転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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アメリカ、ついにやらかすみたいですよ?
米国や偽フランスにもいるであろう転生者が喜びそうな展開を。






第307話 戦略爆撃機は米国物量戦の象徴。それが苦悩の種になるアイクと劇症反応する二つの都の主

 

 

 

 アメリカ陸軍航空隊総司令官”ヘネシー・アーノルド”は、モロッコへの戦略爆撃機派遣の時、隊長を引き受ける戦略爆撃機の第一人者と知られているルメーにこう語ったという。

 

「確かにB-24は新しく性能の良い機体だが、アフリカのような過酷な環境では設計は一昔前でも堅牢で蛮用に耐え、プルーフが済んでいるB-17の方が向いているだろう。それに”リベレーター(解放者。B-24爆撃機のペットネーム)”は、まさに欧州でこそ輝くと思わないかね?」

 

 恐ろしい事を言おう。

 四発戦略爆撃機という酷く高価な機体を、史実のアメリカはB-17で12000機以上、B-24に至っては18000機以上製造している。

 これに加えてプレミア価格のB-29でさえも4.000機近く製造しているのだ。

 大日本帝国でも最も作られた戦闘機である零戦だが、各型合計で10000機少々だという史実と数の暴力に打ちのめされそうになる。

 幸い、この世界線のアメリカは、未だ完全な戦時体制に入っていない(故に陸軍航空軍という名称も使われていない)為、製造に至っていないB-29は当然0にしても、精々準戦時体制な現時点でも史実の1/3、B-17で4000機、B-24で6000機製造予定(それも43年中か遅くとも44年前半までに)だというのだから、本当に頭が痛い。

 

 そして、現行型のB-17G”フライングフォートレス”の航続距離は、爆弾の代わりに燃料を限界まで詰め込んだフェリー状態で約4800㎞。

 無論、これでは北米から直接モロッコに向かうのは無理だ。

 まずはメーン州の航空基地より、急ピッチで米軍の基地化が進むアイルランドへと飛ぶ。

 そこで整備と補給を行い、一度大西洋に出てイベリア半島沖を迂回するように南下してモロッコを目指す。

 空路的に確実に英国人に追跡されるだろうが知った事ではない。

 戦略爆撃機のような巨人機は、ばらして船で運ぶより、直接目的地まで飛んで行った方が効率が良い。

 戦後、爆撃機ベースの長距離輸送機や旅客機が生まれたのも納得できる。

 また、B-17やB-29のノウハウを持っていたボーイング社が世界一の旅客機メーカーになれた理由もだ。

 

 ただし、モロッコ行に参加できるのは各基地の収容限界を考えて、数度に分けて合計300機程だと方針が決まった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 合衆国大統領(ルーズベルト)陸軍参謀総長(マーシャル)航空隊総司令官(アーノルド)の署名の入った書類を見て、アイゼンハワーは頭を抱えたく、いや正確には上記三名に対する呪詛を吐いた。

 特に前の二人には、とても文章化できない言葉で口汚く罵った。

 

 当然である。

 まだ統治の初期段階で300機もの戦略爆撃機を受け入れろと無茶ぶりされたのだ。

 例えば今の在日米軍でさえ突然、B-1/B-2/B-52爆撃機合計300機受け入れろとか言われたら、司令官は確実に大統領の正気を疑うだろう。

 確かに国力に裏打ちされた米国の威を示すなら有効かもしれないが、

 

「一体どこを爆撃する気なんだ!?」

 

 アルジェリア、もしかしたらチュニジアも含むかもしれないが……

 

「……まさかフランス本土爆撃を狙う気じゃないだろうな?」

 

 B-17Gは標準爆装(爆弾搭載量4.5t)での作戦行動半径は1000マイル(1600㎞)ほど、パリは無理でもウジュダかベルカンヌあたりのモロッコ北東部に基地を作って飛び立てば、リヨン市あたりまではギリギリ爆撃圏内に入れられるだろう。

 無論、そんなことをすれば脇目もふらずに全面戦争に突入だが、それを完全否定できないあたりがルーズベルト政権の恐ろしさだ。

 何しろ赤いご主人様(スターリン)から、フランスに第二戦線を作れと矢のような催促らしい。

 

 とはいえ普通に考えれば、アルジェリアの仏航空基地を根こそぎ吹き飛ばす算段なのだろう。

 ただし、その場所は大雑把にしか予測できてないが。

 それより問題なのは……

 

「B-17×300を受け入れられる基地と支援設備を突貫工事で作れと? 誰がそれを担当すると思ってるんだっ!」

 

 陸軍と海兵隊の工兵部隊の超過労働が決定した瞬間だった。

 もっとも300機の派遣は今すぐという訳ではなく、次の船団で設備設営の増援を送るので、それらを用いて早急に建設して欲しいとのことだった。

 流石に受け入れ基地ができてから寄越す分別は、白い御殿にも残っていたらしい。

 ただ。300機のB-17は乗員だけでも3000人、交代要員考えればその倍、勿論、乗員だけでは飛行機は飛ばせないので保守メンテに管制要員、その他もろもろの地上の必要人員は最低でもざっとその10倍。つまり小さな町の人口の受け入れ準備をしなければならない。四発機の補給と保守点検ができる巨大飛行場付きで。

 湯水のごとく消耗される爆弾に燃料、絶やすことのできないエンジンを含めた膨大な消耗部品に修理部品……

 アイゼンハワーは吐き気がしてきた。

 

 だが、アイゼンハワーの苦難と苦悩はエンドレス。

 この時点ではアイゼンハワーも、いやこの世界線の米国も誰もが、

 

 ”ルメーと戦略爆撃機”

 

 という組合せが、どの国の誰を刺激するか全く想像がついていなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 日本皇国帝都、永田町、首相官邸

 

「広田サン、空軍に至急、半年以内に増援で”連山”を地中海に何機送れるか確認しておいてくれ」

 

 そう座った目で腕を組むのは、日本皇国挙国一致内閣総理大臣、各国首相で一番口が悪く実直と評判の”近衛公麿”だった。

 ちなみにこの世界線の”連山”、史実とは異なり中島が生産する英国のアブロ・ランカスター戦略爆撃機のライセンス生産品(ついでに”深山”はハンドレページ・ハリファックスのライセンス生産品)だ。

 ただし、エンジンだけが液冷V12のマーリンから、この世界線の空冷星形14気筒の”火星”20番台最終型(中間冷却器付二段二速遠心圧縮式過給機、多点定時燃料噴射。高高度セッティングで高度7200mで中間冷却器への水-エタノール噴射使用で1850馬力)に設計変更され、自衛用装備がホ103/12.7㎜機関銃に変更されているのが大きな違い。

 

「名目は?」

 

 そう返すのは先輩にして腹心、先の総理大臣にして現官房長官の”広田剛毅”。

 

「表向きはイタリア攻略戦のテコ入れってことで構わんだろうさ。だけど大西サン(空軍大臣の大西辰治郎)には、内々でモロッコ米国戦略爆撃機への牽制だってつたえてくれ。作戦中、B-17に横槍入れられたらたまったもんじゃねぇ」

 

「そこまで警戒する必要が?」

 

 それは転生者枠である近衛首相だからこその視点で、

 

「ああ。米軍爆撃隊の(カシラ)、ルメーってのは人類史上最悪の放火魔さ。住人ごと街を吹き飛ばしたり燃やし尽くすのが趣味みたいなヤローだな」

 

 史実のルメーは語る。「我々は東京を焼いたとき、たくさんの女・子供を殺していることを知っていた」と。そしてその最後のセリフは「ふざけるな!」で締めくくれられる。

 そして、「もし戦争に敗れていたら私は戦争犯罪人として裁かれていただろう。幸運なことに我々は勝者になった」とも。

 つまり確信犯だ。

 無論、ルメーはより上位のアーノルドやトルーマン大統領に命じられる側であったが、「軍人は誰でも自分の行為の道徳的側面を多少は考えるものだ。だが、戦争は全て道徳に反するものなのだ」と言われても、爆撃された側は納得できるものでは無いだろう。

 

「実際、民間人の頭の上に焼夷弾落とす事なんて屁とも思ってねぇよ。ゲームみたいに人殺し楽しむ奴の方が、まだ人間味があるかもな……まあいいさ。ルメーが市街地爆撃したら、即座に戦争犯罪で国連に提訴できるよう野村サン(外務大臣の野村時三郎)に話し通しておくか」

 

「なら吉田君(欧州方面外務統括の吉田滋)にも一報入れておこう」

 

「そうしてくれ。できれば英国にもジブラルタルの爆撃機、増強しておいて欲しいところだな」

 

「ところでハーグ陸戦条約もジュネーブ条約も、国連にすら加盟していないあの国に意味があるのかな?」

 

「あるわきゃねぇさ。だがさ、」

 

 近衛はニヤリと笑い、

 

「俺っちが生きてるうちにそうなるかはわからねぇが……あのクッソ忌々しい人造国家と殺り合う日が来たら、口実の一つくらいにはなるんじゃねぇの?」

 

「街を焼き払う? 何を使って焼くのか知らないが」

 

 近衛は頷き、

 

「ロスケもそうだが、ヤンキーとヤるなら脇目もふらず問答(ルール)無用の(タマ)の取り合いになるだろうからなぁ……その時は戦争ってより生存競争に近いだろうさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ドイツ特別自治区”サンクトペテルブルグ大公領”、冬宮殿

 

「こりゃ早めに遠心圧縮式ジェットの開発急がんといかんかもなぁ。タンク博士も急いで口説かんと」

 

 報告書を読んだクルス大公ことニンゼブラウ・フォン・クルス・デア・サンクトペテルブルグは呟き、

 

「あー、ルメーのご登場ですか?」

 

 そう返したのは、もう『(サンクトペテルブルグから)逃げられないゾ♡』状態になりつつある小野寺誠サンクトペテルブルグ駐在武官が返すと、

 

「それだけじゃないさ。アーノルドのクソ野郎が『欧州に”リベレーター”を配備する』って堂々と言ってるだろ? おそらく配備先はアイルランドだ」

 

「まあ、あそこくらいしか大量の四発機受け入れられる場所、欧州にはないですからねぇ~。くわばらくわばら、英国人がマジギレしそうだ」

 

 ぶるりと小刻みに体を震わす小野寺に、

 

「サンクトペテルブルグも他人事じゃないぞ? D型以降のB-24はどのタイプでも航続距離は爆装状態でも航続距離3300㎞を越える。英国本土の領空を南にぐるりと回り込んでもフランスの大半は爆撃圏内だ。フランスが陥落すれば、この戦争はどうなるかわからん」

 

「ああ、”史上最大の作戦”? 確かにアイルランド全域を要塞化して集結拠点にすれば、可能ではありますね」

 

 そして、クルスは頷きながらさらに思考を沈降させ、

 

「そしてあの忌々しいB-29もルメーが表に出てきてる以上、もう開発は始まってるだろう。ルメーとB-29は因果で結ばれている。あれはセットみたいなもんだ」

 

 クルスは無自覚に言った言葉だったが、

 

「? そういうもんなんですか?」

 

「そういうもんさ。B-29は最大爆装(9t)でも航続距離4865㎞で旧北アイルランドに基地作れば英国北岸領空外を迂回してもベルリンを直接狙え、爆装を半分に減らせば6380㎞。やろうと思えば英国北岸領空を迂回してデンマークをフライパス、バルト海を北上して直接サンクトペテルブルグを叩けるぞ?」

 

「うげげっ! つくづくとんでもない化物ですね~。オーパーツ呼ばわりされるのもわかる気がする」

 

「いずれにせよ、”最悪の審判の日(ドゥームズデイ)”を回避するため、全力を尽くさねばならんという事だな」

 

 小野寺は苦笑しながら、

 

「……クルスさんって本当に”枢機卿猊下”なんすねぇ。そりゃあ崇められるし拝まれるわけだわ」

 

「? 急にどうした?」

 

「わからないなら無問題ですよ。”蒼き聖なる花十字”に誉れあれ、全てサンクトペテルブルグ市民に祝福を」

 

【挿絵表示】

 

 

「本当にどうしたんだ?」

 

(まあ、いいか。”サイドワインダー”の基礎研究でも始めておくか)

 

「第一世代のB型くらいまでなら、構造も簡単だし2年もすれば作れんことも無いだろう」

 

 こうして『MiG-15bisに似てるけど、やっぱりナニカチガウTa-183』の開発フラグが加速するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦時体制でもない(精々準戦時体制)のに、下手をすれば10.000機の戦略爆撃機を揃えられるリアルチート国家のアメリカでした。
民需品に普通に生産リソ-ス回して(戦時でないのに民需生産統制したら次の選挙に絶対に勝てないと判断)るのに、普通にこれだけ生産できる国力よ。
これで史実の1/3ほどの生産数だって言うんですから。

そして、現場責任者のアイクはまたしてもメンタル・ダイレクトアタックを食らうという。
しかも今回は仮にも同じ陸軍の話なので如何ともし難いという。
なんせ戦時体制に入ってないせいか、アメリカはまだ陸軍航空軍(Army Air Force)を設立しておらず、陸軍航空隊のまま。
要するに参謀長の共産党大好きマーシャルや現場知らずの陸相スティムソンの意思が十分に反映されるという状況であり、また真新しい力である戦略爆撃機の威光を見せつけ、空軍独立を目指すアーノルド一派にとっても実に都合が良い展開という訳です。

ただ、米国も気づいてないのは各国の転生者、それも国のトップやそれに近い立場の者達がどういう判断をするかです。

ちょっかい出されたらいつでも殴り返せるように地中海の戦略爆撃航空団を増やす近衛や、なんか「今ある技術力と生産力で無理せずめっちゃオーパーツを作ろう」としてるクルスだけでなく、総統閣下も正統フランスの副首相も顔芸してそうですw

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次回もよろしくお願いします。
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