この素晴らしい世界にARKサバイバーを! 作:アイランド南部の引き篭もり
『地球環境の快復を確認。エレメント確認できません。これまでの長い旅路、お疲れ様でした。……思えば、貴方には無茶を頼みすぎましたね。どうか。次があるのなら、貴方の好きに生きてください。…それではさようなら、サバイバーさん』
美しい青い星。かつては人類が繁栄し、エレメントに支配された星。その名を地球。
エレメントに頼り、争い、荒廃した世。せめてもの希望として多種の方舟が打ち上げられ、それぞれのARKを生きた。
絶滅動物の島に始まり、過酷な砂漠。放射能に汚染された地下世界。そして巨人に生存権を追いやられた未来都市。仮想世界に、数多の世界を渡り歩いた挑戦者がいた。
その姿はなんてことのない人間で、唯一他と違うところと言えば、左の手首に埋め込まれた機械的なオブジェクトくらいだろう。
そんな彼の旅路はようやく終焉の時を迎えた。未知を駆け抜け、地球を救った彼に安息の時が訪れたのだ。
後悔はない。こうなることも判っていた。何より、普通のヒトと比べればあまりに長く生きすぎた。外傷で死んだとて蘇り、約束の時が来るまで寿命を終えることもない。これでいいのだ。
ただ、少し心残りがあるとすれば、あの長いようで閃光のように瞬く日々を送れないことだろうか。……郷愁の念に駆られるには、少し物騒過ぎる気がしなくもないが。
そう苦笑し、
―――そして、陽光の元に目が覚めた。
長らく感じていなかった久しき感覚。これは初めてARKの地に降り立った時のようだ。
何故、という困惑と、長いサバイバル生活で培った反射神経は自然と周囲の状況を把握しようとしていた。
前方に広がる広い草原に……背後は森のようだ。ここは何処だ? 似たような地形は思い出せるが、どれも完全には一致しない。森も、ここまで平坦な道ではないものばかりだった。
どういうことだ? 新しいARKプロジェクトか何かでも始まったのか? どうにも、ここに来た理由が分からない。初めてアイランドで目覚めた日のようだ。まるで何をすればいいのか分からないが…。
けれど、それに興奮している自分がいた。アイランド以外のARKには自分で突入した……今回は本当に最初の気持ちを思い起こさせてくれる。
この草原、今のところ動物らしい動物は見えないが、何があるか分かったものではない。アイランドの比較的安全なスポーン地点でもスピノやカルノはいるものだ。用心はしなければいけない。
ので、まずは木を殴ろう。
手癖でツールを呼び出しそうになり、少しして木の伐採を始めた。わらや木。初めから手に入るこれらは最後までお世話になるものだ。石は拾いにくいが、森の入口付近にいくつかあった。これでピッケルは作れるだろう。
どうやらエングラムは今までのままらしい。ふむ、今までの努力の結晶と捉えるか…この世界で取得できるエングラムに集中できないというべきか。まあ、もし失敗したらマインドワイプトニックでいいだろう。
そんな思考をしている間に、初期装備に必要な物資は整った。全て原始的ながら、石のピッケル、石の斧、槍、そして繊維で編んだ服と靴。遠距離武器は文明の利器、弓だ。新天地ではいつもお世話になっている。
最早見かけもしないこの武装らに頼りなさと力強さの両方を覚えるのは私だけではないだろう。
とにかく、懐かしい装備に身を包んだ私は水源を求めて探索を始めた。水源の重要さはスコーチドアースで文字通り死ぬほど思い知った。これまで幾度となく死んできた私だが、水不足のままじりじりと死んでいくのは辛さ的に五本の指に入るだろう。
草原か森かで迷ったが、やはり目立った敵もおらず、見通しのいい草原に決めた。
程なくして草原を流れる川は見つかった。魚もいたが、シーラカンスの最小サイズよりなお小さかった。おかげで魚肉も一匹から一つとかなり効率が悪い。もし仮に肉食生物をテイムしていたら即座に食料は尽きてしまうだろう。
さて、では水場も見つけたことだし、ここに拠点でも建てようか。どのような地であれ、先立つものがなくてはやっていけない。
そんなことを考えていると、少し先の地面が隆起する。
「ゲコッ」
ベールゼブフォ!? 湿地帯でもないのに何故!? と驚いたが、よく観察すれば色々と違う。まずベールゼブフォより遥かに大きい。あちらが人より小さいのに、こちらのカエルは中型生物程度はあるだろうか。そして、速度もベールゼブフォより鈍重だ。
ともなれば完全に違う動物だろう。見た目もこっちのほうが愛嬌がある気もする。
敵対生物だろうか? 本来のカエルは中立だったが……。向かってくるな。敵対生物だ。二匹いるし、丁度いい。一匹は倒してあと一匹はテイムしよう。こんな場所にスポーンするくらいだ。余程特殊な食料などではないだろうと、サバイバーとしての勘が告げていた。
ピンク色と緑色。レベルは見えない為、色で決めよう。敵対生物に近づきすぎるのも自殺行為なのでな。…早く望遠鏡が欲しい物だ。これでは名前も分かりやしない。
離れ、撃ち。離れ、撃つ。ヒットアンドアウェイ。これが出来ないやつはサバイバーとして失格だ。まあ、十分な戦力があったり、作戦次第ではゴリ押しもあるから一概には言えないが。
そうこうしている内に、ピンク色のカエルは死んだ。最大まで引き絞った矢で5発。レベルが分からないため比較は出来ないが、原始的な弓でこれならレベル1のトリケラ相当だろう。
少しこちらまで引き付け、死体から肉を回収する。ジャイアントトードという名前らしい。するとどうだ。手に入ったのはfrog meat、カエル肉だ。私は今までにない衝撃に見舞われた。だって、今まではドードーだろうと虫だろうとワイバーンであっても通常の肉しか落とさないのだから。例外は羊だが、そちらも中々レアだ。
そして、次に驚いたのが量だ。石のピッケルで採取しているというのに、なんと70も採れた。トリケラのおよそ2倍近い量だ。ここら一帯がこいつの生息地なら、当分食料に困ることはなさそうだ。
さて、ではこちらのジャイアントトードをテイムしようか。体力数値がトリケラと同等なら盾役にはなるだろう。懸念としてはトリケラには頭部の85%のダメージカットがある点だが、この際背に腹は代えられない。
それにベールゼブフォのように虫類特攻とセメント精製があるかもしれないと考えると、このチャンスを無碍にするわけにはいかない。予め作っておいた棍棒とパチンコが久しぶりに日の目を浴びる瞬間だ。
―――…
おかしい。明らかに100発以上の石を当てているのに気絶しない。レベル80のトリケラですら70程度で昏睡値は貯まるのに。そう疑問に思いながらも、ここまで来たからには捨て置けない。逃亡時に拾った石も出し尽くす勢いでいこう。
結局ジャイアントトードが気絶したのは200発を越えてからだった。ここまでやって尚体力に余裕があるというのだから恐ろしい。
だがレベルは15、体力は同レベル帯のトリケラより少し低い程度だった。やはりダメージカットが作用していたらしい。…となれば、私の狙いが悪かったのか、はたまた…。
とにかく、時間を使いすぎた。水分も危ういし、焼いた魚肉は直ぐに無くなった。焚き火のある川辺まで行き、補充しておこう。気絶値の回復速度は遅く、その程度の時間はあるだろうと踏んでの行動だった。
「あれ、このジャイアントトード寝てねぇか?」
「ホントだ。冬眠してたのが寝ぼけて這い出てきたとか?」
「何にせよ、ラッキーだな。ダストがいないから俺しか前衛がいなかったからな…」
私が意気揚々とその場に戻ると、カエルは無惨な死体となってそこに転がっていたのだから。
なっ、何をするかぁーっ!!
「うおっ、びっくりした。人? 冒険者…にしては装備がお粗末だが」
弓を装備した軽薄そうな男が弓を向けながら言って来た。
だが、その他の二人は顔を見合わせるような仕草をし、頭に鉢巻を巻いた男のほうが前に出てきた。
「おい、やめろキース。すまない、もしかしてアンタの獲物だったか?」
獲物? まあ、気絶させてから殺す猟法もあるから、それと勘違いしたのか。そうだと頷く。
「おいおい、いい狩り場とかならともかくたかがジャイアントトード一匹だろ? そこまで怒ることかよ。それにそこまで大事ならさっさと仕留めとけば良かったじゃねーか」
仕留めるだって? とんでもない。あれを気絶させるのにどれだけ時間がかかったことか。
「気絶って、まさかそのパチンコでか?」
これまたそうだと頷くと、彼らは一様に顔を見合わせて大笑いをした。確かに見た目は原始的だが、それを笑うなどとサバイバーの鑑にもおけない。
その不機嫌そうな顔に気づいたのか、彼らもそれを納める。
「すまんすまん。悪気はなかったんだ。だが、ジャイアントトード相手にただの服とパチンコって、一体どんな戦い方したらいけるんだと思ってな」
「ホントだよ。ジャイアントトードには打撃は殆ど通じないのに」
なんと、打撃全般に耐性があるのか。それは知らなかったと素直に礼を言う。道理であれほど時間がかかった訳だ。次からは麻酔矢を量産しよう。
「ん? 知らないでやってたのかよ。そりゃある意味凄えな。まぁ、そんだけ頑張ったのを台無しにして悪かったな。ギルドに帰ったら何か埋め合わせでもしてやるからよ」
ギルド? ギルドとは何だ? トライブの一種なのか?
「ギルドは何かって…冒険者ギルドに決まってるだろ。変なこという奴だな」
冒険者ギルド?
「………マジで?」
マジだ。
「アンタ一般人かよ!!?」
「えっえっ、待って。何で冒険者でもないのに戦ってるのこの人!?」
冒険者とは何なのだろうか。サバイバーとはどう違うのだろう。第一、生物を倒すのに冒険者でなければいけないということはないと思うのだが……。
弓持ちの男と女性があたふたとしていると、リーダー格らしき鉢巻の男がこう告げた。
「えーと、外で会った以上はしょうがない。取り敢えず、最寄りの街まで行くから着いてきてくれるか? 二人共、それでいいよな?」
「お、おう。もともと今日はダスト抜きだからあんま長時間はやらないつもりだったしな」
「私も、それでいいと思う。っていうかここで見捨てるなんて出来ないし」
「賛成だな。アンタも、それでいいよな?」
おお、意外と親切だった。冒険者ギルドとやらもそこで分かるのだろう。サバイバーたるもの未知の世界には惹かれるものだ。それに、彼らのことなども気になるからな。答えは当然YESだ。
あ、その前に焚き火の肉を回収しなければ。少し待ってほしい。
「別にいいが、何か持ち物でもあったのか?」
お近づきの印にカエル肉をプレゼントだ。一人15個程度だが、誠意は見せられたと思う。
「あ、これはどうもご丁寧に。包み…?」
「って、ステーキがいっぱい!?」
「お、おおお!! マジでありがとな! これで食費が浮くぜ……! アーチャーは何かと出費が多くてな…。マジありがてぇ…」
何だか分からないが、好感触そうなのでヨシ!
理由もなく人に手をかけない分まともな方
すいません、テイラー鎧じゃなかったですね…