この素晴らしい世界にARKサバイバーを!   作:アイランド南部の引き篭もり

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オベリスク≒祭壇

 

 自らを冒険者と称する三人組に着いていくと、そこには高い外壁で覆い尽くされた、広大な町並みが広がっていた。

 同じ様式の家々が立ち並び、街路や水路などもうまく活かした美しい景観をしている。

 私がそれに目を奪われていると、横合いから声をかけられた。

 

「ここがアクセルの街だ。アンタ来たことは?」

 

 案内してもらった冒険者のリーダー、テイラーだ。それに私は否と答える。

 

 いや、ここまで立派な街は見たことがない。私も大型建築をしたことはあるが、それは自分とテイムした生物たちのため。いわば他の生活の場、というより目的に沿った施設という方が相応しいだろう。

 

 即ち、それぞれの家。共用スペースである道や商店などはなかった。

 

「はは。そりゃ確かにアクセルは始まりの街だけあって栄えてるが、王都なんかはもっと凄いぞ?」

 

 なんと、それは後学のため是非とも一度は拝みたいものだ。あなた達はその王都に行ったことは?

 

「いや、ない。今のは聞いた話なんだ。いずれ行きたいとは思ってるんだがな…」

 

 テイラーはどこか遠くを見るように言う。行けばいいではないか。

 

「無理無理、今のわたし達じゃ向こうのレベルに追いつけないし」

「観光にしても行くのは冒険者として行きたいからな」

 

 ふむ。そこは所謂過酷な場所にあるのか。私も雪原や湿地帯には装備やペットが揃うまで近づきたくはなかったからな。分かるとも。

 

「まあ、そういうことだ。俺達はこのまま冒険者ギルドに行くが、アンタはどうする? あんなことをするくらいだし、冒険者としても活躍できると思うんだが」

 

 おお、早速冒険者ギルドというやつか。確かに気になっていたし、この話に乗らない手はない。よろしく頼むとしよう。

 

 

―――…

 

「あ、いらっしゃいませー。お仕事関係なら奥のカウンターへ、お食事なら空いているお席へどうぞ!」

 

 どことなく薄暗い店内。そして動き回る布の服の女性や、たむろする様々な装備の人間たちがいた。皮の服に鉄の槍を持った者、大きな剣に鉄鎧を装備した者。果てにはただの服に棍棒のような長い棒を手にした者まで様々だ。

 その奥に設けられたカウンターに迷わず進むと、そこにいた女性と何やら話を進めていく。

 

「テイラーさん達、お帰りなさい。クエストの報告ですか?」

「いや、そっちもあるけど、確か期限は明日まででしたよね。 それよりこの人が用事があるみたいで…」

「はい。そちらの方ですね? ご要件を伺いますね」

 

 ああ、私か。私は冒険者になりたいのだが、何も分からなくてな。説明を込みで聞きたいのだが、いいだろうか。

 

「はあ…。そういうことなら説明しますね。まず、冒険者とは―――

 

 

 

――――という訳です」

 

 ははあ、なるほど。クエストとは、決められた時間以内に指定の条件を達成することでを報酬を得る、ジェネシスのミッションの様なものか。

 違いとしてはいつでも受けられるのがミッションで、誰かが困らなければ発生しないのがクエストといったところか。

 

 さらに、職業やレベルアップなんかも私の知っているものとは細部が異なっていた。

 レベルアップが経験を得ると自動で行なわれ、ステータスもまた同様に上昇する。サバイバーやペットというよりは野生の生物に近いだろう。

 職業やスキルなどの、地球の定義とは外れたそれらの存在も面白い。

 

「はい。以上になりますが、冒険者登録をされますか?」

 

 勿論だ。私も一端のサバイバー。耐えられる自信はあるとも。

 

「分かりました。登録料は千エリスとなりますがお持ちでしょうか?」

 

 ……登録料? すまないが、私はエリスという通貨は持っていない。ヘキサゴンならジェネシスへ行けばあると思うが……。ヘキサゴンは使えるのか?

 

「へ、ヘキサゴン…? 申し訳ありませんが、こちらの通貨でお願いします…」

 

 しまったな。それも当然か。このような報酬のやり取りがある組織に所属する以上、対価は必要と考えて然るべきだったな。

 すまないが、登録はまた次の機会ということにさせてもらおう。

 

 と、この場を去ろうとしたところに待ったの声がかかる。

 

「いや、ちょっと待った。千エリスくらいなら俺が出すよ」

 

 テイラーだ。

 …いいのか?

 

「それくらい構わない。むしろ払わせてくれ。獲物を横取りした上、あんなものまで貰っておいて何もなしはバチが当たるからな」

 

 リーンにキースも頷いている。

 おお、なんと懐が広いのだ。やはり親しまれやすい行動はするべきだな。ありがとう。

 

 そうして、登録料も出してくれることとなり、私は無事最初の関門を突破出来た。

 

「確かに千エリスお預かりしました。ではこちらの紙に身長、体重、年齢、身体的特徴等の記入をお願いします」

 

 身長はいいとして年齢は…。はて、私は何歳なのだろうか。まあ、それっぽいことを書いておけばいいだろう。そして身体的特徴は…と。ホモデウスレコードの件は別にいいだろう。

 

「はい、【サバイバー】さんですね。それではステータスを測りますね。ええと……はっ!? はああああっ!? 何ですこの数値!? 魔力がかなり低いこと以外、全てのステータスが大幅に平均値を越えてますよ!? 生命力と筋力も尋常じゃないのに、知力と器用度が桁違いに高いですよ!?」

「おいおいマジかよ…!?」

「何そのステータス!?」

 

 まあ、これでも最大レベルだ。恐竜とだろうがマトモに殴り合える性能はしている。

 

「あ、幸運は平均でしたね。まあ、冒険者に幸運ってあんまり必要ないので……あの、なんで顔を顰めているんですか?」

 

 ギルドの女性が放った一言に思わず渋い顔。高レベルワイバーンの卵。フェニックス。至高の装備にイベカラ150…。幸運に作用される苦行はあらかた行ってきた故の顔だ。せめて幸運が高ければもう少し楽になったのだろうかと考えると涙がこぼれそうだ。

 

「と、とにかく、高い魔力を必要とされる職業以外は何だってなれますよ! クルセイダーにソードマスター、石工に細工師に………? す、すみません。この器用度ですので生産系が多くなっていますが……どうします?」

 

 

 なるほど、高い体力と耐性のクルセイダーに、近接攻撃の強いソードマスター。面白い。面白いのだが…、私としては様々なスキルを修得していきたいと考えており、あまり一つのことに特化するのも考えものだ。

 何より、エングラムポイントを振り分けるような、無限大の可能性から掴み取りたいというのは私の我が儘だろうか。

 

「様々なスキルを修得出来る職業…? 一応、全てのスキルを覚えることのできる“冒険者”という職業ならありますが……」

 

 あるのか!?

 

「え、ええ。ですがスキル習得にはより多くのポイントが必要になり、職業の補正も無いので同じスキルでも本職の効果には及びませんよ…?」

 

 それでいい。むしろそれがいいのだ。サバイバーなら、変に特化するより器用貧乏と言われたほうがまだ生き残れる。既に鍛えられたステータスのバランスを崩すのが阻まれたから。というのもある。

 

 是非! 是非とも冒険者にしてくれ。

 

「そ、そこまでお望みなら…。では冒険者…っと。ですがあなたのステータスならば他の職業にも引けを取らないと思っております。冒険者ギルドへようこそ【サバイバー】様! 専科百般の活躍を期待しています!」

 

 そう言って、手渡されたカードを受け取る。これが私の冒険者としてのステータス。私の接続できるインベントリとは趣の異なる形式だ。

 

「すごいじゃん君!!」

「まさか、それほどとは思わなかったな…」

「マジか……」

 

 そんなこんなの一悶着もあり、こうして、私の新天地最初の一歩は踏み出されたのだった。

 

 

 

 

―――…

 

 

 

 

 フンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッフンッアェアッ!(石を掘る音)

 

 時の流れは早いもので、あれから一年が経過した。あまりに早く感じる人もいるかもしれないが、それらは文字通り瞬く間に過ぎ去っていった。

 

 具体的に言うと、膨大な資材集めや建築に奔走していたのである。

 

 そしてこの一年の間に、私の冒険者生活は豊かなものになっていた……などということはない。

 

 クエストには当然依頼人がいるもので、問題が解決したら当然同じクエストは受けられない。

 それをあの人数で奪い合うのだから、所詮美味しいクエストなんかは掲示板に張り付いている人に取られてしまっていることが多いのだ。

 

 よって、普段は資材を集め家を拡張することに力を向け、偶に冒険者ギルドに寄っては資材集めついでにジャイアントトードを狩る。そんな生活をしていた。

 

 家については、この街の管理人に話を聞きに行き、好きに使っても問題ないという土地を頂いた。

 どうやらそこは雑草は生えまくり、木々や大きな石など、建築に適した場所ではなく、また撤去しようにも然程重要視されていないから費用が回らない、という理由だった。

 

 当然これらは直ぐに回収し、お馴染み藁の豆腐ハウスを作って一日目を終えたのは記憶に新しい。

 

 木材建築や、生活の基本が整ったところで、私は早速オベリスク探しの旅に出た。お供は途中で捕まえた真っ黒のサーベルタイガーのようなものだ。因みに享年4ヶ月である。レベル80まで育ったが、誤ってマグマに落ちてしまった。

 

「それで、まだ探しものは見つからないの?」

 

 冒険者ギルド内で項垂れる私に、この一年で知り合った盗賊の少女、クリスが声をかける。知り合った経緯は私の住居に不法侵入していた彼女をボーラで捕まえたことから始まるが…そこは割愛しよう。

 

 そう。そうなのだ。恐ろしいことにオベリスクが見つからないのである。

 もとから不思議には思っていた。今までは空を仰げばどこかにオベリスクを視認することは出来ていたのだが、ここにはないのだ。

 ここから見えない地にあるのだと信じて遠出もしてみたが、やはり無かった。最早、かつてのあの地を見ることは出来ないのだろうか…。

 

 はあ…。なんだかナーバスになって来た。これは地形にスタックして動けなくなった時や時間をかけて集めた仲間を喪った時レベルだ。ああ、このモチベーションもない状態で食料を消費するのも馬鹿らしい…。死にたい…。死んで生肉の貯蔵を増やしたい…。

 

「そ、そんなに落ち込まないでよ。そうだ、明日にでもエリス教会に行ってみたら?」

 

 教会? 目の前の少女はエリス教徒だからと適当を言っているのではないだろうか。そう疑る視線を感じたのか、慌てて手を振って否定する。

 

「いやいや! 流石にそんなことしないって。ただ、ほら。君の探し物もエリス様なら見つけられるかもしれないでしょ? エリス様は下界を見守ることも出来るし、祈れば声が届くかもしれないよ?」

 

 ふむ、そのような存在がいるのなら、確かにあり得るかもしれない。ヘレナも人類から見れば神に等しい。一笑に付すことなど出来ない。

 分かった。早速行ってみることにする。ありがとう。

 

「え、ちょっ、今からはちょっと駄目なんじゃないかなー!? その、エリス様も色々と忙しいと思うし――」

 

 そうと決まれば善は急げだ。最低限の装備は持って向かおう。

 

 そして着いた。思えばこの教会という施設には今まで一度も入ったことがなかった。

 内装は質素で、長椅子が並べられ、石造りの壁と上部の色付きグラスがいい味を出している

 

「おや、冒険者の方ですか? この度はどのようなご要件で?」

 

 プリーストらしき装いの女性が話しかけて来たので、素直に女神エリスへと祈りと相談をしにきたのだという。

 

「そうでしたか。ではそちらの祭壇へ向けて祈りを捧げになられてください。大丈夫ですよ、エリス様はきっとあなたの悩みもお分かりになられていますから」

 

 祭壇か。もしやこれが女神へと声を届ける何かを備えているのだろうか。……そういえば、オベリスクもある意味では祭壇のような場所だったな。貢物を捧げ、ボスを召喚するという……?

 ……何か今チラッと見えたな。もしや、もしや…?

 

 跪いた姿勢から突如立ち上がり、祭壇へと向かうことあなたに、女司祭は困惑の表情を浮かべる。

 

 そして、見えた。どういう原理かは分からないが、確かにインベントリがある。ボスの召喚の類は出来ないようだが、転送などの機能は不足なく機能するらしい。

 そうと決まれば―――!

 

「え、消えた…!? テレポート……いえ、一体何が? まさか、エリス様……?」

 

 こうして、謎の勘違いを残したまま、あなたはこの世界から姿を消したのだった。

 

 

 

――――…

 

 

 

 死した者のみが辿り着くという、天界。この一面真っ黒の部屋は一人の神によって運営され、その担当世界の死後の行く道を決める場所でもある。

 

「はぁ…はぁ…! さ、流石にせっかち過ぎです…。さっきだってやっと下りたのに、もう戻ってくるなんて……」

 

 息を切らして疲れた顔を見せる銀髪の女性。特徴的なゆったりとした服装に身を包んだ彼女の名はエリス。幸運を司る女神である。

 この世界で最もメジャーな宗教で、ベルゼルグ王国の国教となっていたり、通貨の単位にもなっている。

 因みに通貨の単位が神の名になっていると聞き、どこぞのやべー奴(ロックウェル)を思い出したのは内緒である。

 

 そして、浮かび上がるようにそこにある椅子の上に身を置き、息を整えるエリス相手であろうが、あなたは躊躇しない。

 

 おや、クリスじゃないか。クリスの言う通り、教会に行ったら見つかったよ。本当に感謝する。

 

「ほんと? それは良かっ………た……」

 

 投げかけられた見知った声に咄嗟に顔を上げたエリス……否、クリスは顔をピタリと硬直させる。

 

 対面の椅子に座るのは、何を隠そうあなたである。この暗闇を松明で照らしながら見つけた彼女に声をかけたのである。 

 

「だ、誰かと勘違いしていませんか…? 私は死後の世界を案内する女神、エリスと言います。断じてエリス教徒の盗賊の少女とは関係がありませんよ?」

 

 いや、間違いなくクリスだろう。いや、この感じだとクリスの正体が女神エリスだったと言うべきか。

 というか名前が見えているのでそのような嘘は通用しない。違う肉体を使っているのなら分からなかったが、その名前とIDから当人で間違いない。

 

「いえ、私は別人で…」

 

 クリス。

 

「私は…」

 

 クリス。

 

「違…」

 

 クリス。

 

「………はい」

 

 ヨシ!

 

「って、違いますよ!!」

 

 急に叫び声を上げたエリスに、貴方は驚いた。

 まだ言うか、クリス以外にありえないであろう。

 

「あ、いえ。そっちはもうそれでいいです。はい。…あの、バラさないで下さいね…?」

 

 それは勿論だ。態々名を変えて活動しているのだから秘密にしておきたいのだろうからな。

 

「ありがとうございます…。あの、何故天界(ここ)に…? まさか、死んでしまったのですか…?」

 

 ああそうだった。本題を忘れかけていた。探しものは教会の祭壇だったんだ。

 

「私の教会の祭壇が…?」

 

 …というよりは、探し物と同じ機能を持っていたのが祭壇であったのだ。

 では時間も迫っているのでさらばだ。とりあえずこちらに資材やペットを持ち込んでみよう。TEK系列にMEK、ああ、トロペオグナトゥスやメイウィング辺りが便利だったからな…。後は拠点防衛用にプラントも持ってきて―――。

 

「あの…、ここに来た理由をまだ聞いていないんですけど……」

 

 こちらの世界とはどのような相性になるだろうか。夢が広がるなぁ…!

 手始めにアイランドからだな。

 

 そう願うと、あなたの体は粒子状になって消え去っていった。

 

「あ、消えた。……結局、何だったんでしょう……?」

 

 困惑する女神をその場に残して。





感想の際、ARKで楽しかった思い出、これが苦しかった。これが思い出に残っている。などのことがあったら付け足してもらえると幸いです。自分以外のサバイバーの体験なんかは貴重ですから。そして分かち合いたい
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