転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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ラヴァルの嫌がらせ、とりあえずはティ○・フィナーレ(〆とも言う)。
アイゼンハワーとパットンは頭が痛く、ド・ゴールとハルゼーは平常運転?






第303話 続々ラヴァルの嫌がらせ(海篇) ~海戦と呼べるものではござらんが、身動き取れなくなった的を撃たぬは無作法というものにて候~

 

 

 

 ハルゼーは艦上戦闘機と輸送船の被害の大きさで怒髪天だったが、残念なことにカサブランカ沖には標的になるような水上目標はどこにも存在しなかった。

 偵察機を飛ばして、敵基地を確認後に空爆すると言いだしたが、

 

「それ以前に受けた被害のフォローをしたまえ。それが軍人としての優先すべき務めだろう?」

 

 そうアイゼンハワーに諭される始末だ。

 完全に出鼻を挫かれた米軍、もとい義勇兵団だったが、米海軍艦への損害自体は軽微というのがまた悩ましい。

 何しろ、戦艦や空母などの大型艦には被害皆無、先行していた揚陸艦艇にもダメージは無く作戦自体は問題なく続行可能なのだ。

 結局、リバティ船を中心とした被害船舶の救命活動や消火、あるいは沈没処理は夕方になっても終わらなかった。

 また、幸いと言っていいのか……艦隊に仏軍航空隊の二次・三次空襲が来ることもなかった。

 

 

 

 そして海上とは正反対に強襲揚陸作戦は順調そのものだったようだ。

 むしろ、

 

「重砲の出迎えどころか目につく範囲に機関銃座なし。それどころか行動阻害の鉄条網すらない。海岸はまるで観光シーズンが過ぎたビーチのように閑散としていた」

 

 という海兵隊員の言葉が残っている。

 義勇兵団陸上(陸軍)部隊司令官のパットンは、その機能のある揚陸艦を擱座着岸(ビーチング)させ、あるいはそれ以外を揚陸艇でピストン輸送させ陸揚げさせることに不満はない。

 揚陸作業は、誰に邪魔されることもなく円滑に進んだ。

 

 だが、精強な合衆国海兵隊や陸軍とは違い、自由フランス軍人はこの揚陸班には配されてなかったのだ。

 さすがのアメリカもケベック・フレンチの分まで短期間で揚陸艦を用意できなかった……というのが表向きの理由だが、その実は自由フランス軍に揚陸作戦の経験がある、それどころかまともに揚陸訓練を受けた者がほとんどおらず、とてもではないが強襲揚陸戦に参加させる事はできなかったのだ。

 

 故に無駄に士気を昂らせたケベック・フレンチを輸送船に押し込め船旅をさせたのだ。

 だが、彼らを降ろすには輸送船が接岸できる船着場が必要だ。

 一番近いのはカサブランカ港だが、航空偵察でそこが既に滅茶苦茶に破壊されていることが判明していた。

 その他の大型船が停泊できそうなモロッコの主要港も似たり寄ったりであるらしい。

 いずれにせよ、港の修復が必要であり、その為に早急に港に海兵隊や陸軍の工兵部隊や設営部隊を入れねばならない。

 だが、その為にはパットンの理解の範疇外に居る武装した連中が、吞気に戦争ごっこをやってる市街を抜けねばならない。

 旧式兵器であっても弾は飛ぶし、弾が当たれば兵は死ぬ。

 パットンはFから始まる4文字を小さく呟き、憂鬱な気分で市街突入部隊の指揮官人選を始めた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 だが、パットンが前進を命じるのは早くても翌日早朝。視界の利かない夜間に、土地勘のない内戦中の入り組んだ異国の市街を抜けるなんて冗談ではない。

 つまり、パットンが行動を起こすまでの間にはそれなりに長い夜の闇が横たわっていた。ついでに言えば、今宵は新月。

 

 結果から言えば、この世界線において”カサブランカ沖海戦”というものは勃発しなかった。

 だが、軍艦同士の戦いが全く無かったという訳ではない。

 さて、史実のカサブランカ沖海戦において、フランス海軍は11隻の潜水艦を参加させたらしい。

 そして今生において、この時代のフランス軍の主力潜水艦は1500t級の”ルドゥタブル級”だ。

 性能に史実と大差はない。少なくとも、ドイツの誇る「欠点や弱点が潰されまくったUボートXXI型」のような海の化物ではない。

 違うのは建造数で、パリ解放前から他の艦種以上に地道に建造が続けられており、旧式艦を代替えする意味も兼ねて、この時点で40隻以上が就役していた。

 

 そして、他の艦種がモロッコ沖に来ていない穴埋めをするように、敵艦隊接近の報を受けフランス北岸から出航した史実の3倍近い30隻もの”ルドゥタブル級”が米艦隊索敵圏外に潜み、必要なら航空機が飛ぶ昼間は海中で息を殺していたのだ。

 

 そして、まだ艦上機の夜間哨戒が確立されていないこの時代、夜は潜水艦の味方だった。

 しかもこの時期、米海軍の対潜技術が高いとは言えなかったのだ。

 ・まず旧型Uボートが暴れ回った第一次世界大戦の参戦時期が1917年と遅く、対潜戦訓の蓄積が乏しかった。

 ・第二次世界大戦に参戦しておらず、群狼戦術などが未経験であった。

 ・英国の協力が得られない為、水上レーダーやソナーや各種対潜兵器の開発が遅れていた

 などが理由としてあげられる。こんな状態でもガトー級だのパラオ級だの優秀な潜水艦を開発し、大量生産するのだから正直やってられない。

 

 とはいえ、フランス潜水艦にとって有利だったのは、海中聴音器には常にうるさいぐらいのリバティ船の圧壊音が入り海中でも方向を定めるのに苦労しなかったこと、潜望鏡には煌煌と未だ鎮火されず焚ける船舶火災が周囲を照らし出し、フレンチ・サブマリナーが「優先攻撃目的」として厳命されていた損傷したりで”身動きが取れなくなってる・動きが鈍ってる”輸送船が夜でも容易に判別できたことだ。

 それどころか戦闘力とダメコン能力が高い軍艦は、可能な限り相手にするなとまで言われていた。

 ラヴァルから「いずれかの輸送船に反逆者が押し込められている公算が高い」ことを仏海軍上層部は知らされていた。

 命中率が低い魚雷でも当てやすそうな鈍重な標的に狙いを絞り、標準的な性能の圧縮空気魚雷が放たれる。

 酸素魚雷などと違い航跡(雷跡)が残るが、新月の夜ともなればそれを見つけるのは中々に難しい。

 そして、大半が民間の船乗り上がりのリバティ船乗組員は、受けたダメージが機雷への接触か魚雷攻撃かを命中した感触で判別できるほど海戦に精通してる訳ではない。

 加えて、密集した船と船の間に入り込み除去しきれていない機雷の残存がまだ相応にあったことが、さらなる被害を拡大させた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 その後、幸運な駆逐艦による爆雷攻撃と勇敢な駆逐艦のロマンあふれるラムアタックなどで、数隻のフランス潜水艦は本土大西洋岸に帰投できなかったが……

 昼間の空襲との合算で、この日のうちに参加自由フランス将兵の1/3近くが、多くの物資と共にモロッコの土を踏むことなく海の底に沈んだらしい。

 

 確かに海戦と呼べるものは無かった。

 だが、”カサブランカ沖の戦い”は確かに勃発し、そして”世界的に正統な方のフランス”が被害から考えてどう見ても勝利を収めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スルターン・ムハマドV世と王党派、そしてモロッコ独立派からは確かに米国義勇兵団は”フランス支配からの解放者”として(少なくとも表向きは)歓迎された。

 しかしそれは、武装したカサブランカ市民全員という訳でも、全モロッコ国民からの総意というわけでは無かった。

 当然だ。何しろド・ゴールは「自分たちこそが正当なフランス」だと嘯いていたのだから。

 フランスからの独立をガチで望む層からは、「パリ政権のフランス人」から「ヤンキーの威を借るフランス人」に支配階層が変わっただけである。

 また、ドゴールの現地人に対する態度も褒められたものではなかったことも、その状況に拍車をかけた。

 彼はどこまでも「鼻持ちならない支配階層気取りのフレンチ野郎(フロッギー)」の他ならなかったからだ。

 

 また、アイゼンハワーもパットンも悪気はないのだが……

 彼らが急務としていた「モロッコ全土の治安回復」はその根本において、どこまでも”占領地政策”だったのだ。

 断っておくが、当時のモロッコは、「フランスの保護国」という扱いで、最低限の国の体裁を成していたのだ。

 結果として、潜在的な反感に加えて慢性的な物資不足の影響も相まって現地人の武装強盗行為が頻発した。

 これが反政府組織やら独立過激派の民兵組織ならまだやりようがあるのだが、単なる物盗りの類になれば話は別だ。

 つまり、本来なら軍隊ではなく警察の仕事だ。おかげでパットンお抱えとアイゼンハワー直轄、そして海兵隊のMPはフル操業の大忙しになってしまった。

 確かに占領地の治安回復は侵攻軍の責務だが……

 しかも、米(偽)仏連合軍が侵攻してくる前に外国人の退避勧告に合わせて、フランス国籍民間人の帰国命令、そしてフランス駐留軍のモロッコ撤退に呼応して、公務員とその家族の避難も迅速に行われた。

 最悪なのは資産や機密資料など、「来るべき日」に予め備えていたのか持ち出せるものは持ち出し済みで、抹消されるべきものは抹消済みであった。

 しかも、ご丁寧なことにモロッコ人公務員に引継ぎを済ませ、「決済は新たな統治者の判断を仰ぐように」と言い含めて。

 

 これは一例なのだが……早速使うことになってしまった現地刑務所とその収監者の扱いだ。

 本来なら自由フランス軍の法務士官に丸投げしたいところだが、例えば政治犯など下手にド・ゴールとその思想に染まった取り巻きに任せようものなら、

 

『とりあえず全員処刑(ギロチン)で』

 

 と言いだしかねないのだ。流石に”義勇兵”というお題目で来ているのに、それを看過することはできない。

 ギロチンで転がった首などが週刊誌の表紙を飾ったら、それこそ目も当てられない。

 ただでさえ、米国内でも「赤い虐殺者を幇助する米国政府」という認識が水面下で広がっているのにだ。

 確かにメディアも政府も赤色汚染が酷いものだが、かといって全てが赤化してる訳ではない。

 お陰で米軍の法務士官が過労で戦死しかねない状況だ。

 

 

 

 これだけでも頭と胃が痛くなるのにカサブランカに着いたアイゼンハワーは、早速友軍(?)の態度に苛立ちを覚えた。

 「自由フランス軍が洋上で大量に死んだのは、輸送全般を請け負っていたアメリカ人の怠慢のせいだっ!!」と諸悪の根源であるド・ゴールが詰め寄ってきたのだ。

 無論、ド・ゴールはケベック・フレンチ住民の死を悼んでいるわけでは無いことは透けて見えていた。

 それを交渉材料に、少しでも自分に有利なモロッコの権益を得ようとしていた……要するにいつものド・ゴールだ。

 

 正直、連日小規模ながらもフランス軍の空襲がある中で港を修復しながら積み下ろし作業を行っている中でこれでは、今の米軍の中では人格者と評判のアイゼンハワーでも少々殺意を覚える。

 加えてハルゼーからも連日、アルジェリア方面へせめて自分管轄の海軍機で強行偵察させろと矢のような催促だ。

 確かに敵戦力を知ることは大事だが、今最優先することではない。

 ある地域を占領するなら、まず起点となる足場をしっかり固めることが大原則だ。

 そうでないと何をやっても砂上の楼閣になり兼ねない。

 それにまだ陸上機を展開できない現状、ハルゼーの艦上戦闘機部隊に防空を担ってもらうしかない。

 現時点でアルジェリアへの積極的攻勢など冗談ではなかった。

 

 パットンが実直に任務をこなしていることが救いだが、アイゼンハワーの苦難と苦悩と大統領への恨み節は、当面終わることはないだろう。

 

 せめてこの苦労が報われ、後々の大統領になるべく良き経験となることを祈りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




昼間航空機雷攻撃と潜水艦による夜間雷撃のコンボが決まったようですよ?
そりゃあ通商破壊を本懐とする潜水艦相手に身動きとれない状態で盛大な破砕音を立てて居場所を報せ、潜望鏡を上げれば新月の夜に篝火(?)焚いてマーカーまで出してくれたら、そりゃあ魚雷撃つよね?とw

そして、潜在的な素材欠陥・溶接欠陥・構造欠陥が内包される製造ガチャなリバティ船、押し合いへし合いでまともに動けないところに奇襲じみた夜間雷撃+船と船の間に除去しきれてない残留浮遊機雷とすると……もしかして衝突して沈んだ船の方が多かったりして。

イベント戦”ラヴァルの嫌がらせ”は一旦打ち(撃ち)止めですが、小規模なハラスメント爆撃は継続ですし、アイゼンハワー(とパットン)の苦労はまだまだ終わりが見えない模様。
そしてド・ゴールとハルゼーは、平常運転な訳ですが……ただ、アイゼンハワーも黙って頭と胃袋にスリップダメージを受け続けるつもりはないみたいですよ?

次回もどうかよろしくお願いします。

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