転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
あと、割としょーもないハイドリヒの秘密が一つ明かされるw
「余人を交えず、こうして歓談できる日を楽しみにしていたぞ。フォン・クルス卿」
と会議室……ではなく、個人の執務室、そこにしつらえられた応接セットで俺を出迎えた総統閣下である。
「……ちょっとフレンドリー過ぎやしませんか? 総統閣下」
プッと噴き出すハイドリヒ。
いや、こっちは笑い事じゃないんだが?
「生来、私は堅苦しいのは苦手な性分だ。格式や様式を気にしない相手には、相応に接したい。君もその
「降参です」
俺は両手を掲げて、
「確かに私も堅苦しいのは苦手です。それにここにはおそらく”同郷”の人間しかいない。部屋の外の事は一旦忘れ、気安く行くのは賛成です」
そう、部屋には俺とハイドリヒ、そして総統閣下……アウグスト・ヒトラーしかいない。
ちなみに紅茶を淹れつつ、茶菓子……ザッハトルテを切り分けているのはハイドリヒだ。
絵面的に似合わんことこの上ない。
「国家保安情報部長官自ら淹れていただいた紅茶を楽しめるとは、贅沢の極み」
ちなみにティーセット一式は、”これぞマイセン!”といわんばかりのブルーオニオンで統一されていた。
なんとなくだが、ヒトラーはあまり華美な物、装飾過多な物は、「自分が使う分」には好まない気がする。
あと、多分面倒臭がりだ。
直感だが……茶器の選び方にこだわりが無く、「定番押さえときゃどうにかなる」とか考えてる気がする。
「違うぞ、フォン・クルス。一番の贅沢は、このザッハトルテが我が妻の手製だという事だ。ちなみに妻は今年で18歳だ」
げっ……俺も人のことは言えんが、「奥様は女子高生」かい。
ああ、なんか年齢差から考えると、後妻っぽいな。
「それは有難く。その年齢ならば、部下にNTRされることもありますまい」
前世の話だが、シェレンベルクがハイドリヒの妻と浮気して、ハイドリヒに毒殺されかかったのは割と有名な話だ。
ちなみに妻が浮気した理由は、ハイドリヒ自体の女癖が悪かったから。
ちなみに史実のシェレンベルクも、占領下のパリでココ・シャネルと愛人関係にあったというのだから、あっちも大概だ。
「ふむ。まあ、そうだろうな。元妻とシェレンベルクとの関係は破綻したようだが」
「そ、それは重畳」
な、なるほど。毒殺未遂じゃなくて普通に離婚ね。
でも、コイツって女癖悪い感じはしないんだよな~。性格の不一致ってやつか?
すると、ヒトラーは微かに微笑み、
「女性関係ではなく、仕事に熱中し過ぎたせいだ。当時は今とは比べ物にならぬほど多忙でな。元日本人の君ならわかるだろう?」
前世込みで理解はできる。
「”レーヴェ”には正直、すまなかったと思ってる」
「ふん。”オージェ”に謝ってもらうようなことじゃないさ。ところで、場の温めはこれで十分か?」
「ああ。これで少し空気が柔らかくなった。感謝する」
えっ? ハイドリヒ、前説だったのか?
いや、確かにコイツの別に興味ないプライベートなんか聞いたせいで、すっかり空気は弛緩したが。
それに、あだ名で呼び合う関係ねぇ~。
「フォン・クルスがお前に感謝したいそうだ」
ヲイヲイ。ここで振るか?
「あー……まずは式典を簡略化していただいたことに感謝を」
「気にするな。戦時中につきこちらも緊縮財政の折りだ。互いにWin-Winという理解で良いだろう」
何というか……言い回しが凄く転生者だ。
「それと、皇国から追放された私にドイツ国籍を与えてくれたことにも」
「それこそ気にするな。それは”ドイツの事情と都合”でもある」
あー、やっぱり?
外交的に色々裏工作、いや裏取引か?をしたんだろうなって想像はついていたが。
「では、それについては感謝を取り下げるとして……」
「貴殿も言うな? ここは”
………どうやら総統閣下にも遠慮はいらんらしい。
というか、ハイドリヒもニヤついてるし。
いや、なんで普通に”総統閣下の空耳”シリーズ知ってんだよ?
実は、前世は日本人だったってオチじゃないだろうな?
(そのうち、”
ある意味、個人的には親しみやすいが……それでいいのか? ドイツ国民よ。
「ところで……一つ聞きたかったのですが、なんで”総督の短杖”に”
「何を言ってる? 同じデザインどころか保管されていたブラウラー・マックスのパーツをそのまま流用したものだぞ?」
「ヲイコラ」
仮にもプロイセンで最も名誉ある勲章の一つとされていた物を。
いや、でも廃物利用と考えれば悪くないのか?
皇帝の退位で廃止された勲章なわけだし。
「まあ聞け。その宝杖は、”バルト海特別平和勲章”をモチーフに私がデザインしたのだが……」
「総統閣下自らがデザインしたんかいっ!?」
おまっ、実はこの短杖ってとんでもない価値があるんじゃ……
いや、そういえば俺が知ってる歴史のヒトラーも勲章とかデザインしてたな。
「うむ。職務の気分転換にな」
片手間でやってたんかーいっ!
なんか、一気にありがたみが薄れた気分だった。
ハイドリヒ、抑えているつもりだろうが、しっかり笑い声聞こえてるからな?
「だが、いざデザインしてみるとどうも何か物足りなくてな……具体的にはドイツ成分が足りない気がした」
ドイツ成分ってなんだ? ゲルマン魂とかの亜種か?
「そこで、NSRがブラウラー・マックスの現物、そして部品を保管してたことを思い出してな。試しにつけてみたら、こうしっくり来たわけだ」
いや、ノリ軽いなっ!?
「一応、マルタ十字の八角には、騎士の八徳の意味もあるしな」
マルタ十字の示す八徳ってのは、”マルタ修道騎士の八つの美徳”のことで、たしか……
・忠誠心
・敬虔さ
・率直さ
・勇敢さ
・名誉
・死を恐れないこと
・弱者の庇護
・教会への敬意
だったか?
「総統閣下、私には八徳の一つも無いんですが?」
「……なるほど。君は自身をそう見ているのかね?」
ん? 今の間はなんだ?
「加えて言うなら、サンクトペテルブルグで”正教会を復活”させる以上、八端十字を使わせる訳にはゆくまい? フォン・クルス、君は正教会の意向で総督になるのでは無いのだからな」
ああ、つまり……
「近くなりすぎるな、と?」
「政教分離の精神は、近代政治の大原則だ。知らぬ訳ではあるまい?」
ようやく真面目な話ってことかねぇ?
という訳で、顔合わせ自体は式典でしてるのですが、面と向かって話し合うのはお初の来栖改めフォン・クルス総督と、総統閣下でした。
今回は、軽い会話からスタート。
一応、フォン・クルスの人柄や”間違いなく転生者”、「共産主義絶対殲滅マン」であることは聞いていたので、こんな出だしになりました。
そして、ハイドリヒの再婚した奥様が若すぎる件についてw
ザッハトルテに限らずお菓子作り全般が得意みたいですよ?
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