転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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嗚呼、溶けた……





第313話 ロラン大佐の諦観&”プリンス”、割と有名なおっかないオッサンに誘われる?

 

 

 

 ジャン・ロラン大佐は、決して無能な軍人では無い。

 若き日の第一次世界大戦を馬に跨る本物の騎兵として過ごし、戦争末期の戦車の猛威を肌で感じた。

 幸運にも戦傷は無かったがスペイン風邪で死に掛け後方に送られ、完治したら戦争が終わっていた。

 

 そして、戦後は同年代のド・ゴールの先進的な考えに共鳴した。

 偉大なるフランスがドイツ人ごときに負けたのは、いつまでもマジノ線のような要塞線や塹壕などの古臭い戦術に拘ったペタンなどのせいだと考えていた。

 だからこそ、自由フランス軍に身を投じて、ドイツとの戦いで本当に欲しかった装甲部隊を指揮するに至ったのだ。

 しかし……

 

こんなバカげた事があってたまるかっ(Je ne supporte pas quelque chose d'aussi stupide )!!」

 

 それは第一次世界大戦で何度も見た古臭い防衛線だったはずだ。

 有刺鉄線は戦車には無力で、対戦車壕は米戦車のパワーと登坂力なら乗り越えられる規模だった。

 厄介なのは対戦車地雷だったが、撃たれながらも作業を続ける工兵隊の活躍で、被害は最小限に抑えられているはずだ。

 だが、最初の計算違いは車体をダグインさせトーチカとして使われているチャーチルMk.VI歩兵戦車の火力と防御力だ。

 チャーチル戦車の装甲は傾斜こそしてないが露出してる砲塔正面で152㎜、側面で90㎜。

 初期型シャーマンの短砲身75㎜砲(75㎜37.5口径長砲)では、100mまで近づき米軍自慢のHVAP(高速徹甲弾)を使ったとしてもチャーチルの砲塔正面を貫通できず、逆に日本皇国の一式/一式改中戦車と共通の75㎜45口径長砲(英国名:11ポンド砲)で虎の子高速徹甲弾(APCR)を用いると1000m以内であれば、M4の傾斜した最も分厚い89㎜の砲塔正面をギリ射貫ける。

 しかも、対戦車壕を超える時に自由フランス戦車が上面や下面を晒せば、まさに撃ち頃・狙い頃だろう。

 そして、M3中戦車の装甲は最大厚でも50.8㎜、つまり僅かに傾斜していても厚さその物はM3軽戦車と大差ない。

 つまり英国標準的対戦車砲の6ポンド砲が通常徹甲弾(APCBC)を用いてさえも1500mで貫けた。

 

 更に空の脅威が消え去って暇になったのか、3インチないし3.7インチの高射砲も射線上に入るなりアウトレンジから水平弾道で撃ってくるのだ。

 どうやら英国人はドイツ人との戦訓からきっちり学び、高射砲にも非常用に対装甲用の徹甲弾や徹甲榴弾を相応に用意していたらしい。

 いや、それだけではない。役目が終わってしまった対空機関砲さえも水平弾道で弾丸を吐出しはじめ、軽装甲でしかないハーフトラックの装甲を徹甲榴弾で撃ち抜き、中身の自由フランス軍歩兵をただの”新鮮な挽肉”(フレッシュミンチ)に変えていった。

 ヴィッカース社自慢の戦場の古参、水冷機関銃群は慌てて車両から降りた兵士を水冷銃身特有の長い持続射撃時間をフルに活かしつつ弾が続く限り小間切れに変え続け、そこに歩兵たちの小銃や機関銃の多重奏が花を添え、迫撃砲のパーカッションが軽快なリズムを加えていった。

 

 降伏、いや投降の意思を示せるのが先か、音速で飛んでくる金属に当たるのが先かを競うスリル満点のチキンレースが開催されたのだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 ロランのとった「航空攻撃と重砲効力射を傘にした、装甲兵力による機動戦術」は確かに機甲戦のお手本のような正しさがあった。

 だが、惜しむらくは英国側の戦力が、ド・ゴールの想定した数倍に達していた事だ。

 いや、想定していたララシュの配備兵数は諜報員からの報告と極端な(数倍に及ぶ)差は無かった。

 だが、ドイツ人との戦いぬいた英軍の戦力倍加要素、そしていつの間にか運び込まれていた新型巡航戦車などの補完力の差、そして数的にも集中的にも圧倒的な航空兵力差が大きく物を言ったのだ。

 

 装甲突撃の最中に航空隊も砲兵隊も瞬く間に壊滅するなんて、想定外も良い所だろう。

 そして……

 

「ははっ、私の命運もここまでか……」

 

 自由フランス軍軽戦車隊を平らげた真新しい英国巡航戦車群が後方から回り込んでいたのだ。

 いや浜辺ではなく川辺に待機していた8両まで加えた24両のクロムウェル巡航戦車が後ろから半包囲陣形で迫ってくる。

 十字砲火が完成しきる前にロランは撤退を命じた。

 殿は自分が務めるつもりだった。

 この時代の戦車で、その場でくるりと車体を回転させて向きを変える”超信地旋回”ができる戦車は少数派で、M4中戦車はその少数派には入っていなかった。

 そして、戦車の後部というのは車体も砲塔も極めて装甲が薄い。

 

 結論から言えば、自由フランス軍装甲部隊は全滅した。

 わざわざ自分から罠に入ってきた獲物を撃ち漏らすハンターなど、英国紳士として失格なのだ。

 そして追撃戦というより残敵掃討ステージが始まり……

 降伏ではなく武装解除の上に投降し、捕虜ではなく「負傷者を含め身柄を拘束された武装犯罪者」は500名は居たらしいが、1000名に届かなかったらしい。

 なお負傷者の24時間後の生存率は考慮しないものとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*************************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「”アラビアン・プリンス”、ちょっとハンティングに付き合わないか?」

 

「いや、”スターリング”中佐、その呼び方はちょっと……」

 

 ああ、下総平四郎だ。リビアではヘイシロー・シモサで通ってるらしい。

 いや、何故か俺の嫁さん(ナーディア)がリビア(キレナイカ王国)の末姫だってのがジブラルタルの英軍に広まってるようで……つまり、娯楽に飢えた兵隊たちの格好のネタになってるって訳。

 んで、「アラビアのロレンス」をもじって”アラビアン・プリンス”だの”砂漠の王子様(デザート・プリンス)”だのって好き勝手呼ばれてるって訳。

 いや、英国情報部も無駄な能力発揮をやめて欲しいものである。

 

「事実だろう? 君もスポッターも”都市潜伏狙撃戦(アーバン・スナイピング)”の面子から外されて暇だろう?」

 

 あー、一応説明するな?

 俺と小鳥遊君、そして皇国軍から派遣された駐ララシュ狙撃中隊は、「自由フランスを僭称する重武装テロリスト」が市内に入り込もうとした場合の阻止任務、市街に潜んで狙撃でテロリストを排除する”治安行動(・・・・)部隊”に任命されていた。

 

 ところがぎっちょん。

 戦いが始まり蓋を開けてみれば、ララシュに押し寄せていた自由フランス装甲部隊は全滅の憂き目。

 いや、中にはララシュに押し込み強盗しようとする不逞の輩もまだいるかもしれないが、それについては英軍都市配備部隊だけで十分とされ、俺達狙撃部隊には待機任務が出ていた。

 まあ、予備兵力というのは確かに戦場に余力を持たせる為に重要なんだが……半ば遊兵化していた俺と小鳥遊君に声をかけてきたのが、”ディヴァイン・スターリング”中佐。

 なんと原初の常設特殊作戦任務群(スペシャル・フォース)、デルタのお手本になった英陸軍の最精鋭”特殊空挺部隊(Special Air Service)”、通称”SAS”の創設者にして現隊長だ。

 名前だけ聞くとこの部隊、ドイツで組織された”空軍空挺部隊”と似たような感じに聞こえるが、実態は「空挺作戦も任務に入れられる高度な特殊部隊」で、、破壊工作や敵陣付近の偵察活動だけでなく、イギリス国王など国内外の要人警護、テロ行為に対する治安維持活動、人質および捕虜の救出作戦までできる正規戦も不正規戦もなんでもござれなユーティリティ・プレイヤーのプロフェッショナル集団ときてる。

 

「ところで何処へ? マンハントなのは分かりますが」

 

 いや、もう偽フレンチの装甲部隊は壊滅してるよな?

 

「敵砲兵陣地の遠い方。装甲別動隊が残敵掃討・陣地制圧に動くらしくてな。我々(SAS)も便乗させてもらうことにしたのさ」

 

「ああ、なるほど。”対テロ掃討作戦”もSASの主要任務ですからね」

 

「そういうことだ」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 用意されていたのは海側ではなく川側に配備されていた8両も含めた24両のクロムウェル巡航戦車ではなく、機甲予備として待機していたそのひとつ前のモデルであるリバティーエンジン搭載で6ポンド砲装備型の”セントーMk.I”×12両と、配備数の少ないチャーチルと同じ原型が九〇式野砲由来の75㎜(11ポンド)砲を搭載した”セントーMk.IV”×4両の合計16両の巡航戦車、それに随伴する装甲化された軍用トラックなどの兵員輸送用車両だった。

 実は自由フランス軍が把握していたのはチャーチル歩兵戦車とクロムウェルではなくセントーだけで、それというのもクロムウェル×24両は慣熟訓練を終えた戦車兵ごとララシュ市街北方にあるララシュ港に増援として陸揚げされたのはつい最近のことだ。

 つまり自由フランス軍は最初からこと機甲兵力に関しては数を見誤っていたのだ。情報の鮮度と速度が圧倒的に足りていなかった。

 と言っても、相手がセントーであったとしても、軽戦車部隊では結果は変わらなかったかもしれないが。

 ちなみに比較的近場であった射程11,300mのM1918/155mm榴弾砲&シュナイダーM1917C/155mm榴弾砲陣地は、門数でも発射速度でも勝る英国王立陸軍重砲隊の紳士達(ブリティッシュグレナディアーズ)から、弾着観測付きの熱烈歓迎(メチャクチャ)な集中砲撃を浴びて既に沈黙、別の部隊が制圧に向かったようである。

 

 

 

(つまり俺たちが向かっているのは、遠間合いのカノン砲陣地ってことなんだが)

 

 俺と小鳥遊君を含む狙撃小隊編成の皇国狙撃兵選抜組とSASの紳士たちが目標の手前で降車する。

 俺たちの任務は装甲随伴歩兵として敵陣を制圧することじゃなく、その支援任務(サポート)だ。

 

「さてと……」

 

 RAFの紳士諸兄(紳士処刑?)のおそらくロケット弾による空爆で重砲陣地自体は半壊していたが、それでも何とか砲撃を再開……いや、それとも何とか撤退しようとしてるのか?

 まあ、色々足搔いている砲兵陣地ではあるが、

 

「英装甲群、敵有効射程内への接近を確認」

 

「小鳥遊、重砲よりも野砲や対戦車砲を動かそうと指揮している奴のスポッティング、よろ。鈍重な重砲の水平射撃より、そっちの方が怖い」

 

「アイ・サー」

 

 偽フランス人達は、カノン砲陣地の周辺に現地人らしき歩兵と75㎜級の野砲と米国製の小口径砲を配置していた。

 そうそう当たる物じゃないが、沈黙させるに越したことはない。

 

 俺が構えているのは、名前から試製が取れて皇国陸軍制式採用長距離狙撃銃となった、ホ103やヴィッカース50口径でお馴染みの12.7㎜×81弾をぶっ放す”二式十三粍長距離狙撃銃”、個人的には是非”ヘカテーたん”と呼びたい。

 いや、だって使用弾が違うってだけで、異常に某シノンさんご用達で有名になった前世の仏軍50口径狙撃銃”PGMヘカートⅡ”に似てるんだよ! しかも初期型の木グリ仕様。

 

(これでパチモンとはいえフレンチ撃つとは何という皮肉……)

 

 小鳥遊君が果敢にも迫る英戦車に生き残った野砲を向けようとしている指揮官の情報をくれる。

 

(距離はざっと1400mってとこか……)

 

神に誉あれ(Allah Akbar)……!」

 

 俺は引き金を絞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、自ら進んで”アラビアン・プリンス”の二つ名を広めてゆくシモヘイでしたw
「アラビアのロレンス」がリアルに居たお国の兵隊(SAS)の前で、引き金引くたびにアッラーへの祈り捧げたら、そりゃあ否定できんでしょうw
ちなみに本人は無自覚、というより集中する時の口癖?になってる模様。

そして、ロラン大佐はまあ順当であっても、金床(チャーチル)と金槌(クロムウェル)に挟撃されて摺り潰されました。
そして、近い方の自由フランス軍砲兵陣地はアホみたいなレートのつるべ撃ち(具体的には門数×4倍、平均発射レート×2倍)で沈黙、遠い方はシモヘイと小鳥遊君とSASのゆかいな仲間たちがピクニックです。

前提も想定も(戦力)評定も最初から間違ってたんで無理もないですが、正統フランスに残っていたら、そこそこ活躍できたかもしれない人材だったかも?

さて、ララシュを巡る戦いはどうやら終息しそうですが、もちろんこれで問題は終わるはずもなく……

次回もどうかよろしくお願いします。


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