転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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という訳で、言い方変えればネタ晴らし回&悪巧み回






第285話 仕込み(露・独風)&仕込み(和風)

 

 

 

 それはソチの代表団が戻る機上での一幕……

 

 

 

「どうでしたか? リュシコフ代表(・・)、我らが大公殿下(・・・・)は」

 

「シェレンベルク特務(・・)少将、それ、人前で呼ぶのはやめてくださいね? あの男は今でも自分が代表だと信じている……信じ込ませているのですから」

 

「あなたこそ人前で”特務”は付けないでくださいよ?」

 

 シェレンベルクは知っていた。このリュシコフという男が、ソ連国内での”最高機密作戦”に従事していたことを。

 リュシコフは知っていた。実は目の前の少将を名乗る男こそが、実質的な国家保安情報部(NSR)のNo2であることを。

 

「少将、とりあえず質問に答えますと……恐ろしい御仁ですな。そして、おそらくは歴史上屈指の”宗教家”でもある」

 

「というと?」

 

「宗教や信仰をあそこまで”政(まつりごと)の方便”と認識している方はそうはいないでしょう。主観ではありますが、宗教に飲み込まれているようでは宗教家とは呼べない。自分と宗教を切り離し、道具として宗教を使いこなしてこその宗教家です。そして、本当に恐ろしいのは……」

 

 リュシコフは言葉を切り、

 

「そうでありながら、あの御仁の言葉には”噓がない”。本気で民に幸あれと思ってる……宗教の教えではなく、呼吸をするように当たり前の本心として。理解しましたよ。なぜ、総統閣下(・・・・)はあの御仁を高く買っているかを。共産主義は決して民を幸せにしない。だから、彼は何が無くとも共産主義の敵であり続ける……なるほど、実に理に適っている(・・・・・・・)

 

 シェレンベルクは満足そうに頷き、

 

「少し早いですが……長きにわたり潜入内偵任務、お疲れ様でした。リュシコフ特別調査官(・・・・・)

 

「いえいえ。こちらこそ、新たな”仕え甲斐”のある上司に巡り合わせていただき感謝を」

 

 

 

 

***

 

 

 

 ゲンバラ・リュシコフ

 1900年生まれ。ロシア革命の最中に潜入し身分を偽り、20年もの間諜報活動を続けた生粋のスパイマスターである。

 現在の所属はNSR。ただし大本は「”第一次世界大戦敗戦後”のドイツ復興の青写真を書いた組織」であり、その命により潜入工作を図る。

 エジョフの配下に居たのは、「潜在的敵国の有能な軍人を間引き(・・・)するのに一番都合がよかった」から。

 赤軍大粛清は、彼にとり天祐だった。しかし、史実より遅くなったエジョフの失脚(粛清)と共に、家族(ソ連側の受け皿となった協力者一家。実際には血の繋がりはない)や妻子とともに行方をくらます。

 どうやらエジョフ配下時代からカタコンペ派と(お目こぼしを取引材料に)接触を図り、家族共々彼らの中に潜伏し脱出の機会をうかがっていた模様。 ただし、この”本当の経歴”が公開されることはなく、ソ連からは史実同様に「裏切者」認定され続ける事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1942年晩秋、日本皇国、首相官邸

 

 

 

「ふ~ん……ヤンキーが本格参戦の予兆ね」

 

 皇国首相、近衛公麿の手元にある資料には外務省情報部、軍統合情報部、内務省公安部、そして英国諜報機関より提出された情報を元に首相直轄の”内閣調査室”でまとめられた内容が記されていた。

 

「ようやく本腰入れる気になったのはいいが、米国書記長(ルーズベルト)は赤い幕僚たちとつるんで議会工作の真っ最中。軍は全般的に乗り気じゃないか」

 

 そして、近衛は呼び寄せていた官房長官の広田と外相の野村に、

 

「広田サン、野村サン、各国の情勢から考えてそろそろ米国を”泥沼に引き摺り込んで(・・・・・・・・・・)”良い頃合いだと思わないか?」

 

 すると広田は、

 

「まさかアメリカに軍事的挑発を仕掛けるのではあるまいな?」

 

 と即座に問いかけるが、

 

「まさか。真珠湾(パールハーバー)なぞやらんよ。皇国(我が国)にメリットが無さすぎる」

 

 なんでここで”真珠湾”という特定の地名が出てくるのか広田と野村は内心で小首を傾げる。

 確かに米国太平洋艦隊の一大拠点ではあるし、太平洋方面のレンドリース船団の重要な補給ポイントではある。

 だが、日本からはいかんせん遠すぎる。

 挑発目的なら近場のフィリピンやグァムでも問題ないはずだが……

 以前に一度、「真珠湾に対する先制攻撃」は米国との関係悪化が加速した場合の”対米戦シミュレーション”の一環で行われた事があったが、「現状では、リスクの割にはメリットが少ない」と結論付けられている。

 まず、先制攻撃を行う場合、米国太平洋艦隊の主力を殲滅できる可能性が最大のメリットだが、それは「攻撃するタイミングで真珠湾に敵艦艇が揃っている」事が条件であり、いざ開戦となった場合、艦隊の行動は軍機となるのでその確認は困難だった。

 実際、この問題を解決するには偵察衛星の実用化とリアルタイムの映像からの画像受信が必要とされた。

 インターネットでリアルタイムの衛星画像を見れる現代人にはピンとこないだろうが、初期の偵察衛星は”写真偵察衛星”と言って目標の上空で衛星軌道から写真撮影を行い、そのフィルムを耐熱カプセルに封入して投下、地上班がそれを回収して現像し、解析を行うという実にアナログな方法を取っていた。

 因みにリアルタイムはともかく、日本皇国軍の宇宙開発チーム(秘匿なので現状では名称は非公開)によれば、このアナログ式の写真偵察衛星なら1950年以前に実用化可能であり、目下フィルム投下ではなくインスタントカメラとNE式写真転送技術の組合せで、何とかリアルタイムでの静止画受像ができるようにならないか研究が行われている。

 

 その辺の事情を近衛が知らないわけはない。というか宇宙開発事業は近衛自身が陣頭指揮をとっている「国家最高機密にして最優先事項」と位置づけてる肝いりの事業だ。

 予算が機密費から出ており、それでも不足なら「誘導弾推進器開発(=ロケットモーター)」の名目で予算を捻出していた。

 実際、この部門で開発されたペンシルロケット用の固体燃料ロケットモーターが元になり、数々の誘導弾が生まれて行くのだからあながち全て噓という訳でもない。

 

「そっちじゃなくてさ、英国から午後の紅茶(アフタヌーンティー)に誘う感覚で誘いがあったろ? フランスからのマダガスカル売却の一件。ほれ、日英で共同出資・共同管理しないか奴さ」

 

「ありましたな。それが”アメリカへの呼び水”になるので?」

 

「なるな」

 

 近衛は頷き、

 

「実際作る作らないは棚上げするとして、日本皇国の海軍と空軍の哨戒基地を設営すると発表すればいい。いや、”地中海安全保障会議”構想があったな? なら実際、正規の輸送航路から外れるにしてもインド洋に拠点があった方が何かと便利だ。それにかこつけて予備予算で本当に作っちまおう」

 

「それは構わないのですが……」

 

 先を促す野村に、

 

「野村サン、今、レンドリース船団のペルシャ湾ルートはどういう航路を辿っている?」

 

「なるほど……つまり、首相はアメリカ人が手を出す大義名分を与えると同時に攻撃するポイントを絞りたいと?」

 

 野村も広田も近衛のブレーンとして、当然のように機密指定の「最新のアメリカに関する調査報告書」は読み解いている。

 そうであるが故の結論だった。

 

「日英がマダガスカル島に拠点を作ればケープタウン沖を回ってアフリカ東岸を通るレンドリース船団は当然、圧迫を受けるが……だが、同時にちょっかいを書けない限り日英が監視以上の行為、目立った妨害をしないことも理解している。日英も米国も軍事衝突、これ以上の面倒事なんて抱え込みたくないのが本音だ。そして、マダガスカルに駐屯する日英軍に手を出してペルシャ湾ルートが遮断されるのは日英でも米国でもない。実際、米国のレンドリース反対派は大喜びするだろうさ」

 

 近衛は癖のある笑みで、

 

「アメリカが参戦したがっている理由は、『ソ連の命令(・・)でドイツの圧迫を軽減させる為の”西部戦線”を構築する』ことだ。そして、ペルシャ湾ルートが潰されることは、断固として回避せねばならない。無論、短絡的な考えなら攻撃する可能性も考えられなくもないが……流石に”赤い取り巻き”も、そこまでリスキーな真似はしないだろう。ペルシャ湾を潜水艦と機雷原だらけにされたくは無いだろうし」

 

 実際、インド洋には英軍の基地が既に点在しており、そこからでも通商破壊作戦は十分に可能だ。

 実際、日英の潜水艦や航空機、場合によっては軽空母まで投入した通商破壊が行われれば、史実のモンスーン戦隊の比ではないダメージが出るだろう。

 そして、行き着く先は日英同盟とアメリカの本格的な軍事衝突→全面戦争だ。

 

「オチが見えてるのに議会も、何より軍部が納得しないだろうな。計画はあっても日英との全面衝突の準備なんざ、誰もしてないし」

 

 それは日英とて同じことではあるが。

 

「今、アメリカに無いのは”参戦に必要な大義名分”さ。アメリカ自身は中立法で主体的には動けないし、正直に『ソ連からの要請』とは言えねーんだわ。いくらアカに浸食されてるって言っても、面と向かって『ソ連からの要請で○○を攻めます』なんて言った日には、本来の保守層……多数派から反発招くのは確実だからな。参戦できても44年の大統領選挙に勝てなけりゃ、ルーズベルトも意味無いだろうし」

 

 言ってしまえば、この世界線に”真珠湾攻撃”、アメリカに言わせれば「卑怯なだまし討ち」がない事が、未だ政治的な足かせになっているのだ。

 日英独に巣食う転生者達は「腐れアメリカの手口」をよく研究していた。

 

「国内で大義名分が用意できず、ソ連からの要請だとも言えない。ならどうする? 一番手っ取り早いのは、”偽フランス(=ケベック・フランス、ドゴール・フランス)”からの要請って形にしちまうのがいい。アメリカってのは元来フランス贔屓の気風がある。そっちの方向でまとめる方が堅実だ」

 

 近衛は思考を加速させ、前世との知識と現状のすり合わせを行いつつ……

 

「だが、いきなりフランス本土上陸は……ないな。来年にやるなら、準備に時間が無さすぎる。それとドイツはそれを許すほど甘くはない」

 

 現在のドイツの現状、日英ともめてない現状ならフランス北岸は十分に航空機の攻撃圏内でもある。

 そもそも北岸は終戦までという約束で一部を除きドイツが租借しているのだ。

 いきなり本丸に強襲上陸をかけられるほど、米軍の戦争準備は進んでいない。

 

「となると、”西部戦線”とやら作るとすれば”仏領モロッコ”だろうな。おそらくだが狙い目は、”カサブランカ”あたりだろうさ」

 

 前世知識一辺倒という訳ではない。

 これには根拠があった。

 

「何故、そこまで断言を?」

 

 広田の当然の質問に、

 

「他に適当な場所がないってのもあるが……モロッコを切り取れれば、実は巨大なメリットがあるんだよ」

 

 近衛は地図を取り出し、

 

「モロッコを取れれば、”ここ”に圧力かけられるだろ?」

 

「「ジブラルタル海峡っ!!」」

 

 広田と野村の声が綺麗に重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




リュシコフさん、実はドイツの仕込みだったという罠w
まあ、本人は転生者ではないんですが、絶対に当時の転生者(ハイドリヒの先輩?)が暗躍してるよなーと。

そして、近衛しゅしょーは悪巧み……というか英国のお誘いに乗るようですよ?

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