転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
「ワタシ、メリーさん。今、ジブラルタル海峡南岸に来てるの」
「大尉殿、なんか悪いものでも食ったのか? それとも”
小鳥遊君、辛辣うっ!
ああ、なんか久しぶりだな?
日本皇国陸軍大尉、狙撃兵の
それはいいとして俺は1943年の新年早々、英領ジブラルタルの南岸、そのまた大西洋側にある古い港湾都市”タンジェ”の南に設えられた皇国軍駐屯地に来ている。
なんでも、参戦できなく欲求不満なヤンキーがケベックを巣にしてる偽フレンチを唆して、モロッコに攻め込んでくる……という噂だ。
ところで参戦できない理由が”中立法”って……それって自縄自縛って言うんじゃないのか?
それはともかく……どうやら確度の高い情報らしく、場合によっては地理的に繋がってる英領ジブラルタルもとばっちりを受けかねない、いや正確には飛び火しかねないってんで、配備戦力の増強を日英地中海方面軍のトップ会談で決まったって訳だ。
日本皇国としても今年(1943年)は中盤くらいにイタリア本土への大規模攻勢を控えている。
下手を打ってジブラルタル南部が陥落して、米国の素通りを許してイタリア攻略にちょっかいをかけられるような事態は避けたい。
少なくとも海洋兵力の心配はしてないのだ。
ジブラルタル海峡南北に配された陸海空英軍基地・軍港・拠点の総称、”ジブラルタル要塞”は英国本土を含めて
何しろ最新鋭の、というか最新鋭過ぎて未だ慣熟が終わってると言いかねるライオン級戦艦4隻からなる本国艦隊に継ぐ駐留艦隊規模を誇っているのだ。
少し話はずれるが、少しロイヤルネイビーの話をしていいか?
俺は専門家じゃないから、分かりやすい戦艦で話をするぞ。
いや、ほら俺も使う大きさが違うだけで鉄砲屋だし。
まず、英国の保有戦艦だが……
第一次世界大戦の生き残りの老嬢、
・クィーンエリザベス級戦艦×5隻
・リヴェンジ級戦艦×5隻
・レナウン級巡洋戦艦×2隻
・巡洋戦艦フッド
こいつらは近代化改修が施され、今のところドイツ人の潜水艦に沈められたりマレー沖で航空機に沈められたりソ連に身売りされたりせず12隻全てが現役の元気な婆さん達だ。
次に、
・ネルソン級戦艦×2隻
・キング・ジョージV世級戦艦×3隻
ネルソン級は俺の前世と仕様は大差ないと思うが、問題なのはキング・ジョージV世級。
これらは戦没艦は今のところないが、同時建造されたネームシップのキング・ジョージV世、プリンス・オブ・ウェールズ、デューク・オブ・ヨークの3隻で建造が打ち切られている。
無論、戦前にダンケルクとかの欧州本土に大戦力張り付かせたり、ポーランド支援にかこつけてちょっかいかけたり、日本やドイツと正面切って殴り合いしてるわけでは無いので予算不足という訳ではない。
ぶっちゃけ、キング・ジョージV世級戦艦は1935年のドイツの再軍備宣言で自然消滅した”海軍軍縮時代”の戦艦で、ポスト条約時代、変な制限に設計を縛られない次世代戦艦(つまりライオン級)の設計と建造にいち早く取り掛かりたかった為に3隻で打ち止めとされた。
蛇足ではあるんだが、キング・ジョージV世級には前世にはないちょっと面白いエピソードがある。
この船に積まれている主砲は、”BL14インチMkⅦ艦砲”って言うんだが、この艦砲の開発には日本皇国海軍が一部開発費を負担してるんだ。
ってのも同じ14インチ砲ってことで皇国の老嬢、地中海にも来ている”金剛型巡洋戦艦”4隻の(おそらく最後の)近代化改修で主砲換装してしまおうって話になったらしい。
今生じゃあ同じ14インチ砲の扶桑型戦艦は第一次世界大戦のジェトランド沖海戦に参戦して沈んだり、その時の損傷で日本に帰れぬままスクラップになったりしている。
まあ、「不幸姉妹」の看板に偽りなしだな。
そして、その戦訓から新たな海戦では力不足とされ、伊勢型戦艦は建造中止になった。
無論、それより前の古い戦艦は景気よくスクラップにされたり標的艦に使われたりしたのだが……ともかく、日本皇国においては金剛型が唯一の14インチ砲搭載シリーズになってしまった上に、搭載しているのは第一次世界大戦前に設計された英ビッカース社の古い艦砲やその国産モデルだ。
いい加減、砲全体の老朽化でガタが来ていたので、いっそ砲塔ごと交換しようという話になったのだ。
キング・ジョージV世級ってのは、当時最新設計の14インチ砲を四連装×2、連装×1の合計10門搭載。
ならその連装砲塔を丸々流用しようって事になった。
幸い。金剛型のネームシップ”金剛”は、「英国生まれの金剛デェース!」の言葉通り、最後に国外に発注された皇国戦艦で、設計図を引いたのは前述のビッカース社。
英国側にも資料が残っていたのが幸いし、計画はスムーズに進んだ。
他にも最新鋭の艦載電探機材の搭載や新型機関への換装、副砲を全撤去して電探連動高射装置に2基4門一組で統制される九八式長10㎝連装高角砲を連装8基16門搭載するなんて近代化改修も同時に行われた。
要するにキング・ジョージV世級と現行の金剛型は、同じ主砲を搭載してるって事だな。
話は戻すが、これに前述のライオン級4隻を加えた都合20隻が、現状の英国戦艦ラインナップだ。
おそらく、減ることはあってもこれ以上、増えることはないだろう。
そして、ドイツとの停戦が成立して落ち着きを見せた各戦線にて大幅な配置転換があったのだ。
流石に古くて遅いクィーンエリザベス級戦艦やリヴェンジ級戦艦は「もう第一線でドンパチは無理」と、2隻1組で第二線と目される海域、具体的には南アフリカからアフリカ東岸、インド洋、マラッカ海峡などの東南アジア領域に張り付いて、巨砲で睨みを利かせたシーレーン維持に務めている。
ライオン級4隻とレナウン級巡洋戦艦2隻は英国本土と大西洋領域、ネルソン級2隻はアレキサンドリアで紅海とスエズ運河防衛に陣取り、問題のキング・ジョージV世級戦艦3隻は……ジブラルタルに全艦集結(!!)している。
そして、ここに加えて皇国の海の鉄砲屋の話だ。
最新鋭の大和型は大和と武蔵の2隻が既に就役し、3番艦の信濃が海上公試がそろそろ始まり、4番艦の甲斐が今年中に竣工予定らしい。
ただ、この18インチ砲四姉妹、全てが皇国本土配備になることが決定しているようだ。
残る日本戦艦は前述の金剛型4隻と、、
・加賀型戦艦2隻
・長門型戦艦2隻
・天城型巡洋戦艦2隻
都合14隻。だが、驚くべきことに大和型を除く全ての戦艦が、地中海か大西洋=英国本土に配されていた。
ちょっと前の配置だと、今や皇国海軍の地中海拠点となったリビアのトブルクやギリシャのクレタ島に加賀型の2隻と長門型2隻、金剛型2隻が母港としており、英国本土には天城型と金剛型の残る2隻が配されていた。
だが……
(来ちゃったんだよなぁ、天城型も金剛型も。ジブラルタルにさ)
つまり日英の戦艦7隻がジブラルタルに揃い踏みだ。
一応、建前は「イタリア本土攻略の前準備」とされてるが、
(いや、明らかに似非フレンチのお守でやって来るだろう米国艦隊への牽制だろうな)
まあ、俺の知ってる歴史より遥かに増強されて海峡南北に広がるジブラルタルの軍港能力なら、英国本土に張りつけていた皇国艦隊全部収容してもお釣りが来るだろうけどさ……
上空には、増設されたジブラルタルの皇国空軍飛行場から洋上哨戒に飛びだったのであろう航続距離の長い”隼”最終型がたてる”栄”エンジンの轟音……
そして、それと翼をバンクさせてすれ違う、帰投中らしきロイヤルエアフォースのスピットファイア。
上空をフライパスする日英空軍の戦闘機を見ながら、つい俺は呟いてしまう。
「ジブラルタル上空で日英友好親善アピール? 露骨だねぇ」
現在、育休中の
おそらく始まるであろう大西洋と地中海の玄関口での戦いがどうなるかなんて想像もつかない。
(まあ、なるようになるだろうさ)
人生ってのは、大半はそうだ。
という訳で、ジブラルタルへとやって来たお久しぶりのシモヘイ(
シモヘイ、珍しく海式の事について語るの巻です。
ただし、そこそこ詳しいのはでっかい鉄砲(笑)乗っけた戦艦だけってのがシモヘイ・クォリティーw
ただし、別の好みは小さくて平たいほど良い駆逐艦以下専門、反対に小鳥遊君は胸部バルジや臀部バルジがボリューミーなほど良いという大艦巨砲主義。
日本皇国の戦艦については何度か書く機会があったような気がしますが、英国戦艦にちゃんと触れたのはこれが初かな?
一応、現状では英国保有戦艦20隻でライオン級4隻で打ち止め、日本は14隻で大和型4隻で打ち止めです。
まあ、ヤバいのはアメリカで完全戦時状態では無いのに、「第一次世界大戦の古い14インチ砲戦艦と入れ替える(本当に入れ替えるとは言ってない)」という名目でモンタナ級5隻と、「各国の優速な30ノット超級巡洋戦艦に対抗する」という大義名分で、巡6隻のアイオワ級
その分、史実のアラスカ級大型巡洋艦は建造されないようですが。
とりあえず、この世界線では日本が英米と戦ってるわけでは無いので海戦自体が少なく、また、航空機だけで大型艦が沈んだという事例もない(例えば、タラントでもトドメを刺したのは戦艦部隊の艦砲射撃)ので、まだまだ大艦巨砲主義が主流みたいです。
これからもよろしくお願いいたします。
※”フッド”忘れてたんで追加。英国人に怒られそう。