転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

200 / 439
この世界線のヒトラーは、割と剛柔使い分けるタイプだと思う。
あと、割としょーもないハイドリヒの秘密が一つ明かされるw




第197話 ご対面 ~総統閣下が意外とおもろいオッサンだったとしたら、割とリアクションに困る件について~

 

 

 

「余人を交えず、こうして歓談できる日を楽しみにしていたぞ。フォン・クルス卿」

 

 と会議室……ではなく、個人の執務室、そこにしつらえられた応接セットで俺を出迎えた総統閣下である。

 

「……ちょっとフレンドリー過ぎやしませんか? 総統閣下」

 

 プッと噴き出すハイドリヒ。

 いや、こっちは笑い事じゃないんだが?

 

「生来、私は堅苦しいのは苦手な性分だ。格式や様式を気にしない相手には、相応に接したい。君もそのクチ(・・)ではないのかね? フォン・クルス卿」

 

「降参です」

 

 俺は両手を掲げて、

 

「確かに私も堅苦しいのは苦手です。それにここにはおそらく”同郷”の人間しかいない。部屋の外の事は一旦忘れ、気安く行くのは賛成です」

 

 そう、部屋には俺とハイドリヒ、そして総統閣下……アウグスト・ヒトラーしかいない。

 ちなみに紅茶を淹れつつ、茶菓子……ザッハトルテを切り分けているのはハイドリヒだ。

 絵面的に似合わんことこの上ない。

 

「国家保安情報部長官自ら淹れていただいた紅茶を楽しめるとは、贅沢の極み」

 

 ちなみにティーセット一式は、”これぞマイセン!”といわんばかりのブルーオニオンで統一されていた。

 なんとなくだが、ヒトラーはあまり華美な物、装飾過多な物は、「自分が使う分」には好まない気がする。

 あと、多分面倒臭がりだ。

 直感だが……茶器の選び方にこだわりが無く、「定番押さえときゃどうにかなる」とか考えてる気がする。

 

「違うぞ、フォン・クルス。一番の贅沢は、このザッハトルテが我が妻の手製だという事だ。ちなみに妻は今年で18歳だ」

 

 げっ……俺も人のことは言えんが、「奥様は女子高生」かい。

 ああ、なんか年齢差から考えると、後妻っぽいな。

 

「それは有難く。その年齢ならば、部下にNTRされることもありますまい」

 

 前世の話だが、シェレンベルクがハイドリヒの妻と浮気して、ハイドリヒに毒殺されかかったのは割と有名な話だ。

 ちなみに妻が浮気した理由は、ハイドリヒ自体の女癖が悪かったから。

 ちなみに史実のシェレンベルクも、占領下のパリでココ・シャネルと愛人関係にあったというのだから、あっちも大概だ。

 

「ふむ。まあ、そうだろうな。元妻とシェレンベルクとの関係は破綻したようだが」

 

「そ、それは重畳」

 

 な、なるほど。毒殺未遂じゃなくて普通に離婚ね。

 でも、コイツって女癖悪い感じはしないんだよな~。性格の不一致ってやつか?

 すると、ヒトラーは微かに微笑み、

 

「女性関係ではなく、仕事に熱中し過ぎたせいだ。当時は今とは比べ物にならぬほど多忙でな。元日本人の君ならわかるだろう?」

 

 前世込みで理解はできる。

 

「”レーヴェ”には正直、すまなかったと思ってる」

 

「ふん。”オージェ”に謝ってもらうようなことじゃないさ。ところで、場の温めはこれで十分か?」

 

「ああ。これで少し空気が柔らかくなった。感謝する」

 

 えっ? ハイドリヒ、前説だったのか?

 いや、確かにコイツの別に興味ないプライベートなんか聞いたせいで、すっかり空気は弛緩したが。

 それに、あだ名で呼び合う関係ねぇ~。

 

「フォン・クルスがお前に感謝したいそうだ」

 

 ヲイヲイ。ここで振るか?

 

「あー……まずは式典を簡略化していただいたことに感謝を」

 

「気にするな。戦時中につきこちらも緊縮財政の折りだ。互いにWin-Winという理解で良いだろう」

 

 何というか……言い回しが凄く転生者だ。

 

「それと、皇国から追放された私にドイツ国籍を与えてくれたことにも」

 

「それこそ気にするな。それは”ドイツの事情と都合”でもある」

 

 あー、やっぱり?

 外交的に色々裏工作、いや裏取引か?をしたんだろうなって想像はついていたが。

 

「では、それについては感謝を取り下げるとして……」

 

「貴殿も言うな? ここは”Sie ist ohne Ehre(チキショーメ)”とでも叫ぶべきか?」

 

 ………どうやら総統閣下にも遠慮はいらんらしい。

 というか、ハイドリヒもニヤついてるし。

 いや、なんで普通に”総統閣下の空耳”シリーズ知ってんだよ?

 実は、前世は日本人だったってオチじゃないだろうな?

 

(そのうち、”und betrogen worden(おっぱいぷるんぷるーん)!”とか普通に言いそうな怖さがあるな)

 

 ある意味、個人的には親しみやすいが……それでいいのか? ドイツ国民よ。

 

「ところで……一つ聞きたかったのですが、なんで”総督の短杖”に”プール・ル・メリット(ブラウラー・マックス)”がくっついてるんです? これ、明らかにあの勲章と同じデザインですよね?」

 

「何を言ってる? 同じデザインどころか保管されていたブラウラー・マックスのパーツをそのまま流用したものだぞ?」

 

「ヲイコラ」

 

 仮にもプロイセンで最も名誉ある勲章の一つとされていた物を。

 いや、でも廃物利用と考えれば悪くないのか?

 皇帝の退位で廃止された勲章なわけだし。

 

「まあ聞け。その宝杖は、”バルト海特別平和勲章”をモチーフに私がデザインしたのだが……」

 

「総統閣下自らがデザインしたんかいっ!?」

 

 おまっ、実はこの短杖ってとんでもない価値があるんじゃ……

 いや、そういえば俺が知ってる歴史のヒトラーも勲章とかデザインしてたな。

 

「うむ。職務の気分転換にな」

 

 片手間でやってたんかーいっ!

 なんか、一気にありがたみが薄れた気分だった。

 ハイドリヒ、抑えているつもりだろうが、しっかり笑い声聞こえてるからな?

 

「だが、いざデザインしてみるとどうも何か物足りなくてな……具体的にはドイツ成分が足りない気がした」

 

 ドイツ成分ってなんだ? ゲルマン魂とかの亜種か?

 

「そこで、NSRがブラウラー・マックスの現物、そして部品を保管してたことを思い出してな。試しにつけてみたら、こうしっくり来たわけだ」

 

 いや、ノリ軽いなっ!?

 

「一応、マルタ十字の八角には、騎士の八徳の意味もあるしな」

 

 マルタ十字の示す八徳ってのは、”マルタ修道騎士の八つの美徳”のことで、たしか……

 

 ・忠誠心

 ・敬虔さ

 ・率直さ

 ・勇敢さ

 ・名誉

 ・死を恐れないこと

 ・弱者の庇護

 ・教会への敬意

 

 だったか?

 

「総統閣下、私には八徳の一つも無いんですが?」

 

「……なるほど。君は自身をそう見ているのかね?」

 

 ん? 今の間はなんだ?

 

「加えて言うなら、サンクトペテルブルグで”正教会を復活”させる以上、八端十字を使わせる訳にはゆくまい? フォン・クルス、君は正教会の意向で総督になるのでは無いのだからな」

 

 ああ、つまり……

 

「近くなりすぎるな、と?」

 

「政教分離の精神は、近代政治の大原則だ。知らぬ訳ではあるまい?」

 

 ようやく真面目な話ってことかねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、顔合わせ自体は式典でしてるのですが、面と向かって話し合うのはお初の来栖改めフォン・クルス総督と、総統閣下でした。

今回は、軽い会話からスタート。
一応、フォン・クルスの人柄や”間違いなく転生者”、「共産主義絶対殲滅マン」であることは聞いていたので、こんな出だしになりました。

そして、ハイドリヒの再婚した奥様が若すぎる件についてw
ザッハトルテに限らずお菓子作り全般が得意みたいですよ?

ご感想、お気に入り登録、評価などどうかよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。