一般元国民的アイドルの日記 in あべこべセカイ   作:村岡8bit

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10日に一本投稿滑り込みアウト


夏の日のバスケットボール 後編

 

「ふっ」

 

 放たれたボールが綺麗な弧を描き、スポリとゴールに収まる。

 

「いよっし」

 

 暁山さんが小さくガッツポーズを決める。

 

「はぁ…はぁ…」

 

 対する私は肩で息をしながら膝に手をついていた。

 

 ……この人、めっちゃバスケ上手いんだけど!

 

 男の人相手に手も足も出ないなんて……私の女としてのプライドはもうバキバキだよねぇ!

 

「もう一本、やろう」

「あっはい……」

 

 うぅ……イケメンの力に抗えないよぉ。

 

 一本だけのつもりが、暁山さんがあと一本、もう一本と言って、私はそれを断ることもできずに1on1をかれこれ5本くらい?

 

 そして今もまた断れなかった。こんな良い顔で頼まれて無理ですと言う方が無理でしょ……

 

 ていうか遥はまだなの?もう十分くらい経ってるんだけど……早く帰ってきて……!

 

「よし、それじゃ……あ、ちょっと待って」

 

 そう言うと暁山さんは、おもむろに彼が着ているカットソーの裾に手を掛け───────裾に手を掛け!?

 

「えっ!?あっあっあっ」

 

 咄嗟に顔を手の形をパーにしたまま覆い隠すが、指と指の隙間から垣間見える衝撃的な光景に動揺を隠せない。

 

 ななななんで急に服脱いでるの!?まま待ってなんで!?

 

「体動かしたらめちゃ汗掻いたわ。あっついー」

 

 のほほんとした表情でパタパタと顔を扇ぐ暁山さん。

 

 上に着ていた服を脱いだ彼の格好は、タンクトップ一枚に膝に掛からない程度の丈のショートパンツという極めて露出度の高いものになっていた。

 

 あぁぁぁ……こ、こんな破廉恥な……。

 

「じゃあ、やろう」

「あっ、はっはい!」

 

 ウソ、本当にその格好でやるの?

 

 いや、いやいやいや!無理!無理!暁山さんは平気そうだけど私が耐えられない!

 

 でも今はいって言っちゃったよなぁ私……これはもう、覚悟を決めるしか……

 

「すぅ、はー……」

 

 よし。

 

 ボールをバウンドさせながらこちらを待つ暁山さんに向かい合い、構えを取った。

 

 数秒間の沈黙が流れる。

 

 落ち着け。集中、集中するんだ。

 

 ……無理!目のやり場に困ってそれどころじゃないよぉ!

 

 なんで肩が出てるの?なんで鎖骨が出てるの?え?もしかして誘ってる?誘ってるよね。

 

「あっ」

 

 健全な女子高生的思考が巡る中、いつの間にか私をドリブルで抜き去っていた暁山さん。

 

 やば……!

 

 ハッと振り向いて腕を伸ばすが届かない。

 

「ほいっと―――」

 

 気の抜ける掛け声と共に暁山さんの両足が地面を離れる。

 

「―――な!」

 

 ガタン!

 

 豪快な音を立てながらボールがゴールに叩き込まれる。

 

「ダンク……!?」

 

 ヤッバ……女相手にダンク決めてくる男の人とか初めてみたんだけど……。えぇ、えぇぇ……?

 

 私が目を白黒させていると、暁山さんは片手でゴールリングにぶら下がったまま、もう一方の手でVサインを作って私に向けてきた。

 

 どやぁ、と言わんばかりに自慢気な顔だ。

 

「どやぁ」 

 

 ホントに言ったよ。分かりやすい人だなぁ。

 

 ストンと着地し、ふぅと息を吐いてから、暁山さんは口を開いた。

 

「満足した」

 

 やっとか……と胸を撫で下ろす。

 

 よくやった、私の理性。よくぞ耐えてくれた。マジで。

 

 もし仮に、我慢出来ずに白石杏の中の白石杏が暴走し暁山さんに手を出していたとしたら、未成年なので豚箱に送りにはされないだろうが、私は自らの本能に従い無防備な男性を襲った愚かな女子高生として最悪の形で脚光を浴びることになり、社会的地位を失うことは勿論、私の大切な仲間たちも私から離れて行くという醜悪過ぎる結末を迎えていたことだろう。

 

 想像しただけでもゾッとする話だ。

 

「にしても、やっぱあつい」

 

 身体をたくさん動かしたからだろうか、暁山さんの頬は赤みを帯びている。な、なんというかちょっとエッチ……。

 

 暁山さんの額から吹き出た汗がフェイスラインを伝い、顎先に溜まって、やがて滴り落ちていく。

 

 なるほど、これが汗も滴るいい男……

 

「タオル無いし、これでいっか」

「え?」

 

 何を言っているのかと思うのも束の間、暁山さんは両手を裾の方から服の中に手に入れ込み、それを折り曲げるようにして顔に近付けた。

 自分の着ているタンクトップをタオル代わりとして顔を拭こうとしているのだろう。

 

 そして今、彼はタンクトップの下には何も着ていない。

 

 

 この偶然的に完成した状況下、すると、必然的に引き起こされる事象がたった一つだけある。

 

「〜〜〜ッ!?」

 

 腹チラ。

 

 それは、全女子の夢と言っても過言ではないだろう。

 

 普段はヴェールに覆われ姿を見せない絶対的領域。それがふとした瞬間、何気ない彼の行動によってちらりと顔を覗かせる。

 その破壊力たるや、核弾頭のごとし。

 偶然見えちゃうのもよし、むしろ見せ付けてくるのもよし。

 シチュエーションは無限大。ふへへ。

 

 青天の霹靂と言うに相応しい衝撃的でエッッッッッッすぎる光景。

 これを眼前にして冷静で居られる女なんて絶対に存在しない。断言できる。

 

 コンマ0.数秒、高速回転する私の脳みそとは反対に、私の身体は化石のように固まってしまい、視線は暁山さんの下腹部へと釘付けになっている。

 

「ふーっ……っ!」

 

 顔が燃えちゃいそうなくらいに熱い。うーん、夏だからかな?

 なんてすっとぼけることが出来る辺り、私実は結構余裕あったり、無かったり……?

 

「暑っちー。今日暑すぎ。ね、杏ちゃん」

 

 ツー、と、鼻の下に生温い感覚が一筋。

 

 やべ、鼻血出てきた。

 

 すかさず、鼻を口ごと手で覆い隠す。

 

 興奮しすぎて鼻血出すって……漫画とアニメの中だけのことかと思ってたよ……

 

「うい、お目汚し失礼いたした」

 

 いつの間にか汗を拭き取り終わっていた暁山さん。こちらを向いてペコリとお辞儀をする。

 

 ちょっっっ、今の顔を見られるのは色々とマズい……!

 

「ふっ、ふみまへん!ほいえいっへひはふ!」

「えっ、おー、トイレ?うん、行ってらっしゃーい」

 

 焦りに焦った私が取った選択は逃亡。半ば涙目になりながら暁山さんを背に走り出した。咄嗟の判断にしては悪くないと思う。

 

「トイレそっちじゃないよー」

 

 トイレどこぉぉぉ!

 

 

 

 

 

 トイレでの用を済ませ、暁山さんと杏の待つバスケットコートへと戻る最中、真っ赤な顔を片手で抑えた杏が物凄いスピードでこちらへと駆けてきた。

 

「杏?どうしたの?……なんでそんな鼻血……大丈夫?」

「はるかぁぁあぁ……あ、あきやましゃんがぁぁ」

「あぁ……うん」

 

 杏の一言、たった一言で理解した。なるほど、どうやら杏も祐希さんに色々と破壊されたみたいだ。

 

 正直、祐希さんと二人きりにした時点でこうなるんじゃないかなと予想はついていた。

 にしても、流石に鼻血噴き出すまでとは思わなかったけど。

 

「強く生きなよ杏。はいティッシュ」

「ありがとう……」

「落ち着いたら戻ってきなよ?」

「うん……」

 

 杏の肩をポンと叩いて場を後にする。

 

 早く祐希さんのところに戻らなきゃ。折角久しぶりに会えたんだし、彼の隣で過ごす時間は一分でも、一秒でも、惜しいものだ。

 

 

 

 

 

「すみません、お待たせしました」

「お、遥ちゃんおか〜。なんか杏ちゃん、凄い形相でトイレ行ってきます!つって走って行っちゃったんだけど」

「あぁ、はい。さっき私とすれ違いました。杏ったら、なんでか鼻血出しちゃって、それを祐希さんに見られたくなかったとのことです」

「鼻血!?……もしかして俺気付かないうちに、杏ちゃんの顔面にボール叩き込んじゃってたり……」

「……ふふ、かもしれませんね」

 

 流石にそれはないでしょう。そう喉から出かかったのをぐっと堪える。祐希さん、絶対にありもしないことを至極真剣そうな顔で言うから、大丈夫かな?悪い人に騙されて変なことされたりお金取られたりしてないかな?って、不安になる。

 でも、そこが祐希さんの可愛い所なんだよね。

 この人には私が居なくちゃ駄目なんだって、思わされる。

 本人はそういう意図とか全然無く無意識でやってくるから質が悪い。

 

 そこでふと、祐希さんの格好に目が付いた。

 

「あの、なんでそんな薄着なんですか?」

「あー、杏ちゃんとバスケしたらめっちゃ汗搔いて、それで」

「へぇ……」

 

 ふーん……。

 

 杏、私が居ない間に祐希さんと二人きりでそんなことしてたんだ……。

 

 バスケをする、なんて、多分それは、とても些細なことで、祐希さんにとっては有り触れたことなんだと思う。この人距離感とかその他諸々バグってるし。

 

 それでも、少し妬いちゃうなぁ。

 

 私の知らないところで、祐希さんが女の人と……そう考えるだけですごくもやもやする。

 

 祐希さんにその気は無いって分かっているし、杏にだって……いや、ちょっと危ないかな。ううん、だいぶ危ない。

 

 ……この程度のことにジェラシーを感じてしまう私は、きっと、とても小さな女だ。

 

 そのことを実感する度に、自分が嫌になる。

 

 私なんかが、祐希さんの隣りにいてもいいの?

 そう自問して、私の中で出る答えはいつも、私にとって好ましくないもので、それが私の自信のなさの現れみたいで、もっと自分が嫌になって、どんどん自分が情けなくなって……

 

「……」

「……うし、じゃあ遥ちゃん。杏ちゃんが戻ってくるまで1on1やらない?」

「やります!」

 

 わーい。

 

 

 

 杏がトイレから戻って来て、その後一時間か2時間か、3人でバスケをしてから解散となった。杏が定期的に鼻血出してはその場を離脱していたので、祐希さんと二人で過ごせる時間が結構多かった。嬉しい。

 

 帰り際、祐希さんから連絡先を聞き出すことに成功した。ドサクサに紛れて杏とも連絡先交換していたのはちょっと不満だった。

 

 しかし、このことは今日一番の収穫だと言える。

 

 いつでも、好きなときに祐希さんと話せる。いや、私と祐希さんにも都合があるからいつでもということはないだろうが。

 

 帰り道、早速祐希さんにメールを送った。

 

 

祐希さん

 

既読
祐希さん

 

既読
もしよかったらでいいのですが

 

既読
うちのグループの練習

 

既読
見てやってくれませんか?

 

既読
メンバーの中に少し

伸び悩んでる子がいて……

 

いいよ

 

ありがとうございます!

 

 

 

 

 っっしゃあオラァ!!!




白石 杏:無事男性観を破壊された。
桐谷遥:幼少期にオリ主に出会ったせいで色々と大変なことになっている。
わぁ、キャラがどんどん崩壊していく。


ワイ「杏ちゃんこんな難しい言葉使えなくないか?杏ちゃんもっと頭悪ぃい!(褒め言葉)……まぁいいか!!よろしくなあ!(推敲せずに投稿ボタンぽちー)」

↑作者がこんなんだから仕方ないね。

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