで末脚は残ってないはず…であれば13番に何もさせなければ私の勝ちだ!)

 

(何でか知らないけど3番は13番にお熱で私を全然見てない…?ならチャンスかも…!)

 

『ぐっ…いやあ怖い怖い。大分睨みを利かせてるなあ…。』

 

「そのまま引っ込んでろッ!!」

 

睨みを利かせて目論見通り13番(スクリプトロンガー)のスタミナを削る事に成功した3枠3番の娘はその勢いのまま最終直線へと突っ込んだ。

現在先頭は3枠3番、2番手が8枠13番、3番手に5枠8番の娘といった展開となっている。

3枠3番の娘はこの時点で自分の勝利を疑わなかった。

自らの才能を賢さで補ったこのレースはまさしく彼女の自信となるだろう。

 

「よしっ!これで私の勝ちは決まっ…ッ!?」

 

だから、敢えて失敗を上げるとするならば。

彼女は自分が相手をしている奴がどんな奴か()()()()()()()()()()

 

彼女の右側後方からとても『悪意』という言葉では済まされないような感情が噴出する。言うなれば殺意。それも、比喩表現ではなく心の底から恐怖が湧き上がってくるかのような正真正銘の『殺す』という気概。普通の女学生が生きているうちに感じることは無いような悪感情。

 

一体背後はどうなっているのだろう。見ている場合では無いが、所謂怖いもの見たさという奴だろうか。とにかく、彼女は後方を確認した。

 

そこにいたのは、先程までの疲れが嘘のように、変わらず笑顔を浮かべている13番(スクリプトロンガー)がいた。

 

 

『じゃ、頑張って逃げなよ。』

 

 

「ここだあぁぁぁあ!!!」

 

 

「───ひ」

 

 

どれだけ頭が良かろうが。

どれだけ体を鍛えようが。

どれだけ精神が強かろうが。

 

負完全(マイナス)』の前でそんな物は意味がない。

 

 

「うああぁぁぁぁあっっ!!」

 

『おいおい、そんなに怖がらなくても良いだろう?』

 

「1着は私が頂くぞぉお!!」

 

3枠3番の娘は必死に、勝つ為にではなく、死なない為に逃げる。このまま右側を走行していたら13番(スクリプトロンガー)に殺されてしまう。

 

で、あれば。

無意識といえど左側に向かってしまうのは生物としては当然のことだろう。右側に飢えた肉食獣がいるというのにそちらへ向かう草食獣など居はしない。

ともかく彼女(3枠3番の娘)は左側へヨレた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それをレースでは『斜行』という。

 

 

 

 

「──ッ!?邪魔ッ!!」

 

「───え?」

 

 

気づいた時には、彼女は8番の進路を妨害していた。

 

 

大嘘憑き(オールフィクション)。』

 

 

そして、()()()()()()()()()3人はゴール板を駆け抜けた。当然、掲示板には審議ランプが光る。本来1着であるはずの3枠3番の娘が項垂れ、負けたはずの8枠13番が出走前と変わらず笑顔を浮かべている。5枠8番の娘は煮え切らない表情だ。

 

《先頭集団がゴール!!しかしこれは審議になるでしょうか?》

 

《3枠3番の娘が最終直線で斜行してしまったように見えますね。スクリプトロンガーの威圧が上手く決まりすぎてしまった形でしょうか》

 

そうして暫く時間が経ち、審議の結果が出る。

1着、8枠13番スクリプトロンガー。

2着、5枠8番の娘。

3着に3枠3番の娘が降着判定となった。

 

この順位付けとなった理由は様々あるが、主な物を上げるとすれば3枠3番の娘が斜行する前の、5枠8番の娘のスパートの速度が直後再加速したスクリプト(球磨川)の速度を下回っていた為に1着・2着間で順位の変動は無いだろうと判断されたから、そして4着以下の娘たちは大きく離されていたからであった。

 

 

──────────

 

 

チーム《スピカ》は現在良くも悪くも注目されている。

スペシャルウィークの棒立ちライブとかスズカの移籍とかのせいだ。だからデビュー戦にしては珍しく、スクリプト(球磨川)を取材しようとそこそこのマスコミが集まっていた。

マスコミと言っても雑誌記者とか競バ新聞の記者とか、そういう奴らだ。

現在スクリプト(球磨川)は沖野と並んで取材を受けている。

 

「まずはレースお疲れ様でした、スクリプトロンガーさん」

 

『うん、お疲れ。いやー、初めてのレースにしては中々いい走りだと思うんだけどどう?沖野ちゃん。』

 

「ああ、概ね良かったんじゃねえかとは思うな」

 

「スクリプトロンガーさんが再加速した途端3番…テイクスミスさんがヨレたように見えましたが…」

 

『ああ、あれね。なんか知らないけど僕ってスパートする時威圧感振り撒いちゃうみたいでさあ。それが効きすぎちゃったんだろうね。とにかく、悪気は無えよ。』

 

『僕は悪くない。』

 

よくもまあ流れるように嘘を吐けたものである、この『負完全(マイナス)』。あのレース展開は当然(勝手に考えた)作戦だ。

 

「沖野トレーナーは先程のレース展開について何かコメントはありますか?」

 

「そうですね、スクリプトは序盤からかなりレースメイク出来ていたとは思いますが…テイクスミスも頭を使ったレース運びだった。斜行さえなければどうなっていたか分からなかったので正直ヒヤヒヤしていました」

 

『沖野ちゃん敬語とか使えんだ。似合わねー。』

 

「大人なんだからTPOくらい弁えるに決まってんだろ」

 

((なんか距離感近いな…))

 

「あー、まあ何が言いたいかっていうと…スクリプトはあんな展開になったのは意図的では無いですし…胸張って『勝った』とは言えませんし、満足はしてないと思いますね」

 

「ほう、と、いうと…?」

 

『ここは僕から話させてもらおうか。僕としてはさっきのレース、自分自身の力だけで勝ってこのインタビューに臨みたかったわけだ。だけどあのままいけばどちらが勝つかなんて一目瞭然だっただろう?つまり』

 

『また勝てなかった。』

 

『まあそういうわけで、次は誰にも偶然だなんて言わせないレースにしたいかな。』

 

「成程、そういう事でしたか…それではありがとうございました。今日はよく休んでくださいね」

 

『うん、そうさせてもらうぜ。じゃあねー。』

 

「そんじゃ、あざっしたー」

 

特に変な事をするでもなく、滞り無くインタビューは進み、平穏に終わりを迎えた。スクリプト(球磨川)は記者に手を振りながら去り、沖野は最後の最後で自分を抑えることが出来ず砕けた感じになってしまった。

 

 

──────────

 

 

「ちなみにお前レース中何したんだ?」

 

『何って…僕の『過負荷(マイナス)』を使って5枠8番の子の気配と足音と疲れを消して左側から突っ込むように誘導して3枠3番のテイクスミスちゃんが僕を追い抜いた瞬間に僕の疲れも消して威圧して斜行させて降着させただけだけど。』

 

「滅茶苦茶使いまくってんじゃねえか…」

 

『そりゃどうも。』

 

こんなことバレたらレース永久追放である。

沖野は寿命が縮んだ。




レース展開に関してツッコミは無しで頼む。
こちとら初心者や。

感想・評価よろしくね。

『領域』とは別のスキルとか『過負荷』覚えさせるのはあり?

  • あり
  • なし
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。