転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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このエピソードから新章になります。
何やら新年早々、アメリカで不穏な動きが……







第17章:カサブランカの花言葉は、色によっては「復讐、裏切り、虚栄心」という物もある
第297話 1943年1月14日、”カサブランカ会議”


 

 

 

 自国が戦争状態に無いのは、本来はとても喜ばしい事だ。

 特に自国が巨大な産業を持ち、周囲が戦争状態にあるが自国に飛び火しない状態ならば。

 戦争は非生産的であると同時に、際限のない消費を生む。

 であるならば、それをビジネスチャンスとすれば、原則として戦争当事国に輸出すれば大幅に貿易黒字は拡大し、外需は増大する。

 しかし、そのような他国が羨むような状況にありながら、それを自ら進んで台無しにしようとする奇特な国があるようだ……

 

 

 

 

 

 

 1943年1月14日、米国ワシントンDC某所にて、その秘密会合は開かれた。

 

「正統なるフランスの復権、偽の為政者に対する反撃の狼煙として先ずはモロッコをフランスを不法占拠する者から削り取る」

 

 フランシス・ルーズベルト合衆国大統領は、居並ぶカナダのケベック州を占拠する”自由フランス”を僭称する亡命フランス人、通称”ケベック・フランス”の代表者たちに切り出した。

 無論、アメリカやソ連を除く多くの国にとり、フランスとはペタン大統領率いるパリ政権のことであるが。

 だが、アメリカは立場上、ドイツと和解した親ドイツ中立のパリ政権(パリ・フランス)を正統フランスと認めることはできない。

 

「面白いではないかっ!」

 

 そう傲岸不遜さを隠さない笑みを浮かべたのは本来の階級は低いながらその傲慢なカリスマ性をもって亡命フランス人たちの顔役になり上がった”シャルマン・ド・ゴール”であり、

 

「なぜ、モロッコを標的に?」

 

 慎重、あるいは少し神経質な表情で問うたのは、今やケベック・フランスのド・ゴールと並ぶ二枚看板と評される”アンドレ・ジロー”であった。

 ド・ゴールは、平たく言えば「世界で一番フランスがエライ。フランスはいつも正しい。フランスはいつも最後は勝つ。世界の中心はフランス」という中華思想と大差ない中身の”ド・ゴール主義(ゴーリズム)”だけでどういう人物かはイメージできると思う。

 天上天下唯我独尊なフランスの権現みたいな人物だ。

 

 一方、史実のジロー(アンリ・ジロー)とは……

 フランスよりオランダの赴任させられ、司令部に着いたら既にそこはドイツに占領されていて、ついでに捕虜になるという体を張ったギャグ(?)を披露している。

 その後、1年の準備期間を経て捕虜収容所より脱走。

 ちなみに逃亡の目的は、”対独抗戦の再開のみ”と公言している。

 その後、フランスに戻り潜伏していたが、アメリカ軍と接触し、連合軍の北アフリカにおける自由フランス軍側の協力者となる。

 ちなみにド・ゴール既に居たのに、わざわざジローに米軍が声掛けしたのかと言えば、ド・ゴールは結局は少将に過ぎない為にもっと高い地位の者を指揮官に起きたかったここと、何より

 

 ”米軍が傲慢なド・ゴールを嫌っていた”

 

 からだと言われている。あの男に指揮を任せるなんて冗談ではないということらしい。

 さて、この世界線におけるジロー、アンドレ・ジローはどうなのかと言えば、ドイツのオランダ侵攻にて捕虜になったのは一緒。

 ただし、1941年7月14日、つまりフランス革命記念日において行われたパリのフランス首都への復帰の際、独仏の和解を演出する目玉イベントの一つ、両国合意の無条件相互捕虜返還(単純な捕虜交換でないことに留意)により、史実よりずいぶん早くフランスに帰国した。

 参考までに書いておくと、史実のジローが捕虜収容所から脱走したのは1942年4月17日であり、今生では脱走する暇もなかったようだ。

 

 だが、親独中立国として国際社会に再復帰したフランス、”対独融和主義(コラボラシオン)”を金科玉条とするペタン政権に業を煮やし、失望したジローは出国し、第三国を経由してアメリカへと亡命して”自由フランス(ケベック・フランス)”へと合流した。

 何というか……この世界線でも、かなり拗らせている男だ。

 

 ちなみに史実でも今生でもド・ゴールとの相性は最悪、ケベックの”二枚看板”という立ち位置でも仲は険悪であった。

 

 

 

「モロッコの奪還を狙う理由は単純だよ。”フランス保護領モロッコ”はペタン政権の支配領域とされているが、モロッコ・スルターン”ムハマドV世”はモロッコ王国の独立を望んでいる」

 

 事実である。

 1912年3月30日に締結された”フェズ条約”以降、モロッコは保護領とされながら実質的には仏領、フランスの植民地であった。

 フランス支配に反発するベルベル人による、7年にも及ぶ”ザイエン戦争”なども起きているのだ。

 

「そこで合衆国は、モロッコの独立を容認する代わりに奪還に現地政府を協力させる」

 

「待てっ! 宗旨国(我々)の許可なく独立を容認すると言うのかっ!!」

 

 そう激昂するド・ゴール。

 ”日の沈まぬ帝国”と謳われたフランス……ド・ゴールはその偉大な国土を次々と切り売りするペタン政権を赦すことができなかった。

 

「落ち付きたまえ。合衆国が容認したとしても、すぐに独立できるというものではあるまい?」

 

 ちなみに今の宗旨国はパリに首都を置くフランスであり、今の仏大統領はペタンであり、植民地経営は失敗すると統治コストが跳ね上がり膨大な赤字を生む極めてハイリスクな代物であり、単にペタン政権は淡々と不良債権化した植民地後処理をしているだけという現実があったりする。

 そこに情など入り込む余地は無かった。

 無論、ルーズベルトはそのあたりの正統フランスの懐事情を含めた諸事情は理解しているのだが、

 

(全てを話す必要もないな)

 

「まず前提として、ペタン政権はモロッコの積極統治に熱心とは言えない」

 

 当然であろう。

 仏領北アフリカの中で、今最もフランスが神経を使っているのは、”地中海の柔らかい下っ腹”。

 ジブラルタル海峡の内側にある仏領アルジェリア、仏領チュニジアだ。

 この世界線においては史実のスペイン保護領モロッコは、スペイン内戦の影響で英国領となっている。

 ジブラルタル海峡南岸、大雑把に言うならナドールからララシュを結ぶラインより北(半島部分)が英国領であり、北岸の英国統治面積も同じくスペイン内戦の影響で史実より手広になっている。

 

 つまりジブラルタル海峡の門番は完全に英国人であり、英米関係が悪化の一途を辿ってる昨今、”フランスに害意を持つ勢力”がジブラルタル海峡を超えて地中海伝いにアルジェリアやチュニジアに攻め込んでくるとは考えにくい。

 だが、モロッコは違うのだ。

 モロッコ西岸が面するのは地中海ではなく大西洋だ。

 

 そして現状、フランスには最新鋭のリシュリュー級とはいえ、戦艦は4隻しか存在しない。

 それを大西洋側に2隻、地中海側に2隻配しているのが現状だ。

 大西洋に面した北岸は、海岸線から100㎞はドイツに(終戦まで)ドイツに租借しているが、港は登録済みのフランス船籍の船なら使用制限はなく、ブレストとトゥーロンと同じく軍港としての機能を維持していた。

 とはいえ現在の仏海軍に正規空母は無く、附随艦艇は基本的に水雷戦隊で索敵能力・防空能力は高くない。

 現有戦力では、アフリカ沖の大西洋で渡洋侵攻してくる艦隊を迎撃するのは難しい。

 正直に言えば、現在のフランス海軍の能力は本国近海の防衛がやっとではないだろうか?

 近海海軍(戦術海軍)という意味では、ドイツ海軍もその範疇だ。

 シーレーンを維持しながら大西洋の向こう側に侵攻できる能力を持つのは、おそらく欧州では(史実より海軍の状態がずっと良い)英国くらいでは無いだろうか?

 日本皇国でさえも、凶悪で強力な海軍力を持つ英国というかつて七つの海を支配した海洋国家と同盟関係にあるからこそ、インド洋を超えて地中海くんだりまで来て戦争ができるし、地球の反対側にある英国本土にも恒常的に艦船を張りつける事ができるのだ。

 ドイツとの敗戦の影響も無視できないが、本質的にフランスは本来は欧州で覇権を狙う陸軍国家だということだろう。

 

 現状、史実とは正反対にドイツはフランスの再軍備に酷く積極的だ。

 「再軍備をさせて報復されたからどうしよう」という恐怖の情動と、「最低限の国防は自己責任でやってもらう」という合理的な思考を天秤にかけた結果だ。

 しかし、それでも限度はある。

 現状のフランスにおける国防の最適解は、反乱分子が多く海洋戦力の戦力集中がさせやすいモロッコの防衛よりも、本格的な陸上兵力をアルジェリア・チュニジアのラインまで下げ、モロッコ/アルジェリアの国境線付近の空軍基地から阻止攻撃メインの航空攻撃をハラスメントアタック承知で行うことだろう。

 ただし、これは”フランス単独での迎撃”を行う場合だが。

 

 

 

「つまり我々は独立容認、宗旨国(フランス)からの独立承認ではなくあくまで合衆国の容認を餌にモロッコ現地の独立勢力と呼応し、手始めにフランス政府を僭称するペタン政権より、正当な権利としてモロッコを奪還する」

 

 英国もびっくりな多連装舌外交だが、

 

「そもそも考えてみたまえ。合衆国はペタン政権を正当なフランス政府とは認めておらん。正当な統治者の下でなければ、独立も何もないだろう?」

 

 そうルーズベルトは笑うのだった。

 

 

 

 この時、モロッコ奪還作戦は、正式に”トーチ作戦(・・・・・)”と命名され、その本質は強襲揚陸作戦とされた。

 作戦の主導は(名目上、あるいは”奪還”という大義名分上)、「正当なフランス政府の麾下である自由フランス軍」であるとされたが、それに必要な艦船や航空機、航空戦力は「協力者である米国義勇兵団(・・・・・・)」が担う事で大筋が決まった。

 

 要するに、「正統なるフランスである自由フランスを戦力的にではなく政治的な意味で作戦の主導者」という立場におき、「先ずは手頃な攻略先であるモロッコを陥落させ実績とする」という話なのであろう。

 アメリカ合衆国主導で戦争ができない以上、どうやら「正統なるフランスをサポートする」という大義名分で、戦争に裏口参戦しようという腹積もりのようだ。

 

 

 

 後の歴史書において、この会議は上陸予定地点の名をとり”カサブランカ会議”と記される事となる。

 内容も場所もメンツも違うが、奇しくもそれは史実で”カサブランカ会談”が開始された日付と一致していたのだ。

 

 こうして超大国アメリカ合衆国の、第二次世界大戦という”泥沼での迷走(マッディ・ラン)”が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で43年早々、ルーズベルト、始動ですw

この世界線だと、中々国民を派手に焚きつけて参戦する明確なチャンスがないので、「自由フランスのモロッコ奪還支援」ってポジで裏口参戦を狙うようですね~。

そして相変わらずのド・ゴールと、新キャラのジローさんことアンドレ・ジロー氏。
まあ、この男もド・ゴールとは違う意味と方向性でエスプリが香ばしいですw
とりあえず「ムッシュ・ドイツブッコロ」なようですが、果たして彼の望みは叶うのか?

この章では、どうやらモロッコとその周辺がメインステージになりそうですが、どうかよろしくお願いします。







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