転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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そりゃ英国怒るよ……




第308話 英米戦略爆撃機狂騒曲、そしてエースがジブラルタルに燕と共に飛来する

 

 

 

 ちなみにリビアとモロッコのベーシックとなるインフラ整備が違いすぎていたせいもあり、戦略爆撃機隊の到着は皇国→リビア組の方が早かった。

 まあ、元モロッコ駐留フランス軍の徹底的な焦土作戦もあったし、やはり初期動員の工兵隊などでは無理があり過ぎ、施設設営関連の増員が到着するまで、B-17の配備は叶わなかったようだ。

 ただ、近衛首相のレスポンスは過剰だと思うだろうか?

 だが、無理らしからぬ部分もある。

 何しろ43年にはリビアにとって本格的な原油採掘と精製、石油としての輸出が始まる大切な年だ。

 しかもこのプロジェクトは、”アラビア石油開発機構”の今後を占う試金石であり、より広い視野で言えば”地中海安全保障会議”加盟国の未来にも関わってくる。

 今になってケチが付くなど例え近衛じゃなくとも冗談では無かった。

 それを邪魔するなら全力で捻り潰すだけだし、為政者の役目は自衛権(実力)行使が必要な時に必要な力を用意することだと近衛は考えていた。

 

 それにイタリア攻略の増援計画を前倒ししたと言えば、少なくとも国内で大きな反対は出ない。

 加えて万が一にもジブラルタルの南岸が陥落して海峡が素通りされるようになったら目も当てられないので、更なる地中海皇国軍の航空兵力を一部抽出してのジブラルタルの戦力補強を指示する。

 そしてそれと入れ替えるように、英国本土に展開していた、”英国本土直上防空戦(バトル・オブ・ブリテン)”にも参戦した”隼”を主力としていた皇国空軍最精鋭戦闘機隊と目される航空団を機種転換も兼ねて地中海方面へと移動を命じた。

 

 現在の英国本土の空は、アイルランド方面以外は至って平穏だ。

 いや、アイルランドを米軍が順調に基地化、いやいやアイルランドその物を欧州戦線の最大拠点・要塞化する勢いがあるので、平穏と評するのは語弊があり過ぎるかもしれないが……

 

 ちなみにメーン州から燃料だけ積んで飛び立ったルメー大佐が頭を張るB-17×300は、離陸するそばから即座にブリティッシュ・ノースアメリカ(英領カナダ)東部のニュー・ブランズウィックとニューファンドランド島のレーダーサイトに探知・追跡され、アイルランド到着も英国本土の多重化された濃密なレーダーネットワークにがっつり捕捉されていた。

 無論、補給と整備を終えて大西洋方面に出てモロッコへ向かう姿もだ。当然、最後はジブラルタルのレーダー警戒網も警戒機を上げてそれをエスコート(?)する。

 

 

 

 それとはまた別に英国人をブチ切れさせたのは、B-17の受け入れ名目で機能拡張したアイルランド各地の米軍基地に今度は一次配備で500機以上のB-24爆撃機隊が飛来し、常駐させると公式発表されたことだ。

 しかもアイルランド空軍基地の能力拡張は継続され、最終的にその戦略爆撃機配備数は1000機を超える(場合によってはには1500機以上となる)らしい。

 既に米国のB-24生産数はそれを余裕でクリアしており、要するに1000機ないし1500機という数字さえも受け入れ側のアイルランドの基地収容能力上限の問題であるようだ。

 史実の米軍の所業を考えれば、この程度の事は平然とやるだろう。

 

 えっ? 英国の目(レーダー)が良いのはまだわかるが、継続される基地拡張計画や具体的な配備数まで聞き取れる耳も妙にいいって?

 何せ、ちょっと前まで北部が英国だったアイルランドには、グラスでワンダーな感じの”草”が今でも大量に生い茂ってる。

 そして、草ってのは枯れるとこれまたよく燃える物だ。

 

『我らが合衆国の誇る”B-24爆撃機(リベレーター)”が、欧州の”真なる解放者”にならんことを』

 

 とはしてやったりのドヤ顔ルーズベルト大統領の声明だ。

 だが、一般ピープルの英国人にしてみれば”一晩で英国全土を焼け野原にできる数の戦略爆撃機の配備”など、頭にアメリカ人が大好きな45口径拳銃の銃口を突きつけられてるのも同じだ。

 しかも安全装置は外され、引き金に指がかかっている状態で。

 

「英国人が好むブラックユーモアでも類を見ない悪趣味さだな」

 

 とチャーチル首相はやり返し、即座にマーリンエンジン・スピットファイアの決定版であるマーリン60系エンジンを搭載する高性能戦闘機、足の長いMk.ⅧとMk.Vからも改修できることが強みの高性能なMk.Ⅸの大増産と配備を決定する。

 同時にニューファンドランド島を含むニューファンドランド・ラブラドール州、プリンスエドワードアイランド州、ノバスコシア州のブリティッシュ・ノースアメリカ東部三州へのハンドレーページ・ハリファックス、アブロ・ランカスターの両戦略爆撃機の積極配備(つまり史実でドイツ本土爆撃やダイダルウェーブ作戦に参加していた部隊の分派)を宣言する。

 更には警備強化の名目で、米メーン州とケベックと地続きのニュー・ブランズウィック州への陸軍の配置部隊を増やすとも。

 もう明確な『英国本土を爆撃するつもりなら、ワシントンもニューヨークも五大湖周辺もタダで済むと思うなよ?』という恫喝であった。

 無論、米国は『英国は攻撃対象ではない!』と反論するが、

 

「では、”公式には”世界の何処の国とも『戦争状態にない合衆国』が、一体何を思って英国の隣に大量の空飛ぶ都市破壊者を配備するのかね?」

 

 無論、そんな言い訳を英国が素直に聞くわけがない。

 そもそも、既存の戦闘機隊や高射砲部隊を即座にアメリカ東海岸北部と五大湖周辺の工業地帯に移動するように命じ、更には次世代迎撃機の開発を大統領令で命じているのだから説得力という物が皆無だった。

 ついでに遠間合いの戦略爆撃機だけではなく使い勝手の良いB-25”ミッチェル”爆撃機や開発されたばかりのP-61”ブラックウィドウ”夜間戦闘機、海軍のPBY-5”カタリナ”飛行艇なんかの双発機も生産された側から一緒に東部集中配備である。

 

 ちなみにこの時期、ブリティッシュ・ノースアメリカ東部に配されたRAFパイロット達が好んで歌ったのが、Fから始まる四文字が出てくる事で一部では有名な”フォース湾(The Firth of Forth)”ならぬ”ファンディ湾(The Firth of Fundy)”だったらしい。

 

 そして、英国では”流星”(ミーティア)や本格生産が始まりつつある二段過給機付きのグリフォン・エンジンを搭載した新型機をはじめとする各種戦闘機の開発が一気に加速してゆくことになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 無論、リビア、ギリシャ方面への皇国戦略爆撃機隊増強だけでなく、英国王立空軍もしっかりジブラルタルへの戦略爆撃機の増強を図っていた。

 それもイギリスの四発爆撃機の中ではレアな”ショート・スターリング”だ。

 どうやらタイミング的にMk.IからⅢへの改修を終えた順番から飛んできたっぽい。

 無論、ジブラルタルへの増援はこれだけでは終わらない。

 そして近衛の命に従いやってきたのは、イタリア人相手にリビア全域奪還戦を行った”ザバーニーヤ作戦”以降は大きな空戦が無く、故に損耗なく存分に訓練を重ねた航空戦闘団が、ジブラルタル北岸南部に増設された日本皇国空軍基地へと飛来していた。

 

「思ったよりも良い機体に仕上がったみたいだな」

 

 バブルタイプ・キャノピーを開けて地中海と大西洋の関門に設けられた真新しい基地に降り立つなり呟いたのは部隊所属のエースの1人”篠原博道”大尉だった。

 

(すんげー”ムスタング”臭いけど。しかもH型)

 

 そう、彼らは43年に配備される予定の空軍最新鋭戦闘機二種の片割れ、先行量産型が先んじて中東に持ち込まれた三式戦闘機改Ⅲ型”飛燕改”への機種転換訓練を終えて、その実戦プルーフを行う目的でジブラルタルへ配されたのだ。

 篠原の所属する戦闘機隊は、空軍の中でも最も早期に前モデルである”飛燕”を受領し実戦の空を駆け抜けた部隊であり、整備まで含めて「空軍の中で最も液冷戦闘機の扱いなれた戦闘機屋集団」と思われていた。

 まあ、その評価と評判に噓偽りはないのだが。

 ついでに言うと、戦争初期の”メルクール作戦”の際もクレタ島防空戦でRAF(英国王立空軍)と共闘した経験が、この任務に最適と判断された理由だった。

 

 篠原の戦闘機隊はギリシャ奪還作戦の”イオス作戦”にも一応は参戦はしていたのだが、敵機のほとんどを海軍が鳴り物入りで参戦させたゼロ戦の最終モデルにして決定版、完成形の金星エンジンを搭載したほとんどスペックが史実の五式戦な”零式艦上戦闘機三三型”に喰われてしまい空戦の場がなかったのだ。

 

(イタリア戦に投入する前に『程よい戦闘』で”飛燕改”の実戦でのデータ収集と弱点の洗い出しを行っておきたいってことだろうな。出来れば本格量産に入る前に)

 

 まあこの世界線の日本皇国は、バトルプルーフが終わる前に泥縄式に大量生産を始めるような行為は可能な限り避ける傾向がある。

 機体の新型機がいざ実戦に投入したら、役立たないというのは流石に早々あることでは無いにしても、弱点や欠陥が明らかになって使い道が限られるなんてのは意外とあるのだ。

 そして、イタリア戦前に”飛燕改”の実戦テストの場として選ばれたのが、最近どうにもきな臭くなってきたジブラルタルだったという訳だった。

 

 ちなみにジブラルタル南岸ではなく北岸南部の航空基地を拠点とするのは、”飛燕改”のその速度性能と作戦行動半径(増槽を装備すれば1300㎞以上になる。つまりモロッコ全体が行動圏内になる)から考えると、陸上侵攻の可能性がある南岸に置いておく意味はなかった。

 

 言い方を変えると、皇国もいつ航空戦が始まるか分からない……「いつ、モロッコ北部に押しやられた跳ねっ返り(ド・ゴール)がバカをやるかわからない」と踏んでいたのだった。

 

 まあ、近衛あたりだとハルゼーもルメーも不安要素なのだろう。

 というか近衛に言わせればこの二人の人間としての信頼度は、

 

「マーシャルやキングやスティムソンといい勝負じゃねぇの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、お久しぶりの皇国空軍エースの1人、篠原と以前少し出てきた新しい愛機、なんかP-51Hっぽい(笑)”飛燕改”登場です。

詳しいスペックは次回にでも譲るとして……そのうち”ファンディ湾”の歌詞でも考えてみるかな?w
”フォース湾”はオリジナルのヤケクソっぷりも良いんですが、「琴葉姉妹 空軍も悪くはないぜ!」と検索して出てくる日本語版も可愛くて好きです。

ハルゼーが口火を切り、ルメーが参戦する状況。
アーノルドやルーズベルトは御満悦ですが、モロッコとジブラルタル、英国本土とアイルランド、米国本土&ケベックとブリティッシュ・ノースアメリカで順調(?)にエスカレーションの兆しが……

いや~、増やした戦力突き合わせるだけで何も起こらないといいっすね?(目線逸らし

さてさて、どうなることやらです。

次回もよろしくお願いします。




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