転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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不穏なサブタイですが、ちょっと作風を少し変えて、偶には国境やしがらみを超えた友情物語などを。
ただし、(年齢的には)オッサン同士であるw

どうやら、黒海はまだ続きのエクストラ・イベントがあるみたいですよ?







第244話 「どうやら死に場所が決まったようだな?」

 

 

 

 さて、ソ連の赤農海軍とて優秀な人材が居ないわけではない。

 また、コミンテルンネットワークは、破壊活動ができるほどではないが、諜報活動ができる程度には根を張っていた。

 

 故に今やソ連西部に残存する最後の海上兵力となったソ連海軍”黒海艦隊”司令部は、ヴァルナを母港とするメルセルケビールから回航されたと思わしき全ての艦船が1942年8月の再戦力化していないことを把握していたし、また、目的不明で出撃した2隻の戦艦を含む6隻が現状、再戦力化できた全ての船ではないかと判断できた。

 

 故に、未だに完全な回復に至っていない赤軍上層部に「艦隊出撃」の許可を求めたのだ。

 その理由は、

 

”未だ戦力化に至っていないドイツ黒海艦隊の未成熟艦を「ヴァルナ港ごと封滅する」ため”

 

 にである。

 本来なら許可が下りるはずのない作戦だった。

 だが、「陸()空からセヴァストポリ要塞が猛攻を受けている」という無線連絡(何故か電波妨害は受けていないので通信が届いた)が入った事で状況が変わった。

 

 その悲鳴のような通信内容から、既に陸海空が封鎖され、誤魔化しようのない孤立状態にあったセヴァストポリ要塞が陥落するのは時間の問題とされた。

 古来より、「外部から援護や支援のない籠城戦」は必ず失敗すると相場が決まっていた。

 だからこそ、ソ連海軍は”起死回生の一手”を選んだのだ。

 

 投入できる”スクラップ再生戦闘艦”は、全て出払っている。

 今なら、まだ戦力化に至っていない船ごと港を撃滅できるという黒海艦隊司令部の提案に賭けたのだ。

 ”日和見的な現存艦隊主義(フリート・イン・ビーイング)(まか)り通る普段の赤色海軍なら有り得ない投機的……というより冒険的作戦。

 だが、それに賭けねばならぬほど黒海に限らず、ソ連海軍全体の情勢は悪化していた。

 タリン沖で史上空前の大敗北を喫したことに始まり、バレンツ海ではなんら戦争に貢献できず、何も出来ないまま、させてもらえないままに壊滅した。

 残っている黒海艦隊も、今やジリ貧。

 ドイツ人の猛攻に耐えきれず、上層部の判断とはいえ母港であるセヴァストポリを叩きだされた。旗艦がガングート級戦艦”セヴァストポリ”だというのに、耐えられない程の屈辱だった。

 名前を変更する計画もあったらしいが、「この屈辱を忘れない」という意味をこめ、また再びセヴァストポリを母港にするという誓いと共に、今の名前に拘った。

 

 

 だからこその”ヴァルナ強襲作戦”。

 ヴァルナにいるのが、本当に元メルセルケビールの仏艦隊だとするのなら、その戦力が十全に修復された後では、どう足搔いてもソ連の黒海艦隊では勝ち目が無くなる。

 港に閉じこもっているだけでは、バルト海艦隊がそうであったように港ごと焼き滅ぼされる事だろう。

 だからこそ、

 

()られる前に殺る……!!」

 

 今となっては少数派になってしまった赤色海軍の中で猛将の資質を持つ漢、”ゴーリキー・プーシキン”黒海艦隊提督は、この一戦に駆ける。

 艦隊として復活してしまえば、正面から殴り合っても勝ち目はない。

 だからこそ、「敵が正面から殴り合えない状態にある」今だからこそ、仕掛けるのだ。

 

 この上ない、”意趣返し(カウンター)”が放てると期待して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そして、グルジアのパトゥミに避難し、仮初の母港としていたソ連黒海艦隊が「突如、出撃した」と判明したのは、出港してすぐの事だった。

 皮肉なことに、これを最初に発見し、通報したのはトルコの黒海哨戒部隊だ。

 

 しかも、その時に発見したのは「(名目上、日本の商社を通して)スクラップ船団を地中海から黒海に通した」対価として、日本皇国から教官(軍事顧問団)込みで供与された駆逐艦だった。

 

 少し補足すると、「監査でスクラップであることは確認したが、”真相”がバレればソ連の恨みを買う」と当然の発言に対し、その対応として提示したのが、この”教育プラン付駆逐艦提供”だ。

 

 実際、本国のダウングレード版とはいえレーダー/ソナーを標準搭載し、長10サンチ65口径長両用砲を連装で2基、61サンチ四連装魚雷発射管×1(再装填装置付)、標準爆雷投下装置に加えてヘッジホッグ前方対潜機雷投射器などで武装した史実より500t以上排水量の大きな”松型”戦時量産型駆逐艦だ。

 

 これが中々のキワモノで皇国海軍の開戦以降の標準駆逐艦となっている”島風型”対潜駆逐艦や”秋月型”防空駆逐艦と同じく高圧缶ボイラー(蒸気タービン)と2段減速歯車装置をシフト配置で搭載し、ブロック工法・全電気溶接で量産性の高いこの船は中々に実戦での使い勝手が良い。

 まさにワークホースであり、トルコに教官付きで供給された4隻は、確かにやろうと思えばソ連黒海艦隊に対抗できなくも無かった。

 

 戦艦”セヴァストポリ”相手には魚雷くらいしか対抗手段がないが、一番警戒しなくてはならない潜水艦に対する手数は多く、またソ連黒海艦隊の数的主力である小型艦艇には水上レーダー連動の1門あたり(史実と違い額面通り)毎分20発近い発射速度を誇る半自動装填式の長10サンチ砲は、十分に凶悪だろう。

 また、両用砲という名目だが本質的には高角砲寄りの性質であるこの砲は、対空レーダーと連動させた時は近接信管との組合せで更に凶悪さを増すようだ。

 自己緊縮式・砲身内と薬室内をクロームメッキ処理するという近年の皇国軍火砲のトレンドを押さえた長10サンチ砲は、中々に評判が良い様だ。

 

 とはいえ、今回はその火力や性能を十全に発揮する局面ではなく、むしろレーダーや無線機が武器となった。

 

「”ソ連黒海艦隊、出撃セリ”か……」

 

 その日本人教官の呟きは、そのまま暗号電文ではなく無指向性の国際チャンネルを用いた”平文(・・)”で打電され、それは当然のようにドイツにも傍受される事になる。

 無論、ドイツ黒海艦隊司令官ヨハン=ゲオルク・フォン・フリーデブルク中将は、感謝の言葉こそ返信しなかった(公式的には、トルコの海上哨戒任務部隊が本国に普通に報告を打電しただけだ)が、その意図を読み間違える事はなかった。

 

 

 

***

 

 

 

「”ヨハン坊や”、どうやら俺たちの死に場所が決まったようだな?」

 

 そう冗談でも口ずさむように陽気にヴァルナのドイツ海軍黒海艦隊司令部に入ってきたのは……フランスからのゲスト、フランス海軍駐ヴァルナ軍事顧問団代表ジャン=ジャック・ブーサン少将だった。元フランス・メルセルケビール艦隊の副提督だ。

 彼は自らがヴァルナ居残り組フランス人のリーダーで、教官の頭であるのだから、ドイツ黒海艦隊の現状を誰よりも把握していた。

 

 第一次世界大戦前に建造され、その大戦を生き残った元フランス海軍の古株、”プロヴァンス”と”ブルターニュ”、加えて水上機母艦の”コマンダン・テスト”は、まだ乗員の慣熟訓練は始まったばかりだ。

 そして、ロシア人がヴァルナへ向かっているだろう今、それに対処できるだけの力は、まだドイツ人の船乗りには備わってないということも。

 

 

 

「ジャン=ジャック、あんたらは技術指導教官だ。死ぬのは給料に含まれていない」

 

 共に愛称やファーストネームで呼び合うまでに”同じ海軍軍人”として意気投合したジャン=ジャックに、ドイツ黒海艦隊司令官ヨハン=ゲオルク・フォン・フリーデブルク”中将はそう返すが、

 

「今はドイツの物でも、あの船共は故郷(フランス)生まれだ。半人前どころか頭に卵の殻を乗っけたひよっこ共のヘマで沈められるのも御免だし、戦わずに沈められるのはもっと御免だ」

 

 フリーデブルクは、彼のフランス式の言い回しを誤解することはなかった。

 だから、こう短く返すのだ。

 

「……良いのか?」

 

「”誓って戦果を稼ぐ”だ。提督殿(・・・)

 

 教本に載せたくなるほどのフランス海軍式敬礼を決めるブーサンに、フリーデブルクはドイツ国防海軍式敬礼で返礼し、

 

「良いだろう。ドイツ黒海艦隊司令官権限において、これより非常事態宣言”Case:5963”を発動させる! これより、宣言解除までの間、独仏軍事協定の盟約に従い、フランス海軍少将ジャン=ジャック・ブーサンならびにその麾下にあるフランス海軍軍事顧問団を、ドイツ国防海軍軍人としての階級と権限を認める!!」

 

 万が一に備え、総統閣下自ら「特例的事態に関する例外的処置」として与えられた特別権限として、ブーサンに「戦闘部隊を実戦指揮する権限」を与えるフリーデブルク。

 紛れもなく英断であった。

 

「死ぬなよ、ジャン=ジャック。お前に味合わせたいモーゼル・ワインはまだあるんだ」

 

「あいよ。俺っちもお前に飲ませたいボルドー・ワインはあるしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして黒海で行われた数少ない海戦、その中でも最大規模の戦いと言われる”ヴァルナ沖海戦”が幕開けるっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけで、独仏の「戦場の友情」でした。
平均年齢高めだけどw

このシリーズに耽美などを期待してはいけません。

でも、割と「元メルセルケビールの副提督が、金の為でなくかつての敵国の臨時外人部隊(?)となって、馴染みの古い戦艦と共に赤軍を迎え撃つ! しかも、生え抜きの船乗りは少数、残りはひよっこ共ばかりなり」とか燃えるシチュエーションではないかな~と。

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