この素晴らしい世界にARKサバイバーを!   作:アイランド南部の引き篭もり

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やあサバイバーの諸君。サバイバルライフ、楽しんでいるかな? 私はまだアイランドで日和ってるよ。ちくせう


アクセル拠点と影が薄い方のアレ

 

 満足だ。ああ満足だ。満足だ。

 思わず声に出したくなるほどにいい出来の拠点になった。

 

 既に地球に着陸した他ARKから持ってきた恐竜たちもこちらに馴染んだ様だ。こちらの生物との軋轢等もなく、敷地内に遊ばせておくことが出来た。

 

 改めて、この拠点を見て回っていこう。

 

 まず、この世界で建てた拠点はアクセルという街の使われていない土地から広げていったものだ。外壁は景観を重視して石の壁。高さは巨大な石の恐竜用ゲートに合わせ、壁上には歩ける程度のスペースを確保している。

 何故ここまで高くしたかと言うと、4マス程度であれば拠点の様子が丸見えになってしまうからだ。立地的に防衛に向いているというわけではない為、警戒くらいはしておくべきだろう。

 

 一度拠点に入れば、そこには恐竜達が整列している地域に差し掛かる。ドードーの群れは自由に放浪し、ユタラプトルやサーベルタイガー、ダイアウルフ等などの素早いペット達。プルモノスコルピウスやアラネオモーフスらの昆虫等様々だ。

 

 分かると思うが、この辺りにはアイランド産の動物を多めに配置している。この世界には私の知らないスキルや魔法というものがあるらしく、未だ全てを知っているわけではないそれらへの警戒として、貴重な生物は置かないようにしている。

 

 拠点近くは特に防衛すべきだと考え、ティラノやTEKティラノ、ギガノトなどの高い戦闘能力を誇る生物らが中立で置いており、夜間はメガロサウルスを数頭配置している。

 

 たまにその日の気分でマグマサウルスやロックドレイク、リーパーキングなどを置いているが、普段はポッドの中で眠っている。

 

 まだまだ配置している生物はいるが、割愛。

 

 敷地内にはいくつかの建物があり、マップごとに纏めた生物達の家や農園、生け簀、倉庫に作業場となっている。

 本拠は機能的でありながら生活感を保ち、内部の家具、施設、放し飼いにした小型生物達など、この世界で学んだ建築様式や意図などを意識して造りあげた。かなりの自信作だ。

 

 農園は複数あり、4階建ての全面温室の壁で、一つごとに育てるものは変えている。とはいっても、プラントXやYは拠点防衛に使えるためにこちらにはない。

 そしてこれまた驚いたのだが、初級魔法である『クリエイトアース』で造った土を菜園に使用すると効果が上がったのだ。具体的に言うと肥料効果が長続きしやすくなり、野菜の成長速度が10%程度上昇していた。

 

 当然、ロックウェルの触手も問題なく育つことが出来ている。

 そして、ここが一番見てほしいのだが、この世界で手に入れた固有の植物も栽培できたのだ。

 

 主にキャベツにサンマなどだ。他にも栽培できる野菜はあったが、どれもわざわざ育てるほどではなかったということだ。

 キャベツは育ち切ると動き始め、周囲を漂うのだが、ある一定の期間を超えると、何処かへ旅立とうと壁に体当たりを始めるのだ。

 そのため温室の壁では心もとなく、止む無く石建材で覆っている。この世界の植物食生物に対して他の野菜よりも効果的だ。こちらで有効なキブルが分からないうちはこれが最も良かった。

 そしてサンマ。どう見ても魚だ。ロックウェルの触手が育てられるので別に気にしないが。

 こちらは魚肉目的ではなく魚目的だ。カワウソなどの特殊な手渡しテイムでは安定した供給が出来ている。あとはスタックできる数が魚肉よりも多いことが特徴だ。

 

 作業場と倉庫はそのままで、特に紹介することもないだろう。最後に生け簀だが、こちらはテイムしたシーラカンスやメガピラニア、セイバートゥースサーモン、そしてこちらでテイムしたバナナ何かが泳いでいる地域だ。

 こちらは水場に乏しいのでベールゼブフォの産卵場所としても機能している感じだ。

 

 この拠点の大まかな説明は以上だ。一応他にも拠点はあるが、その中でも最も大きく発展しているのがここだ。

 

 それと、当初許可を取った土地よりも遥かに広がってしまっている件に関しては、外壁近くだったために本来の外壁を取り除き、その向こうに壁を広げる形で補った。当然、その分の料金は支払っている。

 

 巷では『一夜要塞』だの『最終防衛ライン』だの言われているが、悪意はないので放っている。

 

 …にしても、拠点のレイアウトやこちらの世界のブリーフィングなどで暫く外に出ていない。かれこれ2ヶ月近く籠もっていたのではないだろうか。

 

 こちらでは正しい地球と同じように時期に応じて気温が変化するのだ。タイタンに支配されていた当時は地球の自転が止まってしまい、時間経過による気候の変化というのは過去のものとなっていた。…つまり、この世界に蔓延る魔王軍とやらはキングタイタンやエレメント程の影響力は持たないのである。

 

 それは置いといて、そろそろ冒険者としての活動を再開してもいいのではないだろうか。懸念だった元の地球にも戻れたことだし、憂いはなくなった。未知のアイテムや冒険、新たな動物のテイムに専念することにしよう。

 それと、ペットを誤って攻撃しないように冒険者ギルドにも通達しなければいけないな。

 とはいっても、初心者殺し(真っ黒のサーベルタイガー)でも相当警戒されたのだ。それを遥かに超えるこれらが一度に来ては驚いてしまうのではないだろうか。

 暫くしてからは私が初心者殺しを従えていても日常として溶け込めていたように、慣れというものが必要だ。

 

 ――その時、サバイバーの脳裏に電撃が走る。

 

 逆に考えるんだ。見かけない強力なペットに怯えるのなら、身近な場所に私のペットがいればいいのでは?と。

 勿論だがギガノトを放置するようなマネはしない。私は気遣いができるサバイバーなのだ。

 

 いわく、生活へ受け入れやすいものとは、いかにメリットがあるかどうかだと考えている。

 これは私の経験だが、過酷な環境であるスコーチドアースやアベレーションなんかは多少の慣れはあれど、何度行っても馴染むものではないが、新しくテイムした便利な生物やアイテムなんかは翌日には無くてはならない存在と化しているのだ。これは人類共通の心理と言えよう。

 

 ならば、ほどほどのサイズで、受け入れられやすい個体とは―――――こいつだ。

 

 

 

 

 

 久方ぶりの街並みをのし歩く。道の中央を進んでいくと、人々は私を見、次にその背後に視線を移してはギョッとして道を開ける。

 ふむ、視覚的に見れば然程怖くはないと思うのだが……。これも馴染み深い現地の生物との違いか。人々の視線を集めながら、私は目的地。冒険者ギルドの門戸を叩く。

 

「いらっしゃいませー、お仕事関係なら奥のカウンターへどうぞー!」

 

 元気に告げた給仕の顔が、私の背後を見て強張る。昼間のこの時間に集まって話をしていた冒険者集団も、話を止めてこぞっとこちらに視線を向ける。

 

「あっ、お久しぶりですね【サバイバー】さん。2ヶ月ぶりくらいでしょうか? それで、本日はどのようなご要件でいらっしゃったのですか?」

 

 これまでに何度もクエストの達成をしており、すっかり顔馴染みとなったギルド職員に、本日の要件を伝える。

 

 こいつをこのギルドに置かせてはくれないだろうか。

 

 そして私がどくと、そこには四足歩行のトカゲが巨大化した様な見た目。そして何より目を引くのがその身の丈以上の大きな背びれ。

 

 そう、その正体は歩くエアコンその2こと、ディメトロドンだ。

 

「あの……、何故そのようなことを?」

 

 うむ。この2ヶ月でペットも増えたので、その報告と、攻撃しないよう慣れてもらうためだ。

 

「はあ…、確かに不慮の事故の防止というのは分かりますが、その…」

 

 チラッとディメトロドンに目を向ける。

 

「当ギルドで飼育するには設備もないですし、何よりそれだけの理由で引き受けることは出来ません」

 

 結論を急ぐのはまだ早い。説明不足だったが、ちゃんとそちらにも利益のある話だ。

 まず、これから冬に入るだろう? そうなると冒険者も住処から出てこなくなり、金のめぐりも悪くなる。しかし、このディメトロドンがいれば話は別だ。

 

「こちらのモンスターが、ですか?」

 

 ああ、ディメトロドンには自分の周囲を適切な温度に保つ能力がある。その証拠に、暖かくなった気がしないか。

 

「あ、確かに程よい気温だな」

「ホントだ。さっきまで肌寒かったのに…」

 

 仕事場であるギルドが暖かければ、やる気も出るのではないだろうか。何なら、外へクエストに行くパーティーにはディメトロドンを貸してもいい。これでも足手まといにはならない程度の強さはあると思う。

 

 そうして稼ぎが出来た冒険者は暖かい空間で食事を取りたいだろうから、自然とここで食事することになるだろう。あなた達ギルド職員も細かい作業などはかじかんだ手では厳しいだろうし、利はあると思うのだが。

 

「成程、確かにそれならば好意的に捉えられますね…。何か特別な世話などは?」

 

 いや、いらない。元々活発に動くものでもないし、大丈夫だ。それと、餌はこちらで出た肉類の残飯などを食べさせて貰えれば問題ない。ディメトロドンが正しく機能すればそれも困難なものではないだろう。

 

「確かに、冒険者の皆さまが料理を頼むほど、彼らの餌も増える。といったことでしょうか」

 

 そういうことだ。それで、返事を聞かせてほしいのだが。

 

「…メリットがあることは理解しましたが、それは私の一存では決められません」

 

 そうか…。

 

「ですが、他の方々はどう思われますか?」

 

 その問いかけに、冒険者やギルド職員は口々に声を上げた。

 

「俺は賛成だな。確かに便利だし、害がないってんならいいと思うぜ」

「ぽかぽかしてあったかいし、クエスト中もついてきてくれるならありがたいよね」

「それに、よく見ればちょっと可愛いかも…」

「書類仕事に手の寒さは天敵ですもんね」

 

 おお…、思ったよりも好評だ。

 

「というわけで、満場一致の賛成となります。ここまで賛成案が出ているのですから、費用もかからない以上は問題ないでしょう。初めての試みということもあり、最初は試験的に、ということになりますが、それでよろしいでしょうか」

 

 ああ、問題ない。私のペットが役立てるのなら不満はない。

 

 その言葉を交わすと、物珍しさと暖かさから、冒険者やギルド職員が10匹のディメトロドンに群がっていた。

 

「おお、ホントだ。暑すぎず、寒すぎず…丁度よくあったけぇや」

「結構ザラザラしてるのね…」

「まさかギルド内でモンスターを飼うことになるとは思いませんでしたが……これもいいですねぇ…」

 

 早速人気者のようだ。多人数に囲まれているにも関わらず、ディメトロドンは慣れた様子で意にも介さない。…いや、無抵抗にしとくと例え襲われてようと顔色一つ変えないが…。

 

「ねぇねえ、お肉食べる?」

 

 顔の前で持っていたステーキを揺らし、バクリと食いついた様に「食べたー!」と興奮の声が上がる。

 

 うむ、やはりペットが褒められるのはいい気分だ。私も嬉しくなる。

 

 それでは、久しぶりにクエストでも受けようかとボードを眺めていると、一人の冒険者から質問が投げかけられる。

 

「なあなあ、こいつら名前は何て言うんだ?」

「あ、それ私も気になる」

 

 名前? 無いぞ。ただ気温調節に役立つから複数捕まえただけだし…。

 

「「「愛がねえ!!?」」」

 

 全方位からのツッコミが、あなたに一挙に突き刺さった。

 

 

――――…

 

 

 その後、冒険者たちがこぞって名前を投票し、うち一匹の名前が「たむたむ」になったことは、完全に余談だろう。





 この話の時系列はアクアやカズマが土木作業をしている間の話になります
 カワウソじゃない方の登場。感想、評価などお待ちしております。他にも、自らのARKでいい意味でも悪い意味でも思い出に残ったこと、辛かったこと、楽しかったことなどがあれば教えてくれると幸いです。

 因みにこのディメトロドン達は本当に数だけ揃えてあり、下は25、上は48レベルまでの低レベルしかいません。

サバイバーのステータス。マインドワイプトニックで変化できるので常にこれではない。

体力   400(30)
スタミナ 420(32)
酸素   100(0)
食料   100(0)
水分   100(0)
重量   600(60)
近接   275(35)
速度   130(20)
忍耐   104(2)
作製   200(10)

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